明らかに魔法の性能がおかしい回復魔法使いと謎の女吸血鬼のマイペースな冒険生活   作:ジョク・カノサ

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11話 アイス・フーリレン

「あつ……」

 

 何度目かの森の中。今回の道中はそれまでと比べてやけに暑かった。陽射しがキツイとかじゃなくムシムシした暑さ。それと関係があるのかは知らないけど辺りの植物も一つ一つがなんかデカい。

 

「大丈夫か?恐らく環境が不安定な一帯に差し掛かったのだろう。こういった場所では良くある事だ」

 

 僕の横を歩くのは変装状態のレイさん。僕の感想を肯定しつつもレイさんは汗一つかいていない。吸血鬼って凄いな。

 

「僕の住んでた村でこんな感じの暑さになることってなかったので……歩いてるだけなのにじわじわキますね、でもまだまだ平気ですよ」

 

「暑さを甘く見ない方が良い。体調が変化してからでは遅いんだ。水は飲んだか?良し、丁度良い。少し休憩にしよう。――止まれ、騎士」

 

 そして、この場にはもう一人居る。レイさんの言葉に反応し、僕達の前を歩いていたその人は立ち止まってゆっくりと振り返った。

 

「……」

 

 冷ややかな印象の人だった。短くまとまった青みがある銀色の髪。鋭く感じる目つきとスラッとした顔立ち。レイさんと同じくらいには高い身長。

 

『アイス・フーリレン。見ての通り騎士団の一員だ。件の場所への案内役も兼ねて彼女を君達に同行させよう。戦闘においてもきっと役に立つ筈だ』

 

 あの後、グレイグさんの提案でこの人と一緒に魔獣の討伐に向かうことになった。騎士団の中でもかなり強い人らしく、頼もしい助っ人である事は間違いない。

 

 そして、この人も汗をかいていない。今は鎧こそ着てないけど騎士団の人達の制服?をきっちりと着込んでるから僕なんかよりも暑そうなのに。

 

「休憩だ。サンゴを休ませる」

 

「本気か」

 

「ん」

 

睨むような表情のアイスさん。対してレイさんは特に動じた様子はない。

 

「本気かと聞いている。まだ歩き始めて半刻程度、休息が必要とは思えない」

 

「必要なのは私でもお前でもなくサンゴだ」

 

 顔を付き合わせながら会話する二人。なぜかこの二人は初対面時からこんな感じで雰囲気が悪い。というか、僕が原因で言い争ってないこれ?

 

「レイさん、僕ならまだ大丈夫なんで。休憩はしなくても」

 

「お前は案内役だろう。今回の討伐の主導はあくまで私達。可能な限り私達の都合にお前が合わせるのが道理じゃないのか」

 

「……そっちはただのお荷物か」

 

「何か言ったか?」

 

「ちっ。――終わったら呼べ」

 

 そう言って僕とレイさんを結構な眼光で睨んだ後、アイスさんはこの場から少し離れた木に背を預けて腕を組み、立ち止まった。

 

 どうやら渋々だけどレイさんの言う事を聞いてくれるらしい。もうこうなったら僕休憩するしかないじゃん。

 

「あのー、もうちょっと仲良くしませんか?戦いにも手を貸してくれるって話ですし、騎士団の人なんでレイさんが警戒するのは分かるんですけど……」

 

「ヤツの目的は見極めだ」

 

「え?」

 

「案内と加勢はついでだろう。実際は魔獣を利用し私を戦わせ、その戦闘方法や振る舞いから吸血鬼かどうかを見極める。そんなところか」

 

「でも、グレイグさんは疑惑は晴れたって」

 

「気を緩ませる為の方便、だろうな。……サンゴ、アイス(ヤツ)を信用するな。ヤツがこちらに向ける視線、その全てが疑念だ。疑念には疑念で返せ。少なくともこの場ではそうしてくれなければ、私はお前を守り切れないかもしれん」

 

「……分かりました」

 

 真剣な表情でそう言われれば頷くしかない。確かにあの人に信用されてる感じは全くしないし、さっきとか小さく舌打ちされた気もするし。

 

 でもなんかショックだなあ。グレイグさん、厳ついけど良い感じの人だなあと思ったのに全然信じてくれてなかったって。

 

 あ、でも実際レイさんは吸血鬼だから疑うのは正解なのか。レイさんが危険じゃないってのは短い時間でも一緒に過ごす時間があった僕だから分かることだし。……なんか複雑だな。

 

 とかなんとか考えながら水を飲んで一息付いていると、レイさんが進行方向の一点を見つめているのに気づいた。アイスさんも木にもたれかかるのを止めて同じ方向を向いている。レイさんは僕に警戒するよう促し、呟いた。

 

「何か来る」

 

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