問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
彼は、高熱のあまり意識を失って、救急搬送されています。
禪院扇は呪霊から追われ、ただひたすらに逃げていた。
扇自身は、なぜこのような目に遭っているのかも、なぜこの場にいるのかも、何も思い出せなかった。
『術式解放 焦眉之赳』
「くぅっ!何故だ!何故使えない!」
何度も試しているにも関わらず、自身の術式を一度も発動できない。
ズルッ、ドテッ
呪力操作が上手くいかず、扇は転んでしまった。
扇が分かっていることといえば、このように自身の術式が使えず、長年の勘が鈍り、基礎的な呪力操作もグダグダとなってしまっていることである。
転んだ扇を見て、呪霊は楽しげにゲラゲラと笑う。
「呪霊の分際で、私を笑ったというのか…!?」
扇は呪霊の態度を見て、怒りのあまり歯軋りをする。
だが、呪霊にはそんなことは関係ない。
扇を痛ぶるべく、扇へと近寄る。
「く、来るな!貴様ら、少しでも近寄れば容赦せんぞ!」
扇はなけなしのプライドで呪霊を威嚇するが、呪霊はただただ笑いのタネが増えるだけだった。
…そんな扇を笑っているのは、呪霊だけではなかった。
「ギャハハハハハッ!ヒーッヒーッ!」
あー、腹痛ぇっ!と続ける甚爾。
甚爾は天与呪縛によるフィジカルギフテッドにも関わらず、笑い過ぎて腹筋を痛めていた。
「フフ…。こういうのも悪くはないな」
悪いゲームマスターをやっている気分だと続ける日車。
日車は以前見たデスゲーム系映画に出てきた支配人を思い出していた。
「やっぱ、めちゃくちゃ面白いな!」
今回はシュールさ以外にも笑いの要素がたくさんだ!と続ける髙羽。
髙羽はお笑い番組を見ている感覚で、扇の痴態からもリアクション芸を学びとろうとしていた。
扇の痴態は、その場でジーッという音を伴ってカメラが捉えており、甚爾達はその様子を観察していたのである。
「にしても、この呪具すげー使えんな。時雨から渡されたときはどんなもんかと疑ったが、こりゃいいぜ」
「ああ。自動追尾機能にステルス機能、指定した画面があればどんな画面でも見ることが可能というのは破格だな」
カメラ自体は時雨によって用意された呪具であり、その性能は甚爾と日車が驚くほどのものだった。
使い方次第では、戦闘にも充分使えるレベルだろう。
「…なぁ、日車。今後もコレやらねーか?」
扇を観察している最中、唐突に甚爾からそのような発言が飛び出した。
これに対し、日車は訝しげに返答する。
「お前、始めは猛反対だっただろう」
「そうだったか?まあ、そんなことはもういいじゃねぇか」
ニヤつきながら、日車へとねだる甚爾。
この態度に、日車は甚爾の持つヒモの才覚を理解し、ため息を吐きながら甚爾へと返答した。
「はぁ、禪院。お前というやつはまったく…。
月1開催にするか
」
任務もあるしなと続ける日車。
「さすが!話が分かるぜ!」
日車の返答を聞き、やりぃっ!とばかりに指を鳴らす甚爾。
「そしたら、お前はそろそろあの男を回収してこい。ここに連れてきたときと同じように、徹底的に脅したうえで俺達に関わる記憶を忘れる縛りを結ばさせる」
「おう!」
甚爾は日車に従うと、周囲に花でも咲いているのではないかというほど幸せそうな空気を出して、扇を回収しに行った。
甚爾が自分達のいる建物から出たことを確認すると、日車は髙羽へ声をかけた。
「これでオマエの懸念のひとつ、少しは解消されたんじゃないか?」
「ああ!オマエのおかげだ日車!ありがとな!」
今回、日車が禪院家の人間に呪術使用不可とすべく動いた理由には、自身が許せなかったこともあるが、髙羽も大きく関係していた。
髙羽は以前から甚爾が抱えている闇について、詳細は分からずとも察してはいた。
だからこそ、少しでも拭えないかと日々甚爾を笑わせるべく、お笑いには今まで以上に全力で取り組んでいたのだ。
結果として、お笑いグランプリファイナリストに残る等はできたが、甚爾の闇を拭うには全く足りていないことに髙羽は気付いていた。
だからこそ、髙羽は自分ひとりの力だけではなく、日車へも協力を得るべく声をかけていた。
そのとき、理由などは伏せたうえで甚爾を胃袋吐くまで笑わせたいことのみを伝えたのだが、なぜか日車は理由まで把握しており、今回のような動きをしてくれたのである。
「にしても、なんで俺の目的まで理解してたんだ?」
俺、理由までは言ってなかったはずだよな?と続ける髙羽。
「…俺も禪院の抱えているものについては、詳細は分からずとも察してはいた。そんなときに髙羽から、禪院を笑わせる協力をしてくれと言われれば、いつものお笑いとは別の意図があることくらい察するさ」
「なるほどな。さすが未来の弁護士センセーだぜ」
もし、俺が冤罪で捕まったときは弁護頼んます!と高羽は90度のお辞儀を魅せる。
「ああ、冤罪だったらな」
「…冤罪じゃなかったら??」
「有罪、死刑」
「イヤー!俺の命軽過ぎぃ!!」
そんな漫才のようなことをしていると、甚爾が扇を連れ帰ってきた。
「おーっす、回収してきたぜ」
「貴様、離さんか!猿の分際で、私に触れるとは何事か!」
甚爾に抱えられている扇は、ジタバタと暴れているが、甚爾の腕はびくともしない。
そんなことには目もくれず、日車は扇の前へと立つ。
「さて、禪院扇といったか。どちらか好きな方を選ぶといい。1、このまま術式が使えず、呪力操作もままならないまま呪霊の目の前へ運ばれる。2、今回、俺達がオマエに関わったことを忘れること。また、今回の出来事を他者へ吹聴しないこと。代わりに、オマエは五体満足で禪院家へ帰れるうえ、術式も使用可能に戻っている」
唐突に始まった日車の説明により、扇は日車達によって自身が今の状況に置かれていることを理解した。
「き、貴様らのせいで私は術式を使えず、記憶も無いまま呪霊の前におったのか!許さんぞ!必ずや貴様ら全員殺してやる!」
扇は日車へ喚き立てるが、日車はどこ吹く風とばかりに再度扇へと質問する。
「いいか、禪院扇。俺としてはどちらでもいいんだ。この会話と似たようなものを、既にオマエとはやっているしな。ただ、次に目の前へ連れていくのは今回の呪霊ではなく、オマエら禪院家が俺達へまわした任務内容の特級呪霊の目の前だ。少しは頭を使って考えた方がいいぞ」
あまり、俺は気が長い方ではないのでなと言うと同時に、日車は呪力によって扇を威圧する。
その後、日車を恐れた扇はすんなりと縛りを結ぶことを決めた。
縛りを結んだ後、日車によって意識を飛ばされ、時雨の運転する車へと運び込まれると、禪院家の近くに着き次第、甚爾が扇の私室へと運び込んだ。
「よし、そんじゃそろそろ任務に戻るぞ。オマエらが任務に取り掛からないと、俺までお小言を言われちまうんでな」
甚爾が戻ってくると、時雨は口角を上げながら、甚爾達三人へと声をかける。
もともと、禪院家の人間一時呪術使用不可作戦は扇をラストとして、任務へ戻る運びになっていたのである。
「しゃあねぇなぁ。面倒ではあるが、任務前に面白れーモンも見れたことだしな」
「時雨さん、今回はご協力ありがとうございました。任務については、早急に完了させるのでご安心下さい」
「アリが10!特級呪霊祓除任務、頑張っちゃうぜい!」
各々が時雨に返事をして、車内は陽気な雰囲気に包まれていた。
余談とはなるが、任務内容の特級呪霊2体は三人が目の前に現れた瞬間、手も足も出ずに瞬殺された。
日間ランキングに乗ってました…!
あ、ありがとうございます…!
え、ていうか日間ランキング3位…!?
お気に入り者数2000人突破してるし、高評価ばかり頂いて、本当にありがたい限りです…!
感想もたくさん来てて、凄く嬉しいです!