ラージャン 超攻撃的生物   作:貝細工

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羅刹王域に降臨す・王の章

 

「ラージャンに勝つためにはお前の力が必要だ」

 

昂獅子がメル・ゼナと戦っている最中に、笑みが消えたセルジバーナがラパーチェに言った。

王家の血を引く尊大な狩人。しかしセルジバーナは特命隊隊長として、副長のラパーチェには強い信頼を寄せている。

 

「期待しているぞ」

 

セクトヴィクアトノワール。弦を用いて音を鳴らす特殊な演奏技術を必要とする狩猟笛。

 

〜王域 金色超巨星内

 

王座決定戦。

 

金色の波動が吹き荒れる王域の中。

王域三公の一角、メル・ゼナが崩れる。

冷ややかな死を感じさせる爵銀龍の没後に、怒りを漲らせたフィオレーネよりも速く昂獅子の前に躍り出たのは、狩場の王。

 

「頭が高い。平伏せよ」

 

赤いマントが靡くダマスクシリーズを着込んだセルジバーナは大剣の使い手である。

巨大な剣を握ったまま身軽に躍動する超人的な筋力によって、ロンディーネに続く二人目のマスターランクに認定されたエリート。

女王直々の命によって危険な古龍種の単独調査もこなすその実力は、まさに王。

 

「我の剣撃を防いだか」

 

頭部目掛けて振り下ろされた重たい一撃を片腕で防いだ昂獅子を灼熱の火炎が襲う。

儀礼用大剣バルバロイブレイドを強化することで造られた紅蓮の剣バフォムブラッド。

山羊の頭を模した装飾は狩猟対象に本能的な恐怖を刻み込むとされている。

しかし、力のために死を受け入れた昂獅子には既に闘争本能しか残っていない。

 

「よく似ているな」

 

昂獅子の拳をバックステップで躱し、追撃の雷弾を大剣によって防ぐ。

古龍を討った昂獅子を前にしても怯まず攻撃を繰り出し、灼熱の刃で斬りつける。

 

「我の剣は西洋の悪魔を模った武器だという。推測するに、貴様が伝説の悪魔という奴なのだろう?」

 

昂獅子の肉体はいまだに龍属性の影響を受け、電気刺激による身体強化が阻害されている。

パンチの威力や攻撃の速度は下がり、筋肉を硬化させて攻撃を防ぐこともできない。

拳を叩きつけて地面を隆起させた昂獅子は、筋力差を利用して地形を変化させる戦法をとった。しかし、セルジバーナは隆起した地形にも即座に対応して燃える斬撃を放つ。

 

「ならば我は貴様の首を持ち帰り女王に献上するとしよう」

 

戦闘中に昂獅子に語りかける余裕。悠々と攻撃を躱す実力。セルジバーナの自信は張りぼてではなかった。しかし、何かがおかしい。

 

(昂獅子の動きが鈍化している...爵銀龍との戦いで被毒したのか?)

 

(卑怯とは言うまいな)

 

(貴様は負傷したまま王である我の前に立ったのだから!!)

 

ダメージの蓄積。互いに抱いた違和感に、そう説明をつける。

大半の人間を大きく上回る身体能力。経験を活かして即座に地形を利用する判断速度。

どちらも個体差。腕利きの狩人だ。

しかし、傷を負わせても即座に治癒させる回復速度。これは人間の能力ではない。

張った糸を弾き、規則的に流れる独特の音波はさながら彩鳥の能力。

 

再現したのか!クルペッコの演奏を!!

 

尾を捨てて昂獅子となる前、ラージャンは複数人の狩人に襲われたことがある。

山の中を単独で歩き回る金獅子に対して狩人達は一斉に攻撃を仕掛けたが、その中で一人だけ前線に出ず、後方から射撃に徹する者がいた。

剣士が庇い、射手が撃つ。狩人の連携を崩す為には、後方支援に徹しているハンターを倒すのが効果的だ。

つまり、演奏者を先に討つ。

 

「ラパーチェ!!」

 

趾行により気光の操作を用いずとも弾丸のような速度で跳躍する昂獅子。

しかし、ラパーチェは昂獅子の攻撃を躱し、攻撃のために硬化した前脚を狩猟笛で力強く殴りつけた。

 

「思い知るがいいわ!」

 

硬化をものともしないパワフルな打撃。

そして昂獅子の拳を回避した移動速度。

どちらも人間の肉体から放てる技ではない。

やはりこの狩人は、クルペッコのように演奏で自分や味方の身体能力を向上させている。

 

「我に背を向けるか」

 

前脚の硬化を維持したまま振り向いて背後からの斬撃を弾き、体勢を崩したセルジバーナの頭部に向かって拳を振る。

大剣による攻撃は威力が高いが、その分隙も大きい。昂獅子は攻撃の後の無防備な瞬間を見逃さなかった。

 

「ぬかった!」

 

セルジバーナは大剣でパンチを防ごうとしたが、防御が間に合わず吹っ飛ばされた。

装着者を覇道に導く伝説の鎧といわれているダマスクシリーズは、強力な攻撃に耐えることに特化した鋼鉄の甲冑である。

ダマスクを装備したセルジバーナは王国騎士の中でも最も高い防御力を誇る。

 

自信に亀裂を入れる現実。分かっていた。

 

セルジバーナはパンチで吹き飛ばされた後に膝をつき、血反吐を吐いた。

昂獅子の拳は轟竜の頭部を叩き潰すほどの破壊力を秘めている。

痛みで息が荒くなり、視界がぼやけている。

人間が敵う相手ではない。女王からはそう聞いていた。

 

剣に括り付けられた髑髏と顔が近づく。

かつての過酷な任務で命を落としていった仲間の骨だ。どの仲間も優秀な狩人だったが、一瞬の油断で昇天した。

対峙した相手は最強の牙獣種。唯我独尊の狩人に厳しい現実が突きつけられる。

 

「ここで仕留めなければ...!」

 

ナックルウォークの状態から、二足歩行の状態へと移行して詰め寄るラージャン。

跪くように膝をついたセルジバーナを頭上から見下ろす黄金の怪物。屈辱的。

たった一撃。吐き出した血液に動揺した自分の顔が映り込む。なぜか悔しがっている。

 

体が動かない。

 

『ラパーチェ』

 

走馬灯というやつなのだろう。

無謀な生涯への満足とこのままでは死にきれない狩人の矜持が混ざって見える。

この無謀な戦いには、女王の命がなくても参戦していたような気がした。

 

「セルジバーナ!!」

 

もう、特命隊の人数も随分と減ってしまった。

 

「避けてよ!動けないの!?セルジバーナ!ラージャン来てるよ!避けて!」

 

安全な暮らしが欲しければ、ハンターにならなくても王族として生活すればよかった。

しかし、王位には興味がなかった。

自信家の狩人、尊大な貴族。凡庸な国民には距離を置かれる風変わりな男。

それでも、人と一緒に居たかったのだろうか。

 

その日は久々に休暇が与えられた。

国の周辺に出現したという古龍の調査を終えて、副長のラパーチェと一緒に狩猟に出かけたことがあった。

 

『セルジバーナはモンスター怖くないの?』

 

街を歩いている時に唐突に尋ねてきたラパーチェの問いは、今でも頭を悩ませる。

モンスターとの戦いは楽しい。女王から金も称号も与えられて、今の生活には満足している。

もうこれ以上、ハンターとして戦う理由はないのかもしれない。

それでも、特命隊を辞める気にはならなかった。

 

「我は...」

 

『我に狩れぬものなどない』

 

武器がなくても最強。大剣があれば一騎当千の活躍が出来るハンター。

どんなモンスターと戦っても勝てるように毎日練習を積み重ねてきた。

女王の命を受けて危険な怪物を狩猟するたびに、マスターランクに認定されるほど強くなった。

 

『だよねー。でもセルジバーナって戦ってる時いつも怖がってるよね』

 

どれだけ強くなっても、自然に対する恐怖を忘れたことはなかった。

激昂したラージャンにも勝てると思い込んでいたほどの自信家。そんな我が恐れていたこと。

 

「我は...!」

 

『何を言うか!我は最強!誰にも我は止められぬ!』

 

『...そうだよね!なんだか私、お腹ペコペコー!先に行って待ってるね!』

 

頭がズキズキと痛む。

その痛みで現実に引き戻される。

 

「避けろセルジバーナ!!殺されるぞ!!」

 

ラパーチェが叫んでいる。しかし、昂獅子の攻撃を受けた時に骨が折れたようだ。

目の前には血溜まり、頭上には決着をつけるために詰め寄ってきた超攻撃的生物。

昂獅子の討伐は無謀な作戦だった。

女王は特命隊の派遣に反対していたらしい。

女王の判断は正しい。相手はあのラージャンの特殊個体。騎士が武力で敵う相手ではない。

 

このままでは...死ぬ。

 

破壊と滅亡の申し子。

そして。

 

「我は!!」

 

「我は皆の笑顔を守りたい!」

 

もう仲間を失いたくない。

 

(それって私の...)

 

体力回復【大】。

 

九死に一生を得る。

 

昂獅子の拳を潜って首元を斬りつける赤熱の反撃。予想外の反撃を食らった昂獅子が怯んだ隙に頭部に溜め斬りが炸裂する。

通常の溜め斬りを凌駕する破壊力。斬撃は昂獅子を地形ごと抉り、深い傷を負わせた。

そしてセルジバーナの傷は見る見るうちに治癒していく。

 

「なんとか...演奏が間に合った!!」

 

昂獅子は傷を抑えながら距離を取り、威嚇するように吠えた。再び特命隊の二人が肩を並べて武器を握り、武器についた髑髏と一緒に激昂したラージャンを睨みつける。

龍属性の効果が薄れてきたことで昂獅子の雷属性エネルギーは増大している。

 

「もう!私と競争出来るのはアンタくらいしか居ないんだから先に死なないでよね!」

 

「提督とロンディーネが居るだろう」

 

「空気読みなさいよ!!」

 

「ラパーチェ、あの時の問いの答え。今、答えさせてもらおう」

 

「今!?私たち死にそうなんだけど!」

 

「我もモンスターは怖い。モンスターにお前たちが倒されていくのが怖いのだ。だが王位についていては民を守れぬ。

民の命を失わないために、恐怖に打ち勝って見せよう」

 

雷砲。大地を抉る威力の攻撃に目が慣れた。

爵銀龍が教えてくれた攻撃の予備動作。

地形も建造物も何もかも崩れ去っていく黄金の暴風雨の中で、なんとか戦意を保って生きている仲間の姿だけが頼もしい。

雷砲を打ち終わってもまだ抉れた痕跡に電気が残留してビリビリと音を立てている。

昂獅子の光ファイバーのような体毛に凄まじいエネルギーが漲っていく。

 

「秘薬は持っているが、お前の回復が頼りだ」

 

二人の間を遮るように跳躍した昂獅子が拳を振りかぶり、拳の周囲に稲妻が張り巡らされる。

迅雷突進を使っていなくてもその移動速度は氷牙竜や惨爪竜に匹敵するほど速く、目を離した隙に死角に移動して高威力の攻撃を放ってくるため神経が擦り減る。

素早く打ち込まれた拳が地面を銃弾のように砕き、体毛から溢れた電撃が地を這う。

大地を割いて噴き出る稲妻を回避し、果敢に前進したセルジバーナを待ち構えていたのは昂獅子の二発目の拳だった。

 

セルジバーナの渾身の斬撃で血が飛び、大剣から放たれた熱によって空中で蒸発する。

それでも怯まずに拳は放たれる。

すかさず回復の演奏の用意をしたラパーチェに雷弾が降り注ぐ。

笛使いが彩鳥の能力を使うなら、演奏させなければ回復は封じられる。

龍属性による相剋が弱まっていくほど電気刺激による肉体強化の効果が上がり、パンチの破壊力も高まっていく。

 

今度こそは大剣の男の息の根を止める。

 

鉄拳が放たれる直前、セルジバーナはバックステップしながら大剣でガードの構えをとった。

大剣が当たる距離まで近づいたのは、攻撃を加えるためではなかった。

死角となっていた左腕に、姿を見せていなかった姉妹の騎士の奇襲。

昂獅子が違和感に気づいて振り返ったとき、すでに賽は投げられていた。

 

大技。

 

その刹那、セルジバーナとラパーチェが関心を寄せたのは奇襲の成否ではなく、もっと単純なことだった。

 

スラッシュアックスは変形によって重斧と鋭剣という二つの姿を持つ変幻自在の武器である。

大剣を凌ぐリーチで盤石の攻めを展開することが出来る重斧と、装填した薬液によって圧倒的な攻撃力を誇る鋭剣。

異なる長所を持つ二つの形態を切り替えることが可能だ。

 

しかし、鋭剣の状態を維持するためには重斧による攻撃を重ねて薬液を維持しなければならず、加えて薬液の出力を高めた《高出力状態》となるためには鋭剣で攻撃し続けることでビンを覚醒させなければならない。

 

ロンディーネのスラッシュアックスはセルジバーナとラパーチェが昂獅子の注意を引いている間に高出力状態に到達していた。

 

高出力状態でのみ使用可能となる一撃。

セルジバーナとラパーチェは自分がモンスターと戦っていることすら忘れてその瞬間を心待ちにしていた。

 

王国騎士最強、ロンディーネの放つ──

 

──『零距離解放突き』

 

腕を保護するために筋肉の硬化を開始した昂獅子を襲う大量の斬撃。そのパワーは爵銀龍のナイトメアクレイドルを彷彿とさせた。

電気刺激で硬化した筋肉すらザクザクと切り裂き、昂獅子の剛腕を削る。

セルジバーナの真溜め斬りの威力すら上回る、王国最強の斬撃である。

 

(怨敵のメル・ゼナは散った)

 

(セルジバーナとラパーチェの連携。演奏による回復効果はロンディーネにも付与される。

私とロンディーネによる奇襲攻撃から四人がかりでグループハントを展開し、昂獅子を討つ)

 

(ロンディーネの零距離解放突きは一撃必殺。いくら昂獅子でもあれを食らって無事では済まないはずだ)

 

(全てうまくいっている)

 

なのに何故だ。

 

(この悔しさは...)

 

王域三公。

エルガドの最重要ターゲットの一角。

王国を守る騎士として、同郷の古龍に情が湧いたとでもいうのだろうか。

 

(私の手で終わらせたかったのか?)

 

手記に記されていたのは、うずくまる幼い子供に簡素な装備で立ち向かう王国騎士。

何かを決心したあの日には、メル・ゼナを倒すのは私でなくてもいいと思っていたはずだ。

名前も知らない手記の挿絵の子供を助けたかったのだろうか。

しかし、手記の結末は今も闇の中。手記の内容は吟遊詩人の作り話かも知れない。

 

この戦場には、あの子供はいない。

 

「迷うな、私」

 

(ロンディーネが出撃した)

 

昂獅子は今、爵銀龍のナイトメアクレイドルで負った龍属性やられによって属性をコントロールできない状態に陥っている。

セルジバーナとロンディーネ、王国で最強の呼び声が高い二人が戦闘。

 

(私の役割は二人のバックアップと回復役のラパーチェの護衛)

 

一刻も早く、昂獅子の居るところへ。

 

(閃光玉は昂獅子の動きが読めなくなる。

音爆弾はラージャンには効かない。

ロンディーネのように大技を使っても、私は力ではロンディーネには及ばない)

 

(それなら...)

 

フィオレーネが選択したのは、効果範囲内の味方の筋力を一時的に高める《鬼人の粉塵》。

 

イヤリングとグリーヴに付与されている強化持続のスキルにより高出力状態の効果時間が持続していたロンディーネは、薬液の出力が落ちるまで武器の攻撃力が上昇している。

更に、ラパーチェの演奏によってロンディーネとセルジバーナの持久力が増加。

 

最強の騎士と狩場の王が、覚醒する。

 

牙獣の如き反射神経で昂獅子の動きを目で捉え、パンチやブレスを回避して鋭剣による斬撃を打ち込むロンディーネ。

そのダメージに昂獅子が怯むと、抜刀したセルジバーナが会心の攻撃を叩き込む。

戦いが激化するうちにラパーチェの演奏で追いつかなくなった回復をフィオレーネが生命の粉塵によってカバー。

そしてフィオレーネやラパーチェを狙えばディフェンスに意識を向ける必要がなくなったロンディーネとセルジバーナの手数が増える。

 

騎士の中で最も危険なのはロンディーネだ。

高速変形のスキルによって重斧と鋭剣を切り替える速度が速く、リーチと手数の変化に対応しようとするとロンディーネに注意を引きつけられてしまう。

 

スピードでもパワーでも昂獅子が上回っているが、騎士たちの連携によって身体能力の差を埋められている。

零距離解放突きでズタズタに引き裂かれた左腕の血管が自然治癒で元に戻るまで、まだ時間がかかる。血流の増加を伴う闘気硬化は左腕が治るまで使えない。

痛みを感じにくくなっているのは、興奮して分泌されたアドレナリンではなくロンディーネの剣から流れている薬品の影響のようだ。

しかし、龍属性による電力との相剋が終わりかけている今なら斉天の力を出せる。

 

最初に変化に気づいたのはロンディーネ。

 

(全身から放射する電流の量が増えた?)

 

逆巻くように起き上がった体毛の形状は、蜜蝋の翼のように獅子を天空に誘う。

憤怒の罪により日食する黄金の霊長。

白昼に舞い降りる百獣の王。

 

「あれって翼だよね!?

ラージャンって飛ぶの!?」

 

王国最大の脅威、激昂状態。

 

黄金の獣として雷の力を取り戻した昂獅子の足元で電流を発していたのは、ロンディーネとセルジバーナが戦っている間にラパーチェが仕掛けていたシビレ罠。

 

激昂したラージャンは、片腕で破壊した。

 

超帯電状態の雷狼竜の負荷にすら耐えられないシビレ罠では、激昂状態の昂獅子の動きを止めることはできない。

怒りのまま放った咆哮は体内の雷属性エネルギーを放出する旋風と化し、地上に差す光の柱として触れるものを消滅させた。

 

「閃光玉を使うか!」

 

「効かぬ。このまま戦うぞ」

 

「何故だセルジバーナ!今の攻撃を見ただろ!まともにくらえば回復など効果がない!

閃光玉でエネルギーを消費させないと危険すぎる!」

 

「ラージャンの闘気化は生命力を消費する。これだけの長時間闘気化していれば、息絶えていてもおかしくないほどにな。

だがこの個体は常に闘気化を維持しても疲労するどころか力が膨張している。

恐らく龍属性による抑制から解放されている最中なのだろう」

 

昂獅子が空中に手を翳すと、毛先から放たれた電流が爆発するように拡散してまるで閃光玉のような光を放った。

 

(見失った!)

 

「フィオレーネ!危ない!」

 

(背後!不覚...!)

 

『零距離解放突き』

 

閃光の合間、フィオレーネすら視認できないほどの速度で姿を消した昂獅子を唯一目で追って大技を命中させるほどの動体視力。

反撃を受けた昂獅子の腕を再度切り裂いた斬撃には、筋肉の硬化が通用しない。

どうやら重斧と鋭剣では切れ味が違うようだ。

 

鋭剣による攻撃は筋肉を硬化させても防ぐことができない。

 

悪魔のような表情で笑った昂獅子は口腔から雷砲のような勢いで雷弾を吐き出し、土煙を起こして再び目眩しをした。

しかし、ロンディーネはスラッシュアックスを重斧の状態へと素早く変形させて追撃を繰り出す。

 

左腕を硬化させて守ろうとした昂獅子の意表を突く地獄突き。

 

爪で引き裂こうとした昂獅子に対して、ロンディーネはバックステップで攻撃を避けた。

地獄突きによって喉を負傷した昂獅子は、喉が治るまで雷を吐き出すことができない。

口内に溜まった血を吐き、斧を持ったまま接近するロンディーネに向かって右腕の毛先から電撃を飛ばす。

 

ロンディーネのパワーが増している。

 

成長。

 

あの爵銀龍を肉弾戦で圧倒するほどの昂獅子の身体能力に刺激を受け、更に激昂状態となった昂獅子の力を見たことで肉体が覚醒。

たった今成長を再開したロンディーネの実力は世界最強のハンターである《導きの青い星》のレベルに近付いていた。

 

セルジバーナやガレアスを凌駕する、現大陸の全ての狩人の頂点。

 

昂獅子の腕に怒張した血管が浮き出る。

 

(激昂したラージャンの動きを目で捉えられるのは私だけ──)

 

爪と重斧がぶつかり、力の衝突に打ち勝った爪はロンディーネに届かず空を切る。

昂獅子は負傷した左腕でパンチを繰り出すが、ロンディーネはサイドステップで回避して重斧で喉を狙い、今度は昂獅子がサイドステップで攻撃を躱す。

 

(しかし私一人では勝てない)

 

昂獅子が巨大な岩を掘り起こし、ロンディーネに向かって投げつける。フィオレーネが大タル爆弾Gを投擲して岩に傷を付け、脆くなった部位に狙いを定めたロンディーネが重斧で岩を叩き斬る。

 

岩の影から姿を現した昂獅子が両腕を組み合わせた状態で振り下ろす。ハンマーナックルだ。

バックステップで回避したロンディーネの視界を隆起した地面が覆う。

セルジバーナがロンディーネをタックルで突き飛ばし、隆起した地面を砕きながら放たれた昂獅子のパンチを大剣で防ぐ。

飛散した地面の欠片を盾で防ぎながら、フィオレーネはセルジバーナに駆け寄る。

 

(セルジバーナ!ロンディーネの身代わりになったのか!)

 

セルジバーナはそのまま空中に弾き飛ばされ、大剣はセルジバーナの手を離れて転がった。

 

ダウンしたセルジバーナに向かって本能の赴くままに飛びかかる昂獅子。

フィオレーネとラパーチェが回復の用意をしたが、昂獅子の口内からは電流が迸っていた。

 

(雷砲が来る!!)

 

『人間が敵う相手ではない』

 

触れたものを全て消し去る雷の波動。

まともにくらえば回復など効果がない。

気光のコントロールによって昂獅子の動きが加速し、昂獅子の周囲が金色の光に包まれる。

 

『もう仲間を失いたくない』

 

自信に亀裂を入れる現実の正体。

 

『もう!私と競争出来るのはアンタくらいしか居ないんだから先に死なないでよね!』

 

仲間の死。

 

(()が味合わせてしまうのか)

 

「すまぬ...」

 

(民の笑顔は...ラパーチェ、お前に託した...)

 

『滅・昇竜撃』

 

鉄蟲糸技。カムラの里に伝わる翔蟲を利用した攻撃方法。

滅・昂竜撃は片手剣を用いた鉄蟲糸技だ。空中の翔蟲に引き上げてもらうことで空中へ駆け上がり、その勢いを利用してモンスターにアッパーカットを叩き込む。片手剣の技の中では最も威力が高い必殺技である。

 

『攻めの守勢』

 

胸当と帯甲に付与されているスキル《攻めの守勢》の効果により、攻撃を防いでから十二秒間だけフィオレーネの筋力が向上する。

フィオレーネは翔蟲ではなく、攻めの守勢と鬼人の粉塵によって強化された自身の跳躍力によって《滅・昂竜撃》を繰り出した。

 

『超会心』




曇天が晴れる。
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