「……で、なんでこうなったワケ?」
「わえの趣味もある、かな」
放課後の教室。
今日は何を食べようかなんて悩みながら帰ろうとした矢先、ルルに引き留められたので仕方なくついて行ったら訳の分からない物を見せられた。
曰く、ドラゴンメイドカフェの衣装なのだそうだけど──。
「鉄の翼が3対6枚、鉄の尻尾は二本、メイド服は改造しまくりで切れ目だらけ……」
ドヤ顔のルルを見て、ため息ひとつ。ナニコレ。
そしてそんな意味不明な衣装というか、武装をデザインしたであろうアマデオは何を考えてるんだ?
なに二人して満足そうな顔してるんだよ。まずデカいよこれ。邪魔だよ君達。
「俺も最初はシンプルに竜人ベースで生ものに寄せていこうと思ったんだ、でも、でもよ……!」
泣きながら大柄なアマデオが小柄なルルへ抱き着く。
ちょっと絵づらがきついからやめてくれないか。
ルルももうちょっと反応なさい。
「レヴニール博士が折角だし動かそうというので、試してみたんだ。そしたら、こんなメタルチックなのが出てきてッ!」
「アニマトロニクスと一緒。これを骨組みにガワを被せる予定だったけど、でもストップ掛けられた」
はーはーはー。なるほどね。
最初は真面目に設計しルルが組み立てていたけど、その作りかけの姿が性癖に刺さって興奮してしまったと。
一言いい?
アホかお前。
「分からないんですか我らが竜人殿! メタルドラゴンの美しさ、素晴らしさを!」
全然わからんし、お前顔やばいぞ。
というか翼と尻尾が倍増してるのワケワカランし。
てか角はどこいった角。一番重要で一番どうでもいい角がないじゃないか。
略さないで邪魔さ加減を味わえ。
「ああ! この美しさを全国へ伝えたい! 世界へ伝え、一種のベースにまでのし上げたい!」
「きっしょ」
「わえは航空力学的に無駄過ぎるからあんまり分からないかも」
ルルの視点はともかく、アマデオ個人の性癖でクラスの出し物を台無しにするわけにはいかない。
作り直すか予定通りガワを被せるかして、しっかりと元の計画に戻しなさい。
「そ、そんな……お慈悲を……」
「折角作ったのに―」
壊せとは言ってないよ。
正せと言ってるの。
ほら外すよ。
「というか、これ全部鉄? 重いだろうにどうやって背負ってるの?」
「拡張用の接続端子があるから繋いでる」
かく……たんし……。ん?
「アマデオあっち向いてて」
「ハイッ」
ルル、あんたまさか。
「ああ、やっぱり」
「どうしたの?」
背中を見てみれば、メイド服の隙間からがっつり部品が突き刺さってる。
お人形たるルルだからこそできる肉体改造でのくっつけだ。
いや
「いいルル。人間の背中に穴はあいてないの」
「そういえばそうだった」
「そもそもこんな鉄の塊、人間は抱えられないの」
「そういえばそうかも」
がちょんがちょんと外された3対6枚の翼と二つの尻尾はどうも完全に鉄で作られているらしく、私でもちょっと重量を感じるほどだった。
ルルの身体能力というか筋力というか、それがどうなっているのかは分からないけど少なくとも他の人が装備出来るものじゃない。
というか、喫茶店の店員が身に着けるものじゃない。邪魔すぎる。
「むぅ。せっかく稼働させられるようにしたのに」
「そうです、そこが拘りなんです。その為にレヴニール博士には無理を言って!」
「わえは博士じゃないけど」
科学者みたいなもんに間違いはないでしょ。
それはともかく作り直し。作り物なんだから動かせなくて当たり前。
分かったらほら働け働け。どうせあともう数回アホやらかすだろうから早めにね。
「んゆむぅ。軽量化、ソラを組み立てた時も素材不足で機械部品だらけの超重量になってた」
「シッ」
アマデオがいるんだし迂闊な発言を避けること。
「しかし竜人殿。せっかくだしリアリティを高めたいのですが」
「まずは形を整えてからいいなさい」
だから鉄ドラゴンはだめ。
そもそもルル、あんたこの技術を一般公開することになるのよ?
「あ。それはだめだ、だめだった。わえの知識は秘めるもの」
「そんな……。せっかくレヴニール博士が頑張ったのに……」
「頑張ったらなんでもよしって訳じゃないのよ」
ずっしりと重みを感じるそれを手に取り観察してみる。
見れば見るほど不思議な姿だ。竜の鱗を鉄に置き換えただけでなく、所々にオリジナルの意匠もある。
かっこいいかはともかく、竜人用の鎧を拵えたらこうなりそうだ。
鱗があるから防具は必要ないけど、しかし傍から見た時の……ああしまった。んなことどうでもいいんだ。
「あの、せめて俺も身に付けてはダメですか……?」
「思い出作りならいいと思う」
「……そもそも装備できるの?」
ルル用というか、装備方法が肉体への突き刺しだけど。
「えーい」
「あ、ちょっルル!」
それだいぶえぐいんじゃ──
「ぐわぁあああああああ!」
「遅かったか……」
背中に鉄の翼をくっ付けられたアマデオが苦痛の叫びをあげるが、恍惚の表情を浮かべていた。
「次しっぽー」
「あぎゃはぁあああああああ!」
ずぅうん……。
総重量が幾らかは分からないけど、こんな重しを付けられて潰されない人間はいない。
そこから更に、背中の上下をぶっ刺されているんだ。これ下手したら死ぬんじゃなかろうか。
「どうかな。思い出、必要なら写真とるけど」
「そもそも生きてるのアマデオ」
びぐんびぐんと気持ち悪い動きをしている。
てか痙攣してる。もう駄目ねこいつは。
「え、ちょっ、竜人殿、しぬ。しんじゃう」
「よかったじゃない思い出ができて」
「死ぬ思いができてます……」
こんな状況でもうまいこという余裕はあるんだねぇ。
「ねえこれ結構まずい?」
「ルルの死生観というか、医学というか、なんかそこら辺ざっくりしてるわよね」
「勉強不足」
「あの、誰か助けていただけません……?」
まぁこれで結構痛い目みたろう。そろそろ治してやるか。
「──フロレンスが」
私もルルも回復魔法使えないからね。
いやー、ルルがフロレンスの遠距離会話使えるようになってて良かった。
「寝てたんすけど……」
「良いから治せ」
「ふぁい」
虫の息だけど生きてるよねアマデオ。
生きてるなら治せるよね。
「あんま頼り過ぎるなよなー。ホントはここまで治せるもんじゃないぞー」
「分かってるわよ」
「ならいいけど」
「死んでなきゃいいんでしょ」
「お前死生観どうなってんの……?」
ルルほど適当じゃないやい。
「てかお前ら何してたらこうなるの」
「ルルとアマデオがやらかしたことよ。私は居合わせただけ」
「わえが装備させた」
「俺は竜になりたかった……」
アイアンドラゴンパーツを手にしたフロレンスが首を傾げる。
「なんか翼多くない……?」
目を向けると製作者達は顔を背けた。
うん、そこはね、完全な趣味だろうからね。
「翼も尻尾も多い癖に角は作らないのよ。フロレンスもなんか言ってあげて」
「つ、の……?」
まじかよお前もそっちの立場か……。