問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
彼はストレスで胃に穴が開いてしまったので、病院にいます。
教室内に剣呑な空気が漂っていた。
いつもの甚爾と日車のイザコザ…ではなく、今回は珍しく甚爾と髙羽によって、その空気は発生していた。
「だから、しゃあねぇだろ。こればかりは生まれ持ったものだ」
「…」
「俺だって、悪いとは思ってんだ。ただ、いますぐどうこうできるもんでもねぇってことは、お前も分かるだろ?」
「髙羽、今回は禪院の言うことに一理ある。こいつが悪いところもあるが、法的にはなんの問題もない」
更に珍しく、甚爾も自身が悪いことを自覚していた。
だからこそ、日車も甚爾の擁護にまわったのだろう。
「…だからって」
「「ん?」」
「だからって、アレはあまりにも俺が不憫すぎるでしょうが!」
髙羽は半泣きになりながら叫んだ。
そもそも、なぜこのようなことになっているのかについて説明すると、先日のお笑いグランプリにおいて、髙羽がファイナリストとして選ばれたことで、軽い打ち上げを三人で行っていたのだ。
途中、甚爾が席を外していた際、店員に隣の席に案内された女子高生グループがいた。
彼女らは、髙羽の出ていたお笑いグランプリを見ていたらしく、彼らに声をかけてきた。
はじめは、会話を楽しんでいたのだ。髙羽も気分良く女子達を笑わせて、皆が幸せそうな顔をしていた。
このときばかりは、俺の時代キタ!とばかりに髙羽は有頂天になっていたのだ。
だが、同世代の女子達に褒められまくり天国が終わるのは早かった。
なぜならば、
天下無双のヒモ男『禪院甚爾』が参戦したのだから。
彼が登場したときは、まさに林檎が地に落ちるがごとく、女子達は甚爾へと寄っていった。
もう打ち上げとは名ばかりの『禪院甚爾によるモテまくり蹂躙ショー』を見ている気分だったと髙羽は後に語った。
「誰がヒモ男だ。人を無職みてぇに言いやがって」
甚爾は不満そうに口にした。
「だいたい、テメーはあんときのこと正直美味しいと思ってるクチだろーが。なんの不満があんだよ」
甚爾の言う通り、実際に髙羽はあのとき美味しいと感じてしまったことを告白している。
なんなら、次のお笑いのネタ作りに今回の経験を活かそうとしていた。
「ああ!いまでもアレは美味しいと感じてる!ありがとう!」
「すげぇ堂々と言ってんな」
「髙羽にとって、お笑いは命みたいなものだからな。俺達には理解できないものがあるのだろう」
2人の会話は気にもとめず、髙羽は「だが!」と続ける。
「俺は気づいてしまったんだ!このままいくと、ファンができたときに女性ファンは全て禪院に流れていってしまうじゃないかって!」
髙羽は心底悔しそうに、自身の予測を伝える。
「ふむ、それはあり得るな。禪院のトーク術やフィジカル、整った顔立ちは、ミーハーな女性にはウケが良いだろう。」
「はは、そんな褒めんなよ」
「まあ、逆に言えば真面目な女性は靡かない可能性が高いがな」
「日車、オマエ知らねぇな?そういう女こそ、落としやすいのさ」
余裕のある悪い顔で、甚爾は自信満々に言い切った。
この場に女子がいれば、一発でコロッと落ちていただろう。
「日車、コイツの言うとおり、真面目な女子まで禪院は掻っ攫い続けると思う。なんせ、コイツは特級ヒモ男だからな!」
「だから、ヒモ男じゃねえっつの。いったい何処にそんな証拠が……、悪い、ちょっと待ってくれ。電話だ」
話しの最中、唐突にかかってきた電話に出るべく、甚爾は会話を止めた。
「もしもし?…ああ、俺だ。…今日の夜か?空いてるが、今は少し手持ちが心許なくてな…いいのか?なんか悪ぃな。…あぁ、いつもありがとよ。じゃあ、今夜な…あぁ、楽しみにしてるぜ」
ひと通り電話先の相手と会話が終わったようで、甚爾は電話を切る。
「悪いな。んで、何の話をしてたっけな」
「…なぁ、禪院。さっきの相手はまさか女子?」
「ああ、そうだぜ。夜会わねぇか誘われてな」
「…お前、この前割と大きな額が収入として得られたって言ってなかった?」
「そうだったか?よく覚えてねぇなぁ」
「…相手の子に、今日使う金を出させんの?」
「気前よく出してくれるみたいでな。いやぁ、ありがたいぜ」
「めちゃくちゃ貢がせてんじゃねーか!これのどこがヒモじゃないっていうんだよ!」
「ったく、人聞きの悪いことを言いやがって。俺は貢がせてねーよ。勝手に向こうが貢いでくるってだけだろ」
「それをヒモというんじゃない!?」
髙羽は思わずツッコミを入れた。
「だいたい、さっきの会話も相手の子を誘導してただろ!なんなら、金に余裕が無いみたいなこといって騙してなかった!?」
髙羽は教室内を裁判所に作り変えると、検察官の服を来て指摘した。
「…ああ、アレな。いや、俺は本当に金欠だと思ってんだぜ?こればかりは考え方の違いってやつだな。特に呪術師にとっては、数千万がはした金になるときもある。だから、別に騙してはねぇわけだ」
そう言って、甚爾は弁護士の服装に変わった日車にも同意を得ようとする。
「…たしかに、罪には問われないな」
日車の言葉に、だろ?と言う甚爾。
さすがはインテリ筋肉というだけはあり、甚爾の頭の回転は早い。
「…クソォッ!!これが司法の限界か!!」
リアクション芸人のごとく、髙羽は地に膝をついて拳を打ちつける。
その様子を見て、日車は内心で甚爾の罪について指摘できるところが無くは無いことを考える。
それを口にしないのは、彼に与えられた立場が弁護士であったためというだけである。
「…フッフッフ、普通ならばここで俺は終わるだろう。だが、今回は秘策がある!」
髙羽の態度に、甚爾と日車は怪訝な顔をする。
「このまま、俺の未来のファンが全て同級生にバキュームカーの如く吸い取られるのであれば、ソイツを武器にしてしまえばいい!」
その発言を聞いた甚爾は、持ち前の頭の回転の早さにより、髙羽の言いたいことを理解した。
「…コンビ結成か!!」
「正っ解っ!!」
甚爾の指摘に、髙羽は意気揚々と話し始める。
「ただ、同級生に女性ファンを取られるんじゃなく、相方に女性ファンを全て取られる!これは面白いと思ったね!」
(ペラペラと…!!コイツ、ハイになってる…?)
髙羽の様子を見て、甚爾はいつもの彼と違うことを見抜く。
おそらく、甚爾に全ての女性ファンを取られる危機感が、彼に笑いの核心を掴ませたのだろう。
これは、甚爾だけでなく日車も気付いたようだ。
「さぁ、禪院!俺とコンビを組もう!」
髙羽は甚爾へ手を差し伸べた。
教室内は海辺に変わっており、いままさに日の出の直前だ。
ここから伝説が始まるような、そんな予感を思わせる場面だった。
この誘いに甚爾は、ニヒルな笑みを浮かべ、答えた。
「ごめんだね」
「だろうな」
「そ、そんな馬鹿なぁ〜!!」
教室には、髙羽の情けない叫び声が響き渡っていた。
髙羽は基本的にはボケですが、同級生と関わるときはツッコミの方が多いと思います。
なぜなら、天然でボケそうな日車、クズすぎてボケになってしまう甚爾がいるためです。
戦闘中とか夜蛾先生や補助監督の人に対しては、ボケだと思います。
ちなみに、はじめの甚爾が悪いと思ってたのは「Chu!格好良くて、ごーめーん」っていうやつです。
あの歌詞のやつ。要するに煽りです。