東方禁初幻譚   作:鈴華

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前 書 き の ネ タ が な い !

それでは、本編どうぞ。


Ep,5 bloody legion

満月の夜。虚ろな眼をした人間やそうでない者が列をなして移動していた。それを丘の高台から見下ろす二つの影があった。一人は体躯の良い男性。貴族服を着込み、腰には一本の剣を掛けている。もう一人は金髪の女性。彼女からは闇色の妖気が漏れ出ていた。彼女の妖気が辺りに広がり、黒い霧を生み出している。

 

「まさか今日中に行動するとは思わなかったわ。焦り過ぎじゃないかしら?」

「いや、人質が奴らの手に戻ったとなれば、奴らが動くに決まっている。雑草は早いうちに毟り取っておかねばな。」

「そう。それで、ヴラド伯爵は何か策があるのかしら?」

 

ヴラドはにやりと笑い、月光で光る犬歯を覗かせながら、腰にある剣をなでた。

 

「あちらには『時の術師』がいる。少なくとも、マキナは動けない。それにあちらの戦力は出来うる限り削いだ。動けるのは、あの死にそこないの老人のみだ。」

「そうだといいわね。」

「最悪の場合は、私自身がこの『魔剣バルムンク』をもって排除するだけだ。貴様の出番はないぞ、ルーミア。」

「それは残念ね。それじゃあ、私は帰らせてもらおうかしら。」

「好きにすればいい。」

 

ルーミアは薄く笑いをこぼした。

 

「貴方の今の力がどれだけのものか、見せてもらうわ。魔神さま。」

「何か言ったか?」

「何も。それじゃあ、私は行くわね。」

 

彼女が闇の中に消えていく姿を見送ると、ヴラドは群れをなす眷属を見下ろした。

 

「…さて、どう出る?スカーレット。」

 

 

 

「多いですな…。」

「そうだな。100…いやもっといるか。」

 

樹の枝に乗り、深は小さな望遠鏡で状況を見ていた。カルマも堕天した眼で眺めていた。

 

「あの全員がヴラドの眷属か。」

「そのとおりです。」

「あの中に、お前らの従者だったやつは何人いる?」

「ふむ…。ざっと15人くらいでしょうか?」

 

あの中から15人を救い出さなければならない。しかも、カルマはその者たちの顔を知らない。

 

「幸い、彼らは固まって移動しています。そちらは私がなんとかしましょう。」

「俺はその他諸々を引き受ける。」

「頼みます。」

 

そう言い残し、深は一瞬にして消えた。カルマもそこから跳躍する。黒い服が闇にまぐれ、金色の髪が微かに軌跡を残すように移動する。深とは逆の方向だ。カルマの黒服のおかげで、まだ彼は見つかっていない。―と、その時、敵の動きが慌ただしくなった。どうやら、攻撃を始めたらしい。

 

「…こっちも始めるか。」

 

深のいるであろう方向に移動しようとする集団の前に、突如としてたくさんの十字架が現れた。突然のことに足が止まる。それだけでなく、吸血鬼の弱点である十字架が晒されてはひとたまりもない。その十字架の一つにカルマが着地する。

 

「さぁ、脳すら働かないド低能ども。俺を楽しませろ。」

 

十字架がある以上、あちらの戦力は激減していると言って過言ではない。カルマは磔十字から跳びあがり、生み出したソウルイーターを振り落す。今回は効力を発揮している。鎌に斬られれば最後、魂は殺されることとなる。しかし、今の奴らはヴラドの効果で元々精神―魂が殺されていると言える。そのため、ヴラドの能力を遮断しているようなものだ。斬られた者は姿形を崩すことなく、その場に倒れた。

 

「ハッ!」

 

その倒れた身体を蹴り上げる。それが壁となり、カルマの姿を隠す。その間に移動し、死角にいる敵の魂を狩りとっていく。

 

「やはり、歯ごたえがないな…。」

 

肉体を素通りするため、斬った感覚を感じることができない。粗方片付いてきたところで、不意に背後に近づく気配を感じた。

 

「深…。いや、違うか。」

 

予想はしていた。万が一の可能性で考えてはいたが、まさか本当に予想が当たるとは思わなかった。ここに来る前に、彼の未来を見ておけばよかったかもしれない。

 

「噛まれたか。」

 

そう。今の深はもはやスカーレット家の従者ではない。ヴラドの眷属へと変わってしまったのだ。

 

「―ッ!」

 

振り返る前に接近を許してしまった。カルマと深の距離は0。意識を失いながらでも、能力を使えるようだ。そして、深の犬歯が首筋に接触する。

 

「拒絶!」

 

反射的に魔法を発動。噛みつかれる直前でどうにか止める事が出来た。深を蹴り飛ばし、距離を開ける。

 

「チィッ!厄介だな。」

 

深の能力を未だに理解していないカルマ。考えられるのは瞬間移動なのだが、それならあの時、刺し殺さなくても、違う方法で殺すこともできただろう。それに今のもそうだ。噛む寸前で移動するのでなく、噛んだ状態で移動すればいいだけなのだ。

 

「―クソッ!」

 

まただ。一瞬で移動し、カルマに噛みつこうとしてくる。拒絶を発動しているため、噛まれることはないが、これでは埒が明かない。それにしても、彼ほどの手練れが眷属レベルの敵に噛まれるようなヘマをするようには思えない。ならば、考えられるのは一つだけ。ヴラド自ら出てきたということになる。

 

「磔十字!」

 

深を蹴り飛ばし、十字架に拘束させる。だが、彼は移動しなかった。何はともあれ、今はヴラドだ。奴自身が出てきている今だからこそ、討つに越したことはない。堕天した瞳で眷属を操っている魔力の源を見つける。流れは林の奥から来ていた。

 

「高みの見物とはいい度胸じゃねぇか。」

 

すぐに駆け出し、闇の中を進んでいく。出来うる限り早くことを済ませなければ。

 




―というわけで、ルーミアの登場でした。
多くのSSで諏訪大戦の時に見かけることが多いんですけどねw
私はこの時に出しました。
理由は名前が片仮名であることと、外見がフランに少し似ているということです。
まぁ、このSSではスカーレットとはあまり深い関係ではないんですけどね。

あと、前作に登場した魔剣バルムンクが出てきました。
前作読んでいた人は気づいたかな?

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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