ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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赤い輪のフロレンス・バタイユ
33 ふわふわフロレンス劇場


 

 

 

 俺はフロレンス・バタイユ。

 表の顔はミルクマシマシコーヒーのカフェオレ派で上に乗っかってる泡を最初に吸い尽くす妖怪だが、しかし裏では悲しみと怒りを内に秘め、涙を隠し平和を守るハードボイルドな美少女さ……。

 

 

「いや何かっこつけとん。熱くてチビチビ飲んでたらミルクだけなくなっただけやん」

「あーっ! おまっ、これからオレのかっこいい回想流すつもりだったのに!」

「なんの話?」

 

 

 寮のロビーにあるソファでコーヒー(カフェオレ)キメめながらこれまでの振り返りやろうとしたら、やってきたヴィオレッタによって台無しにされちまった。

 なんてことをしてくれたんだ。

 今からこのフロレンスちゃんが先日の機械魔獣エレファスとの戦闘を語ってやろうと思ったの!

 

 

「こないだのなー。でもレンちゃんは戦闘なんもしとらんくない? そら人助け頑張っとったみたいやけど」

 

 

 いやそれ大事だろ。

 一番重要まであるだろ人命救助。

 あと何にもしてないわけじゃないぞ。めっちゃ指示出してた。

 

 

「んー。でもレンちゃんならもっとこう、ばーっとぱぱぱーっとできたと思うし」

 

 

 人のこと万能に思い過ぎでねぇか?

 そら確かに手間と小道具と諸々を惜しまなきゃ何とかできたけどさぁ。

 後出しでこう告げると言い訳がましいというか負け惜しみというか。

 カフェオレずずずー。あちち。

 

 

「てか指示って、あの守護竜さんやっけ。あの子に出してたん?」

 

 

 あたぼうよ。

 どうもあいつといいルルちといい、戦場を語る割に実戦経験乏しいやつらばっかりでな。

 力はあれど使い方を知らんってんでこの最終究極超絶美少女のフロレンス様ちゃんが方針をぱぱっと。

 

 つか、めっちゃ忙しかったんだぞ俺。

 

 救助と避難誘導の間に千切れ飛んだエレファスの武器付き両腕を回収して隠蔽。アホなことに近付いて巻き込まれた野次馬を治し、ドラゴン娘サイドで起こってるであろうことに対する助言をしーの、点呼確認事情聴取云々。

 それが済んだら町へ繰り出し他の被害が出ないかの確認して、寮へ戻ったら帰ってくるドラゴンズ達の為にお風呂を洗い……。

 

 

「めっっっっちゃ忙しかった……」

「最後のはともかく、大立ち回りだったのは確かやね」

 

 

 だがそんな疲れをおくびにも出さず、普段通りの振る舞いで出迎えるのがこの俺さ。

 自分の弱みを決して他人へ悟らせないこのハードボイルドが、美少女の流儀であり制服さ……。

 

 

「かっこつけとるとこ悪いんやけど、今レンちゃん超ダサいで」

 

 

 何故だ。

 よれよれのジャージの上にタオルケットを纏い、熱々のカフェオレに苦戦してるだけだろ。

 

 

「むしろなんでそんな状態なん……?」

 

 

 近所のガキがおもちゃを無くしたとかで川の底さらうハメになった。

 まだまだ水温も低いしひどいもんだったぜ。しかも結局その辺の草に引っ掛かってて濡れ損だし。

 そんで今は寮長さんが裏で制服一式洗ってくれてるとこ。

 

 

「そっちやない!?」

 

 

 うわ、急になんだよ!

 

 

「いやその話! そのエピソード語った方がええやん!」

 

 

 ええー。つまんなくない?

 だってガキがわんわん泣いてたら誰だって助けるだろ?

 

 

「はぁー……。だからって制服で川入らんくてもええやん」

 

 

 後ろに回り込んだヴィオレッタがそっと抱き着いてくる。

 この間渡した椿オイルの匂いに包まれた。

 なんだどうしたよ急に。

 

 

「私とレンちゃん、もう長い付き合いやん?」

「そうだねぇ」

 

 

 この学園に定着する前は各地を転々としてきた。

 色々な地域を巡り、現地で事件を解決し、その土地での仲間と別れを繰り返してきた。

 時折次の町までとかって同行はあったものの、基本的には一人旅。

 

 ヴィオレッタはそんな全国行脚中に仲間として俺についてきて、今もこうして共に学生として過ごしている。

 ちなみにさっきから俺を「レンちゃん」と呼んでいるが、これは最初に会った時の名乗りが適当過ぎた為。

 訂正するタイミングもする気も無かったのでそのままとなっている。まぁフロレンスの中にもレンって入ってるから直させる程ではない。

 

 

「私な、怖いんよ」

「何がさ」

「レンちゃんがな、いつかいなくなるんやないかって」

「……」

 

 

 さっきの話からどうしてそこに行きつくんだか。

 

 

「レンちゃん、たまに無理するやん。私を助けてくれた時だってそう!」

「そりゃあお前。未来ある子供達を助けるのは道理だろうが」

「それにしたって! レンちゃんは見境なさすぎや!」

 

 

 ──ヴィオレッタが俺についてくるようになった理由、なんだったっけな。

 戦闘経験に直結する以外の事件の概要は全然覚えてない。

 今こそ支援職として安定してるが、基本は暴力装置だからな俺は。

 

 

「ま、んな話したってしょうがないし学園祭の出し物について話そうぜ?」

「……いつもすぐそうやって誤魔化す」

 

 

 まぁまぁ。

 ほら、これでも飲んで落ち着けよ。

 

 

「ん。……ん? いやこれ飲みかけやないかい!」

 

 

 いいじゃん丁度いい温度で。

 

 

「はぁ……。で、学園祭の出し物やっけ」

「そそ。うちのクラスまだ決まってないし」

 

 

 クラス内で意見がバラバラ、ようやく喫茶店でもやろうと決まりかけた矢先に届いた報は隣も同じ出し物にするということだった。

 しかも運の無い事に、敵方はドラゴン娘を抱え込んだドラゴンメイドカフェなのだというので勝てる気なしと喫茶店が没になってしまったのである。

 期限はまだあるが、準備を考えたら早く決めてしまわないといけない。

 

 

「卑怯やなぁ。うちにもドラゴンちゃん欲しいわー」

「いないもんは仕方ない。向こうは自身のクラスの強みを全面に推し出した形な訳だし、なら打つ手がある」

「打つ手?」

「うちのクラスの強みでぶつかればいい!」

 

 

 立ち上がり、微弱な風を起こしてタオルケットをはためかせる。

 

 

「究極完璧完全美顔、不撓不屈のォ! ァ、超美少女お! このフロレンス様がいることァ忘れちゃならねえ!」

 

 

 ずーっ。

 ヴィオレッタのわざとらしくカフェオレを飲む音が寂しく響いた。

 

 

「レンちゃんがどうするって?」

「え。なんかこう、さ、あるだろ? 美少女が売り、ロリっ子いるよーみたいな……」

「うーん。レンちゃんが黙ってればかわいい系なのは認めるけど、そんな怪しいお店みたいな客引きしてもなぁ」

 

 

 そうかな。

 結構昔だけどケーキ屋でバイトした時、結構売り上げに貢献する程の具合だったぜ?

 店長夫婦の娘に代わって看板娘の座を狙ったあの頃が懐かしい。結局はマスコット止まりだったが。

 ついでに最低賃金も怪しい雀の涙。今思えばだいぶ足元見られてたなあれ。

 

 

「それに、向こうはちゃんとクラス一丸でドラゴンメイドらしいで。レンちゃんひとりが頑張ったとてみんなでの勝ちとはならんやろ」

 

 

 それは、そうだなぁ……。

 なんかこう、うちのクラスにオレ以外でいなかったっけ。そういうなんかネタになるやつ。

 

 

「うーん……」

 

 

 お互いに顔を合わせて首をひねる。

 いうてそうホイホイと神話生物なんている訳もなく。

 とすればだ。

 

 

「オリジナル創作料理でいくか」

「なんか言葉おかしくない?」

 

 

 細かいことはさておき、ドラゴンが空の王者なら俺達は地を行こう。

 

 

「地かぁ。私もあんまり詳しくないけど、なんかおったっけ」

 

 

 色々いるでしょ。

 そん中でもこう、高貴な感じのをさ。

 

 

「あー。あれとか。ユニコーンとかよく気高いって言われとらん?」

 

 

 ユニコーンか。

 なんだっけ、穢れを憎み純潔を尊ぶみたいなやつ。

 確かにお馬さんはいいかも。

 

 

「でもユニコーンをどうするん? 馬刺しですって看板出す訳にもいかんやろ」

「だなぁ。探すの手間だし」

「おるんや……」

 

 

 いる所にはいるぞ。秘境だけど。

 しかしユニコーンは良い線だ。

 

 

「逆に穢れが好物のバイコーンもおったやろ? そっちは?」

 

 

 んー。見たことない。

 

 

「甘口ユニコーン、激辛バイコーンって商品名のお菓子とか……いやでも名前だけ借りたって……」

 

 

 真面目な事にヴィオレッタはこれで通すつもりらしい。

 まぁ馬刺しだなんだって偽肉の商品だすよかそういう路線はいいな。

 

 

「……にしても、ユニコーンもバイコーンもなんでそんな我儘な基準で獲物選ぶんだろうな」

「実際にいるのがどうかは知らんけど、話として広まってるのはただの伝承やし」

 

 

 森の中にいる野生動物が食える人間選ぶなよ。

 野生らしく全部デストロイして食えよ。好き嫌いすんな。

 

 

「せやから伝承やて。てかそもそも人食う類やないやろあいつら。馬やし」

 

 

 馬とて人を噛むぞ。

 ん? 待てよ、死を司るデスコーンとかどうだ。

 二種のコーンを超えた存在とか超絶かっけぇよ絶対。

 

 

「後半の二種のコーンで台無しや。もうただの枯れたトウモロコシとしか思えへんで」

 

 

 あーあー馬鹿にしてくれちゃって。

 お前終わったわ。デスコーンは己を貶した奴を絶対に許さないんだ。

 

 

「ほんまか。私どうなるん?」

 

 

 怒り狂ったデスコーンの怒りは収まらない。

 フライパンを油と共に跳ね出し、お前のその白い柔肌を焼いて回るだろう……。

 

 

「やっぱりトウモロコシやんけデスコーン。しかもポップコーンにされとるし」

 

 

 あ。と小さい声が上がる。

 何か思いついたらしい。

 

 

「せや、お祭りならポップコーン! 味がランダムに入っとって、低確率で超激辛のデスコーンが!」

 

 

 ちなみにデスコーンはトウモロコシの黒い粒の事をいうぞ。

 

 

「神聖な生物って話はどこいったんやー!」

 

 

 




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