雷花の根 共生
どうしてモンスターと戦えるの?
「仲間!ヒノエやミノト、フゲンさんやハモンさん、それにフィオレーネも!みんな傷つかないように俺が戦わないとね!」
「仕事だ。キャラバンの安全確保や街の防衛。
善良なる人を守るために必要なことだ」
「頼まれたことは断れない
自然に囲まれて狩りをするのは気持ちいいよ」
「この村の村長に借りを作ってしまってな。村の人達も支えてくれた。気付いたら彼らが狩る理由になってた」
「...」
「僕が身を粉にして狩りをする理由?好きでやってるんだよ。モンスターが好きだからね」
貴方は、モンスターが好きなのに
「人とモンスターが共存出来ない時だってある。僕は誰よりも狩りが上手いのさ」
貴方は、モンスターが好きなのに
「...そうだよ」
貴方は、モンスターが好きなのに人類の味方なの?
「違う。僕はモンスターハンターだ」
角竜が支配している広大な砂漠。
電流を浴びて青く輝く幻想的な鉱石。
そこは異世界と接続するために古代竜人達が建造した太古のポータル。
内殿には王が眠る。神域に足を踏み入れる。
〜砂の町
「お父さん!見て!アプケロス!」
少女が指差した方向では、三頭のアプケロスが身を寄せ合って身を守っている。《防御体制》だ。
堅牢な装甲を持つアプケロスは捕食者から身を守るために円陣を組んで防御の構えをとる。
近くに大型モンスターがいないのにアプケロスが防御体制になるのは珍しいことだった。
(この辺りに捕食者の姿は見当たらない)
ライダーの男は、海を渡るためにオトモンとして海竜ラギアクルスを連れている。
オトモンは大型モンスターと比べて非常に小柄なため、小型モンスターに警戒されにくい。
「ラギアクルスも疲れてるみたいだ。近くの町に泊まろう」
二人を乗せて歩くラギアクルスは息を切らしていなかった。しかし、海を渡る途中、何かに怯えるような顔をしていた。
最近では龍歴院が骸龍の出現を観測したとの報告もある。ハンターの往来が少ない夜間に居住地以外を移動するのは危険だ。
少し歩いていると、前からアプトノスが荷車を引いて歩いてきた。太った商人が布を被った荷物の上に座っている。
「おや、親子の旅人かい。珍しいね」
荷車には一対の立派な捻れた角が取り付けられていた。
角竜ディアブロス。
砂漠の生態系の頂点に立つという危険な大型飛竜種。翼はあるものの飛行能力は低く、普段は地下に生息している。
草食だが気性が荒く、その姿を見ただけで大抵のモンスターは逃げ出すという。
街や村の近くに出現するとギルドが警報を発令するほど危険なモンスターだ。
そんなディアブロスがハンターに狩猟されることは滅多になく、立派な角は貴族などの間でインテリアとして高値で取引されている。
見た目が美しいだけではなく、家屋や荷車に取り付ければ、その威圧感によって凶暴な肉食竜も襲ってこない優れものだ。
そんな貴重なディアブロスの角をわざわざ荷車に取り付けて移動しているということは、非常に大切な商品を運んでいるということだ。
「何を運んでるんですか?」
「この辺りの遺跡から切り出した光る石だよ。
電気を溜め込む性質があるから、科学者たちが挙って欲しがっているんだ」
(光る石...絆石のようなものか)
大海の王者と呼ばれるラギアクルスが、ディアブロスの角ではなく荷物を警戒している。
ディアブロス以上の何かを運んでいるということだろう。
背中の発電細胞が活性化して背電殻に雷属性エネルギーを集めている。
「あんた、ラギアクルスを飼い慣らしてるのかい?ウチのアプトノスが怯えちまうから、さっさと行っておくれ。商売の邪魔だ」
訝しげにそう言い放った商人に追い払われて、ラギアクルスは足早に離れた。
斜陽。不穏な風で砂が舞い、腕で目を守って進む。昼間の猛暑が嘘のように冷え込んでいる。
「そんなこといわなくてもいいのに」
娘が寂しそうにつぶやいた。ラギアクルスに言葉は通じない。ライダーのいない文化圏ではオトモンが酷い扱いを受けるのは珍しいことではない。娘が呟くまで、自分のオトモンが嫌がられることに不満を抱けなかった。
家族同然の生き物が怖がられることに慣れてしまっていたのだ。
(アプトノスは怯えていた。仕方ない)
楽しい旅が凍てついてしまった。落胆して喋り出せずにいると、遠くに砂の町が見えてきた。
「売店で何か買おう。お腹空いただろ?」
〜砂の町 宿屋
宿屋に着くと、ラギアクルスのことでショックを受けて黙っていた娘が照れくさそうに一枚の紙を渡してきた。
紙には俺とラギアクルス、そして海を渡る途中に偶然出会ったローゼルフィンが描かれていた。
「お父さん、元気出してよ。私はラギアクルスに怯えたりしないから」
「ありがとう」
どうやら商人の冷たい言葉で落ち込んでいたのは私の方だったようだ。
ラギアクルスを追い払われたことよりも、娘が寂しそうにしていたことが気掛かりだった。
しかし、娘は俺を励ましたことで緊張が緩んだらしく紙を渡してすぐに眠ってしまった。
旅を楽しみにして眠れない日々が続いていた。きっと睡眠不足だったのだろう。
娘が寝ているのに部屋から出るわけにはいかない。ラギアクルスを撫でながら、本を読んで夜まで過ごした。
寝室を開ける音で目覚めた。
少し開いた扉から細い光が差し込む。
本を読んでいる間にいつの間にか眠っていたようだ。ラギアクルスも何かが侵入してきたことに気付いて唸り声をあげている。
「何者だ」
「この町を警備しているハンターズギルドの職員だ。この町の近くで商人が殺害された」
砂の町の人々はラージャンの存在を認められなかった。目撃例が少ないからだ。
いわくつきの死神の襲来を信じようとする者など一人もいなかった。
俺もこの町の近くにラージャンが来ていたことを知らなかった。
(ラギアクルス、頼んだ)
俺は娘に貰った絵を握りしめて、ギルドの職員に収監された。
砂漠中に響き渡っていた恐ろしい獣の鳴き声は、金獅子ラージャンの咆哮だったのかもしれない。
漣が鳴る。曇天に雷光が灯る。
この事件の後、町を追放された男は金獅子を引き連れて町を襲撃。
迎撃に向かったハンター55名と、ラージャンと遭遇してしまった民間人2名が死亡した。
ラージャンは現在も狩猟されていない。
この個体は一頭で一千人以上の人間を殺しているといわれている。
砂に染み込んだ血が渇き、獲物を求めて獣が闊歩する。怪物の心臓が脈を打つ度に、その影響は広く、深くなっていく。
生命活動と破壊衝動の狭間。
人間たちの人生が歪み、終わっていく。
少女にとっては思い出したくない絶望の出来事も、金獅子にとっては数えきれないほど繰り返した殺戮の一幕に過ぎない。
自然と人の調和を願える時間は金獅子という超攻撃的生物の登場によって終わった。
王は殺戮を通してお前に問う。
お前の楽観は、この生命を認められるか。
回答を強制する。
クエストを開始しろ。
一部、設定の公開
ジェイド・オールドゲート
全てのライダーの始祖といわれている伝説の海賊。
高い実力と魅力によって人々を惹きつけ、異世界を繋げる財宝を発見したとされている。大厄災の調査の途中に海上で不慮の事故が発生したことで行方不明になった。