明らかに魔法の性能がおかしい回復魔法使いと謎の女吸血鬼のマイペースな冒険生活   作:ジョク・カノサ

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8話 騎士団からの疑惑

 あの変なお爺さんとの戦い……戦い?ちょっかい?が終わった後、僕達はそこそこに探索をして都市へと引き上げた。

 

 で、肝心の成果物の稼ぎは前の日よりもかなり上がった。採集に慣れてきたってのもあるだろうけど、途中で仕留めたあのカラフルな鳥の羽が結構貴重だったらしい。

 

 それまでのお金と合わせるとまだ寮には手を出せないけどそれなりに安定して暮らしていけそうな手持ちにはなった。

 

 そして翌日の朝。帰ってきた後に前日と同じように宿で別々の部屋に泊まっていた僕達が合流し、今日も探索だと外に出た瞬間。

 

「サンゴとレイ、だな。貴様らにはこの都市に侵入した吸血鬼との関係の疑いがかかっている。我々に同行してもらうぞ」

 

 宿の前で待ち構えていたのは、厳つい顔をした鎧姿の人達だった。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「サンゴ、抵抗はするな。大丈夫だ」

 

 レイさんがそう言ったのでとりあえずその人達に付いて行くことにした。鎧姿に前後左右を固められて移動する姿はとても目立つのか、通行人の視線が凄い痛かった。あと凄いドキドキした。

 

 連れていかれたのは多分都市の真ん中ら辺。交差する大通りの脇にある、ここで一番大きいんじゃないかと思うような立派な建物だった。お城と呼ばれても信じるかもしれない。

 

 そうしてその中に入り、中の鎧姿の人や普通の恰好をした人達からまたもや強烈な視線を浴び、長い廊下を通って僕達はそこに辿り着いた。

 

「おはよう。サンゴ君とレイさんだね?まずはこんな時間に呼び出してしまったことを詫びさせてもらう。朝食はもう済ませたかな」

 

「は、はい」

 

「それは良かった。まあ、聞いている私は軽い果物しか食べられていないんだがね」

 

 大きい広間みたいな場所の奥にぽつんと置かれた机と椅子。僕達とそこまでの道の左右に何人かの鎧姿の人達が直立不動で並んでいる。

 

 そして、その人は机に両肘を立てて座っていた。他の人と違って鎧は着てない。笑ってるし声も柔らかいけど、後ろの方にキッチリと撫で上げられた茶色の髪に顔にある傷、それと大柄な身体のせいか迫力が凄い。

 

「私はグレイグ。この騎士団の団長をしている者だ」

 

「……騎士団?」

 

「ああ、君はここに来て間もないらしいな。なら軽く説明させてもらうとしよう」

 

 そのまま流れるように説明を受ける。どうやらこの人達はここを作るのに関わった国からやってきた人達で、探索隊として活動しながらこの都市の安全を守る為に働いているらしい。

 

 という事は……やっぱりレイさんを追いかけ回してたのってこの人達か。

 

「――では本題に入ろう。ここに来る途中に聞いたとは思うが、君達……というよりそちらの女性、レイさんにはこの都市に侵入した吸血鬼であるとの疑いがかかっている」

 

 グレイグさんの視線がレイさんに向くのに釣られ僕も横を見る。レイさんはいつもの変装スタイル。ここに来てから一回も喋ってない。というかなんか、怒ってる感じが。

 

「私が吸血鬼?何を根拠にそんな事を?」

 

「先日、王国から吸血鬼退治の専門家がここに派遣されたのだが、その彼の行方が分からなくなってしまってね。我々なりに調べた結果、消息が途絶えたのはライオット大森林だと分かった」

 

 あ、凄い聞き覚えが。

 

「そこで調査していた部下が気になるものを見つけた。チェリエッタ君」

 

「はい。まあ私が調査した訳ではないですが。報告によれば該当エリア内の一部の木の表面に爛れたような痕跡、その足元の地面もまた草木が無く表面だけが剥がされたように地表が丸見えになっていたのを発見したそうです。関係ないですけど、丸見えってなんか――」

 

「現状、我々はこの痕跡が彼の行方と何か関連していると考えている。そこで先日そのエリア付近へと向かっていた探索者を洗い、その内の一組だった君達をここに呼んだという訳だ」

 

 木の表面?地表が丸見え?全然見覚えが無い。というか説明してくれたけど、机の脇に立ってるあの黒い髪の二つ結びの子も騎士なのかな?僕と同じくらいの背丈で大人には見えない。鎧も着てないし。あと丸見えがなに?何を言おうとしてたの。

 

「確かに私達はその日、ライオット大森林へ探索に向かった。だが質問の答えとしては不十分だ。なぜ私達であり、私なんだ」

 

「件の吸血鬼を追う過程で姿を見た部下によれば、それは長身の女の姿をしていた。それを頼りに候補者を絞らせてもらった。もちろん、他の候補者達へも調査協力を願い出ている」

 

 という事はレイさんの正体がもう完全にバレちゃった、って感じじゃないんだ。じゃあ大丈夫というか、バレようがないというか。

 

「そちらの言い分は分かった。それで、具体的にどう調査するつもりだ?見ての通り私は人間。それ以上言えることが無い。それとも、この場で衣服を脱いで服の下まで人間か確認させろとでも?」

 

 そう。原理は分からないけどレイさんの変装は完璧。どこから見ても普通の奇麗な女の人にしか見えないし、あの時に少しだけ見た大きな翼なんて影も形も無い。手とかもちょっと触らせてもらったけど別に変な感じは全く無かった。

 

「いや、元より淑女にそんな真似をさせる気はない」

 

「丸見えですしね」

 

「私は目には自信があってね。人間かそうでないか、普通か異常か、それぐらいの判断は実際に見ればある程度は分かる。君達の疑惑は……もう晴れているよ」

 

 いや、レイさんは多分普通ではないとは思うけど……え?ということはもう終わり?帰っていいの?

 

「なら話は終わりか」

 

「吸血鬼の件はね。ここからは別件になる。というのも、君達は探索者として非常に優秀だと聞いている。探索隊の結成からまだ日が浅く、二人組(ペア)にも関わらず既に多くの成果物を持ち帰っているそうじゃないか」

 

「え、そうなんですか?」

 

「自覚が無かったのかい?同じ条件で君達のような成果を出せる隊はそう居ない筈だよ」

 

 どうやら結構凄いらしい。僕達というよりどう考えてもレイさんが凄いんだけど。レイさんのお陰で採集も戦闘もラクラクだし、その分僕は容量の大きいカゴで荷物運びに徹してればいいだけだからなあ。

 

 ただ、レイさんが評価されてると思うとなんか嬉しいかも。

 

「だからこそ、君達の探索者としての腕を見込んで頼みたい事がある」

 

 そう切り出したグレイグさんは柔らかい表情と声音。でも、視線はレイさんへしっかりと向けているように見えた。

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