魔女様、ゆるやかに生きていく。   作:ニャル太郎

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魔法は便利だが不便でもある

 

 

「登録してないんですか!? てっきり登録をしてるもんだと……」

「登録は好みの問題だからね、ほとんどの冒険者は登録するけど」

「ちなみに登録しないメリットはあるんですか?」

「ないよ」

「ないんですねい……」

 

話しながら時計塔のある広場を歩いていく。

昼過ぎもあってかあちらこちらに人だかりができていた。

 

市場から近いこともあってか屋台が並び美味しそうな果実やスイーツ、香ばしい肉や焼き魚など美味しそうなものを目移りしてしまいそうになるのを堪えて歩き進める。

 

「なんで登録してないんです?」

「好みの話でもあるけど、わたしは別の収入源があるからいいかなって」

「別の収入源? そんなものがあるんですかい?」

「うん、魔法協会で仕事をもらうんだ」

 

魔法協会は主に魔法の研究や魔導機の開発・回収、魔法教育の方針や支援、特定魔獣の保護などを管理する組織。

魔法使い同士による交流イベントや情報共有をしてより魔法の知識を深めるのが役割。

 

「仕事? それなら冒険者ギルドでもできるのでは?」

「そうだけどこっちは手厚いサポートがない分報酬が多いの、それこそダイヤランクの冒険者くらいの報酬が貰えるの」

「だ、だだ、ダイヤランク!?」

 

魔法協会のもうひとつの役割、それは魔法使いによる専門の仕事を魔法使いに提供すること。

魔法が当たり前のこの世界では魔法による事件や事故が多く、冒険者だけでは扱えない依頼が多い。

 

そのために専門である魔法使いに声をかけて解決してもらう、なので冒険者より少しだけ報酬が多いのだ。

 

「ちなみに最高額はどれほどで?」

「ええと、多くて金貨500枚くらい稼いだんだっけ?」

〈この前の街で金貨670枚といくつかの宝石を稼いだぞ〉

「き、ろくじゅ、ほ、は?」

 

完全に思考停止したゴードンさんはその場で立ち止まり、数十秒程動かなくなってしまった。

 

〈まあほぼ全額本と魔法研究で溶かしたけどな〉

「何冊買ったら全額無くなるんですかい!?」

「だ、だって魔導書とか高いし、それに研究にはすごくお金がかかるんだからね!」

「宝石は? 宝石も貰ってたんですよね? まさかそれも換金して溶かしたとか?」

「いや? 全部研究材料として大切に使ったよ」

「宝石を!? 研究材料に!? 恐ろし魔法研究!」

 

宝石には特殊な魔力があるから研究するのにもってこいの材料なんだけど、そんなに変な事言ったのかな。

 

〈ゴードン、こいつの感覚はおかしいから突っ込むのはやめとけ、疲れるぞ〉

「えぇもう散々見てきたので今後は控えやす」

 

2人の会話をよそに賑やかな広場を抜けて、さらに怪しげな路地裏を進んだ先に大きな屋敷があった。

白を基調とした重厚な石造りに淡い水色の屋根の建物で明るいギルドとは違い、物静かで不思議な雰囲気を感じられる。

 

「ここが魔法協会だよ」

「いいですねえ、趣があると言いますかいいですねぇ」

〈外観だけはな〉

「なんですかその言い方、まるで怪しいことでもしてるような施設な感じにも思えるんですが」

「実際そうとも言えるからね」

「へえ〜……ん? 今なんて?」

「それは見てからのお楽しみだよ」

 

首を傾げるゴードンさんを横目に魔法協会の扉を開けた。

 

 

 


 

魔法は便利だが不便でもある

 


 

 

 

外の物静かな外見とは裏腹に、エントランスは華やかな装飾に3人の大魔女像が飾られており職員達が慌ただしく動き回っていた。

 

「今月の魔導研究予算まだ!? もうすぐ締切なんだけど! これ以上伸ばしたらまたぶち殺されるから早く出して!?」

「なんで開発部と連絡つかないの!? そろそろ魔導機の解体したいから許可取りたいんだけど!」

「あ゛ぁあ゛!? 魔学イベントの会場設置できてない!? なんでそれを前日の今日に言うんだアホォ! 爆速で設置すっから待ってろ!」

「おい誰だここにブラッドベア放し飼いにしたやつどつき回してやる! うわやめろ柱で背中掻くな!」

「魔法学校……イベント……教育……吐きそう……有給使います……」

 

本や書類が宙を舞い、あちらこちらに見える魔導技術が施された機械が騒がしく稼働していたり、熊よりも一回り大きい魔獣が堂々と歩き回ったりと面白い光景が広がっている。

 

「思ったよりも忙しそうだね」

「この世の地獄を彷彿とさせる忙しさですね……なんか聞いちゃいけないことも聞こえてきたような……」

〈どこの魔法協会もそうだが、ここが1番うるせえな〉

「そうなの? おばさまはこの騒がしさが好きって言ってたよ」

〈あいつの好みとかどうでもいい、そんなことよりさっさと要件済ましてここから出るぞ、うるさくて昼寝もできねえ〉

 

不機嫌なエボニを宥めてながら受付の方へと歩いていき呼び鈴を鳴らすと屍のような顔をしたの女性職員が歩いてきた。

 

「こんにちは魔法使い様……本日はどのようなご用件でしょうか……?」

「こんにちは、今何か魔法関連で依頼などはありますか」

「……アッ依頼ですね!? 今溜まってるので持ってきます!」

 

突然死者が蘇った表情に戻り、物凄い速さで職員さんはカウンター下から大量の依頼書を取り出した。

 

内容は魔獣の保護、魔導機の部品修理、魔法の研究論文作成の助手、特定魔物の討伐など様々なもの。

 

「近頃依頼を受けてくれる魔法使いが減ってきてしまっていて、最近では周辺地域で魔物が増えてるので余計に……」

「冒険者には声をかけないんですかい?」

「そうしたいのは山々なんですが魔法関連になってくると素人では怪我する可能性が高く最悪死亡する場合もあるためゴールドランク以外はお断りしているんです、そのために受けてくれる冒険者ははほとんどいないんです」

 

確かに、どれも難しい依頼ばかりで下手に扱えば大事故になりかねない。

 

「中でも最近は悪質な魔法使いも増えてきてしまって……」

「東部諸国の方ではかなり問題になってますよね」

「そうなんですよ〜! おかげで魔法省の偉い人にしばかれてもう大変で……」

 

魔法が当たり前だからこその弊害。

誰でも使えるがその知識を正しく使おうとするものは少ない、その多くは力を見せつけるために使う。

 

魔力さえあればなんでもできる、だからこそ悪事にも使われてしまう。

実際そのせいで国同士の戦争などが起きてしまっているのだ。

 

「魔法は便利ですがその分恐ろしい力を秘めている未知の力です、それを研究してより発展させて人々に貢献するのが我々魔法協会の目標でもあります、ありますがぁ……」

「仕事が溜まりすぎて回ってないって感じですかねぇ」

「おっしゃる通りでずぅ……」

 

しわしわの顔で鼻を啜りながら彼女は涙を堪え、追加の資料を見せてきた。

さりげなく仕事を増やそうとしてるなこの人、忙しいから仕方ないんだろうけど。

 

「“黒冥の森の生態調査”……この依頼面白そう、この依頼にします!」

「かしこまりました、ではこちらの書類に目を通したのちここに署名をお願いします」

 

言われた通り書類に目を通す。

 

依頼内容は“黒冥の森”と呼ばれる場所の生態調査。

森に住む生物の調査といった簡単な依頼、危険な魔物の報告例はほぼなく静かな森林だが近頃魔物の増加で生態系が崩れている可能性があるので調査してきてほしいとのこと。

 

「依頼期限は3ヶ月で依頼料銀貨3枚いただきます」

「おや、こっちはお金取るんですねい」

「冒険者ギルドと違ってこちらは基本自己責任なため先に依頼料を払っていただくようにしております、その分報酬が多いのですぐに取り分は稼げます」

「誠意を見せるってことでもあるからこういうのは大事だよ」

 

書類に目を通してサクッと署名して銀貨3枚を支払って受注完了。

 

「それではイレーナ様、依頼達成の報告お待ちしています」

 

お辞儀をする職員さんに見送られながら魔法協会を後にし、再び路地裏に入った辺りでゴードンさんの方を振り返った。

 

「さてと、依頼の方もそうなんだけどまずはゴードンさんの特定クエストの方の準備もしないとだね」

「準備って言っても何を用意すればいいんですかね?」

〈そりゃあ武器だろ、魔物を倒すにはまず武器が必要だ〉

「武器ねぇ、あっこのナイフとかどうですかね?」

 

腰のホルダーからナイフを見せてきた。

これと言って特徴があるわけでもなく、強いて言えば古びたナイフと言ったところだろうか。

 

〈だいぶ古いな、切れ味はそれなりにありそうだが〉

「故郷を燃やされる前から持っていたナイフですからね、定期的に修繕して研いでやすが」

〈修繕か、そういや錬金術が使えるんだから他のナイフを作ったりしねえのか? 飯の時やってたろ〉

「あれは専用の調理器具を錬成しただけですよ、こっちは基本魔物とか対人用なので」

〈切れるんだから全部同じだろ、それにあの時は血のついた物を再錬成して使ってたろ〉

「その場で使った物と長年使ってる物は区別したい派でしてね」

〈めんどくせえエルフ……〉

「人それぞれなんだからそんなこと言わないの、でもエボニの言う通りそのナイフだとちょっと心許ないかも」

 

ゴードンさんの気持ちもわかるがエボニの言葉も一理ある。

基本ナイフという武器は剥ぎ取りに使われる、実戦では刃先が短くいざという時に届かないことが多い。

暗殺者(アサシン)などの職業にはもってこいなんだけど。

 

「でもこれ以外の武器は持ってないんですよねぇ……ってあら、刃こぼれしてやすね」

 

刃こぼれの他に錆びた部分が所々あったり持ち手の部分の木材が腐りかけていたりと愛着の跡があった。

 

「そろそろ研いだ方が良さそうですねぇ、資金もあるし砥石くらいなら買えそうですが」

〈ナイフより剣とかの方がいいと思うぞ、お前の体格なら槍とかもいけそうだな〉

「いやそういう懐にしまえなさそうな武器持ちたくないんで」

〈めんどくせえこだわり持ってんじゃねえ!〉

 

荒げるエボニを無視してゴードンさんは愛用のナイフをホルダーに戻した。

 

「……砥石って何がいいとかありますか?」

「えっ? 特にないですが」

「ならいいとこあるよ、それにそこならいい武器もあるかもだし」

「ほんとですかい? だったら今回はちょっとお言葉に甘えさせてもらいやしょうかな」

「それじゃあ早速向かいましょうか」

 

薄暗い路地裏を少し戻って1枚の木製で作られた鍵付きの扉の前に立つ。

 

「えっと、商店街はあちらですが」

「向かうなら扉があればいいんだよ」

「……はい?」

 

何もない場所に手を伸ばし、()()に手を入れた。

入れたはずの()()にわたしの手首は存在せず、だけど何かを掴む()()がある。

 

その()()を離さず引き摺り出すと、銀の鍵を握っていた。

 

「えっ、な、ええぇ!? 手首が消えて、あれなんか持ってる!?」

〈おいイレーナ、まさかあそこに連れて行く気か? おれは反対するぞ〉

「別にいいでしょ? 減るもんじゃないし、それとも何か問題でもあるの?」

〈ねえけど、あんまり他人に見せる場所じゃねえと思うぞ〉

「なに!? どこに!? 怖いんですが!?」

 

怯える彼を安心させるように笑い、鍵穴に銀の鍵を挿す。

自然と吸い込まれるように挿し込まれた鍵を回しドアノブを回した。

 

もちろん銀の鍵はこの扉のものではない、だが扉は鍵を認識したのかゆっくりと開き出す。

 

「よし、問題なく発動したね」

〈そりゃあのクソババアお手製の魔法を刻まれた鍵だからな、こんな辺鄙な扉でも使えるさ〉

「何を発動したんです!? こんな路地裏でなんかの魔法を発動しないでくだせえ!」

「爆発するわけじゃないんだからそんなに慌てないでください」

 

簡素な建物の扉の先には、綺麗な装飾が施された玄関ホールがあり2階へと続く階段が見えた。

 

「とりあえず中に入りませんか、ここは近くに商店街もありますしうっかり人に見られたら大変なことになっちゃいますから」

「え、いや、まあはい、そうですね?」

 

状況が飲み込めないゴードンさんを連れてひとまず中に入りすぐ扉を閉めて鍵を掛ける、間違って入らないように空間魔法を閉じるためだ。

 

「これでよしと、出る時は声かけてください」

「それはいいんですが、どういう原理なんですかこれ?」

「どういう原理って、まずあの扉をひとつの地点(ポータル)として扱って魔法式を刻みそれから空間演算をして次元を渡る計算式を組み立ててそれから」

「もっと簡潔でわかりやすく」

「そんなこと言われても、ええと……」

〈銀の鍵に挿し込まれたことによってこの扉と繋がることができる、設置型の転移魔法とも言われてるな〉

「なるほど、転移魔法ですか……転移魔法!?」

 

転移魔法、かの“戦争の大魔女”が作り出した魔法のひとつ。

空間の定義を超越し異なる場所を繋げ物体や存在を移動させる便利な魔法だが、中途半端に扱えば四肢や頭部が切断されたり体のどこかに異常をきたす言われる高度な魔法技術で扱うものはほとんどいない。

 

「そんなものが使える鍵を持っていたんですかい!?」

〈正確には取り出しただな、さっきイレーナの手首が消えただろ? 鍵はあそこにかかってたのを転移魔法で探って取り出したんだよ〉

「わたしが使ったのは簡易的な転移魔法だけどね、この複雑な転移魔法はおばさまが組み込んだんだ」

「前から思ってやしたが、マジで何者なんですアンタのおばさま」

「普通の魔法使いって言ってたけど、そんなことよりせっかくきたんですからお茶でもしましょ」

 

広々とした玄関ホールを抜けて居間の扉を開ける。

 

豪華な、とまではいかないが比較的に華やかな居間。

柔らかい質感の絨毯にきめ細やかに刻まれている装飾の木造の机や座り心地がいいソファーと

椅子、所々に魔法や錬金術で作られた装飾品や照明が部屋を彩り、特別な加工が施された暖炉がある。

 

そして陽の光が差し込む大きな窓がわたし達を出迎えてくれた。

 

「えっ、うわ、すごっ、何この部屋」

「適当に座って待っててください、今飲み物持ってきますので」

「いやっ、そんなことしなくていいで、うわちょっとなにこれふわふわ……」

 

倒れ込むようにソファーに寝転ぶゴードンさん、おばさまのお気に入りなんだけど気に入ってもらえてよかったな。

 

と、微笑ましく眺めていたら不意にエボニが浮かび扉の方へと進んでいく。

 

〈ちょっと書斎行ってくるわ、ついでになんか届いてねえか確認してくる〉

「いってらっしゃい、あっそうだ魔導書も!」

〈それは自分で取りに行け、どうせ後で工房に籠るだろ〉

 

有無を言わさずバッサリと切り捨てられ、エボニはそのまま居間を出て行った。

 

「書斎に工房って、なんなんですかここ」

「おばさまの元別荘だよ、もう使わないから好きにしていいよってもらったの」

「へえ、こんな豪邸をねぇ」

「豪邸じゃないよ、おばさまの家の方がもっと豪邸だよ」

「そうだこの人元貴族だから感覚おかしいんだった」

 

ひどい言われよう、と言葉を飲み込みキッチンの方へと歩いていく。

真っ白な大理石で作られた調理台に魔導冷蔵庫、色とりどりの魔石で構成されたシンク。

おばさま特製の魔導コンロに大きな食器棚が置かれている、まあ料理はほとんどしないから綺麗な状態なんだけど。

 

「ええとハーブティーでいいかな、っとその前にお湯沸かさなきゃ」

 

収納棚からやかんを取り出して水を入れて沸かす、その間にいくつかのハーブを用意してテーポットにセット。

沸かしたお湯を先ほどのティーポットに注ぎ大体10分程度蒸らせば完成。

 

後は出来上がったハーブティーとカップと蜂蜜を居間に持っていく。

部屋の中を物色しているゴードンさんに声をかけると一瞬ビクッとなり慌てた様子で振り返ってきた。

 

「盗もうとは思っていやせんからね!?」

「急にどうしたんですか? それよりハーブティーを作ってみました、熱いので気をつけてください」

「あっいえなんでも、ありがとうごぜえやす、というかこんなもの作れるんですね」

「どういう意味ですかそれ、簡単なので誰でもできますよ」

「そうですか、いただきます」

 

ゴードンさんは少し冷ましてから一口飲んで黙り込んでしまった。

 

……もしかして口に合わなかったのかな、やっぱりハチミツを入れた方がよかったかな。

 

「おぉ、爽やかな香りだけどほんのりと甘い味でいいですね」

「ほ、本当ですか? 口に合わないとか苦いとかは平気ですか?」

「いいえ、むしろ美味しいですよこれ」

「……そっか、そうですか、えへへっ」

 

その言葉は、一言だけど嬉しかった。

 

「ハーブティーお好きなんですかい?」

「母が小さい頃によく作ってくれて、この味を忘れたくなくて……」

「……素敵なお母様なんですね」

「はい、ふふっ」

 

一番好きな味で唯一記憶の中に鮮明に覚えている味だから誰かに共有したかった。

 

昔、同じようなことをして否定されて以来、それが怖くてずっと人に出すのが怖かったけどそんな記憶を上書きするようにゴードンさんは美味しそうに飲んでくれる。

 

それだけでわたしは充分嬉しかった。

 

〈…………随分と楽しそうだな、ゴードン〉

 

いつの間にか分厚い本を何冊か抱えたエボニが戻ってきていた。

 

「んぶぐっ!? だ、だだ旦那いつの間に!? いやこれは違くてあの」

「おかえり、エボニの分もあるから安心して」

〈フン、まあいいや、ほら〉

 

ドンッ、と乱雑に机に置いてわたしの隣に戻ってきた。

黄金錬成や賢者の石、人造人間(ホムンクルス)生成についてなど錬金術に関わる本ばかり。

 

〈お前はまず錬金術を学べ、適当なの持ってきたから読んどけ〉

「おぉありがとうごぜえやす、ってだいぶ古い本ですね」

 

持ってきた本はどれも古めかしく表紙も所々ボロボロだった、幸い読む分には問題がなさそうだけど。

 

〈あぁ、多分それなりに価値があるもので中には禁術も書かれている、そんじゃそこらの錬金術師が喉から手が出るほど欲しい本だからな〉

「そんなもの乱雑に扱わないでください! あとサラッとあるここほんとになに!?」

「昔おばさまが集めていた蒐集物だよ、錬金術には薬学の知識も使うから勉強のために集めていたんだって」

〈安心しろ、ここにある全ての本には保護の魔法がかけられているからちょっとやそっとの衝撃だったら問題ねえよ〉

「だとしても不安になるですが!」

 

本から飛び跳ねるように離れて怯えるゴードンさんを見て、エボニは飽きた様子で溜息を吐いた。

 

「と、とりあえず本は一旦後回しにさせてくだせえ」

「でしたら砥石を取りに行きましょうか」

「そうですね、そっちの方がいいかも知れやせん」

 

ちょうどハーブティーも飲み切ったとこだし、後でまた淹れよう。

 

「それじゃあ地下に行きましょ」

「うっすらとわかってやしたが、やっぱ地下あるんですねここ」

〈2階建て中庭地下付きトイレバスルーム別々の普通の屋敷だぞ、何をそんな不思議がる?〉

「もうやだこの感覚狂いの人達……」

 

顔を覆い隠して今にも泣き出しそうな声を出すゴードンさんを連れて、地下へと向かった。

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