問題児3人、ただし最強   作:狐大総統

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今回の話に、髙羽は出ません。
このとき、彼はお笑いグランプリに出場しているので。


『天才』

それは、甚爾と日車の手合わせの最中に起きたことだった。

 

日車は甚爾を領域の術式対象へすることに成功した。

ただ、建造物や無機物を壊す類の必中効果に成功したのであればともかく、裁判を行うために甚爾を術式対象とする行為は、本来であれば意味を持たない筈だった。

 

呪術的に建造物等と同等の扱いになる甚爾は、いうなれば犯罪行為に用いられた凶器に罪があるかどうかという話になるためだ。

だが、その甚爾に罪を科すという離れ業を日車はやってのけてしまった。

 

有罪ギルティ 没収コンフィスケイション

 

式神『ジャッジマン』によって、甚爾へペナルティ没収コンフィスケイション』が科せられる。

没収が行われたことで、甚爾が使用不可となったのは甚爾が手にしていた呪具ひとつだけだった。

 

このことは、日車にとっては誤算だった。甚爾は術式も呪力も持たないが、禪院甚爾にとって1番の武器とは天与呪縛によるフィジカルである。

 

一時的に使用不可になるものは、このフィジカルだろうと日車は予測していた。

この予測を立てていた者は日車だけでなく甚爾も同様であり、少々困惑した顔をしていた。

 

「あ?オマエの没収、俺の場合は呪具が適用されんのか」

「ああ、そのようだな。禪院の場合は術式を持たないため、別の何かが適用されるとは考えていたが…。この違いは検証してみるべきだな。戦闘の最中に、術式ではなく呪具が適用されたりすれば、目も当てられん」

 

髙羽にでも頼もうかと考えていると、ふと先ほどの戦闘で気になった点があることを思い出した。

 

「ところで、さっき禪院が空中移動のようなことをしていたが、何をやったんだ?」

 

空中移動を行うには術式、もしくは呪具が必要であると日車は考えていた。

だが、見ていた限りでは呪具の発動をしておらず、術式持ちではない甚爾が空中移動を可能にしている様を見て、自身も可能なのかについて問うた。

 

「お前の見間違いじゃねーか?」

 

日車の問いに対し、甚爾はニヤつきながら誤魔化そうとしていた。

だが、日車はそれを許さなかった。

 

「情報料は1000万でどうだ?」

「2000だな」

「分かった。それでいい」

 

交渉が成立すると、甚爾はいかに説明するかを考えながらも、頭の片隅では日車に対し、よく自身の動きを追えるものだと考えていた。

禪院家でも、甚爾の動きを追えるものなど皆無だ。

呪力は捉えられず、そこらの術師の動体視力では追うことが不可能なスピード。

その自身を目で追える日車に、軽くキッショと感じながらも説明を始めた。

 

 

「あー、俺の天与呪縛は知ってんだろ。呪霊は見えてねーが、他は全部見えてんだ。だから、呪霊が見える。ここまではいいか?」

「ああ」

「んで、空気にも密度とか温度の違いで面があるんだが、俺の目はそいつを捉えてる。その面を蹴ってやれば、空中移動ができるってわけだ」

 

甚爾の説明を聞くと、日車は思考の海へと沈む。

10秒程度、間をおくと日車は甚爾へと目を合わせた。

 

「理解できたか?」

「ああ、感謝する。情報代は今日中に振り込もう」

「頼んだぜ」

 

甚爾は日車の言葉に、大満足だった。

軽い情報だけで2000万。

なかなか、美味みのある取引だったなと考えていると、日車が上空へとジャンプした。

 

今聞いた空中移動の練習でも始めたのだろうか?だとすれば、馬鹿過ぎると甚爾は感じた。

空中移動には、甚爾のように目が良くなければならないというのに、ただの術師ができるワケがないと考えたためだ。

更にいえば、日車は一般家庭出身であり、術師になったのはつい最近。

そんな身でありながら、自身のスピードを捉えられることは賞賛に値するが、だからといってできるわけではない。

そのような思考の中、甚爾は上空へと目を向けた。

 

「…は?」

 

甚爾はあり得ないものを見た気分だった。

本来であれば、単に落ちてくるだけの日車を笑ってやるハズだった。

馬鹿じゃねぇの?と小馬鹿にしてやるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、日車が空中移動をマスターしているのかを甚爾は理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、こんな感じか」

 

日車は、甚爾のもとへと降りてくると冷静に自身の動きを分析していた。

 

「禪院のスピードと比べると、まだ劣るものがあるか。今後の強化術の鍛錬次第で上昇するとは思うが、強化術は最優先事項にしておくべきだな」

 

「……マジか」

 

甚爾は、日車の才能を舐めていたことを理解した。

日車の中で、最も光る原石は呪術師としての才能である。

甚爾は、その片鱗を見た気がした。

 

「禪院、お前のおかげで戦略の幅が広がりそうだ。今後も不明点があったときは頼む」

 

もちろん、その際に相応の謝礼は払うぞと言って、日車は校舎へと戻っていこうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side甚爾

 

 

「…天才か」

甚爾は日車を見て、囁くように呟いた。

現時点では、まだ成って・・・いないだろう。

だが、将来的には充分あり得る。 

 

おそらく、目の前にいる日車寛見は現代最強と成る術師だ。

否定したくなった。

ねじ伏せてみたくなった。

自身を否定した呪術界

その頂点となるであろう男を

 

「待てよ、何帰ろうとしてんだ」

 

だから、つい声をかけてしまった。

目の前の男、日車寛見を最強へと至らせるために。

 

甚爾の言葉に、日車は振り向くと、そこには格納庫呪霊から呪具を取り出そうとする甚爾がいた。

 

 

 

 

 

「勝負はこれからだろ」

 

 

 

 

 

日車は少し間を置いて思考すると、甚爾へと向かい合った。

 

 

 

「それもそうだな」

 

 

 

甚爾と日車の手合わせは夕刻まで続いた。

 




まだ、日車は最強ではないです。
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