ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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14 竜人の記事

 

 

 

 翌日も、その次の日も。

 私が食堂へ顔を出すと列ができて、先着数十名へサインを書く日々。

 こんなに書いてたら学園内の全員へ行き渡るんじゃないかと思うけど、どうやら同じ人間が何度も並んでいるようだ。

 

 ほら見て、あの子。最初にサイン貰いに来た子だよ。3日目にしてもう4度目。

 そろそろ書くものなくなるんじゃないかな。

 最終的に入れ墨をお願いされるとか? だとしたら私はどうやりゃいいんだ。焼きごてならワンチャンできる。

 

 

「あのっ、今日は婚姻届けにサインを……っ!」

 

 

 頭を抱える。

 学生の身でそれは、無理だよぅ。

 

 

「却下で」

「では私に消えない傷を、そのご立派な角でっ!」

「心臓ぶち抜いてやりましょうか」

「ああっ、どうぞ生き血を啜ってくださいっ!」

 

 

 えぇー……こわ……。

 

 

「もう帰って……」

 

 

 なんだろう、ルルのめんどくささとは違うベクトルの領域に立っている。

 人間とは、学園に所属する生徒とは、年頃の乙女とはこんなにキモい発言を許されているのだろうか。

 きっと許してはいけないだろう。人類の為に消し炭にするべきだろう。

 でもできない。くそぅ、せっかく力があるのによぅ……!

 

 

 

「おひたしは冷めてもおいしい……」

 

 

 

 気の疲れるサイン会を終え食事。

 どうせ時間取られるし、もう今度からこの儀式を終えてからごはん頼もうかな。

 あるいはルルみたく食堂を利用しないとか。

 

 

 ……そういえばルルってこの時間どうしているんだろう。

 毎度の事ながら食堂へはあんまり顔を出さないんだよなあいつ。

 来たと思えば儲けようと何かの出店をして失敗するし。

 いつもの元気を見る限り大丈夫なんだろうけど、でもちゃんと食べてるのかは心配になる。

 

 

「式が主食とか」

 

 

 なんなら紙を食べていても不思議じゃない。

 ルルはあれだ、そういう生命体なのかも知れないし。

 

 

「おつかれさまです守護竜様!」

「……は?」

 

 

 ようやく食べ始められたのに、今度はなんなんだよぅ。

 私の対面に座った男子生徒は手帳とペンを手に、なんだか取材をしようって感じだ。

 ひどくめんどくさい案件な気がする。やめてよぅ。

 

 

「とりあえず聞きたい事は色々あるけど、まずその守護竜様ってのは?」

「我々を守ってくださる竜人の貴女へ対する呼び方です。新聞、御覧になってません?」

「新聞? ……ああ、校内新聞」

 

 

 行事等々を無視してひたすら学生へ息抜きの話題を与えるのが目的の新聞。

 廊下の掲示板に貼られるあれ、ネタがないのかつまんない内容だったし読んでないのよね。

 最後に見たのが学園地下迷宮っていう噂だったし。

 ……噂は本当だったから注目してもいいかも知んないけど。

 

 

「これですよ。最近はこれで持ちきりです」

 

 

 そういって男子生徒が出した新聞へ目を通す。

 見出しや挿絵が誇張されているのは性質上仕方がないとして、問題は中身だ。

 “飛行が苦手な子が墜落、あわやと思われた瞬間に身を挺し守ったのだ──”って。

 

 

「見てたの?」

「学園唯一の竜人はいいネタですからね。しばらく動向を観察させて頂きました」

「うざ」

 

 

 人の視線になれたお陰で気が付けなかった。見られてたのか。

 にしたってこれを書くには見てるだけじゃ難しい所がある。

 

 

「私は取材された覚えがないし、その助けた子へ聞いたのね」

「ルルさんです。当時の事を聞いたらそれはもう快く」

 

 

 うーん。ルルの聞かれたら答える、ってのは式に関することだし。

 ああいや、そもそも隠すことないから聞かれただけ答えただけか。式の云々は言いたくないのに答えちゃうって話だもんね。

 

 

「お二人の関係についてお聞きしたいのですが、そちらから見てルルさんとはどのような人ですか?」

 

 

 うざい。やかましい。近付くな。

 ちょっと構ってやったからって調子に乗ってあれこれしてくるな。

 隙を見つけては触ろうとしてきやがって。

 

 

「はは、ずいぶんと……お困りでいらっしゃる」

 

 

 こっちへ聞くからには先にルルにも聞いたんでしょ?

 あいつは何て言ってたの?

 

 

「色々言いつつ手伝ってくれる優しいひと。尻尾は結構ぺたぺたしてる。翼は硬くてあちこちトゲトゲしてるから危ない」

「ロクなこと言ってないなあいつ」

「あと意外とおっぱい大き──」

 

 

 思わず竜の手に変え頭を掴んでテーブルへ叩きつけてしまった。

 やべっ、生きてるかな。

 

 

「こ、この力強さ、威力……! 竜に踏み潰される恐怖と嬉しさが味わえるなんて、記者冥利に尽きる体験だ……!」

 

 

 めげないなこいつ。

 喜んではいるけど、だいぶダメージ与えちゃったし保健室連れていった方がいいよね。

 なまじ素の力があるから咄嗟の行動で人を殺しかねない。

 

 

「なにしてんの?」

「フロレンス、あんた丁度いいところにきたわね」

 

 

 確か回復魔法使えたわよね。頼んでいいかしら。

 

 

「そりゃ構わんけど、そのノリで即死させるなよ?」

「しないわよ」

「流石のオレも即死はどうしようもねぇからな」

「しないってば」

 

 

 失礼な!

 ……下手に私を煽らなきゃいいのよ。

 

 

「待て、治すな、怪我の位置を記録しないと!」

「根性あるなぁこいつ」

 

 

 だいぶ狂気を感じる。

 フロレンスはお構いなしに治すのでどんどんやかましくなっていく。

 数分も立たない内に男子生徒は復活を遂げ、今の体験についてとてつもない速度で手帳へ書き入れていった。

 

 

「で、なにしてたの?」

「取材よ。この前飛んでたときにルルが落とされてってやつ」

 

 

 そういえばあの時にルルを襲ってた魔法の正体、あれはなんだったんだろう。

 魔物の仕業にしてはやけに意思の籠った攻撃だった。

 地下迷宮で見た魔物はあんなひねくれた魔法使わなかったし、そうなれば“誰か”が狙ったとしか考えられない。

 

 ただ、私はともかくルルを狙ってどうなる?

 いや私を狙うにしても理由がわからないってのに違いないんだけども。

 

 

「まさかと思うけど、あんた記事のネタ欲しさに撃ったんじゃないでしょうね」

「いえいえ! そんなこと絶対にしませんよ! 影に潜んで事実を連ねる、それが僕のポリシーです!」

 

 

 まぁ本気で疑ってはいない。一応確認だけね。

 

 

「おいおい、このハイパー美しい天使ことフロレンスさんのストーキングとかしてるわけじゃないよな?」

「はい。つまんないのでしてません」

「つまっ……」

 

 

 フロレンスが絶望し倒れた。

 あーかわいそ。

 

 

「しかし、そうですね。見ていましたがあの黒い手の魔法は僕も正体が気になるところです」

「伝えておくと、威力は無しに等しい代わり当たった箇所が重くなるって効果だったわ」

「……当たった箇所が重く? 外傷ができるほどの攻撃ではなかったんですね」

 

 

 そうね。全部翼で受けたけれど痛くも痒くもなかった。

 

 

「いやいやドラゴンガール。そりゃお前さんに言わせりゃなに食らったって無傷だろうが」

「殺しにかかってる相手の攻撃よ? 私でも痛がるようなのが飛んできてたかも知れないじゃない」

「無理だろ」

 

 

 こう、収束させて貫通力を高めた魔法の一点狙いなら竜の鱗も貫けるかもじゃん?

 

 

「とにかく! 色々な考察はあとです。僕はひとまず守護竜様の素顔でしばらく記事を稼ぎつつ調査を続けてみますので、何かあればお伝えしましょう」

 

 

 いやまて、私の素顔ってなんだ。

 

 

「みんな知りたいんですよ。竜人とか関係無しにいち生徒の仲間として。他の人たちと一線を引いてる雰囲気があるから中々踏み込めないって話を聞きますよ」

 

 

 私が他人と距離を置いてるのは、しょうがないじゃん。

 だって竜人は──

 

 

「ではこれで!」

 

 

 行ってしまった。

 ったく、諜報費に釣り合うのか? あいつ。

 根性はあるみたいだけどさ。

 

 

「なぁドラゴンガール」

 

 

 なによつまんないフロレンス。

 

 

「つまんないを枕言葉にするなよぉ。ほら、さっき言いかけてたこと」

 

 

 ん?

 ああ、私が周囲と馴染もうとしない理由?

 

 

「寿命についてだろ?」

「そう。仲良くしたってね」

「半分人間とはいえ半分は竜。初代竜人が健在なため寿命は未だに不明、ねぇ……」

 

 

 学園での出会いは大切にしろとは言うけれど、私はなるべく関わる人間を最小に押さえるため厳選したいと思っている。

 関わる人間が増えれば増えるだけ訃報を耳にする機会が増えるだろうし、今から考えるのが憂鬱だ。

 ルルもフロレンスも、私を置いて先に死ぬんだ。

 

 

「羨ましいねぇ」

「どこが」

 

 

 子供のままな肉体のフロレンスはひらひらと手を振るとこの場をあとにする。

 あいつには色々聞きたいことがあるけど、今日はいいや。疲れた。

 

 

 

 

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