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――!!!
『! この気配…おい待て置いていくなショウイチ!?』
ギンッ!と普段は糸目の目を見開くホシノ。彼の金色の瞳が露わになるのは怪人の気配を察した時くらいだ。一目散に駆け出した彼は落とした茶葉の袋にすら目もくれず、璃月の中心街を目指す。
走る中、徐々にこちらと逆行し逃げ惑う人々を掻き分け…やがて、たどり着いたのは商店街。そこで水を操り戦う片手剣使いの少年と亀のような銀色の怪人『トータスロード・銀』が争いを繰り広げている。
少年は武芸の心得があるようだが、トータスロードの堅牢な甲羅に攻めあぐねているらしい。
「全く、可愛いげの無い亀だ。」
『シャァァ…』
冗談を口走っているが、明らかに余裕はない。
ホシノはすぐに己の腹部にオルタリングを呼び出す。いくら神の目を持っていようとも怪人は常人が太刀打ち出来るわけがない、はやく助けなくては…
「――変身!!」
★ ★ ★ ★ ★ ★
「流石にこれはまずいかな。」
行秋はトータスロード・銀の相手に着実に疲弊しつつあった。
衰退した武侠・古華派の門弟であり、それなりに剣には自信がある身だが今回は相性の悪さを感じずにはいられない。この怪人は彼の日課である書店の古本の物色中に突然、地面から飛び出して襲いかかってきた。不意をつかれながらも応戦したが、凄まじい堅さの甲羅は剣の尽くを弾き、あまつさえ水元素を用いた技すら意に介さないのだ。動きが比較的に鈍重なのが幸いではあるものの、厳しい戦況なのは事実……他元素を扱える人間がいたらまだ戦い用があるのだが。
「やれやれ、怪人に恨みをかった記憶はないんだけど…」
『シャァァ……!』
――変身!!
「!」
『!?』
その時、目が眩むほどの目映い光がさしたかと思えば乱入するひとりの影。
体当たりでトータスロード・銀をふっとばしてシュッと立つのは金色の戦士。そう言えば聞いたことがある…
(璃月の神罰殺人は古の魔神戦争で討ち取られた魔神の怨念の化身である怪人の仕業だと。そして、闇に紛れ怪人を討つ仮面をつけた『金色の戦士』が存在する……)
―――その名は
「…黄金夜叉!」
「?」
な に そ れ
自分の認知しない呼び方に思わず困惑してしまったアギト。そんな名乗りはした覚えはないし絶妙に妖怪っぽい響きは不服だが、今は戦いに集中しなくてはならない。
「はっ!」
まずはトータスロード・銀を果敢にキックやパンチの連撃を繰り出す。しかし、軽く仰け反るだけで奇妙な水色の粒子が飛び散ったりはするもののあまり効いている様子はない…むしろ、硬すぎで逆にこっちの手足が砕けそうなくらいだ。…痛い。
『…フッ、コノ程度カ。』
「…」
一旦、距離をとる。あの甲羅、赤を超える『紅蓮のアギト』ならいざ知らず、基本形態のグランドフォームではろくに歯が立たない有り様。ならば…
「ムンッ!」
力で駄目なら技で攻める。オルタリングの右側面のスイッチを叩くと、バックルの宝石部分が輝き剣の柄が現れ……そのまま霧散。
「!?」
『シャァァ!』
想定外の事態。武器を使おうとして空振るなど致命的な隙以外なにものでもなく、柄空きの懐目掛けトータスロード・銀の頭突きが迫る! 回避は間に合わない、咄嗟に防御の姿勢をとったアギト…その拍子に先の戦いで飛び散った粒子に触れてしまう。すると、水元素のバリアが形成されて頭突きの威力は大きく減衰…なんとトータスロード・銀の岩をも粉砕する一撃を受け止められてしまった。
『ナ、ナニィ!?』
「…っ! ぐっ、う、ううおおおおォォ!!」
両者、さらなる予想外の事態だが運はアギトに向いているだろう。
好機、地に足つかぬ亀など恐れるに足らず。トータスロード・銀を持ち上げながらクロスホーンを展開…ライダークレストを足元に具現化させエネルギーを収束。そのまま、力任せにぶん投げると容赦なくライダーキックを叩き込む。
必殺の一撃は空中のトータスロードを弾きとばし、明確に手応えを感じるアギト…
………だったのだが
『マダ…ダァ!!』
「!」
地面に叩きつけられても尚、敵は立ち上がる。されど、流石にライダーキックは通ったようで甲羅に亀裂が生じているではないか…これから、もう一発くれてやれば倒せるはず。今度こそトドメを刺すべく身構える。…その時
――ドゴォ!!
『獲ッタ!』
「なにっ!?」
背後、新たなる敵影。突き破った地面から掴みかかり、無防備になった背中から羽交い締めにしたのはトータスロード・金。どうやら、同系統のロード怪人がもう1体潜伏していたことに気がつかなかったようでアギトはもがいて抵抗するも、振りほどくことが叶わず地面の底へとハンミョウの幼虫に捕まった獲物が如く地中へズルズルと引きずりこまれてしまう。
「う、うわああああああ!?」
「まずい!」
まとも一転した戦況。危機を察し、手を伸ばした行秋だったが…掴もうとする指先は虚しく空を切り、悲鳴すらも地の深みへと呑み込まれていくのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「ぐっ! ぐあ…!?」
『終ワリダ、アギト! 潰レテ死ネ!』
トータスロード・金がどんどん深みに潜るほどに地中の圧が高くなる。身動きも呼吸もろくに出来ないアギトは為す術が無い。仮に振りはらえたとしても、そもそも地中の活動を前提とした能力などないので反撃はおろか生存も絶望的だ。
(…駄目だ、意識が……)
沈むは孤立無援の闇の中…助けは来ない
―――やれやれ、世話が焼ける。
『!』
否。一筋の光明がさす。
ここは璃月、岩神の国。ならば、地の底だろうと奇跡のひとつ起きたって構わないだろう?
★ ★ ★ ★ ★ ★
――ドゴォ!!
「な、なんだ!?」
突如、行秋の目の前に生えてきた漆黒の石柱。あと少し前に出ていたら顔面がミンチになっていただろう勢いで、トータスロード・金とアギトを空中へと打ち上げた。
数秒後、トータスロード・金は仲間のトータスロード・銀の元へ『グエッ』と不時着。アギトは屋根を突き破って建物の中へ墜落…煙とモラが舞い上がる。
「間一髪だったな。……しまった、アイツを北国銀行のほうに落としてしまった。」
物陰に隠れながら、ふぅ…と溜め息をついていた青年。指先には『岩元素』の反応の跡…あの柱は彼の仕業であった。
しかし、アギトを指5本に入るほどのある意味での危険地帯に放り込んでしまったことに気がつき、ヒョイヒョイと身軽に手摺りを伝って2階の入口の前へ。『北国銀行』の掲げられた看板の下を通り抜ければ、モラや書類や諸々が散らばる中心で呻きをあげ倒れたままのホシノの姿。
「……やれやれ、派手にやられたな。」
「鍾離…先生…?」
意識は朦朧としているが、取り敢えず生きてはいるようだ。
鍾離は彼を担ぎ上げるとその場を後に……する前に、近くで腰を抜かしているファデュイの女性構成員に折ったメモ用紙を手渡す。
「これを『淑女』に渡しておいてくれ。鍾離からだと言えば解る。」
「…は、はあ。」
では、さらばだ。鍾離は今度こそその場を平然と後にした。
時を同じく、トータスロードたちも戦況の不安定さを感じ取り逃げだし…タルタリヤと千岩軍が到着した頃には北国銀行の周囲は誰もおらず閑散としていたという。
★ ★ ★ ★ ★ ★
―――悪夢を見た。
それはかつてあった出来事。思い出したくなくても、ふとした境に脳裏から表層に浮かび上がり蝕んでくる。
「…はぁ …はぁ」
「…ふぅ …ふぅ」
「どうした小僧に小娘?まだ息切れするには早えぞ。」
雑木林の中…アギトと共に円陣を組む形で背中を預あうのは仮面ライダーギルスと仮面ライダーアナザーアギト。ギルスは外見に見合わない若い女性の声で…アナザーアギトは対照的に壮年の男かつ歴戦の風格を感じさせるがねっとりとした不思議な声色だった。
3人は今、窮地に立たされている。林の向こうからは獲物を追い立てる猟犬のように複数の人影…迫りくる黒鉄の鎧は人類の叡智にして狂気、最強の存在『仮面ライダーG4』。そのスペックは単体でもアギトたちを上回り、更に数で優位に立つ相手に勝負にすらなるわけがない。
……しかし、どうして彼等が『襲撃』されているのか。
「……これが、私達への…『人間のアギトへの答え』ですか!」
「仮面ライダーだなんだ持て囃したくせに、『人が神に届いた結果』がこれか。これだから人間ってやつはよ…」
ギルスは悲壮に叫び…アナザーアギトは笑っているようだが言葉に絶望が滲み出ている。この現状は人のために戦った自分たちへの明確な『裏切り』なのだ。
ふたりの仮面ライダーが折れかける中、ここで自暴自棄になってはいけないと彼彼女らを鼓舞するアギト。
「諦めたら駄目です! ここは俺が…」
「――目標を排除する。」
「!」
しかし、無慈悲にG4のひとりから4連ミサイル・ギガントを向けられる。そして、一気に放たれたそれらは用済みになった英雄たちを無慈悲に焼き、吹き飛ばしたのだった…
★ホシノのプロフィール
・神の目について
→神に選ばれた者…つまり、皆アギトってコト!?
ジャックン『そういうことではない…と思うのだが。』
・七星について2
→ワーキング・オブ・モンスターズ? それは流石に失礼極まりないでしょ、ねえ甘雨さん? …………300年、有休とってないってどういうことです?
・テイワットの神々について
→言葉が通ずるだけまだマシかなぁ。
話が通じることは期待しないけど…
因みにホシノの辿ったアギトの物語は、創造者たる闇の力が人類を見放したうえに人類サイドが仮面ライダー勢力を裏切った最悪のルート。おまけにまだロード怪人の残党が活動しているし、まさかのG4が少数ながら量産されている世界線。地獄。