大怪獣バトル ULTRA・MONSTER・SAGA 作:地水
まず一発目は一人のレイオニクスのお話。
事の始まりはとある宇宙旅行者から始まる。
無限に思えるほど広大に広がる宇宙の何処か。
星々が輝く宇宙の闇の中に浮かぶ一つの惑星があった。
その名は『惑星ライディ』、豊かな自然を有するこの惑星に、一つの宇宙船が近づいていた。
宇宙船・内部。
操縦室には白い髪が特徴的なヒューマノイドタイプの宇宙人の姿があった。
操縦席に座る美麗な女性の姿をした白髪の宇宙人はようやく見つけた惑星ライディに安堵を覚えた。
「よかったぁ、なんとか辿り着いた」
白髪の女性……"TK銀河人"ミゲロン星人の『ルミカ』は惑星ライディを目指していた。
元々宇宙旅行をしていた彼女は数日の節制を呈した星間渡航を過ごして、ようやくこの惑星へと辿り着く。
食料や燃料も数少なくなっていた今、補給ができる可能性がある星を見つけてルミカは歓喜に震えた。
「久しぶりの食事できるよね。ライディの食事ってなんだろうね。気になるなぁ」
今まで星間渡航の生存ため節制してきたルミカは久しぶりのご当地の食事にありつけると信じて、操縦席に備え付けられたタッチパネル状の操縦パネルを操作する。
宇宙船の推進ブースターが噴射して、ライディへ向かう速度を速めていく。
ルミカが向かう惑星ライディ。
だが、そこでは既にとある異変が起きていた。
~~~~
――惑星ライディ、森林部。
多くの草木が生い茂るその大自然……その中を駆け巡る一つの赤い影。
まるで獣のごとく俊敏で駆け巡る【ソレ】は、森林の中で何かを探している様子だった。
【ソレ】の目的は青く輝く眼光で移り変わる景色を見抜き、そしてあるモノを見つける。
「……!」
近くの木陰に隠れ、【ソレ】は見つけたモノを再度確認する。
それは、惑星ライディに住む原住民たちであり、彼らは何かを出迎えるように待ちわびている様子だ。
【ソレ】は静かに様子を伺っていると、自分の耳に聞きなれた噴射音が響く。
上を見上げると、はるか上空から降りてくる宇宙船の姿があった。
どうやらこの惑星ライディに降りてきた宇宙船のようで、【ソレ】は憐みの視線を向けながらポツリと呟く。
「ハッ、またやってきたのか」
『ピィ?』
「助けないのかって? お人よしだな、お前も」
他にいるように会話した後、宇宙船が来た事を吐き捨てるように【ソレ】は背を向けると、木陰から出てきて自身の背中にある翼を広げる。
銀色の両翼を広げ、【ソレ】は誰にも悟られずに森の奥へと去っていく。
一方、惑星ライディの地上へと降り立った宇宙船。
無事に着地した宇宙船の出入り口から出てきたのは、ミゲロン星人ルミカその人。
ルミカが出入口から出てくると、まず最初に飛び込んできたのは自分を出迎えてくれたのは惑星ライディの住人達だ。
「ようこそ、おいでくださいました!」
「えっ、なになに?」
突然出迎えられてルミカは戸惑う。
普通なら住人に訝しまれたり、最悪敵対反応を示すのがよくある宇宙旅行であるトラブルだ。
それなのにライディの住人達は異星人である自分を快く受け入れて出迎えにきて来た事に困惑しているのだ。
「えっと、どうも」
「宇宙の旅でお疲れだったでしょう。さぁさぁ、こちらへ」
ライディの住人の一人に催促されて、ルミカは流されるがまま進んでいく。
せめてもの警戒心として、自分が乗ってきた宇宙船はどこかへと飛んでいき、目立たない所に隠蔽しておいた。
ルミカは恐る恐る住人の案内によって彼らがいる集落へと招かれるのであった。
~~~~
惑星ライディ・某所。
「はぁぁぁぁ……気持ちいいわぁ」
ライディの集落に源泉から湧く露天風呂にルミカは入っていた。
透明感のある淡い緑色のお湯が広がる湯舟に浸かり、ほっそりとしながらもほどよく肉付いた体の疲れをほぐす。
しまっているところはしまって、出ている所は出ているという異性が見たら魅力的なその外見を有するルミカ……普段ならしっかりとした性格をしている彼女も、今この時だけはだらけ切っていた。
「ああもう、最高……温泉もあるし、食べ物もおいしいし、いたせりつくせりだよぉ」
湯気が漂う中をかき分けながら、ルミカは目の前に広がる景色へ視線を移す。
時刻はすでに夕暮れ時、赤く染まった森林部が広がっており、ここが理想郷と言わんばかりな大自然の景観に目を奪われていた。
だが、これだけ心に休まる事をしているのにもかかわらず、ルミカは一つだけの不満を口からもらした。
「ああ、これであとは素敵な恋人がいれば、問題ないんだけどなぁ」
ルミカが口にしたのは、自分自身が欲している『素敵な恋人』。
彼女の出身星であるミゲロン星では『恋人達は宇宙旅行』の一種の流行のトレンドとなっていた。
うら若き乙女ながらも独り身なルミカは一緒に旅をしてくれる異性の誰かを探していた。
「はぁぁぁ、こんな事なら恋人の一人や二人くらい作ってから宇宙へ出たほうがよかったかなぁ」
そう言いながらため息をついたルミカは再び湯舟へと浸かる。
心の片隅にできた惨めな思いを洗い流そうと心身を温めていると、そこへ一人の女性の声が聞こえてきた。
温泉に付き添いの女性スタッフのようで、彼女はお湯につかるルミカの前に出てくると柔和な笑顔で笑いかけてくる。
「お背中、お流ししましょうか?」
「ありがとうございます。お願いします」
湯舟から出て、白い肌を露わにしながらルミカは洗い場へと移動する。
ルミカは椅子に座るとそのまま女性スタッフに背中を預かる。サービスが行き届いているなとルミカが思う一方で、女性スタッフは近くにあった風呂桶を掴み、暖かいお湯を組んでくる。
……その際に、風呂桶に隠して銀色に光る何かを携えて。
無防備になったルミカの綺麗な背中へ、その銀色の刃を突き立てようと……。
『ピィィィ!!』
だが、刺さろうとした直前、振り下ろされた刃を握った腕へ何者かが体当たりしてきた。
ぶつかった女性スタッフは吹っ飛び、風呂桶が積まれた場所へと突っ込んでしまう。
いきなりの出来事にルミカは急いで振り向き、その惨状に驚いた。
「えっ、なになに!?」
振り向けば崩れた風呂桶の山と、その中から覗かせるナイフを持った腕。
そして自分の隣で浮かび、うなり声をあげる赤い球のような生物。
トゲトゲとした突起に嘴を有した鳥の顔を有したその生物はまるで警戒するように吹き飛ばされた女性スタッフを睨みつけていた。
唐突の謎の生物の登場に驚くのもあるが、ルミカは刃物を握る女性スタッフの姿も気になっていた。
そこへ、女性スタッフが崩れた風呂桶の中から出てきた……だが、様子がおかしい。
不自然なほどのかくかくとした機械めいた動き、それに反して怪しく光るナイフ、何よりおかしいのは怪我した顔から覗かせるのは血ではなく……壊れたモニターのようなホログラフ状のノイズだった。
「お背中、お流し、シマショウカ?」
「ひ、ひぃ!?」
ルミカは悲鳴を上げて女性スタッフから後ずさった。
女性スタッフは先程の人間らしい様子から一転、先程と変わらぬ笑みを浮かべ俊敏な動きでナイフを構えて襲い掛かる。
あっという間に迫られてルミカの柔肌へとそのナイフを切り裂こうとするが、その寸前に赤い生物がナイフの刀身を嘴で咥える。
『ピィィィィ……ピィッ!』
赤い生物は自身の体内に力を籠めるとナイフを加えたまま口内から火炎を吹き出す。
肌にひりつくほどの高熱がナイフの刀身を溶かし、溶解した鉄鋼物へと変貌させ、さらには女性スタッフに引火。
燃え盛る炎は女性スタッフを焼き尽くしていき、湯舟へと突っ込む。
温泉に入ったにも関わらず炎は鎮火するどころか燃え広がり……その湯舟からノイズが広がる。
そのノイズが傷口が広がるように露天風呂はバグで変貌したゲーム画面のようにおかしくなっていく。
自分が今まで楽しんでいた浴場の光景がおかしくなっていくことにルミカは困惑していた。
「一体何が……きゃっ!」
『ピピッ!』
いきなりの出来事に呆然とするルミカに、赤い球の生物は彼女を逃げるようにすり寄って急かす。
言葉の通じるか怪しい生物の目的は分からないが、少なくとも助けられた手前だから彼(?)の急かしに乗るしかなかった。
「一体なにが起きているのよ……」
ルミカは急いで露天風呂の浴室から出て、急いで身支度をした。
浴室から急いで出て、元の服装を身に着けたルミカは赤い生物と共に集落を出ようとしていた。
急いで逃げようとしているルミカへ向けて声をかけるものがいた。
「おや、いったいどこに行かれるんですか?」
惑星ライディの住民達は出迎えてくれた時のような笑顔を見せるが、その手に握っているのは鎌や鋏といった凶器になりえる刃物だった。
住人達は逃げようとするルミカを仕留めるべく一斉に襲い掛かる。
「きゃあっ!?」
『ピピィ!』
ルミカを守るように外へと出た赤い生物は火炎弾を繰り出し、襲い掛かってきたライディの住人を蹴散らしていく。
火炎弾を食らった住人達は燃え盛る炎と共にノイズとなって消えていく。
跡形もなく消えていく姿はまるで最初からそこになかったように……その光景を見ていたルミナはある種の恐怖を感じた。
「なんなの……一体なんなのよ」
自分が今いるこの場所が一体なんなのか、ルミカは今途方もない不安に襲われていた。
襲い掛かってくる住人達が火炎弾に食らって消えていく様子を見て、少なくともここがまともなところではないと悟る。
今逃げなければならない……逃げて、ここから逃げ出さなくては。
その思考に至り、ルミカは襲い掛かる住人を避けながら再び逃げようとする。
逃げるルミカを助けるように赤い生物は火炎弾を吐いて殿を務めて応戦を続ける。
――日は静まり返り、夜。
やがて赤い生物を連れたルミカは集落から出て、森林部を走る。
少ししてある程度広い場所へ出ると、そこであるものを目にして立ち止まった。
「こ、これって……」
ルミカは目の前にあるものは驚きの声を上げる。
そこにあったのは、破壊された跡が残る宇宙船だった。ルミカ自身の乗ってきた宇宙船とは別の物だが、それでも目に余るほどの惨状を見て顔をしかめた。
この宇宙船の存在は一体どうなったのか、もしかしたら私のようにライディの住人にやられたのか、と嫌な考えがよぎってしまう……。
「ヨウコソ、ヨウコソ、ヨウコソ」
多大な不安が押し寄せる中、ルミカの背後に迫るのは多くの惑星ライディの住人達。
出迎えられた時と同じ笑顔を浮かべながらも凶器を持って迫る姿に恐怖心を覚えた。
昔何処かで見た映像媒体で見かけたことのある恐怖演出が特徴的な作品の場面によく似ている。
それが現実となった今では非常に恐ろしく感じ、ルミカは耐え兼ねて悲鳴を上げてしまう。
「きゃあああああああ!!!」
悲鳴を上げた事をきっかけに、ルミカへと一斉に襲い掛かる住人達。
あまりの多さに赤い生物相手でも多勢に無勢……ルミカも含めて命の危険を晒しかねない。
絶体絶命、そんな時だった。
――両翼を広げた赤い影が、住民達を切り裂いた。
「ハァッ!!」
吹き飛ばされる住人達と、いきなりの助太刀に驚くルミカ。
恐る恐る目の前に立つ何者かの姿を見た。
背中から生えた蝙蝠に似た銀色の翼。
甲冑に似た硬質な赤と金の体。
短い牙と角が生えた銀色の頭部。
その身体的な特徴を露わにした異星人は青白い目を赤い生物へ向けると、その名を口にした。
「戻ったか、パンドン」
『ピィ』
異星人に名前を呼ばれ、赤い生物――浮遊怪獣『リムパンドン』は小さい鳴き声で頷いた。
その手には、二本角の形状を有したやや丸みを帯びた有機的な形状を持ったアイテムが握られていた。
真紅色とメタリックイエローを基調としたそのカラーリングだが、そのアイテムにはルミカには見覚えがあった。
「それって、バトルナイザー……?」
それは、宇宙全体にて伝わる
全宇宙を支配しようとした帝王・レイブラッド星人が自分の後継者を見つ出すために生み出したのが、レイブラッド星人の遺伝子を受け継いだ存在【レイオニクス】。
レイオニクスはバトルナイザーと呼ばれる召喚機を用いて怪獣を使役し、同じレイオニクスの怪獣と戦い合わせて血で血を洗う死闘・レイオニクスバトルを繰り広げていた。
そして最後に残ったレイオニクスがレイブラッド星人の後継者として選ばれ、最強の存在になるという……。
風の噂ではとある優勝候補だったレイオニクスバトラーに蹴散らされ、レイオニクスバトルは破綻。
黒幕であるレイブラッド星人の企んでいた計画も宇宙の藻屑となって消えたという、そんな話。
宇宙旅行の最中に聞いたそんな眉唾物の話を聞いていたルミカは、目の前に立つ存在がただの異星人じゃないことに驚く。
一方で、蝙蝠の異星人はその鋭い眼光を大自然豊かな惑星ライディの光景……否、まやかしに隠された何かを見抜いて、ポツリと呟く。
「この女を助けておいてなんだが、お前も倒させてもらうぞ」
ルミカを助けることになった一人の蝙蝠のような宇宙人。
――その名は、バット星人『ブレイゼ』。
またの名をレイオニクスバトラー・ブレイゼ。
戦いに生きる凶翼が今ここに姿を現した。