問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
ですが、そろそろ退院できるみたいです。
夜道、少女が1人で歩いているところ、杖を持ったお婆さんがコケているところを見つけた。
「お婆さん、大丈夫ですか?」
「どうも、すみませんねぇ。最近、どうも腰が悪いみたいで…」
お婆さん曰く、孫に顔を見せに行った帰りらしく、その途中で躓いてしまったようだ。
「どこにお住まいなんですか?」
私も付き添いますよ!と続ける少女。
「申し訳ないねぇ。そこの公園を抜けて、すぐ側のところさ」
「分かりました!」
そう言って、夜の公園を抜けていく途中で、お婆さんが唐突に立ち止まった。
「あれ?お婆さん?大丈夫ですか?」
疲れちゃいました?と続けようとした少女は声を出すことができなかった。
少女の白く細い首には、極太の針が刺さっていた。
「…え?」
「ふぅ、肉体を降ろすためとはいえ、この作業は毎度面倒なものじゃの」
「な、なんで?」
少女は理解ができない様子だった。
「オマエの父親を殺すためには、娘の肉体を使った方がやりやすいからの。これからは夜道で安易に人助けなどするものではないぞ」
まあ、死んでしもうたら意味はないがのと続けるお婆さん。
お婆さんの正体は呪詛師『オガミ婆』であり、自身の目的のために少女を殺すべく、動いていたのだ。
「さて、次はオマエの父親のところへ向かうとするかの」
そう言って、オガミ婆は公園を出ようとする。
そのとき、
「…なーんちゃって!ドッキリ大成功ー!」
「む?」
お婆さんが後ろを振り向くと、先ほどまで少女だったものは、サイズが合わずにぴちぴちの制服に身を包んだ男に変わっていた。
「…なんじゃ、お主は?」
同業者か?と疑うオガミ婆。
「俺は髙羽史彦!しがないお笑い芸人志望さ!今日はリアクション芸人ではなく、仕掛け人として、笑いを届けるべく参加したぜ!」
オガミ婆は、髙羽の言っていることを理解はできなかったが、少なくとも同業の呪詛師ではないと判断した。
「…お主のことは確実に殺したはず。仮に儂と同じく降霊術の術式を持っていたとしても、肉体に傷がつけばお主も死んでおるはずじゃ」
もしや、反転術式か…?ともオガミ婆は訝しむ。
そんなオガミ婆に髙羽は指を立てて否定した。
「チッチッチッ、俺は暴力肯定派の芸人だが、バラエティにおいて赤は御法度なんだぜ?」
髙羽はニヤッと笑うと、首に刺さっていた針をキュポン!という音と共に取り外した。
取り外した針の先端は何故か尖っておらず、代わりに吸盤のようなカタチに変化していた。
先ほどと変わらず、髙羽については分からないことだらけだったが、オガミ婆の中でひとつハッキリしたことはある。
(…コヤツ、術師か。少々、厄介そうな相手じゃの。仕方あるまい、コヤツの相手は孫にさせるとするか)
オガミ婆は、本来殺す予定だった少女の死体を処理するため、孫の1人を近くに配置させていた。
「孫、すぐに来てコヤツの相手をせい」
オガミ婆は、自身が逃亡するための時間稼ぎに使うべく、孫を呼ぶが一向に来る気配がない。
「…孫?」
オガミ婆は違和感を感じ、再度孫を呼ぶ。
だが、返ってきた声は孫ではなく、聞いたことのない男の声だった。
「あー、オマエの言ってる孫とやらは来ないぜ」
俺が向こうで殺しちまったからなと続けながら、公園の外から男が近寄ってくる。
シルエットから男がボンタンを履いていることは分かるが、オガミ婆の位置からはまだ顔等を窺うことができない。
「なんじゃと…?」
先ほどの発言をした男が街灯に照らされた瞬間、オガミ婆は驚愕した。
「き、貴様!禪院甚爾か!?」
「ああ、そうだが…。なんだババァ、俺のこと知ってんのか」
甚爾はニヤつきながらオガミ婆へと問う。
「フン、呪詛師でお主を知らんものはモグリじゃよ。術師のなかでも、ここ二ヶ月ほどでかなりの呪詛師を討伐しておるようじゃの。呪詛師殺しよ」
オガミ婆は憎々しげに返答するが、その内容に真っ先に反応したのは、甚爾ではなく髙羽だった。
「うお!禪院カッケーな!」
俺もなんか異名とか付かないかな〜と髙羽は想像を膨らませている。
最近、髙羽は異名がカッコいいキャラがたくさん出てくる漫画を読んでいたため、そういうのに憧れていた。
「それにしても、儂らの相手などをする暇はあるのか術師よ。年々活発になる呪霊の相手で、お主らは手一杯のはずじゃろう?」
「はは、心配しなくても片手間でオマエらを討伐できる程度には余裕あるぜ」
オガミ婆の言葉に、甚爾はなんのことやらとばかりに返答する。
その様子を見て、オガミ婆は内心で焦り出す。
本来ならば、呪霊で手一杯な術師を避けて上手く立ち回り、呪詛師を謳歌し続ける目論見だった。
だが、甚爾の様子に本当に術師は手一杯などではないことを理解したオガミ婆は、冷や汗を流しながら現状をいかに切り抜けるかを考え始めた。
だが、オガミ婆の目の前にいるものはそれを許さない。
何故なら、そのものは天与の暴君『禪院甚爾』であるのだから。
気付いたときには、オガミ婆と数メートルはあった筈の距離は一瞬で縮まり、甚爾は目の前に立っていた。
「ヒェッ!」
「そういや、さっきテメェ、あいつにアドバイスみてぇなことしてたな」
じゃあ、俺からもアドバイスだと続ける甚爾。
「呪術を使って好き勝手して、呪詛師としても随分恵まれてきたようだな。…だがよ、
恵まれたオマエが呪術も使えねぇ俺みたいな猿に負けたってこと、長生きしたきゃ忘れんな
」
甚爾はそう言い切ると、オガミ婆の首元に打撃を打ち込み、意識を失わせて拘束した。
拘束したオガミ婆は髙羽へと預け、甚爾は任務が終わったことを日車へと連絡すべく電話をかけた。
「よう、日車か?こっちは終わったぜ」
『禪院か。こちらも討伐完了だ。珍しい術式ではあったが、終わってみればあっけなかったな』
「へぇ、どんな術式だったんだ?」
日車の言う珍しい術式というものに興味を引かれ、甚爾は日車へと問いかける。
『おそらく、あべこべだな。強い攻撃ほど弱く、弱い攻撃ほど強く術者に作用するものだ』
「ん?それって術式効果はどうなるんだ?オマエの没収を喰らったら、術式を得るってことになんのか?」
『さぁな。俺はそもそも術式を使わずに倒したから不明だ。まあ、少なくとも髙羽のような無敵の術式とはいえないだろう』
実際に日車に敗北しているため、それはそうだろうと思う甚爾。
『例えば、禪院が游雲を扱ったときのような規格外の高火力に、こいつの術式は無力だろうな。規格外の高火力に合わせた場合、ただの空気抵抗で大ダメージを喰らってしまう。コレでは元も子もない』
日車の説明を受け、甚爾は中途半端な術式だなという感想を得た。
仮に日車の予想通りだとすれば、その呪詛師は術式開示なども意味をなさないことになる。
本当に使い勝手の悪い術式だと、軽く呪詛師を憐れに思っていると、日車が思い出したとばかりに話を変えてきた。
『そういえば、禪院は夜蛾先生のお見舞いには行ったか?』
「見舞い?行ってねぇが…ヤガセンそんなに悪かったのかよ?」
『ああ、かなり危険な状態だったらしい。このことで、夜蛾先生は【呪術師に悔いのない死などない】ということを実感したらしいぞ』
お前もいま一度心に刻んでおけと言われたと日車は続ける。
「へぇ、…そんなら、早速悔いを減らすために今日は俺の部屋で上映会でもするか。日車、コーラとポテチ準備しとけよ」
甚爾はニヤつきながら日車へ上映会の提案をした。
甚爾が胃の中に仕舞っている武器庫呪霊の中には、前回禪院家の人間の痴態を撮ったカメラ型呪具が収納されている。
この呪具は録画機能も搭載しており、いつでも『8時だョ!禪院集合』*1を鑑賞することができる。
また、常に武器庫呪霊の中に収納されているため、流出等の危険性もない。
『仕方ないな。付き合ってやるとするか』
「あ!俺ピザも食べたい!」
話を聞いていた髙羽が、ここぞとばかりに要望を出してきた。
「ああ、いいんじゃねぇか?今日はパーッと楽しもうぜ」
そう言って、甚爾が日車との電話を切ろうとしたその時、髙羽がなにか話を続けようとした。
甚爾はこの瞬間、何か妙なものを感じた。
【違和感】
「そういや、日車!」
【違和感】
『なんだ?』
【いや、これでいい。全て、問題なし。】
甚爾はそう結論付けた。
「さっき、禪院がまた自分のこと猿って言ってたぞ!」
「バッ、テメ!」
髙羽の発言に、やべっと焦る甚爾。
『…禪院、それは本当か?』
「いや、ちげーんだって。アレは呪詛師を煽るために仕方なくだな…」
電話越しでも分かる日車からの圧に、甚爾はしどろもどろになる。
『上映会の前に少し話をするぞ』
日車はそう言うと、電話をブツリと切った。
既に、自身の携帯電話はプー、プー、という音を鳴らし、向こうとの接続が切れたことを伝えている。
「くっ、テメー、日車にチクってんじゃねーよ」
恨めし気に髙羽へと甚爾は目をやる。
「俺は禪院が自分のことを自虐するような発言をしたら報告するよう日車と約束してるからな!」
何も悪いことはしていないとばかりに断言する髙羽に対し、高専に戻ったときのことを考え、甚爾は憂鬱そうにしていた。
「はぁ、すぐに説教が終わるといいんだがなぁ」
夕刻、寮で正座をさせられる甚爾と、その甚爾を説教する日車が見られた。
日車から100枚の反省文も追加され、甚爾は絶望した。
作者、日間ランキングに2位になってハイになっております。
なので、私程度がこのセリフを使わせていただくことをお許しください。
二ヶ月で掴んだ 二次小説の核心!!
はい、すみませんでした。
全ては読者様方のおかげです。
高評価、たくさんの感想、凄く嬉しいです。
今後も頑張ります。