問題児3人、ただし最強   作:狐大総統

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皆さん、長らくお待たせしました。
久しぶりの投稿です。
ただ、残念なお知らせがひとつあります。
久しぶりの投稿なのに、今回の話も夜蛾先生は出てきません。
彼は胃痛でトイレに駆け込んでいるので。


『青い春とモノマネ芸人』

「行くか、天元の元へ」

 

「え!天元って人のとこに行くのか?」

 

日車による突然の発案に、髙羽は目を丸くした。

 

「ああ、俺の結界術の熟練には見た方が早い。それに、天元自体にも色々と確認を取りたいしな」

「天元の居場所は結界で隠されてるだろうが、匂いを追えば辿り着けるだろ。仮に結界でガチガチに守られてたとしても、お前らは無理でも俺なら全部スルーできるしな」

 

天元に会うメリットやそのための手段を、日車と甚爾は既に充分に話し合ったかのように髙羽へと説明する。

 

こういうとき、戦略や戦術を話し合わずともお互いに理解しあえる2人の動きは早い。

このあたりは、呪術師のなかでも特に頭の回転が早く、お互いの実力*1を深く信頼しあっている2人だからこそ可能なことだろう。

 

髙羽も咄嗟の機転や、頭の回転は早い方ではあるが、こと戦略や戦術を練ることにいたっては、どうしても今一歩劣ってしまうところがある。*2

     

 

「難点は呪詛師に認定されちまうかもってことだな。クソみてぇなやつだった場合、俺らが終わる」

「やべーじゃん!」

甚爾の発言に、思わず狼狽える髙羽。

そんな髙羽に対し、安心しろとばかりに甚爾は話を続けた。

 

「だが、その点は問題ねぇだろう。九十九曰く、天元と総監部は繋がりは薄いってことだったしな」

「それがブラフだった場合は?」

 

日車としても、九十九が嘘をついていたとは思えないが、万が一ということがある。

本来であれば、嘘をつかない縛りを結んでおくべきだっただろう。

───ここに、人間嘘発見器禪院甚爾がいなければの話だが。

 

「心音も体臭も視線も嘘を示してなかった。その可能性は、ほぼ無ぇだろうな」

 

禪院甚爾は天与呪縛によって底上げされた五感を持ってして、嘘を見破ることを可能としている。

 

無論、全ての嘘を100%見破れるワケではないが、甚爾の前で嘘をつくことは、そう簡単なことではない。

情報の信憑性はかなり高いだろう。

 

だが、無論リスクもある。

九十九は真実だと考えていても、裏では違うという場合だ。

この点については、甚爾も日車も理解していたが、これはとるべきリスクだと判断した。

 

「けどよ、天元って人の匂いはどうすんだ?嗅いだことも無いのに、どうやって辿るんだよ?」

髙羽の疑問は尤もだ。さすがの甚爾でも、嗅いだことの無い相手を辿るのは不可能である。だが、その点については甚爾にも考えがあった。

 

「千年間も生きてるやつだぞ。且つ不老ってわけじゃねぇなら、確実に異質な匂いだ。そういう匂いなら、見当はついてる」

というのも、甚爾は歳を重ねるごとに増す特徴的な匂い*3を一際強く発している存在について、心当たりがあった。 

 

これまでは、わざわざ自分から面倒ごとに首を突っ込むのも阿呆らしい*4という理由で、匂いのもとについて放置していた。だが、千年間生きてるとなると、寧ろあの匂いの発信者として妥当なところだろうと甚爾は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時雨と合流後、一行はすぐに車で高専へと移動した。到着後は匂いを頼りに先導する甚爾に日車達が付いていき、ある地点で甚爾が足を止めた。

目の前には、鉄製の古ぼけた扉があり、扉自体は高専内の寺社仏閣であればどこにでもあるようなものだ。

 

「この扉だな」

「ふむ、目の前にしても他の扉との違いが分からないな」

「たしかに特別な感じとか全然しねぇな。こんなの甚爾がいなかったら、ほぼ詰んでんじゃん。よっ!大統領!」

「ハッ、くだんねぇこと言ってないで、開けるぞ」

 

甚爾が扉を開くと、そこには高専の空き部屋ではなく、地下深くから樹木が生い茂る広大な空間となっていた。

碌に確認もせず、扉から一歩でも足を踏み出せば、真っ逆さまに落ちていたことだろう。

 

「うおっ!高っ!髙羽!」

「たしかに高いな。だが、この下なんだな?禪院」

「ああ、降りるぞ」

 

甚爾に続くかたちで、2人も下まで降りると、先に着いていた甚爾が、「音を出さずに隠れろ」というハンドサインを出していた。

指示に従い、甚爾の側で身を隠すと、扉から蔵までに続く道には天元の側近が2人いることが確認できた。

 

「門番か」

「おおかた、忌庫を守ってんだろ。さすがに、ここで大事にはしたくねぇな」

 

(…髙羽の術式で記憶を消すのは難しいだろうな。現状で、あの2人から記憶が消えて面白いと思うネタが思いつかん)

(かと言って、前みてぇな縛りを使った記憶消去もキツイだろ。カス共禪院家の連中と違って、脅しなんかは効かなさそうだ。)

 

2人がアイコンタクトだけで意思の疎通をとりながら、少し強引な手でいくしかないか?と諦め始めたとき、髙羽が口を開いた。

 

「…なんか、前に見た番組と似てんな」

「何がだ?」

「いや、潜入系の海外ドラマだったんだけどよ。コケて頭を打った門番が、スパイを同僚だと勘違いすんだよ。そのシュールさが、めちゃくちゃオモロくてさ。なんか似てんなーって」

 

それを聞いた日車と甚爾は、天啓を得たようにお互いにバッと顔を向け合うと、考えが同じことを確信し、行動へと起こした。

 

 

 

 

 

 

 

「おい日車、メチャクチャ面白そうなネタじゃねぇか?」

「ああ、俺も見たくなってしまった」

「気が合うな、俺もだぜ。だがな、日車。ドラマも見たいが、現実で起きたらもっと面白そうじゃねぇか?」

「ああ。面白さのあまり、ジャッジマンまで笑顔になってしまうだろうな」

「オイオイ、とんでもねぇ期待値じゃねえか。そりゃあ、見てみてぇもんだ。あー、どこかにそのネタを披露してくれる芸人はいねぇもんか

 

そんなくだらない茶番を繰り広げる2人に対し、髙羽は暫く黙りこんでいる。その様子に、やり過ぎたかと心配になる甚爾と日車。

 

(おい、さすがに最後のは明からさま過ぎたんじゃないか?)

(あん?どうしろってんだよ。だいたい、テメーこそ明からさまだっただろうが)

 

2人が視線だけで責任転嫁という名の喧嘩を繰り広げ始めていると、先程まで黙りこんでいた髙羽が、突如として意味ありげに笑いだした。

 

「…フフフフフ、そこまで前フリをされたんじゃあ、しょうがない!あのメチャクチャ面白いネタを再現するとしよう!」

 

 

2人は内心でガッツポーズを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

その後は簡単だった。

髙羽がネタを再現し、術式によって思考に影響を受けた門番が、3人を同僚と勘違いし、問題無く進むことができた。

唯一、作戦外だったことといえば、ネタが予想以上に面白かったことで、日車のツボに入ってしまったことくらいだろう。

 

 

「おい、まだ笑ってんのか?」

「す、すまない。笑いからは抜け出すことができたんだが、呼吸がなかなか整わなくてな」

 

過呼吸になりかけている日車を甚爾は呆れたような目で見る。

 

「たしかに超ウケたが、まさかそこまでツボに入るとは思わなかったぜ」

「いやぁ、良かった!あのネタの面白さを再現できたみたいだな!」

「…ふーっ、よし、もう大丈夫だ。」

 

やっとの思いで、地獄から抜け出す日車。

後日、『日車にとって高専に入学してから初めての危機はなんだったか』という、ある補助監督からの質問に対し、『髙羽が再現した芸』と答える日車が見られたことは余談である*5

 

「やっとかよ、進んでる最中に襲撃とかが来なくて助かったな」

「すまないな。だが、もし何かあっても、お前らならなんとかしてくれるだろう?」

 

少し口角を上げながら、日車は甚爾と髙羽へと問う。

日車の目は冗談で言っているものではなく、本気でそう確信している目だった。

そんな日車を見た2人は、一瞬目を見開くも、すぐに言葉を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まっかせっなさーい!」

「ったく、他力本願野郎が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満面の笑みを浮かべてサムズアップする髙羽に対し、甚爾はそっぽを向いて文句を垂れる。

日車の言葉を聞いた両者の反応は対照的だったが、そこには問題児三人の青い春が広がっていた。

 

 

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

話をしながら更に奥へ進むと、髙羽が大発見とばかりに日車達に声をかけた。

 

「お、日車!禪院!こっちにエレベーターみたいなのあるぜ!」

 

髙羽の言う通り、そこには地下へと降りるための昇降機があり、他に降りるための手段は無いようだった。

 

「随分古いようだが、途中でぶっ壊れたりしねぇだろうな?」

「まあ、仮に老朽化していても、俺達なら問題無いだろう。その時は飛び降りれば良い」

 

そう言いながら、昇降機へと乗り込む日車。

日車に続いて甚爾と髙羽も乗り込むと、昇降機を動かして地下へ降り始める。

 

「どうやら、壊れたり老朽化している箇所は無さそうだな」

 

ひと通り問題無く動く昇降機を見る日車の傍で、髙羽が甚爾へと声をかける。

 

「なあなあ、天元様へは、あとどんくらいで会えそうなんだ?」

「あー、匂いは強まってってるからな。割とすぐだろ」

 

そんなやりとりをしていると、最下層へと着いたようで、昇降機がとまった。

 

「随分と広いとこに出たな。おい、あの奥に天元がいるみてぇだぜ。どんなツラしてるか拝ませてもらおうじゃねぇか」

 

甚爾に続き、髙羽と日車も周囲を警戒しつつ、奥へと進んでいく。

だが、進んでみても目の前に広がるのはただの白い空間で、人の気配すらしなかった。

 

「ん?何もねぇぞ、禪院!」

 

(俺達が拒絶されているのか…?)

 

「問題ねぇよ。ついてこい、こっちだ」

 

現状に違和感を感じた髙羽と日車とはべつに、特になんの動揺もしていない甚爾に、2人は言われた通り付いていく。

 

 

──すると、いつ現れたのか、目の前にはひとりの老人が腕を組んで立っていた。

 

 

 

 

 

 

「ここまで来るとはな、禪院の子。異質な術式の子。そして、才能に恵まれた子よ」

 

 

 

 

 

*1
この場合は知力

*2
術式が戦略、戦術をロードローラーで轢き潰す無法術式なので。このため、戦術や戦略が効かない、または立てられない相手─術式が未知である九十九由紀等─に対する最終兵器だと甚爾と日車は認識しているし、なんなら髙羽がいるからこそ安心して戦術や戦略を立てられるなとすら考えている。

*3
加齢臭

*4
呪術界の場合は特に

*5
補助監督は、てっきり特級呪霊と答えられるものと思いこんでいた




そういえば、作者は戦闘描写と恋愛描写を書くのが苦手なんですよね。
いまいち、戦闘描写でフェイントがどうこう、袈裟斬りがどうこうっていうののイメージが湧かなくて。
あと、恋愛描写については、書いてみると下手なこともあって、気恥ずかしくなってきてしまい苦手です。

ワンパターンとなってしまっている演出も試行錯誤している最中ですし、まだまだ課題が多い作者ですが、温かく見守って頂けると嬉しいです。

あと、更新頻度についてですが、半年程度は遅くなり続けると思います。
読んで下さる方が多いのに、申し訳ないです。
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