ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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16 ご機嫌な定食。

 

 

 

「……こんなに買う必要あったの?」

「あたりまえでしょ」

「んゆぅ。学び」

 

 

 楽しくなって結局幾つかセットで買ってしまったので、ルルの両手には膨らんだ紙袋が握られる事となった。

 お値段合わせて……お父様が苦笑いするだろうくらい。

 あまり褒められた金遣いではないけど、必要経費なのでと色々言えばきっと大丈夫。

 怒られるようなら、ルルに私服を買わせていなかったとメイド衆巻き込んで声を出せばオケ。

 

 この後は飛行訓練の予定だけど受け取ったものが邪魔だ。

 というわけでひとまず荷物を置きに帰ります。

 

 

「ついでにお腹も空いたわね」

「そうなの?」

「ルルも食べる? ここの漬物は上々よ」

「んー。じゃあ置いて猫たちにごはんあげる」

 

 

 帰る途中に行き紹介した食事処へ寄っていこうと思ったのに、ルルはさくっと断りやがった。

 まさか断られるとは思わなかったので、引き止める言葉もなく去っていく背中を目で追うしかできない。

 

 

「……一緒に、食事をしたくないと……?」

 

 

 せっかくこれも奢ってやろうと思ったのに、なんてやつだ。

 向こうから嫌われてる感じはしなかったけど、そこまで仲良くはなかったか。

 

 

「ま、いいか」

 

 

 こっちから散々な扱いしてるもんな。

 わざとらしくしてショック受けたみたいにしたけど、よく考えたらあいつにそこまでする義務もないし。

 

 だいたい、ルルの事を鬱陶しく思ってるならなんで食事へ誘ったんだ?

 放っておけばよかろう。ガキはガキでも考えられるガキだ。

 

 

「すみません、日替わり定食ひとつ」

「はいよ!」

 

 

 古びた木造の雰囲気がとても良きなお食事処でとりあえず一息。

 

 

「竜ちゃんこっちの椅子使うかい? 翼とか尻尾とか引っかかって邪魔でしょ」

「ありがとう。助かるわ」 

 

 

 背もたれが窮屈に見えたのか新しい椅子をくれた。

 おばちゃんありがとう。私もすっかり常連だものね。

 でも竜ちゃんはどうなんだろう。てか最近、誰も私の名前呼んでくれてなくない?

 いやいや、竜人様を名前を適当にお呼びするのは憚られるって気持ちも分かるんだけどさ。

 

 

「んお? ようドラゴン娘」

 

 

 今やってきたフロレンスなんかは敬意もへったくれもない雑呼びだけど。

 こいつマジでそのノリでお偉いさんに軽口叩いたら消されるぞ。

 

 

「折角だし一緒の席でいいか?」

「どうぞ」

「んじゃ失礼して。あ、おばちゃん! ご機嫌な定食ちょーだい!」

「はいよ! ご機嫌定食ね!」

「あるんだ……」

 

 

 ご機定(きてい)はボリュームたっぷりの揚げもの祭りよ。

 注文したからには覚悟なさい。

 

 

「増殖したGみたいな略し方やめーや」

「あんたの部屋も似たようなもんでしょ」

「見た事ないだろオレの部屋。ソファしか置いてないぞ」

 

 

 それはそれでどうなの。

 

 

「それはともかくだ」

「はい」

「どうせオレに聞きたいこと幾つかあるだろ。折角だし聞いてやんよ」

 

 

 ま、そうね。

 フロレンスには聞きそびれている事がある。

 なぜドラゴンスレイヤーがそこにあると知っていたのか、地下迷宮とは結局なんなのか、そしてどうして魔物があんなにいたのか……。

 いい加減に答えてもらうよ。

 

 

「答えは簡単。あの日にお前も見た地下迷宮(ダンジョン)、あれが(ちまた)で話題の魔界領だからだ」

 

 

 い。うそでしょ。

 あんなのが魔界領? もっとこう、禍々しい感じのじゃなくって?

 

 

「魔界領こと地下迷宮、出現する条件は魔物と一緒だ。魔物については話したよな?」

「ええ。負に染まった魔力が集まって形を成したのが魔物よね」

「それと一緒」

 

 

 説明投げんなし。

 けど、まあそこまで言えば分からないことは無い。

 

 

「魔力の吹き溜まりがあの迷宮を作り、故に魔物が内部に大量出現する。ってところかしら」

「そうそう。それで合ってる」

「お待たせお二人さん! 小鉢はおまけね!」

 

 

 おっしゃご飯来た。

 しかもおまけ付きとはありがとうおばちゃん。

 

 

「ここの漬物おいしいのよ」

「まじ? ──あらホント」

 

 

 で。じゃあドラゴンスレイヤーについては?

 あの日合流した時点でフロレンスは迷宮の地図を描きつつ進んでいたし、最深部にそれが存在するって情報を持っているのは不自然よ。

 

 

「それについては、こいつのお陰だな」

 

 

 そう言ってフロレンスは左腕を見せる。

 正確には、左手首に装着している赤い腕輪を。

 装飾品というより何かの魔道具に思えるそれは、うっすらと光っていた。

 

 

「負に傾いた魔力ってのは嘆きを持っている。それ聴いて外からある程度の情報を仕入れられるってとこ」

「……なるほどね」

「全部を知れるワケじゃないから現地での調査もしないとだけどな」

 

 

 フロレンスはあの時、魔物について「自然へ還す事がしてやれること」みたいなことを言っていた。

 どんな声なのかは分からないけど、直接その嘆きってやつを傾聴しているからその考えになったのかも知れない。

 悪い事じゃないし、むしろ寄り添って行動している分中々見どころのあるやつだ。

 粗暴な立ち振る舞いや制服を着崩すのさえなけりゃ、素直に尊敬できるんだけどなぁ。

 

 

「そんでなぜ最深部にああいう武器防具等々があるかっつうと、地下迷宮(ダンジョン)を構成しているコアとなってるのがそれだからだ」

「うーん、納得するには情報が足りないわね」

 

 

 フロレンスが山盛りの揚げものに苦しんでいるので一つ食べてやる。うん、うまいうまい。

 

 

「ルルの世界の技術が使われてたドラゴンスレイヤー。アレが鎮座していた理由については? どうしてそんなものがあったの?」

「地下迷宮は混沌の産物。ドラスレ以外にもあっちこっちの世界の物が流れ着いてるんだなそれが」

 

 

 もさもさ食べながら虚空を指でなぞると、浮遊する丸い人工物を召喚した。

 地下迷宮で明かりに使っていた魔道具だ。フロレンスの頭の横ら辺をふわふわ浮いている。

 

 

「例えばこれなんか分かりやすく別世界産のモンだ」

「ただの高級魔道具じゃなかったのね」

「んにゃ、そういう認識でいい。地下迷宮を攻略して手に入れた中でも大したことないものが、高級品扱いでオークションに流されてるんだ」

「なるほどね」

 

 

 遺跡を狙った盗掘家達はそれで一獲千金ってことか。同業者が増えたら困るから広まっていないと。

 じゃあ今までスルーされてた遺跡とかが実は魔界領と言えるそれだったってわけ?

 

 

「全部が全部って訳じゃないが、大体はそゆこと。実は400年前にはもう判明してたそれぞれなんだけど、まぁ色々事情があって情報は出回ってないんよな」

「そうなんだ。でもどうして?」

「勇者と魔王って構図は民衆へ希望をもたらすにゃ分かりやすく扱いやすいからな。あんまり劇的じゃないモンは都合が悪いんだろうよ」

 

 

 それは……そうか。当時は混乱のただ中だものね。

 せっかくの勇者というのをただの強い盗掘家にはできない。

 

 

「しかし現代でも魔界領こと地下迷宮は出現する。大半は高級魔道具の産出で留まるが、たまぁーにやべーもんが眠ってる」

「それを察知、報告し、依頼として回収に出向くのがあんた(フロレンス)の仕事ってわけ」

「お、いいねぇ」

 

 

 それは梅干しと白米のおいしさについて?

 それとも私の言った事について?

 

 

「どっちも。ああそうだ、ちなみに最近話題になった魔界領あるだろ? あれって地上に生成されるタイプらしいよ」

()()迷宮なのに?」

「うむ。そんで出現する魔物が強すぎるらしくて今の騒ぎだ。オレも現地へはまだ行ったことないし噂しか聞いてないけど、たぶん400年前と一緒のタイプだな」

 

 

 400年前と同じのが目についたなら、当時を知る長寿種の面々が騒ぐ。

 だから今みたいな大騒ぎになってるってことか。

 

 

「ま、時期みてオレも視察に行くさ。いい小遣いになりそうだし」

「……小遣い稼ぎにしてはあんたの目的がよく分からないわね」

 

 

 ドラゴンスレイヤーのような世界のバランスを壊しかねない物品の報告、回収なんて依頼が安く済むはずがない。

 お父様なら口止め含めた諸々の費用と織り込んで大金を渡すはずだ。

 

 

「まさか嘆きの声を解放するのが目的って聖職者みたいなこと言い出さないわよね」

「オレのことどう思ってるのかよくわかったよ……」

 

 

 冗談。ただ、得たお金をどうしてるのかは気になる。

 

 

「殆どが孤児院や医療機関への提供だな。ほら、オレって優しいから」

「やさ……しい……?」

「え、うそ……マジでどう思われてるの……?」

 

 

 金髪低身長自称美少女。かっこ赤い腕輪付きかっこ閉じ。

 格好よくない格好つけかっこ閉じも追加で。

 

 

「ったく、まあこれくらいで怒るフロレンス様ちゃんじゃないからいいけどさ」

「そう言いながら私の皿に揚げ物乗っけるのやめない?」

「多すぎるんだよぅ。このご機嫌な定食ぅ」

 

 

 自分で頼んだんでしょうが。

 仕方がないので一つだけつまんでやりながら伝票を持ち席を立つ。

 私はこれからルルの飛行に付き合ってくるのよ。

 

 

「じゃ、これから私は不機嫌になってくるから」

「あいはい。行ってらー」

 

 

 おばちゃーん。お会計ー。

 一緒でいいわよ。え、割引券? あらありがと。

 ごちそうさま。

 

 

「──ん? あ! ドラゴン娘ありがと、ゴチになりまーす!」

 

 

 感謝するなら名前で呼びなさいな。

 

 

 

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