ハリー・ポッターと忌まわしき一族   作:深田ハス

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06: 束の間の逢瀬

 

 

それからしばらく学校中が事件の話題で持ちきりだった。

事件の翌日になって、次第にレオノールのところにも情報が回ってきた。

なんでも石にされた猫を一番に発見したのはハリー達らしい。レオノールの元に情報が届く頃には、秘密の部屋の継承者はハリーということになっていた。

廊下の壁に書かれた文字はいくらフィルチが掃除しても少しも薄れなかったらしい。レオノールは廊下をパトロールするフィルチのいない隙を狙って石壁に書かれた真っ赤なメッセージをまじまじと見た。

 

秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気をつけよ

 

「そもそも秘密の部屋ってなに?」

「君スリザリン生なのにそんなことも知らないのか」

レオノールの素朴な疑問に、セオドールは改めて呆れたような声を出した。

「スリザリンの創設者サラザール・スリザリンがホグワーツから去る前に学校に作った秘密の部屋だよ。その中に継承者の敵をホグワーツから追い出すための怪物がいるらしい」

「怪物? サラザール・スリザリンは怪物を部屋に閉じ込めといたの?」

「ああ」

「サラザール・スリザリンはいつ継承者が現れるか知ってたのかな」

「さあな。そんなことはわからないんじゃないか。どうしてだ?」

「継承者が現れる前に怪物の寿命が尽きてたら?」

「相当長生きな怪物なんじゃないか。それか不死身とか」

レオノールはセオドールの言葉に納得して頷いた。

マグル界で聞いたら子供の幼稚な発想だと一笑に付して終わりそうな発言だが、魔法界では至極真っ当な考えだ。

秘密の部屋の中で怪物はどうやって生き延びるのだろうか?

それに怪物が継承者に従う保証は?

レオノールの頭には他にも色々疑問が浮かんでいたが、魔法界ならどれも大した問題ではないのかもしれない。

「その継承者の敵がマグル生まれだと?」

サラザール・スリザリンがコテコテの純血主義だったことくらいはレオノールでも知っている。

「だな」

セオドールが頷いた。

石にされた猫のミセス・ノリスの主人フィルチは、魔法族に生まれながら魔法が使えないスクイブというやつらしい。

「マグル生まれだけじゃなくてスクイブもだめなのか」

「魔法が使えないのはマグルと一緒だからな」

「世知辛い世界だね」

 

当たり前だが先生達は皆ぴりぴりしていた。もし怪物が本当にマグル生まれを追い出し始めたらこの学校の半数の生徒がいなくなってしまう。それに生き物を半永久的に石に変える魔術はかなり高度な闇の魔術らしい。そんな魔術を使える人物(或いは怪物)が校内にいるなんて大問題だ。授業や図書室に行く以外での外出は厳しくなった。

ドラコは継承者の出現に半分喜びつつ半分不満そうだった。ハリーが継承者と言われていることが羨ましいらしい。

「ねえ、マグル生まれかどうかを見分ける呪文ってあるのかな?」

「聞いたことないな。何で?」

ドラコはレオノールの唐突な質問に首を傾げた。

「マグル生まれをターゲットにするってことは犯人は相手がマグル生まれかどうかを知っていなきゃいけないでしょ。でも呪文とかで見分けられないなら、それってつまり、本人かその人の出生を知る誰かと接触してるってことだよね」

現に、去年レオノールはマグル生まれと勘違いされてスリザリン生達から洗礼を受けている。しかもその洗礼はレオノールがヴィヴィエールの末裔だと自己申告したことで終わりを告げた。

犯人て意外と身近にいるんだろうね、とドラコを見ながらレオノールは呟いた。

ドラコは肩をすくめる。

「僕じゃないさ。ハロウィンのとき君の正面にいただろ?」

「でもここは魔法の世界だから、他人を操って襲わせるなんて朝飯前だと思うよ」

そう言いつつもレオノールもドラコが猫を石化させたとは思っていなかった。

「確かにそうだな。ああ、継承者が誰だか知ってたらなあ」

「知ってたらどうするの?」

「そりゃもちろん手伝うさ。こんな良い機会はないだろ」

「もし今ハーマイオニーがいなくなったら君は永遠にハーマイオニーに試験で負けたままになるけど?」

そんなこと考えたこともなかったのか、ドラコは鳩が鉄砲玉を喰らったような顔をした。

外出に対して先生達の目が厳しくなる中、レオノールが大広間でハリー達と立ち話ができたのは事件からしばらく経ってからのことだった。

「ハリーって運悪いよね」

先日ハーマイオニーが授業中に魔法史のビンズ先生に秘密の部屋について尋ねたことで、スリザリン以外の寮生にも秘密の部屋についての情報が行き渡った。そしてハリーの継承者説が一層囁かれるようにもなった。

ハリーはげっそりして暗い顔をしていた。

レオノールはハリー達がミセス・ノリスを見つけた時の状況を詳しく教えてもらった。確かに犯人と疑われても仕方ないようなタイミングだ。

だが、ハリーがここのところげんなりしている原因はスリザリンの継承者だけではないらしい。

ロックハートとあのカメラボーイだ。

ロックハートはことあるごとにハリーに絡んでくるらしい。授業ではロックハート演じる劇の相方をやらされていると聞いてレオノールは心底ハリーに同情した。レオノールは今年に入ってから闇の魔術に対する防衛術の授業を真面目に聞いていたことはまだ一度もなかった。この調子だと今年一年間は真面目にこの授業を聞く機会は来なさそうである。

カメラボーイもなかなか厄介で、ハリーの時間割を覚えているらしく、授業の合間や昼に時間を見つけてしょっちゅうハリーに話しかけてくるらしい。

「私がハリーで継承者だったら、次はあのカメラボーイを石にするよ」

「レオノールったら! なんてこと言うの!」

レオノールの不謹慎な発言にハーマイオニーは息を呑んだ。

でも、相手は伝説の怪物なのに石にされるだけなんてちょろすぎやしないだろうか。しかも石にされたとしても二年生の授業で扱うような薬草で回復薬が作れてしまう。

レオノールは考えに耽る。

継承者は何をしたいんだろう。

本当に真剣にマグル生まれを排除したいなら、教員達が警戒の体勢を整える前に一気に排除する方がやりやすいだろう。それとも教員達が警戒してたって痛くも痒くもないほどに伝説の怪物や継承者は強いのだろうか。

「ねえ、継承者はマルフォイじゃないの?」

予想していたが、やっぱり三人は聞いてきた。

「それね、私も聞いたんだけど違うってさ。誰が継承者かすら知らないみたいだよ」

「でもそれってレオノールに隠してるだけとかってことは?」

「んーそうだよね。本当にドラコが継承者ならそれくらいはするよね」

「レオノールは怪しいと思ってるの?」

「別に。ドラコがもし継承者だったら寮の中で黙っていられないんじゃないかな」

三人の中ではドラコに対する継承者疑惑が色濃いようだ。

それも仕方ないか、とレオノールは思う。

「それよりマルフォイの調子はどう?」

「調子?」

「ほら、クィディッチの」

「あ、そっか」

ハリーに言われてレオノールは今週末にクィディッチの試合があることを思い出した。スリザリン対グリフィンドールの試合で、ドラコの初戦だ。

「どうなんだろうね」

「君って結構薄情だよね」

「練習してるところ見に行ったことなんてないもん。そんなことしたらスパイ容疑かけられちゃうよ」

ドラコはそんなこと言わないと思うが、キャプテンあたりの上級生がどう思うかはわからない。変に睨まれちゃ大変だし、練習の邪魔をしても悪い。

「試合は見に来る?」

「あー、起きれたら行くかなあ」

最近寝不足が続いている。原因は夢を見るせいでしっかり眠れていないからだとわかっていたが、ハリー達にそれは言わなかった。

それにハリーとドラコの両方が試合に出るんだから、どちらのチームを応援するかなんてレオノールには決められなさそうだ。

「ま、ハリーも頑張ってね」

今季のクィディッチの初戦が明日に迫って、スリザリンの談話室でもいつもとは違う雰囲気が流れていた。

ほんの少し前まで寮で孤立していたなんて本当だろうかとセオドールの言葉を疑いたくなるくらいに、ドラコは女子に囲まれ傅かれている。

明日の試合に起きれる自信がないレオノールは通りがけにドラコに頑張ってねと声を掛ける。途端にドラコの周りにいた女子達から睨まれ、彼女らの視線から逃げるようにそそくさと寝室に上がった。

案の定、翌朝目を覚ますととっくに試合開始時刻は過ぎていた。その時間から競技場に行く気も出なかったレオノールはベッドの中でそのまま惰眠をむさぼり一日を過ごした。

翌日になって、スリザリンがクィディッチでグリフィンドールに負けたこと、ハリーが骨抜きになって医務室送りになったことを知る。

さらに大広間に行ったところで、夜のうちに生徒が一人秘密の部屋の怪物によって石にされたことを聞かされた。グリフィンドールの一年生のコリン・クリービー(なんとあのカメラボーイ!)だ。

「あらまあ」

思わずレオノールは声が出てしまった。

生徒にも犠牲者が出たことで、フィルチの猫が石にされたときとは比べものにならないくらいの激震が走った。

廊下では常に二、三人で固まって歩き、早足で移動していく。先生達やドラコやセオドールからの圧で、一人行動が多かったレオノールもスリザリン生と一緒に行動することが多くなった。

 

 

 

「マルフォイは変わりない?」

「ぜーんぜん」

ハーマイオニーは図書室の本棚の間でレオノールと話していた。マダム・ピンスに追い出されないように二人ともひそひそ声だ。こうやって顔を合わせるのは久しぶりな気がする。

「あのね、気を悪くしないで欲しいんだけど、私達ドラコをスパイしようと思ってるの」

ハーマイオニーはレオノールに打ち明ける。

「どうやって?」

驚いたり怒ったりする素振りは少しもないままレオノールが言う。

「ポリジュース薬を使おうと思って」

「ポリジュース? そんなのどこで、、、もしかして自分達で作る気?」

レオノールは驚いたようにハーマイオニーをまじまじと見た。ハーマイオニーが自ら校則に違反しようとしているなんて、と言いたげだ。ハーマイオニーだって自分にしては大それたことをしようとしているのはよく理解していた。

「三人でスリザリン生の誰かに変身してマルフォイに話を聞いてみようと思ってるの。仮にマルフォイが継承者じゃなかったとしても何か知ってるかもしれないでしょ」

「今からポリジュース薬作っていたんじゃだいぶ時間がかかることない?」

「実はもう作り始めてるのよ」

「えー、作ってるところ見せてよ」

「良いわよ。その代わりって訳じゃないけれど、材料集めを手伝ってもらえないかしら?」

「いいよ。スリザリン生の髪の毛とか?」

「それと、二角獣の角の粉末と毒ツルヘビよ」

「その二つならスネイプ先生の薬品庫だね」

「そうなのよ。あなた入ったことある?」

「流石にないや。こっそり入るなら授業中かな」

「ええ。授業中にスネイプ先生の気が逸れるようなことがあればいいわね」

「そうだね。生贄は誰がいい?」

レオノールがさらっと物騒なことを言う。

「グリフィンドールは端から目をつけられてるから、スリザリン生だと嬉しいわ」

「おっけー。誰か考えとくよ」

レオノールの協力があればポリジュース薬の残りの材料も集まりそうだ。

「その、レオノールは、嫌じゃない? 私達がマルフォイを疑ってることとかスパイしようとしてることとか」

「んー別にだよ。無実ならスパイしたってドラコに実害はないしさ。それに、私がドラコはやってないって豪語して実際ドラコが犯人だったら困るしね」

レオノールは本当に気にしてないみたいで、ハーマイオニーの心配は杞憂なようだ。

「そういえばどこで作ってるの? ポリジュースなんて作ってたら人目につかない?」

「大丈夫よ。とっておきの場所で作ってるわ」

丁度男子二人と交代の時間も近いし、ハーマイオニーはそのままレオノールに作りかけの薬を見せに行くことにした。

「ジニーは最近どう?」

廊下を歩いている途中でレオノールが言い、ハーマイオニーは思わずレオノールの顔を見た。

「相変わらず調子悪いみたい」

「そっか」

「ごめんなさい、妹さんのこと言いふらすようなことしちゃって悪かったわ」

ハーマイオニーは急いで誤った。

「全然いいよ。隠しておきたいことでもないからさ」

直接レオノールに妹のことを尋ねたとハリーから聞いた時は本当にびっくりした。レオノールに妹がいたことを二人に教えたそばから直接、しかもど直球にレオノールに話を聞きに行くとは思ってもいなかった。もう、これだから男子は。

ハーマイオニーは三階の女子トイレにレオノールを案内した。

トイレは壊れっぱなしだし、ゴーストのマートルもいるし、最初に石にされたミセス・ノリスが見つかったすぐそばだから、滅多に人に見つかることはないだろうと踏んだ場所だ。

レオノールはここに入るのは初めてだという。

故障中と貼り紙がされたままの扉を開ける。

「私よ、レオノールも一緒にいるわ」

ハーマイオニーの声に個室からハリーとロンが顔を出す。

「わー、作ってるねぇ」

レオノールは二人がいた個室で火にかけられた鍋を覗き込みに行った。

「久しぶりだな」

「マルフォイはどう?」

「特に変わらないよ。ハリーこそ医務室送りになったんだって?」

こちらも久しぶりに顔を合わせた男子二人とレオノールの間で話が盛り上がる。

「そうなんだよ。ロックハートに触らせたのが間違いだった」

「ハリーってば」

またしてもハリーがロックハート先生の文句を言う。ハーマイオニーは不満に頬を膨らませた。

「骨抜きの腕見てみたかったな」

「大変だったよ。骨生やし薬はめちゃくちゃ不味いし、腕は痛いし」

「レオノール、新しい犠牲者のこと聞いたかい? あのコリン・クリービーだ」

「ね。びっくりしたよ。ハリーやるなあと思って」

「レオノール!」

「もうっ! うるさいっ!」

ハリーの大声にさらに大きな声がして隣のトイレがゴボゴボ音を立てる。

「やばっ、マートルだわ」

ハーマイオニーが言い終わらないうちに個室の扉からぬっとマートルが現れた。

「あんたたち、静かにしてよ!」

分厚い丸メガネにホグワーツの制服を着たマートルは、顰めっ面で盛り上がっていたハーマイオニー達を睨んだ。

「あら、あんた」

幾度も自分の居住に立ち入ってくる人達に文句を言おうとトイレから姿を現したゴーストはレオノールを見てはたと動きを止め、訝しげな顔をしてしばらくレオノールの顔を眺めていた。

「あんた、私が生きてるときに会った人にそっくりだわ」

「ホグワーツの生徒で?」

レオノールはきょとんとして床から浮いたゴーストを見上げている。

「もちろんだわ」

「どのくらい前?」

レオノールはずけずけと聞く。

不謹慎な質問なのに意外にもマートルは満更でもなさそうだ。

「五十年くらい前よ」

「五十年、ってなるとジュディスかな」

レオノールは首を傾げた。

「名前までは知らない。見かけたことあるくらいだったもの。ハッフルパフの上級生だったわ」

「それならジュディスだね」

ゴーストはするするとレオノールの真ん前まで近づき、鼻がくっつきそうになるくらいまで顔を近づけた。

「本当にそっくりそのままだわ。気味が悪い」

「遺伝だからねえ」

顔を顰めたマートルがトイレの中に帰っていく背中にレオノールが呟いた。

マートルが一度も泣き喚かずに消えていったことにハーマイオニー達は呆気に取られる。

「ジュディスって誰?」

ハリーが尋ねる。

「私のおばあさんだよ」

レオノールが帰った後、ハリーとロンと交代して薬を混ぜながら、ふと、孤児院にいたはずのレオノールがどうして自分のお祖母さんのことを知っているのかしら、とハーマイオニーは首を傾げた。

 

次の魔法薬学の授業中、約束通りレオノールは()()()()()()()()()()()()()()を起こしてくれた。

どうやったか検討もつかないが、ハーマイオニー達からだいぶ離れた席にいたスリザリン生のザビニの大鍋を爆発させたのだ。

しかもちょうどスネイプ先生がハリーの腫れ薬に文句をつけている間に爆発させたものだからスネイプ先生はハリー達を疑うわけにもいかず、ハーマイオニーがこっそり教室に戻ってくる頃には、腹立たしそうにしたまま、腫れ薬を浴びて身体のあちこちが膨れ上がった大量のスリザリン生達にぺしゃんこ薬を飲ませているところだった。ハリーとロンは小さなメロンほどにまで鼻が膨れ上がったマルフォイを見て必死に笑いを堪えていた。

ポリジュース薬の材料はほとんど揃った。

あと数週間で薬は完成する。

スパイ作戦を実行すれば、学校の規則をざっと五十くらいは破ることになる。

でも。

”マグル生まれだから。”

そのレッテルはどこまでもハーマイオニーに付いてまわる。

マルフォイの侮辱なんかはまだ耐えられるけど、マグル生まれだからって迫害されて勉強する機会を取り上げられるなんて、我慢できない。

ハーマイオニーはポリジュース薬を作る手順を頭の中でおさらいした。

 

 

 

 

 

談話室でレオノールは今日の魔法薬学の授業を振り返り、ザビニの大鍋を爆発させるのに使った花火の出来に一人満足していた。

物証を残したくないというレオノールの提案の下ジョージとフレッドと共にフィリバスターの長々花火に改良を加えたもので、本来より火の持ちは悪いが燃えかすが残らない、まさに証拠隠滅にうってつけの代物だ。

それをスネイプ先生がハリーの薬にいちゃもんをつけている間にザビニの大鍋に投げ込んだのだ。しかも投げ込むのも、投げる動作でバレないように杖なしの魔法を使った。去年クィディッチの試合中にクィレルの椅子の脚を折ったのと同じ要領だ。

一つ残念なことといえば、花火の出来を双子に話せないことだ。ハリー達とは図書室や大広間で何度か会っているが、双子とは秘密の部屋の怪物による襲撃が始まって以来ちゃんと話せていない。

なんならハロウィン以来グリフィンドール寮に一度も行っていなかった。図らずもドラコに言った言葉を律義に守ることになっている。

グリフィンドールの談話室を恋しく思いながらレオノールはベッドに就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書室の隅。

その一角に彼がいた。あの彼が。

石像のように整った顔の眉間にちょっと皺を寄せて真剣に机に向かっている。机の上に広げたノートを覗き込む彼のうなじが、青白い。

「面白いものを作っているのね」

赤い瞳がこちらを振り返る。

「…ヴィヴィエールか」

彼はちらり、とだけこちらを見た。

「今日は調べ物じゃないのね」

「何故知っている?」

「貴方が夢中になって何かを調べてるって、みんな言ってるわ」

「ずっと探しているのに、手掛かりもないままだ」

しばらくして彼が言った。

 

「トム・M・リドル」

日記に書いてある名前を私はゆっくり読んだ。

彼が夢中になって書き込んでいたのはまっさらな日記だった。

 

 

 

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