原神✕仮面 〜アギト、『契約』の地にて〜   作:ジュンチェ

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 更新です。
 蒸し暑いですね……


迫る怪刃ッ!!!! Ⅻ

 

 

「―――ええ、凝光さまはアギトであるホシノ殿を愛人としているのなら、何処までアギトについて知っているのか気になりまして。」

 

 

 この男は何を? 凝光は訝しむ…

 恐らく、自分が知りたいこと…神罰殺人について尻尾を出したのは違いない。うまくやれば一連の事件への真実に近づけるはず。

 

 

「ええ、ホシノくんからある程度は聞いているわ。貴方たちの世界は神に恵まれなかったようね。」

 

 

 ホシノと福郎の世界…便宜上、西暦の世界と呼ぼう。この世界の創造主たる闇の神(ホシノ曰くクソ神)が人間を創造し寵愛したところ、闇の神の配下であるロードたち…要はアンノウンと人間の間で争いが起きた。

 この際に、哀しむばかりで何もしない闇の神に業を煮やした火の神さまが蹂躙される人間に加担し、自らのチカラを分け与えたことがアギトのはじまりになったのだと…

 

 璃月建国に尽力した岩王帝君をはじめ他・七神の逸話を知る凝光からすれば、時代を経ても振り回される人間やアギトたちが気の毒すぎる話だった。

 

 

「神やアンノウンと戦うためアギトになった者たちにはより過酷な運命が待っていた。異端として神には見捨てられ、異形として人間には拒絶されてしまう。そして、神と人との戦いはいつしか人とアギトの戦いに変わっていった。」

 

「ほうほう、流石ですな。なら、こちらも話がしやすい。――アギトは大まかにワシやホシノ殿と同じように『人との共存を望む者』と『それ以外の者』がおるのです。

 ――そして、後者の者たちが圧倒的に多く、テイワットに座礁して徒党を組んでいる。」

 

「――!」

 

 

 それ以外の者……つまり、人類へ反旗を翻したアギトたちのことか!彼等もまたテイワットに流れついてるのだとしたら…

 

 

「確証はありませぬが、確信はあります。神罰殺人は人に仇なすアギトの派閥によるもの。その本質は『侵略』…その第一段階。彼等の狙いはこの璃月を手中に収め、神座から岩王帝君を蹴落とし自らの神…『幻神』をこの地に祀り上げること。最終的にはこの璃月をアギトの国にすることが奴等の目的でございます。」

 

 

 何…だと……

 凝光だけではない、他の面々も語られる内容に固唾を飲む。つまり、敵はホシノと同じ『アギト』ということだ。しかも、人間に強い敵対心を持っているときた。

 

 しかし、ここで異を唱える者がひとり。

 

 

「壮大な話だけど、貴方の話には矛盾があるわね。」  

 

「おや、刻晴さまは何が気になるので?」

 

 

 刻晴…彼女の視線は冷たい。もとより信頼の暖かみなんぞ元より無かったが、一層に向ける温度はより下がっている。きょとんとする福郎に対し、ひとつひとつ指摘をはじめた。

 

 

「まずひとつ、神罰殺人を行っているのはアンノウンでしょ。そのアンノウンが本来、アギトを狩る側であるなら…仇敵同士で手を組んでいることになる。おまけに、得られる結果はアギト側にしか利益が無いことになるのだけれど?」

 

 

 成程、確かに。闇神の使徒であるアンノウンが敵対するアギトに与したところで何のメリットも無い。確かに矛盾かもしれない。

 

 

「次に、相手の狙いが国盗りなら…そもそも、神罰殺人なんて効率が悪い手段より手っ取り早く璃月港を攻めてもおかしくはないでしょう?

 それに、先のアビス教団が襲撃した時も愛人様以外のアギトらしき姿の報告は受けてないわ。」

 

 

 そもそも、本当に狙いは璃月を潰すことなのか?神罰殺人は確かに民衆に不安を与えれど、そもそも神の眼持ち自体が総人口に比べて圧倒的に少ないマイノリティだ。それをちまちま殺したところで、国に与えるダメージなど凝光やそれこそ刻晴のような重要人物でもなければたかが知れる。

 それに、敵対したアギトの報告を受けたのも先日のミラージュサイズ出現の1回きりだ。

 

 

「これらについては、どう説明するつもりかしら?」

 

「ううむ、なんと……」

 

 

 険悪になる空気。今度はこの場で斬り合いが起きそうだ。

 すぐさま、話の舵を奪い返す凝光。

 

 

「つまり、敵対するアギト一派からすれば、私たちも戦うべき人間であることに変わりはないということかしら?」

 

「左様。彼等にとって、人間は全て敵…神に敷かれるべき存在でしかない。それだけ、彼等は人間を恨みは根深く、ドス黒い感情の捌け口を求めているのだ。」

 

 

 殴った殴られたじゃない…人間ならば異世界人であろうと関係なく殺す。璃月側からしたら預かり知らぬ恨みは向けられるわ、命を奪われるわ、とばっちりにしてもたまったものではないのだが…

 しかし、相手は追い詰められ『憎悪』という感情で動いている以上、理性的な理屈は通じない。

 

 

「話しあえれば、まだお互い交渉の余地があったのでしょうに…」

 

「それが出来るならそもそも神罰殺人なんぞ選びません、凝光さま。

 

 ―――では、次の疑問にお答えしましょう。ホシノ殿、アンノウンと戦っていて違和感はありませんでしたかな?」

 

 

 えっ!?

 急に振られ戸惑いの声をあげるホシノ。いや、そんなこと急に言われても……

 

 

「う〜ん……そういえば、前に倒したアンノウンがまた現れたりしたりってことが多いですね。それと、ここ最近は落ち着いてきているくらいかなぁ。」

 

「それは、ホシノ殿が戦ってきたのは本物のアンノウンではないからですぞ。この璃月に現れたアンノウンは恐らく精巧に造られたレプリカでありましょう。」

 

「あ、アンノウンのレプリカ!?」

 

 

 衝撃である。確かにおかしいとは思っていた……アンノウンは同属が現れることがあっても、同個体が復活することは一部の特殊な奴を除きあり得なかった。それが、やたらと璃月では多いという理由がそんなことだったとは…

 だとしたら、アギト側に造られた模造品である以上、ようは使い捨てのきく人形でしかないのだ。

 驚くホシノにさらに福郎は続ける。

 

 

「実はアギトにとある能力を持つ者がおりましてな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 璃月港郊外…その付近の岩陰に秘境の入り口がある。

 

 中は物理法則を捻じ曲げ、神殿らしき建築物の跡や果ては空まであったりと洞窟のように圧迫感などは感じない。ただ、めぼしいものは殆ど無いので非情に退屈な場所ではあるのだが………

 

 

「――でも、静かな分は『アトリエ』には丁度良いですね。」

 

『オイ、サボッテイテ良イノカ?』

 

 

 まあ、ここ最近はお小言で小突いてくるアビスの魔術師(雷)…でしたっけ? が居座るようになり、適度に騒がしい。別に悪くない、他人(?)とのコミュニケーションもそれなりに刺激にもなるし、暇つぶしにももってこいだ。

 

 最もアビスの魔術師側からしたら、何が悲しくて半裸エプロンのヒゲダルマのオッサンを相手しなくてはならないのかと嘆きたいところ。

 

 

『…(別ニ、今更性欲ガドウノトイウコトハナイガ…責メテ、コウ…アルダロ……)』

 

「〜♪」

 

 

 魔性に堕ちた身なれど、胸の奥からくる虚しさはなんだろう。女の子とは言わない…せめてもう少し、清潔感のある人間ならば……

 やれやれ…アビス教団はまだアギト一派との同盟を続けてはいるが、璃月港襲撃を事実上の失敗になった以上は手を組む理由も薄いはず。王子たちにも思惑はあるのだろうが、溜息ばかりが漏れてもう幾度。

 

 

「ああ、そうだ。何か食べますか?」

 

 

 すると、オッサンは1枚の白紙を取り出す。紙を食えというわけではない……真っ白い平面にサラサラと筆を走らせると、ものの数秒でタコ焼きが描き上がる。リアルで本当に湯気がたってきそうな迫力があるが、それだけでは終わらない。仕上がった一枚に『ふぅ~』と息を吹きかけるとみるみる絵が膨れあがり平面から現実の立体物へと変化する。

 

 

「さあ、どうぞ。出来たてですよ。」

 

 

 それを出来たてと言って良いのか?絵に描いた餅は食えない…だが、彼の描いた絵は『本物のようなもの』になった。食えるか食えないかで判断するからおそらく腹に入れても問題ないのだが…

 

 

『当テツケカ、貴様!?』

 

「ああ、そうでした。本当の顔が無いんでしたね…これは友人にとんだ失礼を。」

 

 

 そして、自分で描きあげたものをホクホクと食べだす彼。本当に同盟関係が無ければこんな奴、関わりたくもない…何か気色悪いし。

 

 

『…(しかし、その能力は目を見張るものがあるが。)』

 

 

「さ、お腹は膨れましたし、作業を再開しましょう。」

 

 

 すると、彼は立て掛けられていたキャンパスに近づくと筆をとる。筆だけではない、ミノもハンマーもヤスリも、ありとあらゆる工具を何本も腕を身体生やしてそれぞれの手に握る。そのシルエットはアビスの魔術師から見ても気色悪いを通り越して気持ちが悪いレベルだ。

 向き合うのは削りかけの巨岩。

 

 

「さてと―――変身。」

 

 

 光るは男の右腕。発現したブレスレット型のオルタリングが彼を『灰の異形』へと変えていく。男性的でありながら他のアギトと比べて華奢なボディに、顔の左側を花が咲いたようなクロスボーンが隠す特徴的な顔。最早、全容は完全に怪異のそれ……幻影の系譜

銘は魔術師『アギト ミラージュ・キャスター』。

 見た目は明らかに戦闘には不向き…しかし、彼の真骨頂は戦いにあらず。

 

 

「ふふふふ……」

 

 

 不気味に笑いながら、多数の腕と工具を駆使して巨岩を打ち欠き、削り、彫って、塗ってを繰り返す。そのスピードと正確性は機械のようだが、手の動きのひとつひとつはあくまで激しくも有機的だ。

 やがて、仕上がり浮かび上がるは『怪人』の石像。恐らくは蠍がモチーフなのだろうか。

 

 

「さあ、命を吹き込んであげましょう。」

 

 

 そして、最後に口にあたる部分にフーと息を吹きかける。すると…

 

 

『…ァァァ……アァアアア…!!』

 

 

 無機質な瞳に光が宿り、石像は『スコーピオンロード』としてメキメキと音を立てながら動き出す。

 

 

「さあ、新作です。お気に召して頂けるでしょうか。」

 

 

 まさに、魔術。アビスの魔術師ですらこんな業は自分には出来ないと息を呑む。自分の創造物に命を吹き込み、ロード怪人であろうともオリジナルと比べても遜色ないコピー怪人を創り上げてしまう。材料も決して珍しいものではなく、ありふれたものばかり…ともなれば……

 

 

『ヤハリ、璃月港ヲ落トスノモ夢トハ言イ切キレナイナ。』

 

 

 璃月を狙う邪悪は今も尚、静かに手を伸ばそうとしていた……

 

 

 

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