問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
夜蛾先生は体温が40℃へ急激に上昇中です。
ちょうど、日車が爆弾発言した瞬間にだそうです。
『禪院家が全員呪術が使えなくなったら』
「あ?」
日車によって、もたらされた発言は甚爾を困惑させた。
一方、甚爾に対して髙羽は違う反応だった。
「…フリってことか!たしかに面白い!」
しかも、ダジャレもかかってる!と髙羽のテンションは最高潮だ。
髙羽の頭の中では、へのへのもへじ顔の禪院家の人間が、呪術最高!術式最高!使えないやつは猿ゥ!と言って、いざ呪術を使うとなったときに、うんともすんとも言わない光景が浮かびあがっていた。
なんともシュールで、確実にウケるだろうという確信があった。
「俺の術式と今の髙羽ならば可能だ。補助監督の方、申し訳ないが寄り道をして貰います。行き先は禪院家でお願いします」
日車と甚爾は、髙羽の術式についてある程度は勘づいていた。
無論、本人が自身の術式について、何も知らないことも含めて。
だからこそ、先程はあえて笑えると日車は発言したのであろうことを、甚爾は理解した。
「待て待て、オマエら本気か?んなことすれば、どうなるか分かって言ってんのか?」
ほぼ、確実にこの2人は呪詛師認定を受けるだろう。
その程度のことを髙羽はともかく、日車が理解できていないとは甚爾は思えなかった。
「なんだ?禪院お前、俺達のことを心配してくれているのか?」
珍しいものを見たというような顔で日車は甚爾のことを見る。
「強さの点でいえば、禪院が数時間ほどで潰せる家なのだろう?禪院と同等の強さを持つ俺であれば、充分可能とみている」
「…はぁ、呪術界から確実に呪詛師認定を受けるぞ」
「刺客を差し向けられたところで、特に問題はないな。この一ヶ月程、呪術界について調べたが、オマエら以外に負けるとは思えん」
日車は右眉を上げながら自身の調査を思い返したうえで、そう断言した。
その言葉に、甚爾は切り札とばかりに2人の将来について指摘することを決める。
「…弁護士と芸人になれなくなるぞ」
「…それは困るな。呪術総監も潰すとしよう。俺達がトップになれば、全て解決だ」
一瞬、日車は目を見開いたものの、すぐに対処法を打ち出した。
名案だとばかりに、日車はフフ…と笑っている。
甚爾は頭が痛くなってきていた。
これが冗談ならば鼻で笑ってやるのだが、日車の心音、体臭、視線が全て本気であることを示していた。
甚爾が苦悩していると、前で運転していた補助監督の身体が震え出した。
「…ブハッ、イーヒッヒッヒッ、も、もう耐えられねぇ!超ウケる!」
笑い過ぎて、咳こんでいる補助監督によって、車内の空気が若干変化する。
「ハァ、ハァ、ふぅ…いやぁ、オマエら面白れーな!諦めろ、禪院!オマエの負けだ」
「…時雨」
甚爾の様子に、知り合いかと尋ねる日車。
「ああ、俺がこの前の任務中に助けた元刑事だ。結構、使えそうだったんでな。俺の専属補助監督としてスカウトした」
「孔時雨だ、改めてよろしくな。情報収集、裏工作なんかが得意分野だ。オマエらの力になれると思うぜ」
時雨は軽く自己紹介を済ませると、さきほどの話について自身の見解を述べる。
「んで、禪院家だったか?行くのは構わねーが、今すぐってのはあまりオススメしねーな」
その言葉に対し、日車が疑問を抱いたことを感じとり、時雨は説明を続ける。
「オマエらがつえーのは、禪院から聞いて知ってる。呪術界をひっくり返すのに三日とかからねーだろうよ」
だが、今は国内に九十九由基がいるぞと時雨は続ける。
「…現代における世界にただ1人の特級呪術師だったか」
日車もその名前を知らないわけではない。
呪術界について調べていくうちに、九十九由基には行き着いていた。
「ああ。出自不明、術式不明、目的不明で海外をフラついてろくに任務を受けない呪術師さ。こういう不明だらけの相手は、確実に目的を果たすなら避けるのが無難だ」
時雨の言うことは筋が通っていた。
不明な点が多いことは、思わぬイレギュラーを生む。
少なくとも、今はやめておいた方が良いだろう。
「まあ、そうだな。そういうわけだ、諦めろ」
甚爾も時雨の言葉に賛成していたが、日車は諦めていなかった。
「…時雨さん、裏工作が得意とのことですが、どの程度ですか?」
「ん?」
いまいち、要領を得ない質問に時雨は困惑したが、すぐに日車の口から具体的な内容が述べられた。
「九十九由基に会うことは可能ですか?」
「…ふむ、不可能ではないぞ。期間にもよるが」
思いもよらない質問に時雨は驚くが、少し間を置いて日車へ返答する。
「では、コンタクトを取って頂きたい。九十九特級呪術師の目的次第で、こちら側に引き入れることが可能かどうかを見定めたい」
「おい、マジで呪術界の転覆を狙ってんのか?」
甚爾は日車の本気度を確認すべく、本人へと問う。
「俺は現在の呪術界は良くないものだと考えている。呪術師には古い因習が多いことを差し引いても、高い実力を持つものを冷遇するというのは考え方としておかしいだろう。完全な実力主義であれば、甚爾のようなものも認められるべきだ」
日車は自身がおかしいと感じたことを放っておけない性分であることを自覚している。
だが、今回はそれだけではなかった。
「…あとは私情ではあるが、単純に腹が立ったからだな」
「あ!俺もムカついた!」
「はぁ?お前らが腹立つ理由はねぇだろ」
甚爾が反論をした瞬間、頭にタライが落ちてきた。
思わず甚爾は髙羽を殴ったが、ぬるっと滑るだけだった。
「おい、車内は狭いんだ。あまり暴れるな」
「今のはコイツが悪いだろ」
だいたい、ろくに高さの無い車内でタライが落ちてくる自体あり得ないだろと甚爾は内心でツッコミをする。
「禪院、スーパードライすぎるぜ。アサヒも驚き桃の木サンゴの木ってもんだ」
「髙羽、それを言うなら山椒の木だろう」
「や、これは失敬!」
なぜか、自然に漫才となっている日車と髙羽。
最近、日車はドリフ等を見てお笑いの研究をしているのだ。
あと、少しで六法全書程度のぶ厚さを持つ教科書ができあがる。完成したら、日車は髙羽へプレゼントする予定だ。
そのようなことを知らない甚爾は、日車が漫才をできていることにドン引きする。
まさか、お笑いまで天才とは言わないよなという意味を込めて。
そんなことをしていると、脱線してしまった話を軌道修正すべく、時雨が声をかけてきた。
「ところで日車、コンタクトは取ってやるが、仮に決裂ないし方向性の違いで戦闘になった場合はどうする気だ?逃亡できる見込みはあるのか?」
「ええ。その場合、九十九には髙羽を当てればいいと考えています。髙羽は攻撃が当たったとしても無かったことにできる。これは、領域内の必中効果も同様です」
日車が自身で検証した結果を伝えると、時雨は動揺する。
「なんだ、そりゃ!?無敵じゃねーか!」
どういうことだ、禪院!と続ける時雨。
領域について、時雨は甚爾から聞かされていなかったのである。
「当たり前だろうが。なんでもかんでもペラペラ喋るワケねーだろ」
「それはそうだが…。そんなら、今から行くかぁ」
「あ?どこにだよ」
しゃあねぇとばかりに言う時雨に対し、甚爾は問いかける。
「どこにって決まってんだろ
禪院家だよ
」
「…はぁ!?」
「何が、はぁ!?だ。髙羽がいるなら九十九に関しては問題無いだろ。問題が無いなら、俺は地獄にだって付き合うぜ」
ニヤッと笑う時雨に、日車もニヒルに笑う。
「ただ、日車。今回は禪院家全員に呪術を使えなくするってのはナシだ。この影響で九十九に会えなくなる可能性が浮上するのは面倒だろ?」
時雨の言葉に日車は頷くと、今後の流れを決めるべく発言する。
「それなら方針は決まったな。禪院家に着き次第、禪院はとりあえず何人か攫ってこい。俺と髙羽で呪力か術式を一時的に没収しよう。髙羽なら記憶も消せるはずだ」
俺は縛りで消すがなと日車は続ける。
「なんで、俺が…、あぁ、そういうことか」
甚爾は日車の意図にすぐに気づいた。
残穢を残さないよう立ち去るには、呪力の無い甚爾が連れてきて術式を施した方が良いと日車は考えたのだと。
「ったく、人使い荒過ぎんだろ」
そう言いながらも、甚爾は初めて感じる居心地の良さに、悪くないと思ってしまっていたことは秘密だ。
後日、結果的に禪院家の約三割の呪術師が一時的な呪術使用不可に陥ってしまったことは余談である。
感想たくさんあって嬉しいです。
モチベが上がって、一瞬で書けました。
インスピレーションも凄く湧きました。
今はただ、読者様に感謝を。