ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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30 お風呂と水着

 

 

 

「んゆむー……」

「今更何を恥ずかしがってるの。先行ってるわよ」

「はーいーなー」

 

 

 脱衣場でのルルは動作が緩慢すぎるため、めんどくさくて置いてきた。

 というかさっさとシャワー浴びたいし。砂被ってあちこちざらざらなのよぅ。

 

 

「流石フロレンスね」

 

 

 試供品らしきラベルの各種洗剤が置かれ、シャワーも温まった状態で待機してる。

 こういう寮付き大浴場の温水ってコストから安物の加熱魔道具が採用されがちなので、出始めが冷たいってのがよくあるのだ。

 一番風呂や急ぎの場合は悲しい事になるけど、こうして出しっぱにしてくれるのは助かるぜ。

 あんまり出しっぱなしにしてると道具自体が魔力切れを起こして後の人が困るけど、今回ばかりはいいよね。

 うむ。ベリーホット。

 

 

「……あいつが迷宮以外に手を出せるのもその内問い詰めたいわね」

 

 

 フロレンスが明かしている情報、あくまで地下迷宮(ダンジョン)の探知と高級魔道具の回収屋ってだけなのよね。

 そこから客への売り込み、あるいはオークションでのやり取りとかの経験がって云々とすればまぁまぁ理解できる部分はあるけど……。

 

 なぁんかね、それにしたって各種手回しが慣れ過ぎてるというか。

 こう疑うならお風呂の準備だって私から追及を避けるための策に思えるし。

 

 

「あのおちゃらけで嘘言われても見抜く自信がない」

 

 

 自称美少女やオレオレ言ってるのは素だとして、裏の顔を全く察せないところが恐ろしいやつだ。

 ある程度真実を織り交ぜて重要な所を伏せるくらいの話術も心得てるだろうし、なるべく敵にはしたくないねぇ。

 そういった点で言えば、会話が時折成り立たず喋りたくない事は耳を塞いでNGをしっかり表へ出すルルのがマシと言える。

 

 というかそもそも、フロレンスが持ちネタみたいにしてる化粧品の営業経験ありって触れ込みはなんなの。

 

 

「来たよ!」

 

 

 さささっとシャワーを浴びて浴槽でのびのびし始めた頃になってようやくルルが来た。

 

 

「やっと来たわね……って……」

 

 

 なんで、水着……?

 それもどうして、学校指定のダサいあれなの……?

 

 

「ふっ、スク水はオレの趣味さ」

「きっっっっしょ」

「ひどくない?」

 

 

 ルルの後ろから現れたのはフロレンス(全裸)だ。

 水着を着てる人の後ろに全裸が立ってるとなんというか、こう、犯罪臭が凄いね。

 しかもフロレンスはものの見事にガキンチョ体形なわけだし。

 

 

「ルルちが渋って中々入りたがらないみたいだしな、背中を押しに来たのさ」

「で、ついでに自分好みの水着と渡したと」

「まぁな」

「きっっっっしょ」

「ひどくない?」

 

 

 ほれほれとフロレンスは足の進まないルルの手を引いてじゃかじゃか洗っていく。

 

 

「てか水着でお風呂って、なんかやでしょ」

「オレも昔やったことあるけど、なんか気持ち悪かったしすぐ脱いだな」

「じゃあやめさせなさいよ」

 

 

 面倒見はいいはずなのに、絶妙に何がしたいんだコイツ。

 

 

「ルルちは細かい手入れ抜きでもっふもふのふっかふかを維持できるなんて、全く羨ましいぜ」

「発展型触媒のたまもの。わえも真似したけど材料足りなかった」

「のほほんしてる癖に天才っていいキャラしてるなぁ。んー?」

「あくまで技術関連だけ。その他についてはわえ、弱いぼごぼごぼご」

 

 

 ざばーっと泡を流され、何か言いかけつつルルは溺れていった。

 

 

「わえの本領は知。《三英雄(さんえいゆう)》としてはスペック控えめ」

「まぁ知力特化なんてそんなもんじゃない? そも人間としてはオーバーだし」

「そうなのかな。わえ、戦わなかったし」

 

 

 ……おいまて。

 

 

「んゆ?」「おん?」

「いや何『変なこと言いました?』って顔してるんだよ二人して。今の会話ヘンだったじゃん!」

「そうかな」「どこがだ」

 

 

 三英雄ってルルの世界において凄い立場とかそういうあれじゃん?

 レア・スもいるっていうさ、そういうやつじゃん!?

 なにをさらっと、自分も三英雄のひとりですって言ってるわけ!?

 

 

「いやだってドラゴン娘、剣道の時にそう名乗ってたじゃん」

「言ってたけど、言ってたけどさぁ……!」

「わえ、《三英雄》最後列かつ何にも役に立たなかった。怒られてもしょうがない」

 

 

 怒ってるとか、そういう話じゃなくって!

 

 

「はぁー……。思い返せば確かに、そもそもレア・スみたいなのと知り合いな時点でか……」

「レア・スは戦う力、ソラ・オプトは守る力、そしてオル・ガ・ルヴァは知の力」

「やっぱりか」

 

 

 フロレンスが水着の上から背中を洗おうとして、邪魔だと脱がせていく。

 おいおいおい、なんか脱がせ方というか場面が犯罪っぽいぞ。

 

 

「やっぱりって、フロレンスは知ってたの?」

 

 

 さっきからリアクション少ないし、いつも知った感じだしさ。

 

 

「ルルちの本名を聞いた時におおよそ察して、剣道の名乗りで確信ってとこだ」

「おー」

「警戒なさいルル。あんたの迂闊な発言で色々バレるのよ」

「そうかも」

 

 

 抵抗なく水着を脱がされたルルが泡に包まれた。

 

 

「普通はそれだけで察すんの無理だぞ。今回はオレが偶然、その名前や単語に知識があったってだけで」

「そうなの?」

「ああ。なんたって別の世界、それこそルルちの元居た場所とも違うとこが元ネタだからな」

 

 

 そうなんだ。

 どっちみちルルの発言が迂闊なのは確かだけど。

 

 

「オル・ガは別の世界に存在した超高性能な人工知能の名前だ。普通ならオルガって所をわざわざオル・ガで区切るんだし、まさかとは思ったが──」

「……人工知能……?」

「ざばー」

 

 

 泡が流されルルの素肌があらわになる。

 

 

「三英雄の名前を聞いた時にな、もう偶然じゃないと確信した。造った奴は狙って名付けたと、まぁ知ってりゃ分かりやすいネタだったからな」

 

 

 水着を脱がされ、泡も流され、裸になったルルの身体には幾つものラインが入っていた。

 各関節を切り分けるような、いいや、可動部に沿って……。

 入れ墨ではない。溝だ。

 

 

「わえは、《三英雄》のひとつ。オル・ガ・ルヴァ」

 

 

 人工知能、造った。

 ひとりとは言わず、ひとつと個数での言い方。

 

 ああそうだ。そういえばこいつ、普段からそれっぽい発言ばっかしてたような。

 いや、それよりも。

 

 

「あんたが食事に誘っても来なかったり試食しなかったりしたのは……」

 

 

 睡眠をせずとも翌日動けたり、あるいは高高度の低酸素でも動けたりしたのだって。

 

 

「《三英雄》は人類の為、お母さんが作ったシステム。わえは、その最後のひとつ」

地下迷宮(ダンジョン)より気になる話じゃねぇか。ルルち、教えてくれるか?」

「うん」

 

 

 

 気になる事が、積もる話が多すぎる。

 多すぎるけど、ようやく聞ける。

 

 ルルは今まで自分のことを少しずつしか喋らなかったり、そもそも明かすのを拒否したりしてた。

 第一前提として、自身が普通の人間とは違う事がバレるのが嫌だったんだろう。

 

 異邦人だから。

 そんな理由で嫌がっていたが、ルルは自身が英雄になろうとしている訳じゃない。

 

 

「ルル」

「んゆ?」

「喋りたくない事は伏せていいわよ」

「んふふふ……」

 

 

 ざぼんと隣へ腰を下ろしたルルが尻尾の上へ座り、何故かくっつこうと肩を寄せてきたので跳ね除ける。

 せめて髪の毛をタオルでまとめなさい。なんか濡れた犬みたいなべちゃべちゃ感あって嫌だから。

 

 

 

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