ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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パルワールドやってたら日刊更新記録途絶えちゃった



15 朝からお出かけ

 

 

 

「朝だよ!」

「今日も元気ねルル。もう少し抑えてくれると大変ありがたいのだけれども」

 

 

 ようやく訪れた休日。

 ようやく休めるかと思ったのに、玄関で待ち構えていたルルを見た瞬間に泣いてしまった。

 いや物理的に泣いちゃった訳じゃないんだけどさ、心で泣いたと言いますか。

 私の部屋が分からないからって出待ちするのはさぁ……。

 

 

「ひとりで飛ぶの危ないから、飛ぶなら保護者と一緒にって寮長さんが」

 

 

 玄関脇の管理人室にいる寮長は受付越しに両手を合わせ頭を下げている。

 全くてやんでいな人だ。お主が共に行けばよかろう。

 てか保護者て。この私を保護者呼びて。

 ほらその膝に乗っけた黒猫撫でてないでさ。てかそれ義賊じゃね? ご老体の。

 

 

「んゆ? んんー、なんかヘンだよ?」

「そらヘンにもなるわよ。想定外の色々が立て続けに起これば」

 

 

 サインサインで隙あらば忙しかったし、休みたる今日くらいは休みたいんだよ。

 そんでそのご機嫌な休日の始まりをべらぼうにされちまったらてやんでい感あふれるでしょ。

 

 うん。あれだ、なんかさっきから言葉おかしいな。っぱ疲れてるのかな。

 いや疲れてるんだよ。最近連日大変で。

 気疲れだったり気疲れだったり。

 

 

「ルルはどうしてそんなに元気なの」

「お母さん超がんばった」

「はいはい」

「なので今日こそ気晴らしに飛ぼうと思います」

 

 

 気疲れの大体は貴様だ貴様。きーさーまー。

 ルルの相手なんて殆ど子守りみたいなもんだ。

 本物の子供相手なら幾らでももみくちゃにされてやるけど、一応こいつ同学年なんだからさ。

 実年齢不詳だから本当はちょっと年下の説あるけど、そのもしかしたらで年上の線もあるし……。

 ん? 50:50(フィフティ・フィフティ)だから何を言いたいのかって? さぁ? 疲れてるんじゃない?

 

 それに忘れてはならないけど、ルルと私は異邦人と竜人の関係だ。

 思い返す度こんな奴のせいでに竜人の存在が軽視され続けると認識し直すと、こう、腹立つな。

 今はまだ周囲にルルが異邦人オル・ガ・ルヴァだと知られてないから妥協して付き合えるけど、もし周囲にバレてたら私がこいつの護衛とかっていうポジションに見える訳でしょ?

 あー、キレそう。

 

 

「みてみて。この靴改良したの。明かりの魔法陣を絞って指向型にして、光の翼が生えるようにしてみた。飾りだけどかっこいい」

「へぇ。肝心の飛行そのものは?」

「楽しくなって寄り道は牛歩の一歩。それが丁度いいからわえやってみちゃった」

 

 

 へぇ。肝心の飛行そのものは?

 

 

ぶいとーる(VTOL)はあんまり好きじゃないからノウハウないんだよね。式を用意してもいいけどあんまり作りたくないし」

「なんの改良もしてないのね。あの情けない飛び方の」

「どうにかするにはわえからどうにかしないとだもんなー」

 

 

 靴に細々と仕込んだところで、足首から上がぶら下がってるだけの状態なら未だやはり危ない。

 流石のルルもその辺の物理的な問題部分を理解しているらしく、本体(ルル)自身をどうするか悩んでいるらしい。

 一般的な飛び方って身体全体を魔力で浮かせるに始まっているので、この初歩以前な躓き方は雑魚過ぎる。

 あー、かわいそ。

 

 

「んゆ? どこいくのー?」

「買い物よ。飛ぶなら勝手に──」

 

 

 ──勝手に飛んで墜ちたりこの前みたく狙われたりしたら、目覚め悪いな……。

 たぶん今のままだといずれの対処もできず墜落コースだろうし。

 

 

「はあぁぁぁ……」

「うわぁあ凄く大きい溜息。お母さんもわえが起きた時そんな感じだった」

「どんな母親よ……」

 

 

 闇の母親話はいいのよ。

 ルル、もし私が飛行に付き合わなかったらどうするつもり?

 

 

「んんー。怖いから軽く飛ぶだけ。着陸はまだ難しいから着水を考えてる」

 

 

 ちゃ、着水って。……とにかく勝手にさせるのはまずい。

 水に落ちれば大丈夫って考えでの死亡事故は過去多く上がっている。

 飛行困難に陥った場合は森へ墜ち、枝葉に助けられる賭けに出た方が生存率は高いらしい。

 私はどこ墜落したって無傷だから本当の所はどうなんだか知らないけど。

 

 

「わかったルル。面倒見てあげるからあんたも私に付き合いなさい」

「そうなの?」

「一方的に付き合えっていうのは不公平じゃなくて?」

「うーん。そうだったかも知れない」

 

 

 だったかも、じゃないの。

 こいや!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王都たるエチゴ国の中央区より離れてやや南東、適度な発展具合が丁度いい所に私達の住む“アガの街”がある。

 アガというのが何を指し示しているのか、それは今は亡き400年前の勇者にしか分からない。

 統治管理の際にあちこちへ次々と名付けして回っていたようなので、もしかしたら深い意味はないのかも。

 

 

「ぞいぞーいー。川沿いー。蛍いる? 光をー」

「……子供か」

「これなんて川? 深い?」

「ただの用水路よ」

 

 

 石畳を蹴りながらルルはご機嫌に歌い、用水路を覗き込んでは虫を探す。

 確かに探せば虫くらいいるだろうけどさ、やめなさいはしたない。

 

 

「というかルル。また制服なの?」

「んうゅん?」

「どんな返事よ」

 

 

 休日だというのにまた制服だ。

 まさか私服の一つ持ってないとかじゃないだろうね。

 

 

「あれ何のお店?」

 

 

 話題を打ち切りルルは興味の引いた方へ向く。

 

 

「魔道具店よ。鉱石を加工した日用品が売ってる」

「鉱石を、加工?」

 

 

 内部で魔力を反射し続ける特殊な鉱石をエネルギー源に使う道具。例えば……そうね。

 フロレンスが地下迷宮の探索の時に使ってた明かりあるじゃん。ああいうの。

 あいつの使ってたような、使用者の横を一定距離保って浮き続けるとかっていう特別な挙動のは大体高級品。

 ……フロレンスのやつ、なんでそんな物持ってるんだ? 高級品とは言ってみたけど、そんな魔道具見たことないよ。

 

 

「じゃあこっちは?」

「食事処ね。古めかしいお店は大体漬物がおいしい」

「ふーん」

 

 

 こっちには興味を引かれなかったようだ。

 すぐに視線が外れて用水路へ向かう。

 はぁ。あのお店の梅干し、塩っ辛さがおいしいのに……。

 

 

「この水はどこまでいくの?」

「郊外の田畑まで。時期になったら私達も実習で一角の管理するわよ」

「おおー。興味あるかも。カブトムシ取りたい」

「カブトムシはいないんじゃないかな」

 

 

 どんだけカブトムシ好きなんだこいつ。

 

 

「でも変なの。魔法を教える学校じゃないの?」

「メインはそうね。でも自然に学ぶことも多いって訳でやるの」

 

 

 人間も自然に生きるひとつだ。

 どんな未来を歩もうが自然からは切り離せない。

 自然の大切さ、田畑の管理の難しさ、それらに対する感謝。

 ま、貴族出身に下々の生活の大変さを学ばせるって部分もあるんだろうけど。

 

 

「どこまで歩くの?」

「すぐそこ」

 

 

 橋を渡っててくてく。

 ルルのせいで台無しになってしまった私服を直しに出していたので、今日はその受け取りだ。

 生地やデザイン、色合いが気に入ってるとかって以上に、竜人特有の尻尾や翼を出す穴が良い感じになってるからアレは気に入ってた。

 私だって年頃の女の子だ。下手な服だとねぇ、背中がっぱー開いてたり尻尾穴ぱっかーん開いてたり目立って恥ずかしいのよ。

 

 その点あれねー。

 私の地元で買ったんだけど、古くから竜人と交流があるお店ってんでデザインが洗練されててなー。

 

 

「へー」

「ルルに分かる? お洒落な服の背中へ自分でハサミを入れて微妙なデザインにしちゃう悲しさ、形が崩れたから頑張って整えてくもどんどん露出が増えちゃう恥ずかしさ」

「わかんない」

 

 

 わかんないよなー。

 ルルには翼も尻尾もないんだから。

 そしてこんな時でも全く話題にされない角。

 インナー着る時に引っかかる位かな。やっぱ邪魔だな角。

 

 

「すみませーん。竜人の服で出してた者ですけどー」

 

 

 お店に入って声をかけると、店員さんが目を白黒させながら奥へ引っ込んでいった。

 どうやら竜人を見るのは初めてらしい。こっちにも聴こえる大声でやれお偉いさんが来ただのと騒いでいる。

 学生の身である内はそこらへんの生徒と同じ立場よ。

 あとガチのお偉いさん相手にその対応するのまずいからやめときな。

 

 

「……ルル。こっち来なさい」

「どうしたの?」

 

 

 向こうの準備ができるまで暇をつぶそう。

 

 そんあ訳で明るい所へルルを立たせて観察する。

 うーん、紫髪と一口に言っても薄め、赤より青みのある藤の花のような淡い色……。

 まじまじと観察すればするほど勿体ない髪だ。癖っ毛さえなければもっと弄りようがあるのに。

 

 

「同じ色で合わせてテーマカラーにしてもいいけど、なんか一色染めは気に入らないのよね……」

「んんー?」

 

 

 頭頂を抑えてルルを回す。

 しっかし細いな。片手でへし折れそうだ。

 

 

「赤系統……うーん……チェリーは、デザイン次第かな……」

 

 

 青でシックにまとめて雅に仕上げるのもいいかも知れないけど、ルルの性格的に似合わないんだよね。

 もっと活発なのにしたい。が、髪色を考慮するとどうしたって落ち着いた色合いしかなぁ……。

 瞳は黄緑だしそっちに寄せてみる? 

 

 尻尾をハンガー掛け代わりに幾つか見繕ってルルに添える。

 ちなみにモノトーンはプライド的に許せない。負けた気になる。

 そして角はハンガー掛け程度にもなれない。

 

 

「あ、このちょっと強めの黄緑いいかも」

 

 

 ルルの瞳の黄緑色よりちょっと濃い目。

 元が薄い色なので濃いって言うのも少し分かりにくいけど、そんなカラー。

 

 

「新緑の葉っぱみたいでいいと思う」

「でしょ? 葉っぱみたいはともかく」

 

 

 まさか虫基準で考えてないでしょうね。

 適当にその辺で枝拾ってミノムシにするわよ。

 

 

「あ、あの! 竜人様! 御品物、で、ござい……ます!」

「ありがとう。そんなに緊張しなくていいわよ」

「ひえっ」

 

 

 紙袋を受け取って尻尾に掛けると、驚いた店員さんが短い悲鳴を上げた。

 もしかして爬虫類が苦手なタイプだったかな。トカゲと竜は違うと言いたいけど、苦手って感覚は否定のしようがないし。

 

 

「それとこのブラウスに合う下を見繕ってくれないかしら」

「は、はい!」

「サイズはこの子に合わせてね」

「はいぃ……っ!」

 

 

 ルルの手元から先ほどいい感じだった葉っぱ色の上着を渡す。

 めちゃくちゃガチガチに緊張してるじゃん。この前来た時はこんな感じの対応じゃなかったのに。

 あ、見たことない顔だしもしかして新人の子かな。前のは場慣れした店長だったとか。

 うーん、タイミング悪かったかぁ。

 

 

「あの、わえそんなにお金ない」

 

 

 私が連れて来たんだもの。私が払うわよ。

 私の横を歩く人間が休日でも制服のままいるのが耐えられないの。

 だからおとなしく買われなさい。

 

 

「えっと、そしたらご予算の方は……」

「ああごめんね店員さん。ひとまず気にしないで選んでいいわ」

「ひえ」

 

 

 もう何言ってもビビるじゃん。脅してるみたいでなんかやだなぁもう。

 まぁ言った通り幾ら値段つり上がったって私は気にしない気にしない。

 

 

「くれるの? ありがとー」

「流石竜人様の懐でございますぅ」

 

 

 店員さんとルルが感服して頭を下げている。

 うん。ほんと気にしないでいいからねー。

 

 

 

 請求は全部お父様へ宛てるから。

 ルルの管理費として。

 

 

 

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