問題児3人、ただし最強 作:狐大総統
やっと退院できたので。
禪院甚爾は呪術界の名門である御三家のひとつ、禪院家出身でありながら呪力を一切持たない。
代わりに、天与呪縛として並外れた身体能力を持っている。
更に五感も強化されており、これにより甚爾は呪力が0にも関わらず、呪霊を認識することを可能にしている。
また、その優れた五感は、人間の臭跡や足跡の痕跡を探ることもできる。
甚爾は禪院家にいた頃、このことで周囲から冷遇されていた。
直接会った者達には、折檻の命令や罵詈雑言の嵐を受けることは勿論、直接会わずとも、甚爾のその並外れた聴力は常に自身の陰口を捉えていた。
『あの猿が…』
『術式どころか呪力を一切持たないんですって』
『非術師以下じゃない』
『なんで生きてるのかしら』
『オマエは、あの猿のようになるのではないぞ』
聞きたくなくても聞こえてくる『声』に、甚爾は次第に自身のことを『人』とは思わず、『猿』と認識するようになっていった。
甚爾はこの聴力を嫌悪すらしていたこともあった。
嫌でも、聞きたくもない内容が耳に入ってきてしまうのだから。
『んで、禪院はスゲー頼りになってですね!』
『へぇ、そうなのかい?』
『えぇ、俺達も禪院に助けられたことは多々あります』
『そうそう!それにアイツ、見かけによらず超頭脳派なんだよな!』
そう、嫌でも聞こえてきてしまうのだ。
日車と髙羽の褒め言葉が。
このとき、甚爾は褒められ過ぎたら人は死ぬのかもしれないことを初めて知った。
なぜ、このようなことになっているのかについては、数時間程前へと遡る。
◇◇
Prr...,Prr...
ホームルーム前、髙羽が甚爾の電話が鳴っていることに気付いた。
「禪院!オマエの電話鳴ってないか?」
「ん?…時雨からか」
甚爾は面倒そうにしながらも電話に出た。
「おう、時雨か。朝っぱらからなんの用だ?」
『よう、禪院。今、ホームルーム前だよな?日車達も一緒か?』
「ああ、2人ともいるぜ」
『それなら良かった。この前言ってた九十九とのコンタクトが取れてな。もし、可能なら今からでも会えるがどうする?』
音漏れによって、時雨の声が聞こえていたようで日車は即答した。
「会うぞ」
「今からか?」
「ああ、次はいつ会えるかも分からないしな。機会は逃すべきじゃない」
「そんじゃ、おめかししなきゃな!」
そう言って、高羽はアフロを身につけた。
甚爾と日車はそのボケにツッコミは入れず、完全にスルーした。
『んで、禪院。日車達はなんて言ってる?』
「会うってよ。高専の前に車停めとけ。今から向かう」
『そうくると思ってな、もう着いてるよ』
時雨の返事に、相変わらず準備の良いやつめと考えながら甚爾は日車達に声をかけた。
「もう高専の前に着いてるってよ。さっさと行くぞ」
「了解だ」
「よし、分かった!アフロがお洒落じゃないなら、付け髭ならどうだ!」
そんなやり取りをしながら、甚爾達は教室を後にした。
暫くして、夜蛾が教室に入ると、そこには3人の机の上に「欠席します」との書き置きが残されているだけだった*1。
夜蛾は胃がキリキリと痛むのを感じた。
時雨の運転する車で移動中、髙羽が時雨へと声をかけた。
「九十九って人は、何処で待ってるんすか?」
「天元の結界を抜けたすぐ近くの展望台だ。さすがに、ヤバい話をするってのに結界内で話すわけにもいかないからな」
時雨の説明に、髙羽は天元??と頭上に?マークを文字通り浮かべている。
その様子を見て、甚爾が答える。
「高専の地下に引きこもってる呪術師だ。ソイツが日本国内のあらゆる結界の強化・行使を行ってんのさ」
なんでも、不死の術式で千年前から生きてるらしいぜ?と続ける甚爾に、驚く髙羽。
「千年!?不死!?マジかよ!それって、不思議!!」
髙羽がクソみたいなギャグを披露したことで、車内が静まりかえる。
「…クソ客がぁああああ!!!!」
「オマエのギャグがクソだったせいだろ」
髙羽が憤ると、すかさず甚爾がツッコミを入れた。
「最近、ネタが単調になってきているな。前に渡した教科書は全ページ読んだのか?」
日車の言葉に、石のように固まる髙羽。
冷や汗を出し、目は競泳選手もびっくりの泳ぎを披露していた。
「…読めてないです」
「教科書?」
「ああ、俺が作ったお笑いの教科書だ。なかなかの力作だぞ」
疑問に思った甚爾へ、日車は返答しながらフフ…と笑う。
日車曰く、ドリフ等を見て研究した内容を纏めたものらしく、本人は珍しく得意げにしていた。
「いや、聞いてくれよ禪院。最初はめちゃくちゃ嬉しかったんだよ!けどな?その教科書ってのが六法全書か!ってくらい分厚いうえに文字が細かいんだわ」
たぶん、アレで人くらい殺せるぜ?と続ける髙羽。
「…日車、今の話マジか?」
「マジだな。だが、そんなに読みにくいか?」
日車は不思議そうにしているが、お笑いに対してバカみたいに真面目な髙羽が読むのを放棄しかけているというのはよっぽどである。
恐らく、論文のような書き方をしているのだろうとあたりを付けた甚爾は内心で大笑いしていた。
バレないよう笑いを堪えるべく、唇を噛んで血が出たほどである。
そんなやり取りをしていると、日車が話の腰が折れたことに気付き、会話を軌道修正する。
「話を戻そう。天元がいなければ、防護や任務の消化すらままならない。実際、結界を見たところ、今の俺では天元の結界の七割のクオリティが限界だろうな」
日車の言葉に、甚爾は内心で千年前から結界専門の呪術師としてやってる相手に、二ヶ月ちょいでソイツの七割のクオリティまで追いつけるとかどうなってんだよと半ば思考を放棄していた。
時雨も、日車の言葉に驚くような顔をしていたが、そのことは指摘せずに今回のことについて説明しだす。
「んで、今回九十九に会うことが可能になった理由なんだがな。今の話に挙がってた天元に嫌悪感を持っている可能性があったんで、その辺りをつついてみた」
これを聞いて、日車は測りかねた。
「特級術師が天元を?」
「ああ、流石にその理由までは分からんが、場合によっては俺らと手を結ぶことが可能かもしれねぇ。オマエら上手くやれよ」
着いたぞと続けて、時雨は車を停める。
甚爾達が車を降りて、展望台へと辿り着くと、綺麗な金髪を背中まで伸ばした女性の後ろ姿が目に入ってきた。
女性は甚爾達に気がつき、振り向いたかと思えば、開口一番で変わったことを聞いてきた。
「キミ達が時雨が言ってた子達か。さて、
どんな女がタイプかな?
」
祝!3000人突破!
言わせてください
俺も来たで、こっち側
はい、失礼しました。
高評価、感想、誤字報告、本当にありがとうございます。
今回の話についてですが、ちょうどキリが良いのでここまでです。
日車はどれだけ盛っても良いと思ってます。
寧ろ、主人公なのでは?と言わんばかりの潜在能力を秘めているので。