問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
彼は胃痛のあまり、ネガティブになっているので。
「う〜ん、マジかー」
日車達の揺るぎない返答に、頭に手をやりながら困惑する九十九。
「それ、絶対に呪詛師判定喰らうやつでしょ」
日車達がやろうとしていることは、かなりの大事であることを九十九は指摘し、そのあたりについて理解しているのかを問う。
「ああ、だからこそ総監部を俺達が乗っ取るのさ」
それに対し、甚爾達は自分達が頭になれば、問題は無いことを告げる。
そのことすら、脳筋過ぎる思考であるというのに、日車によって更なる爆弾発言が九十九へと投げられかけた。
「加えて、禪院家も潰すぞ」
『特級術師』九十九由基に30秒ぶりの緊張がはしる。
「……マジ?」
「「「マジ」」」
「え、キミら総監部を潰したいんだよね?御三家のひとつまで潰す理由ってなに?」
「「ムカついたから」」
『ムカついたから』そんな理由で禪院家を潰そうとするのはキミ達くらいだと呆れながらも、九十九は詳しく聞こうとする。
日車と髙羽曰く、禪院甚爾への仕打ちを知り、怒りを覚えたとのこと。
「…あ〜、禪院くん、キミ良い友人を持ったね。んじゃ、総監部を潰すついでに禪院家も潰しちゃおうみたいな感じ?」
九十九が話をまとめようとすると、日車が「いや」と声を発する。
「総監部を潰す方がオマケだ。呪詛師認定されると、俺達が弁護士と芸人になれなくなるのでな」
ただ、総監部を潰すことによる呪術界の変革も目的とはしているぞとフォローにならないようなフォローを入れる日車。
九十九は頭がショートしそうだった。
「…ふぅ、なるほどね。んで、それを私に話した理由は?」
あまりにぶっ飛んだ理由で、呪術界の膿を全て取り除こうとしている日車達を見て、九十九は理解することに少々時間がかかった。
というか、弁護士?芸人?呪術師と全然関係ないじゃん。普通の学生みたいだなといった感想を九十九は心に留めることにした。
「協力して欲しい。俺達への処刑人として、特級の貴女へ任務が降りた場合に抑える手段が無いことは無いが、面倒ごとは避けたい」
この発言を聞き、九十九は薄い笑みを浮かべてはいるが、目は全くもって笑っていなかった。
「へぇ、私を抑えられると思ってるんだ?天才のキミならってことかい?それとも、呪力の全くない禪院くん?」
先程の様子から、呪術のセンスが異常に高い日車ならば、特級である自身と良い勝負をするかもしれない。
もしくは、天与呪縛による甚爾であれば、呪力感知を使えないために自身を暗殺できるかもしれない。
だが、所詮は可能性であって、自身を確実に抑えられる根拠なんて無い。
そう考えていると、九十九の予想はそのどちらとも違うことを日車から突きつけられる。
「いや、俺達ではない」
そう言って、日車は隣にいる髙羽へと目をやる。
「…髙羽くんかい?」
九十九は心底意外そうな顔をした。
「言っておくが、理由は説明しないぞ」
日車達にとって、髙羽は切り札でもある。
おいそれと話すべきことではない。
そのことを理解した九十九は、話の続きを促す。
「それで、私のメリットは?」
流石に、自身へのメリット無しにこの交渉をしようとしているわけではないだろうということを九十九は察していた。
すると、甚爾が声を挙げる。
「俺がオマエの研究に協力してやるよ」
アンタ、俺に協力してほしくてウズウズしてたろと続ける甚爾。
その言葉に目を見開いた九十九は、数分間熟考したのち、答えを出した。
「…なかなかに魅力的な提案だね。良いよ、協力しよう」
そうして、日車へと右手を差し出す九十九。
「取引成立だな」
その九十九へと応えるべく、日車も右手を差し出して握手をする。
「ただ、コレだけは聞いておきたい。仮に呪術界の革命を成し遂げたとき、その後の呪術界における統率はどうする気だい?潰すのはいいが、最悪の場合、混乱によって今以上に環境は酷くなるだろう」
「その点については、適任者を探している最中だ。まあ、今すぐに潰そうとしているわけではない。見つかり次第、連絡するさ」
逆に、見つかったときは一瞬で呪術界を変革するであろう言葉に九十九は苦笑いを浮かべた。
「最悪、上の奴らを半殺しにでもして、こっちに有利な縛りでも結ばせればいいだろ」
甚爾の言葉に、それもそうだなと返す日車。
その様子を見て、九十九は純粋な笑みを浮かべる。
「ははは、なんだか既にやったことのあるような軽さだな」
思わず九十九がそう言うと、3人とも一瞬で目を逸らしたことで、これ以上は何も言うまいと九十九は押し黙った。
「そういえば、九十九が天元って人のこと嫌いって本当なのか?」
聞き忘れていたとばかりに、髙羽が九十九へと時雨の言っていたことについて問う。
特に話を変えようとする意図があったわけではないが、少なくとも先程の微妙な空気よりはマシだった。
「あ、ああ、本当だ。そもそも、私が呪霊のいない世界を作ろうとしているのは、天元の必要無い世界になるからだしね」
「天元の必要無い世界?」
髙羽は九十九の言っていることがいまいち理解できず、不思議そうにする。
その様子を受けて、九十九は語った。
天元の役割。生きながらえている理由。自身が元星漿体であること。この連鎖を断ち切りたいこと。
「…なるほど」
「そんなワケで、私は今の研究をしているのさ」
髙羽は腕を組みながら、色々大変なんだなーという感想を得た。
そんななか、日車が九十九の説明について確認すべく、質問する。
「先程の説明にあったことを踏まえると、天元は上層部と同じ立場ではないということか?」
「ああ。基本的には現に干渉してこないよ」
結界術の行使や星漿体との同化を除いてだけどねと続ける九十九。
それを聞いて、日車はなにやら考えこんでいる。
その様子を尻目に、甚爾は席を立つと、日車達へと声をかけた。
「んじゃ、時雨に交渉が上手くいったことを報告してくるぞ」
「ん?…ああ、頼んだ」
一瞬反応が遅れるも、返答をする日車の言葉に、甚爾は後ろ手に手を振って応えた。
時雨への報告を終えて、甚爾が戻ってくると、部屋の中から声が聞こえてきた。
九十九達は、自身が戻ってきていることに気づいていない*1。
『んで、禪院はスゲー頼りになってですね!』
『へぇ、そうなのかい?』
甚爾は髙羽達の声に立ち止まった。
『えぇ、俺達も禪院に助けられたことは多々あります』
『そうそう!それにアイツ、見かけによらず超頭脳派なんだよな!』
明らかに自身のことを話しており、内容が褒めるモノであったため、最初は気分が良かったが、甚爾は段々と聞いていることが恥ずかしくなっていった。
『俺達は一般家庭出身なので、縛りや術式、呪術界について知らないことはまだまだ多いです。勿論、俺なりに調べて把握は済んでいますが、より深いところについては、禪院の知識に頼ってしまうことが多い』
呪術的に透明人間な甚爾は、この場から本当に消えてしまいたくなり始めた*2。
『それにアイツ、身体能力がバケモンかよ!ってくらい凄えのに、戦術とか組み立てるの超得意なんですよ!』
『戦術の組み立て方や発想については、甚爾から学ぶことが多いな。こればかりは積み重ねてきた経験が違い過ぎて、どうしてもアイツを頼りにしてしまう』
『前に、超絶隙の無いやつってどうやって倒せばいいんだろーなって話が出たとき、偽のゴールを作ってやればいいってやつは凄かったよな!』
『ああ、偽のゴールに油断した隙をつくというのは、俺達では出ない発想だった』
もう、流石に止めなくてはと甚爾は部屋へと乗り込む覚悟を決める。
バァーン!と襖を開け、ズカズカと日車達のいるスペースである部屋の奥へと歩を進める。
「お、禪院!いま、ちょうどオマエの話をしてたんだぜ!」
「へぇ、そうかよ。そんなことより、時雨に連絡してきたぜ。あと10分もすればこっちに着くってよ」
甚爾はポーカーフェイスに努めて、話題を変えるべく、時雨の話を挙げる。
「では、今日のところはここまでとしようか」
九十九が立ち上がり、解散の意を伝えると、甚爾の耳に顔を近づける。
“禪院くんも困ってしまうだろうしね”
小声で伝えられた九十九のその言葉により、嫌がる素振りを見せる甚爾。
「あっはっは、見た目によらず可愛いところもあるじゃないか!」
今後ともよろしく頼むよと続けながら、九十九は甚爾の肩を叩く。
その様子を見て、不思議そうにする日車と髙羽。
甚爾は2人のその反応に気づいてはいたが、無視することを決めた。
「それじゃ、今日はありがとう。実に有意義な話ができたよ」
「こちらこそ感謝する。今後、連絡してくる際は先程渡した番号にかけてきてくれ。俺達もそうしよう」
「次に会うときは、俺の渾身のネタを披露しよう!」
「…………」
「ははは、禪院くんには嫌われてしまったかな?」
そのようなやり取りをし、日車達は九十九と別れる。
その後、時雨の待っている場所まで進んでいる最中、唐突に日車が口を開いた。
「…さて、禪院」
「わあってるよ」
「行くか、天元の元へ」
今日見たら、お気に入り数が4000を越えていて、凄く驚きました。
本当にありがとうございます。
あと、評価って一言コメント機能があることを、ついさっき知って読者さんのコメントを読んだんですよ。
超嬉しくなりました。
感想もですけど、コメント来るとやる気が湧きますね。
ありがたい限りです。
これから忙しくなりそうなんですけど、今後も頑張りますね。
別に今回の話でストップするわけではないです。
だけど、一応先に言っておかないとなと思いまして。
急に投稿がストップするときがあるかもなんですが、暫くしたら必ず戻ってきますので、そのときは待ってて頂けると嬉しいです。