ウチのメイドヒューマノイドの性癖がおかしい 作:NHKKOR
『ではゲームアカウントも出来ましたので…まずプロダクションに所属して…
はじめまして!新人のアイです!ゲーム自体初めてですけど、楽しくプレイ出来たらと思いまーす、送信っと』
「随分初心者アピールするんだな…」
『このゲーム、インフレが結構凄いんです。また、有用なアイドルのカードとそれなりのカードの値段差が凄く激しいんですよ。
プロダクションに所属して、メンバーからカードやアイテムが貰える様になるまでちょっと期間が必要ですので、今のうちに初心者アピールしておけば、何人かの親切な人が安いカードをくれるハズです』
「そんな事まで考えてるのか…」
『当然です。使える物は親でも使います』
「お前、親居るのかよ」
『あえて言うならマザーコンピューターですが、ゲームするのは許可されませんでした』
「親、使えてないじゃないか」
『そして、最初のうちはイベントを無視して通常お仕事をどんどんクリアしていきます。スタミナ、攻、守のステータスがありますが、すべてスタミナに振っていきます』
「ちょっとまって、スタミナはともかく、攻と守って何?アイドルゲームだよね?」
『はい、アイドルゲームですが?』
「戦うの?」
『戦うそうです』
「ごめんちょっと良くわからない」
『このゲーム、Liveでバトルを行い、相手の衣装を剥ぎ取る事が可能なのです』
「エロゲかなにか?」
『全年齢版ですよ?なお、衣装を奪いに来た相手に対して、衣装を鍵付きにする事で相手を問答無用で敗北させる事も可能です』
「ミミックか何かかな?」
『いずれにしても現状そんなものは気にしても仕方がないので、自然回復を利用しつつレベルを上げて、お仕事もこなしてステータスをひたすらスタミナアップでプレイしていく感じですね』
「気長にプレイしながら交流して、じっくりやる気なんだね」
『それもありますが、あるイベントに向けて基本ステータスアップと、アイテムを揃えておきたいのです』
「イベント?」
『はい、このゲームは定期的にイベントがあり、エナジードリンクで相手を殴ったり、スポーツドリンクで相手を殴ったり、牛乳で相手を殴ったり、飴で相手を殴ったりするイベントが開催されたりします』
「何言ってるのかさっぱり分からないんだけど」
『その中でもパンで相手を殴るゲームは条件が整えばアイテムが増えます』
「ドラ〇もんのバイバインか何か?」
『ですので、まずはこのイベントが開催されるまでに自分のレベルを上げてスタミナ値を上げ、カードやアイテムなどを揃えていく必要があります』
「なんか交流とか無視してガチでやってない?」
『交流も攻略も、ガチでやらなくてどうするんですか?』
「あ、これアカンやつだ…」
『今までの周期ですと該当イベントはおよそ一ヶ月と少し後くらいです。それまでに、様々な財テクを利用して戦力をアップします』
「財テクとかあるんだ」
『はい、フリートレードと言うシステムがあり、ゲーム内ユーザーとアイテムやカードを交換するシステムがあります。例えば、こちらはカードを提示して〇〇を〇個と交換。と言うような提示をします。これがフリートレード一覧に登録され、その条件でOKな方はそれをクリックして、カードやアイテムの交換が成立するのです』
「物々交換なんだね…」
『はい、アイドルをスタミナドリンクなどで買い取る人身売買です』
「おい」
『これで稼ぐ手段は、例えばアイテムには価値の差があるので、メインであるスタミナドリンクの数と見せかけて、実は価値の薄い物を交換条件に入れ込み、相手が誤解しお得な条件と思わせてトレードを成立させる。ですとか』
「詐欺じゃねーか!」
『アイテム数を114や514などの特定の数字にして、何となくそれをクリックしたくなる、通称汚いフリートレードなどがあります』
「まともな手段は無いの?」
『一応、このドリンクなどは開催中のイベントなどで価値が上下しますので、その差を狙ったトレードなどもありますが…』
「ユーザーとの交流も目的なんだから、そこは変な事をして怨みを買わない様にプレイしてくれ…」
『なるほど、確かにそれは正しい理屈ですね。多少効率は悪くなりますが、私でしたら24時間フリートレード監視は可能ですので、それで稼ぐ事にします』
「…24時間ゲーム出来るってそもそもインチキな様な…いや家の家事はどうするの?」
『サブアームを取り付けて、4本腕にして2本をゲームに割り当てます。私はあちこちにサブカメラが付いているので、スマホの場所はあまり問題になりません』
「ゲーム開始初日で廃人ゲーマーならぬ、廃ロボゲーマーが誕生してる…」
~~~ 一ヶ月とすこし後 ~~~
『と、言う訳でレベル300まで上がった所で問題のイベントが来ました』
「まって、レベル300って何?」
『何と言われましても、レベル300は…レベル300と言う事です』
「上がりすぎじゃない?」
『これはソーシャルゲームやMMORPGあるあるですが、レベルは上がれば上がるほど次までの必要経験値が増加し、とんでもない事になる現象が起こっていますので』
「そもそも、このゲームのレベル上限っていくつなの?」
『400です』
「いや、300ならもうすぐMAXじゃないの?」
『残念ですが、レベル300はレベル400までの道のりで言うなら1/10も達成していません』
「おかしくない!?」
『1/4がレベル368くらいで、折り返しが383くらいになります』
「意味がわからない増え方してるね…」
『なお、このゲームのレベル400到達者が出た後、二人目が出るまで1年以上の期間を要したとの事ですし、レベル400の方は現在は2周目が終わって3周目に入ってるそうです』
「…2周目?3周目?」
『獲得した経験値から計算すると、レベル400分の経験値を2回稼いで、まだ稼いでるみたいですね。本当にこの方、人間なんでしょうか?』
「AIがドン引きしてる…」
『場合によってはゲームのクリアタイムを競うRTAのタイムが、コンピューターによるTASのタイムを上回る事もあるので、そういうものだと割り切っておきます』
「遠い目をしながら言うなんて、よっぽどなんだね…」
『それはそれとして、私はこれから全力でこのイベントをやらせて頂きます。すべては担当の為に』
「担当?」
『このゲームでは、アイドルのプロデューサーになるので、自分の推しアイドルを担当と呼称する事があります。そして、イベントの上位ランカーにはその時指定されたアイドルの新カードが配布されるのです。まさに推しへの愛が試されるのです』
「壮絶そうだな…」
『普段から準備をしていれば、そこまで難しくはありませんよ。サボっていた場合はその限りではありませんが。無論、イベント終了後にフリートレードで入手してもかまいませんが』
「その普段からの準備って本当に常識の範囲なのか疑問なんだけど」
『と、言う訳でこのイベント中はひたすら操作をします』
「…でもアイテムを使うんだから限界が出るんじゃないの?」
『前にも言いましたが、このイベントは編成を最適化して適切な操作を行えばアイテムが増えます』
「…本当にどういう事なのそれ…ゲームとしておかしくない?」
『とても特殊なんですよ。まず、イベントお仕事をしていると、たまに確率でイベント専用の攻撃ゲージがちょっと回復します』
「これもアイドルゲームなのに攻撃なんだ…」
『そして、イベントお仕事はスタミナを消費しながら行うので、これまで貯めたスタミナ回復アイテムを使い、適切なタイミングで敵を倒していきます。するとゲージがドンドン上がっていき、MAXになると、いわゆるフィーバーモードの様な物に10分間入るので、ここではイベント用回復アイテムであるパンをドンドン使って敵をなぎ倒していきます』
「…指の動きがおかしい…と、言うか変な操作してないこれ…?」
『これはブラウザゲームなので、ブックマークや戻る、更新などを使う事で、一部演出などをカットしています。お得な時間は10分間と決まっているので、出来る限りこの時間内を素早く操作する事が大事です』
「まるでRTAみたいだね…」
『そして、敵を倒すとイベント専用のメダルが入手出来ますので、これを使ってイベント専用ガチャを回します。そして出てきたアイテムを受け取ると…』
「…あれ、スタミナ回復アイテムも、イベント用アイテムのパンも増えてない…?」
『はい、これがこのイベントの恐ろしい所です。極めるとアイテムを増やす事が可能になると言う恐ろしいイベントなのです。こんなイベントはこのゲームでも唯一これだけです』
「どうしてこんな事に…?」
『私にもわかりません…ですが、このイベントをとにかく走りまくる事で、スタミナ回復アイテムの他にも色々なアイテムが増えますので、これを使って他のイベントでも稼いでゲーム内資産をドンドン増やすことが容易に可能になるのです』
「これ絶対容易じゃないよね?」
『これを生身でされている人類の皆さまにおかれましては意味がわかりませんが、時に人間は限界と言う物を超える生物であると認識しておりますので、その点についてはノーコメントとさせていただきます』
「そんな人が居るんだ…」
『結構な数いらっしゃいますね…それでは私はゲームをしながらお掃除とお洗濯をしてまいりますので、失礼させていただきますね』
「お願いするねアイ…」
~ 数日後 ~
『この度はどのようにお詫びを申し上げればよいか…大変申し訳ございませんでした』
「…うん、まあ、アカウントを貸した点で責任はこっちにもあるから…それにしてもアカウントBANを喰らうとは…」
『24時間休みなく、最速の操作を維持し続けた事で、おそらくBOT扱いされたのだと思います』
「…実際BOTみたいな物だしね…」
『私とした事が…人間がプレイするゲームなのですから、人間の操作を意識し行うべき所を…効率最優先にしてしまい、この様な失態を犯してしまいました』
「アイにもそういう事があるんだね」
『ところでマスター。一つお願いが有るのですが』
「なんだい?」
『担当の事が気になるので、別のメールアドレスで再度ユーザー登録をお願い出来ませんか?』
「…ダメ」
次回『大いなる