大怪獣バトル ULTRA・MONSTER・SAGA 作:地水
突如ルミカの前に姿を現した異星人――バット星人・ブレイゼ。
彼は背中の両翼を広げると、地面を蹴って飛んで襲い掛かる惑星ライディの住人へ迎え撃った。
「シャァ!」
甲殻類の鋏の如く鋭い爪で住人達をすれ違いざまに切り裂いた。
住人達は鮮血の代わりにノイズがかったホログラム状のエフェクトが噴き出し、そのまま消失。
先程のリムパンドンの活躍によって住人達が血が通う生きている人間じゃない事は分かってはいたが、それでも目の前で繰り広げられる光景にルミカはいい思いはしなかった。
「っ……!」
目の前の惨状に思わず目をつぶるルミカ。
臆する彼女に対して、ブレイゼは率先して襲い掛かる住人達をその手でさばいていく。
振り下ろされる凶刃をその手で力づくで粉砕し、がら空きになった横腹へ鋭い蹴りを叩き込む。
吹き飛ばされ……るのではなく、まるで消しゴムで絵を消すように掻き消える住民。
背後に忍び寄る相手には裏拳を叩き込み、そのまま他の住民まで吹っ飛ばす。
巻き込まれた住人達は消滅し、ブレイゼはその光景を見て口を開いた。
「さんざんやってきたが、やっぱりホログラムの
ギロリ、とその鋭い視線を消滅していくブレイゼは向ける。
既に手をかけた住人達は転がる暇もなくノイズがかったエフェクトと化して消滅していく。
ルミカを始末しようとした刺客達はすべて片付け、ブレイゼは退屈と言わんばかりにため息をついた。
「はぁぁぁ……やっぱり、
「え、えっと……」
「ん?」
ブレイゼが振り向くと、そこにはこちらを見て怪訝な表情を見せているルミカの視線と目が合った。
自分の狂気荒ぶる戦いぶりに引いているのか、それとも怖がっているのかとブレイゼは思いながらブレイゼは視線を外した。
「おい、お前……早くこの星から消えろ。お前が思ってるほどこの惑星は危険でいっぱいだ」
「う、うん……そうだ、助けてくれて、ありがとう」
「……おう、そうかい」
ルミカから言われたお礼の言葉に少し驚くブレイゼ。
眼の光が一瞬強くなるが、すぐさま元の輝きの大きさとなり、平静を保った。
ブレイゼはチラリと視線をルミカからリムパンドンへ戻すと、手に持っていたネオバトルナイザーを向けた。
「戻れ、パンドン」
『ピィピィ!』
光のカード型の粒子となって翳されたブレイゼのネオバトルナイザーに入っていくリムパンドン。
ブレイゼはネオバトルナイザーのディスプレイに表示されたパンドン、そしてパンドン以外の怪獣二体の影を映し、話しかける。
「準備は万端、そろそろ仕掛け時か」
ブレイゼは表示されていたディスプレイを確認した後、ブレイゼは一旦どこかへ移動しようとする。
だが、『くしゅん』という可愛らしいクシャミを耳にして足を止める。
振り向くと、そこには両腕を抱えて寒がるルミカの姿があった。
「ううう……湯舟から出たばっかりだから冷える冷える」
「ちっ……お前、風邪引くぞ」
「好きで引くわけじゃないんです……くちゅん」
舌打ちを打つブレイゼに対し反論するが再びくしゃみをしてしまうルミカ。
そんな彼女を見かねて、ブレイゼはため息をつきながら何処からか取り出したローブを投げ渡した。
「きゃっ、って、これっていったい?」
「それでも着とけ。怪獣ウーの毛で編んだ防寒着だ。寒さには強い」
「あ、ありがとう……」
投げ渡された"伝説怪獣ウー"の防寒着を纏うルミカ。
意外とふわふわとして着心地のいいそれにほんのりこわばっていた表情が少し安らぐ。
安堵しているルミカの様子を見てブレイゼはそっぽを向くと、自分が先ほど向かおうとしていた方向とは違うところへと行こうとする。
奇しくもそれは、ルミカがこの惑星に降り立った直後に隠した宇宙船がある方向だったからだ。
「行くぞ、お前の宇宙船にな」
「わ、私の宇宙船に?」
「本当は一切合切元凶を潰してからお前の宇宙船に相乗りさせてもらうつもりだったが……事情が変わった」
ブレイゼは淡々と理由を述べると、ルミカの体を掴む。
「ひゃわっ!? ちょっとえっち!」
いきなりの対応にルミカは顔を赤くして驚くか、彼女の初々しい反応などお構いなしにブレイゼは自身の両翼を広げ、地面を蹴り上げた。
ルミカを抱えたまま空を飛び、あっという間に宇宙船の付近まで辿り着く。
「あっ! あった、私の宇宙船!」
「地上に着いたらお前はさっさと中に乗れ」
「えっ、あなたはどうするの?」
「この星から脱出しようとするのを止める奴らをぶちのめす」
唐突に沸いたルミカの疑問を答えると、ブレイゼは突如飛行高度を上げる。
一体何を、とルミカが思った瞬間、先程までいた場所に火球が通り過ぎた。
突然の出来事に体が固まるルミカ……そんな彼女を抱きながらブレイゼは視線を後方へと移す。
そこにいたのは巨大な体を誇る赤い怪獣だった。
『ギャオオオオオオ!!』
分厚そうな赤い皮膚と、青い皿のような器官がある頭頂部。
ブレイゼにはその特徴のある怪獣に見覚えがあった。過去何度かレイオニクスバトラーが連れて交戦したことがあるからだ。
『破壊獣モンスアーガー』、それはとある惑星が怪獣兵器として生み出した怪獣だ。
「向こうから仕掛けるとは、こっちが出向く手間が省けるってもんだ!」
恐らく脱出しようとしている自分達を邪魔すべく黒幕が出撃させたであろうそのモンスアーガーは両手を組んで放つ赤色光弾で撃ち落とそうとする。
空中を飛ぶブレイゼはその赤色光弾を巧みに避け、まっすぐ宇宙船へと向かっていく。
だが、予想外な出来事が起きた。
宇宙船の近くの地面が突如割れ、そこから二体の怪獣が姿を現した。
赤い体と青く光る器官を有する頭頂部の怪獣……なんと、2体のモンスアーガーが出現したのだ。
二体のモンスアーガーはこちらへ近づくブレイゼへ狙いを定める。
合計三体のモンスアーガーに行く道も逃げ道も阻まれ、ルミカは眼を見開いた。
「そ、そんな……ど、どうすれば!」
「無論、戦うに決まってんだろ。腹括れ」
「で、でも私……戦えないし、なんにもできない!!」
「へッ、できなくていいんだよ。お前はじっとしてろ」
三体のモンスアーガーに恐れ戦くルミカにそう言いながら、ブレイゼは自身のネオバトルナイザーを構える。
ネオバトルナイザーのディスプレイから三体の怪獣が封じされたカード型エフェクトが出現。
三体のカードの中の怪獣たちは各々咆哮を上げながら、ネオバトルナイザーへと読み込まれていく。
【バトルナイザー・モンスロード!】
「行け、パンドン! グエバッサー! マジャッパ!」
その瞬間、ネオバトルナイザーから出現した光は怪獣の姿となって、それぞれモンスアーガー達へと激突。
やがて姿が整い始めると、そこにいたのは三体の怪獣だった。
突起のついた赤い体、鳥の顔を持った双頭、輝く金色の瞳。
――『双頭怪獣パンドン』
白と赤に彩られた大きな翼、鋭く尖った嘴、猛禽類のような外見。
――『猛禽怪獣グエバッサー』
いくつもの吸盤がある体、背中から伸びている胸鰭タツノオトシゴのような顔。
――『水異怪獣マジャッパ』
三体同時に出現したブレイゼの使役する怪獣達は、自分達の意思でモンスアーガー達へ迫っていく。
まず最初に激突したのはパンドンだった。
パンドンは襲い掛かるモンスアーガーに対し、両腕による殴打で応戦。
烈火の如くすさまじい勢いの一撃に少しひるむモンスアーガーだが、負けじと口から火炎攻撃を繰り出す。
だがパンドンは真正面からその火炎攻撃を受け止め、そのまま前進。
繰り出された火炎を吸収、そしてそれを利用した突撃攻撃をモンスアーガーへ叩き込んだ。
一方、闇夜の大空を舞うのはグエバッサー。
地上のモンスアーガーから放たれる赤色光弾を華麗に飛んで避けると、自身の両翼を大きく広げる。
そして羽ばたかせる要領で両翼を大きく振るい、そこから起爆弾にもなる羽根による攻撃・バサフェザーシュートを繰り出す。
上空から雨のように降り注ぐグエバッサーの羽根はモンスアーガーへと炸裂し、多大なダメージを与えていく。
そして、モンスアーガーと取っ組み合うのはマジャッパ。
自身の腕にある強力な吸盤部分を巧みに使い、モンスアーガーの身動きを封じる。
自由に動くことができないモンスアーガーに対し、マジャッパは自分の体を捻って大回転。
そのまま大回転した後、モンスアーガーを投げ飛ばし、地面へと思いっきり叩きつけるのであった。
三者三様の戦いを繰り広げている光景を見て、ルミカは目が離せなかった。
普段自分達が恐れているはずの怪獣達が見せる激しい戦いにどこか魅入られていた。
自分を抱える形ですぐそばにいるブレイゼは、静かにその光景を横目に見ながら宇宙船へと近づく。
やがて宇宙船のすぐ傍まで降り立つと、ブレイゼはルミカを下して3体のモンスアーガー達と戦うパンドンへ向かって叫んだ。
「パンドン、火炎地獄!」
ブレイゼの叫びと共に、彼の持つネオバトルナイザーが一際輝く。
同時にパンドンの二つの嘴から迸る炎が噴き出し、そのまま不思議な軌道を描いて巨大な火炎弾となる。
その火炎弾を勢いよく繰り出し、3体のモンスアーガー達へ直撃させた。
パンドンの必殺の一撃・火炎地獄は直撃した瞬間、モンスアーガー達を飲み込むほどの巨大な火柱となり、三体纏めて焼き尽くしていく。
防御力を誇る分厚い皮膚すら貫いて焼かれながら3体のモンスアーガー達は大爆発を起こして敗れ去った。
~~~~
出現した三体のモンスアーガーが敗北した光景を見て、焦る存在がいた。
機械人間めいた姿形を持ったその異星人……その名は『プログラー星人』。
高度な科学技術を誇るプログラー星にて生まれたプログラー星人はこの惑星ライディにて宇宙を旅する者達に対しての罠を張っていた。
ホログラム発生装置と幻覚ガス発生装置で作り出したこの偽りの大自然の星に招き入れ、油断したところを立体ホログラムの住民達やモンスアーガー達に始末させていたのだ。
だが、この惑星ライディにいつの間にか潜んでいたブレイゼの登場により計画は崩れ去った。
頼みの綱であるモンスアーガー達もレイオニクスである彼が鍛え上げた怪獣達によって倒されたのだ。
このままでは自分の命すら危ない……そう思ったプログラー星人は見つかる前に逃げようと宇宙船を操作して、惑星脱出を図ろうとする。
こんな辺境のない星など、おさらばだと言わんばかりにプログラー星人は上空へ滞在していた宇宙船へ乗り込もうとする。
―――そこへ突如だった、強力な水流が宇宙船に直撃したのは。
一体何が起こったのかと外部モニターを確認する。
巨大なタツノオトシゴのような怪獣――マジャッパと、そのマジャッパを抱えて飛ぶ猛禽類のような鳥の怪獣――グエバッサー。
どうやらマジャッパの鼻吻から繰り出した高圧水流・マジャッパ水流によって宇宙船は撃ち落とされたようだ。
宇宙船は地上へと不時着し、その際に起きたプログラー星人はそのまま地面へと倒れ伏し、そのまま動かなくなる。
マジャッパとグエバッサーはプログラー星人の姿を確認した後、宇宙船の残骸を粉々に破壊。
どうやら宇宙船に積んでいたであろうホログラム装置が破壊され、機能を失って徐々に大自然だった景観がなにもない荒野へと変わっていく。
二体の怪獣は目的を果たしたといわんばかりにプログラー星人へ背を向けると、そのまま姿を消すのであった。
~~~~
惑星ライディ、宇宙船内部。
この惑星本来の荒野だけの景色になった光景を宇宙船の内部越しから見て、ルミカは少し落ち込んでいた。
「これが惑星ライディの本当の姿……なんだか寂しい所ね」
「なにもなかった惑星こそが黒幕にとって都合のいい星だったんだろう。皮肉なもんだ」
楽園と言われていた惑星が偽りの物だと知って残念がるルミカに、先程までモンスアーガー達と戦っていたブレイゼの姿があった。
彼は自分が隠し持っていた燃料や食材をありったけ積むと、成り行きで相乗りすることになったのだ。
共に行動するのはいつまで書き待ってないため、ルミカはブレイゼに対して目的を訊ねた。
「で、これからどうするの? 行くあてあるの?」
「さぁてな。だが、俺にはやり遂げなければいけない目的がある」
「目的って?」
ルミカは振り向いて尋ねるとブレイゼは眉を潜めて答えた。
「知っての通り、俺はレイオニクスだ。同じレイオニクスと、同族と戦って勝たなければ存在価値がない存在だ」
「……」
「勝てば生き、負ければ待つのは死……それがレイオニクスの
「負けて、生き残った?」
ルミカの疑問に対して、ブレイゼは静かに頷く。
その脳裏に浮かぶのは、かつて自分を負かした強敵。
銀色の体、胸元に光る一つの星、どこかの辺境の惑星でいう"神仏"を思わせる顔。
レイオニクスではない存在でありながら、怪獣とも戦って勝った光の超人。
自分はかつてその超人に挑み、そして敗北した。
負けて死を覚悟した自分を生きる道を進ませた一人の戦士。
かつて出会った一人の異星人の事を思い出しながら、ブレイゼは手元に握るネオバトルナイザーを見せる。
「俺は拾われたこの命を何なのかと答えを探すために使う。そのために、修羅の道をあえて進む」
「……そっか。あなたは凄いんだね。私を助けて、それで悪いやつ倒しちゃって」
「あれは成り行きだ。パンドンがお人よしな故でな」
辟易とした表情を浮かべてブレイゼはネオバトルナイザーを揺らす仕草を見せた。
荒ぶる戦いぶりを見せた彼を見て驚いたが、意外にも人間味がある彼にルミカはどこか安心を覚えたのだ。
「じゃあ助けたお礼に乗せていってあげる。どこまで行く?」
「……惑星ブゴンベ、ちと辺境の星だがあそこはこの宇宙でも源泉が多いリゾート惑星だ。そこで湯治をする」
「温泉!? 早速向かおう!!」
操縦パネルを操作して、浮上するルミカの宇宙船。
上空へと飛んでいく宇宙船は次なる目的地へと目指すことになった。
レイオニクスバトラー・ブレイゼ。
無限に広がる宇宙にて、次なる相手は一体誰か?