「トム・リドル?」
「やあ」
崩れ落ちてきた瓦礫に阻まれたロンとロックハートを後に残して進んできたハリーは、秘密の部屋で記憶の中で見た姿そのままのトムと対峙した。
ハリーは床に倒れているレオノールの頬に手を当てる。冷たい。そんな……
「彼女は死んでないよ」
ゴーストよりは濃い、でも確実に普通の生きた人間のそれではない輪郭の青年が言う。
レオノールのそばに黒い日記が落ちていた。あのハリーの荷物から盗まれた日記だ。
「どうして日記がここに?」
「ウィーズリーのおチビさんに持ってきてもらったのさ」
「ジニー? どうしてジニーが?」
ハリーは訳がわからずトムを見上げる。
トムは壁にもたれて腕を組みながらこちらを見下ろしていた。その姿はこんな場所でさえもハンサムに見えるのだから、学校にいた頃はさぞかし人気があっただろう。
「意外だったかな? 秘密の部屋を開けたのはジニー・ウィーズリーだよ。石壁に脅迫の文字を書いたのも、三人の穢れた血をバジリスクに襲わせたのも、全部おチビさんがやったんだ」
ハリーは自分の耳を疑った。
「そんなわけ、ない」
「ジニーは何ヶ月もの間この日記に心配事や相談事を書き込み続けた。十一歳のたわいもない悩み事を聞き続けるのはうんざりするよ。でも僕は人を惹きつけるのが上手だからね。おチビさんは僕になんでも打ち明けた。そうやって僕に魂を注いだのさ。おチビさんの心の深層の恐れや暗い秘密を餌食にして力を得た僕は、代わりに僕の力をほんの少しジニーに与えて秘密の部屋を開かせた。ジニーは自分のやったことを自覚していなくてね、あの頃の日記はなかなか面白かった」
トムはジニーの日記を思い返すように嗤いながら頭を振る。
ハリーは気付かないうちにレオノールの手を握っていた。だらりと緊張感のないレオノールの手がハリーの手から熱を奪っていく。
「日記を信用しなくなるまでに随分かかったよ。レオノールをここに落としたことで馬鹿なおチビさんはようやく日記が怪しいと気づいてトイレに日記を捨ててしまった。ところがそれを拾ったのが、なんと、ハリー、君だ。君と話してみたかったんだよ」
トムの貪るような目線がハリーの額を舐める。欲望が剥き出しになった顔は元が整っているだけに一層歪に見えた。
ハリーはカラカラに乾いた喉から声を絞り出す。
「どうして僕と?」
「空前の偉大なる魔法使いを打ち破ったらしい、生き残った男の子。なんの力もないただの赤ん坊だった君が、どうやったんだろうね? たった一つの傷痕だけでどうやってヴォルデモート卿の前から逃れた?」
トムはハリーに問いかけるというより自問するように喋り続ける。
「ヴォルデモートは君より後の人だ。どうしてあなたが気にするんですか?」
「ヴォルデモートは、私の過去であり現在であり未来だ」
トムの囁き声がハリーの頭の中に届くまで時間がかかった。
ハリーは唖然としてポケットから取り出した杖で空に銀色に光る文字を書くトムを見つめた。
TOM MARVOLO RIDDLE
杖の一振りで文字は並びを変える。
I AM LORD VOLDEMORT
「あなたが…!?」
ようやくハリーは声を絞り出した。
「穢らわしいマグルの父親の姓を、僕がいつまでも使うと思うかい?」
トムは鼻で笑った。
「君との出会いを喜んだのも束の間、馬鹿なおチビさんが君から日記を取り返してしまった。君が日記を持っているのを見て自分の秘密がバラされると思ったジニーは君の荷物を漁ったんだ。再び日記に書き込んできたのがおチビさんだったとき僕は本当に落胆したよ。余計なことをしてくれるものだ。でも丁度良いタイミングだったんだ。この子が仕上がるところだった」
トムは自分の所有物のようにレオノールを顎で示す。
「だから壁に伝言を残させ、お役御免になったおチビさんには石になってもらった」
「どうしてレオノールだけを連れ去ったんだ?」
「君はこの子がどれだけ特別な一族なのか、知らないのかい?」
トムは杖を弄りながらぶらぶらとその辺を歩き出す。ハリーはトムが持っている杖がレオノールのものだと気づいた。
「ジニーの日々の話によく出てきていたから、レオノールのことは知っていたんだよ。自分の憧れの生き残った男の子と仲が良いスリザリンの女の子。最初はそれだけだった。けどある時そのレオノールについてジニーが面白いことを教えてくれたんだ。そこで僕は初めてレオノールがヴィヴィエールの末裔だと気づいた」
トムはまたレオノールを顎で示す。
「彼女の祖母にはちょっと手助けしてもらったことがあってね。この子と話がしてみたかった僕はジニーに日記を渡させた。この娘には情報が詰まっている。でも扱いにくかった。魂の馴染みは良いんだけど、干渉するのが難しくてね。この子を弱らせる時間が欲しかった。だからレオノールからジニーに日記を返させ、ジニーにこの子をここに落とさせたのさ」
レオノールもトムの日記と話していたなんて。
魂の馴染み? 干渉?
よくわからない言葉ばかりだ。
それよりも、レオノールを弱らせる?
「レオノールに何をしたんだ!」
怒りが身体中を駆け巡りハリーは声を荒げる。
「大したことはしていないさ」
トムは肩をすくめた。
「ただ少し昔の夢を見てもらっていたんだよ、ほんの少しだけ僕が弄った夢をね。さっきも言ったが、僕は人の心の深層の恐れや暗い秘密を糧にしている。僕はこの子に夢を見させてその闇を少しだけ膨らませたのさ。ハリー、君はどうしてレオノールが里親に幽閉されることになったのか、知らないだろう?」
レオノールが四年間もの間養夫婦に幽閉されていた理由。
ハリーはそれを一度も聞いてみたことがない。
でも過去のことを話すときはいつもレオノールの顔からは能面のように表情が消える。
それだけで閉じ込められていた四年間がレオノールにとってどれだけ辛かったか充分にわかる。
「なんてことを!」
怒りからハリーは声を上げる。
「なんとでも言えばいいさ。彼女はもう僕のものだ」
ハリーの言葉をこともなげにあしらったトムは壁の前で立ち止まり、上を見上げている。
ハリーはレオノールの顔を見つめた。血の気のない顔に、目は硬く閉じられている。
ふと疑問が頭の中で擡げた。
「どうしてこんなに詳しく僕に話すんだ?」
普段のトムがどうだかは知らないが、ここで顔を合わせてからのトムは饒舌だ。どうしてレオノールを連れ去ったかをわざわざハリーに教える義理なんてないはずなのに。
「冥土の土産にと思ってね」
さらりと言うトムの言葉にハリーの背中を冷たいものが走る。
「君が未来の僕を逃れた秘訣。何も直接君に聞かなくたってレオノールがいればなんとでもなるんだよ。君の血さえ残っていればね。君にはここで退場願おう」
トムが見上げている壁。それはサラザール・スリザリンの石像だった。
トムの口からシューシューという音が漏れる。
はるか上の方でスリザリンの石像の顔が動くのが見えた。
「さあ、生き残った男の子のお手並み拝見といこうか」
トムの端正な顔に邪悪な笑みが浮かんだ。
「
その男の子が前に出る。
こんな偶然ってあるだろうか。
帽子は頭に触れるなりスリザリン!と叫び、従兄弟は端のテーブルの人達に迎えられていった。
私はそんな彼を目で追っていた。
『かあさん』
呼びかけると母親は眺めていた庭から振り返った。
『学校で従兄弟と話したわ』
『メローピーとあのリドルの館の男の子との子供ね』
『そうよ。彼、自分の出生について調べてるの』
そう言うと初めて母の顔が曇った。
『大丈夫よ。かあさんがここにいるなんて誰も思いやしないわ』
図書室の隅。
マグルの分厚い本が並ぶ人気のない一角。
その一角に彼がいた。あの彼が。
石像のように整った顔の眉間にちょっと皺を寄せて真剣に机に向かっている。
「面白いものを作っているのね」
赤い瞳がこちらを振り返る。
「…ヴィヴィエールか」
「前から気になっていたのだけれど、トム・M・リドルのMは何の略?」
「マールヴォロだが」
「マールヴォロ、ね」
やっぱり、思った通り。
久しぶりに聞く名前。微塵も恋しくはないけれど。
「何故お前が気にする?」
「気になったからよ。それにしても本当に変わったものを作っているのね。小さな
彼が夢中になって書き込んでいたのはまっさらな日記だった。
ああ、そうか。
おかしいと思ったんだ。
なんでトムが半純血だと知っているんだろうって。
当たり前のことだった。
だって最初から全部知っていたのだから。
急にラジオの周波数が合ったみたいに怒鳴り声が聞こえてきた。
続いて何かを引き摺る音も。
空気がじめっとしている。
また叫び声。
この声は多分ハリー。
目が霞む。泣いた後みたいに視界がぼけて、瞼が重い。
左の肩甲骨と腰の骨が酷く打ち付けたように痛む。
この世のものとは思えない鳴き声がこだました。
『匂いだ! 匂いを追え! 小僧を殺せ!』
近くで怒鳴り声がした。パーセルタングだ。
爆音が轟き、硬い石が砕けて床に当たる音と罵声が響いた。シューッという威嚇音と、また石が砕ける音。そして男の子の叫ぶ声。
立ち上がれ、レオノール。
ここは秘密の部屋。
トム・リドルがいる。
ダンブルドアは近くにいない。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
繋いできた血をこんなところで途絶えさせるわけにはいかない。
身体全体が鉛のように重い。さらに言えば背骨にずらりと金塊を埋め込まれたよう。
重心を片側に移し、仰向けの態勢から身体を起こそうとする。
綺麗な鳥がいて、組分け帽子が転がっていた。
「何故起き上がれる?」
聞き慣れた声が心なしか上擦っている。
少なからず動揺した彼の声に笑ってしまった。
「マールヴォロ。懐かしい名前ね」
レオノールはリドルを見上げてにっこり笑った。
「何故動ける? 僕が君の魔力を吸い取ったからこそ僕はこうして実体を得ているのに」
トムは膝に手をつきのろのろと立ち上がるレオノールを怪訝そうに見た。
トムの注意が逸れ、ハリーはさっきまでよりバジリスクから一歩遠のいた。
「分かんないでしょうねぇ。君は日記だものねぇ」
レオノールはうんうんと一人で頷く。
トムが顔を歪める。
「どおりで
レオノールはまるで大人が親戚の子供に構う時のようにやや前かがみになってトムの顔を見た。
「トム、君って本当に母親に似なかったのね。少しも面影がない。父親と瓜二つだわ」
レオノールは艶かしく笑って青い瞳でトムを見ていた。
「どういうことだ? 何故僕の両親を知っている?」
トムは落ち着かなげに杖を動かした。
ハリーはバジリスクの攻撃の合間にトム達の方に目を向けた。
レオノールが意識を取り戻してからトムがまったくこちらに構わなくなった。
何か様子が変だ。
トムが苛ついているのも変だし、レオノールも変だ。
よりによってこんな時に微笑んでる。
しかも言っていることが、わけがわからない。
「そりゃ妹の顔ぐらい覚えてるわよ。それにあのリドルの屋敷に住んでた男の子もね。まさか妹があのマグルの男の子と結ばれるとは思ってもみなかったわ」
トムの顔が更に歪む。
マグルの男の子という言葉が気に障ったらしい。
不死鳥に目を潰され、音と匂いでハリーを追っていたバジリスクがトムを振り返った。
『小僧を追い続けろ! 殺せ!』
苛立ったトムが叫ぶ。
『パーセルタングを話せるのが親戚であるなによりの証拠だって君は言ったわね、確かにそうかもしれない。でもそれでレオノールが君の娘か否かを論じることはできないわ。だってそれ以前に私達は親戚なんだもの。私は–––、レオノールは、君の従姉妹の孫にあたるわけ』
ハリーは己の耳を疑った。
レオノールがパーセルタングで話している。
不意に不死鳥が鳴き出す。
その声にはっとしたハリーはトムとレオノールの会話に気を取られていたせいで壁際に追い詰められていたことに気づいた。
慌ててバジリスクの牙を避けたが、バランスを崩して帽子の上に倒れ混んでしまう。
床ではない硬いものが脚に当たり膝の皿が割れた。
痛みに思わず呻き声が漏れる。
バジリスクが倒れ込んだハリーに襲いかかる。
もう避けられない。やられる!
『ハリーに構うなっ! こっちに来い!』
レオノールの声にバジリスクが微かに首を擡げた。
ハリーはその僅かな間にがむしゃらに帽子の中を弄った。
『耳を貸すな! 殺せ!』
怒り狂ったトムがレオノールを殴り倒す。
「余計なことをしてくれるじゃないか」
帽子の中で硬いものが指先に触れ、躊躇わずにそれを掴み引き出す。
剣だ。
剣先が床を掠る音に反応してバジリスクが襲いかかる。
ハリーは咄嗟に構え、垂直に立てた剣でバジリスクの口蓋を突き上げた。
二の腕に痛みが走り、じわっと広がる。
剣に貫かれたバジリスクは断末魔と共にどさりと床に倒れた。
トムはレオノールを踏みつけながら、息絶えた怪物を見た。
「あのジュディス・ヴィヴェールが僕の従姉妹だったってことか。考えてもみなかったよ。でももう関係ない。生き残った男の子は死ぬ。秘密の部屋の怪物の死とは釣り合わない気がするけどね」
ハリーは折れた牙を腕から抜いた。手遅れなのはわかっていた。猛毒はもう身体中に回ってしまっているはずだ。
自分にしては良くやったと思う。
でもレオノールだけは。レオノールだけでも助ける手立てはないのか。
ハリーはトムに踏みつけられ力無く倒れているレオノールを見た。
深紅の影がすっと横切り、ハリーの横に不死鳥が降り立つ。
既に視界が霞んでる。暗色の渦の中でフォークスの羽根と自分の血の赤色がぐるぐると模様を描いた。
「フォークス、君は素晴らしかったよ」
ハリーは縺れる舌で呟いた。
フォークスの涙がポタポタと傷口に落ちる。涙のひんやりとした冷たさがすうっと骨の奥まで染み渡った。
「死にゆく気分はどうだいハリー? もうすぐ穢らわしい母親の元へ行けるさ。僕はここで君の臨終を見物させてもらおう。僕の親戚の後始末はそれからでいい」
ぼんやりしていた視界が次第にはっきりしてきた。傷ももう痛まない。目をやると、バジリスクの牙が刺さっていたところはまるで初めから傷なんかなかったかのように綺麗になっている。
「不死鳥の涙、癒しの力だ…!」
「なに?」
ハリーの呟きに気を取られていたトムは舞い上がった不死鳥の行方に気づいていなかった。
レオノールはその目で不死鳥が秘密の部屋の床から拾い上げたものをしっかりと捉えた。
「トム」
不意に名前を呼ばれ、トムは足下を見下ろした。
その間にも不死鳥はハリーの元へ向かう。
「トム…君は、トム・リドルなんかじゃない…
どさ、とハリーの前に黒い日記が落とされた。
「…ハリー、それを壊して」
トムが慌てて駆け寄ろうとする。
だが、ハリーの方が早かった。
ハリーは側に落ちていたバジリスクの牙を日記帳にずぶりと突き立てた。
耳をつんざくような悲鳴が秘密の部屋にこだました。トム・リドルの日記から黒いインクが激流のようにほとばしりハリーのローブを浸す。
リドルは身を捩り、悶え、のたうち回って、消えた。
静寂の中で、リドルが持っていたレオノールの杖が床に落ちカタカタと音を立てた。
ハリーはその杖を拾うと膝が割れた方の脚を引きずって床に伏したままのレオノールに近づいた。瞬きをすると真っ青だったレオノールの瞳がすうっと緑の混ざった色に戻った。
「終わったね」
「やっとだ」
「さっきは助け切れなくてごめん」
「そんなことない。君がいなかったら僕はやられてたよ」
「変な気分だよ……色々聞きたいことがあるでしょ」
弱々しくも悪戯っぽく笑うレオノールは疲れた顔をしていた。
「うん、たくさん。でも今は、–––––レオノール!血が!」
ハリーに言われて自分の体を見ると腰のあたりの服が血に染まっていた。
はてこんな怪我してたっけ、それにしては痛くないなとズボンのポケットに手を突っ込んだところで原因が分かった。
例の瓶の蓋が開いて中身が漏れ出していたのだ。瓶を見たハリーが「それは何?」と不思議そうに聞いたが「ちょっとね」と言って誤魔化した。
これが屋敷から持ってきた最後の瓶で、かつ最初の母の瓶になる。
これがなかったら今頃どうなっていたことか。
中身は四分の一くらいに減ってしまっていたがものとしては問題はないだろう。レオノールは瓶の残りをあおぎ、目を瞑った。
私のレオ。
赤子は独特の匂いがする。
甘くて、暖かくて。
腕の中の子は記憶の中の赤子にそっくり。
それが誰の赤子かはもうわからない。私が赤子の時も母が赤子の時も大叔母の時もその前も皆瓜二つだから。
レオ。
レオノール。
彼の子。彼の形見。
だからこそ世間にはそう思われてほしくない。
わざわざ手の込んだことをしたのだ。少しでもこの子が、私が、
彼の子だと知っているのは、私だけでいい。
それで十分だ。
トムは自分よりもその地位に相応しい子供を見つけたらどうするだろう。知るや否や抹殺するかもしれない。
それだけは避けたい。
その時に私はこの子の側にいてやれないのだから。
だからこそせめてスリザリンに由来する能力は自分を介して得たものだと、そうトムに思い込んでほしい。
それで事態が好転するのか、私にはわからない。
そう願うだけだ。
貴方はレオの中にいる。
貴方の仇討ちをするなんて言ったらご先祖達は呆れるに違いない。
これは、この想いは、私の血の薄さ故のことかもしれないから。
それでもいいじゃないか。
どの道トムはこの子を放ってはおかない。
それならばトムを倒すことこそ
今後のことをすべてこの子に託す。
この子が復讐の道を選ばないのなら、それでいい。
ただ私は私のできる限りの事を尽くす。
「…ール? レオノール?」
名前を呼ばれて目を開けるとハリーが心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫?」
「うん」
「とりあえずここから出よう。僕は組分け帽子を取ってくるけど、動けそう?」
ハリーは片足を引きずってひょこひょこと帽子を取りに行った。
ゆっくりと立ち上がったレオノールはローブの中で杖を握り直す。
「ハリー」
帽子を拾ったハリーがくるっとこちらを振り返った。
「
そう言って杖をハリーの顔に向ける。ハリーは一瞬ぼーっとした表情をしたがすぐに元に戻った。
「直った?」
「うん」
「ありがと。レオノールって呪文得意だよね」
「そうかな」
ハリーは一度眼鏡を外して掛け直した。
「行こうか。早くしないとロンがロックハートを殺しかねない」
ハリーが両手に組分け帽子と剣を持ち、片手に日記を持ったレオノールがハリーに肩を貸した。二人はお互いに支え合って秘密の部屋を出た。