食事と睡眠は生命活動の資本なんだ。逆に、そこを減らしてパフォーマンスを出せるはずがないと思わないかい?
〜バハリの発言より引用
超特級の危険生物。
獣が放つ打撃は、穏やかで暖かい平和主義では支えきれない重量を秘めている。
生活とは、生命の表現である。
破壊は睡眠や食事よりも大切なものだった。
その暴力はチェーンソーのように回転し、肉を千切って付着させたまま次の標的を攫う。
犠牲者すら魅力する黄金の稲妻に、あてがわれてしまった全ての人が人生を持っていた。
金色の体毛を筆に、骨の潰れた犠牲者の亡骸を硯に見立てる。
殺人鬼が犯行現場に捺印する。
正体を隠す口伝を纏い、日に日に巨大化する都市伝説の裏側を彷徨う。
〜大穴の砂漠 酸の洞窟
「全部分かったよ」
イシモリトカゲが這っている。
鏖魔ディアブロスの活動によって砂漠に開いた大穴。ギルドが棘竜に殺された黒角竜の死骸を運び出したばかりだ。
その壁面には鶴に覆われた穴がある。
鶴を掻き分けて進んだ先にあったのは、霧に覆われた一本道。
(無敵の装備の量産を阻止して世界の均衡を保つ。それが僕の任務だ)
導きの青い星は、青く輝く導蟲の光を頼りに霧のかかった洞窟を一人で進んでいく。
「来ると思っていましたよ。推薦組」
フードで顔を隠した赤衣の男が立っていた。
導きの青い星はアイテムポーチからリオレウスの翼膜で作られた赤い装衣を取り出して身に纏い、フードで顔を隠して赤衣の男をからかった。
「石碑で実験をしていたのは君たちだったんだね。赤龍を崇拝する君達が異世界の力を頼るとは思わなかったよ」
「私達の目的は新しい世界の創造だ。表向きは古龍の王を頭に据えているが、あれはエネルギータンクに過ぎない。
...君は龍歴院の男と違ってフルチャージを使わないのか」
「...僕には使えないんだよ」
導きの青い星は《フルチャージ》による《力の解放》の再発動を使うことができない。
特殊な体質によってフルチャージと力の解放を同時に発動させることができるため、フルチャージが発動していても力の解放の効果が中断されないのだ。
「貴方は最強のハンターだと聞いていますが...」
「力の解放を使わなくたっていいだろ。僕は武具をスキルで強化して戦うのは趣味じゃない。
そんなことより、ここで何をするつもりだ?」
「ここは大陸の心臓。貴方もよく知るジーヴァの巣です。私たちかつて古代人が暮らしていた神殿の跡地の調査を行っています」
「天廊や古塔と同じポータルか。あの見慣れないモンスターは異世界の生き物だな」
(死角に潜伏させた飛竜に気付いているのか!しかし何故...この男は攻撃されないんだ!)
「尖爪目堅歯亜目のモンスターの中で祖先にあたる種が見つかっていないのはラージャンだけだ。
ブランゴが突然変異を起こすとラージャンになるという仮説を唱える学者もいるけど、それだけであの圧倒的な強さは獲得出来ないだろう」
「...モンスターの生態は書士隊の管轄の筈です。私たちの目的は新世界の創造です」
「だからここに来たんだよ。ラージャンの生態は謎が多い。龍歴院や書士隊の調査も進んでいない。でも
「赤龍はまだ目覚めていません」
「惚けるなよ。君たちがマネルガー博士の研究資料を保管していることくらい僕でも知ってるさ。だからこの耐熱の装衣には威嚇珠を装着しておいた」
威嚇。エネルギーを特殊な機構から空気中に放射することでモンスターの敵意を削ぐスキル。本来は小型モンスターにしか通用しないスキルだが、導きの青い星はミラボレアスとの決戦以降大型モンスターに対してもこのスキルを発動できるようになっていた。
(スキルのポテンシャルを100%以上引き出している...?)
体質によるマイナススキルの無効化と後遺症による全てのスキルの覚醒。
カムラの猛き炎でさえ全てのスキルの覚醒には至っていない。
「金獅子ラージャンの暴走は君たちの実験が原因だ。赤龍の繭を調査させてもらう」
(赤龍はまだ戦える状態ではない!
もし既に羽化していることがギルドに知られたら殺される!)
「内殿に侵入させるわけにはいきません」
「いるんだろ?王が」
導きの青い星が放っていた威圧が赤衣の男に向けられる。まるで金獅子のブレスのように激しく、勇ましい殺気が洞窟を漂う。
ハンターが人間に武器を向けるのは御法度だ。
しかし、ハンターが人間から攻撃された場合は反撃が許可される。
窮地に追い込まれない赤衣の男は赤く輝く石を取り出し、導きの青い星へと向けた。
洞窟全体が揺れて、ゼナセリスが飛び去る。
凶兆。
(これは...まさか...!)
死罪。王の間に立ち入る賊を鏖殺する狂奔。
砂が降り、神々に匹敵する厄災が降りる。
二つ名筆頭 鏖魔ディアブロス 降臨。
鏖魔ディアブロス。砂漠のモンスター達の頂点に立つというディアブロスの中でも、別格の危険性と戦闘能力を誇る死神。
そのあまりの危険性から世界各国が何度も精鋭を討伐隊として送り込んだが、誰一人として無事に帰った者はいなかった。
若い頃に片方の角をハンターに折られたことで人間に対して強い恨みを抱くようになり、やがて古龍に匹敵する怪物に成り果てたのだという。
鏖魔ディアブロスが登場した物語には、ハッピーエンドを迎えた物語は一つも存在しない。
ハンターズギルドや大国が総力をあげて、一度も狩猟されたことがないモンスター。
異界のモンスターとの決闘の末に、この大穴を築き上げたという規格外の怪物である。
返り血を浴びて青黒く変色した甲殻に、赤く輝く血管が通っている。
(度重なる実験...ポータルを何度も起動しているならこの辺りは異界のモンスターで溢れかえっているはずだ)
(でもこの大穴にはゼナセリスしかいなかった...)
(こいつが異界のモンスターを殺しまくってるのか!)
実験の後処理をしているのはハンターだけではない。
ハンターズギルドが事件の後に古塔にハンターを派遣するように、赤衣の男達は鏖魔ディアブロスを使役して異界の脅威を殺している。
(絆石によって鏖魔を操作しているなら命令によって絆ゲージを消費する。つまり命令を効かなくなるタイミングが来るはずだ)
ライダーがモンスターに命令すると絆ゲージが減少し、ゲージが不足するとモンスターは命令を聞かなくなる。
鏖魔は凄まじい剣幕で怒鳴り、ハンマーのような形状に発達した尻尾で地面を叩きつけて地響きを起こした。
咆哮の残響も洞窟を震えさせるほどの音量で鳴り響き、大穴のモンスター達が姿を隠した。
(もし鏖魔が命令を聞かなくなったら暴走する。絆石にはオトモンではないモンスターの暴走を止める力はない)
「鏖魔ディアブロス...彼もまた異界の王。英雄と呼ばれるハンターを殺し続けて、種の中でも他の個体と区別されるようになった可哀想なモンスター。つまり...貴方と同じです」
導きの青い星は挑発に乗らず、赤衣の男の絆原石を横目で確認した。
(つまりあの絆原石を取り上げても鏖魔を鎮静化することはできない。絆原石はブラフか)
(未知の手段で鏖魔を操作している人間がもう一人いる)
導きの青い星は導蟲の籠を開けて洞窟内部の人間を捜索させつつ、背負っていた大剣を構えて鏖魔と対峙した。
(僕はハンターだから彼が武器を向けてくるまで武器を向けることは決して許されない。
だが、鏖魔の相手をしながら武器を使わずに鏖魔を操っている人物を制圧するのは骨が折れそうだ)
角竜種は地中を高速で掘り進むため、洞窟を崩落させても大して時間稼ぎにはならない。
鏖魔を操作している人物が見つからない場合、鏖魔を倒さなければ目的は果たせない。
(ここで使うつもりはなかったけど...)
「おびき出し」
鏖魔対悪魔。
〜一部、設定の公開
エスピナシリーズ
棘竜の素材を使って作られた装備。エスピナスの毒は神経毒であり、多量に摂取した場合死に至る。しかし微量であれば神経を研ぎ澄ます効能があり、エスピナシリーズを装着した狩人は感覚が鋭くなる。
護石
生体エネルギーを様々な効果に変換する効能を持つパワーストーン。
装飾品
装衣や防具のスロットに嵌め込むことで、護石のようにエネルギーを変換することができるパワーストーン。古生物が閉じ込められている。