「おはようフロレンス」「ぱやー」
「うっすお二人さん」
ついに訪れた休日。
寮玄関で待ち合わせをしてこれからついに
なんだけどもぉ。
「なにその恰好。舐めてんの?」
「え、なに。だめ?」
「ダメでしょどう考えても」
現れたフロレンスは、なんと白いワンピース一枚だった。
まったく戦いに行くような恰好ではなく、どちらかと言えばピクニックへ行くのではという装いだ。
さぞ麦わら帽子の似合う事だろう。折角なら被せてやりたい。
「かわいい」
「ルルちは素直でよろしい。こっちのドラ
「これ私がおかしいの?」
武器も防具もなし、それどころか薄着で戦いに行くのかっつってんの。
「ふふふ。装備ならあるぜ、これだ!」
そう言って取り出したのは、虫かごと網。
「ふんぬ!」
「ああ! オレのワンセットがっ!」
完全にお転婆少女じゃんか。ワンピに虫取り一式ってさ。
もしかして
「のんのん。お前の修行なんだしオレが出張って戦っちゃ意味ないだろ? こうして一般町娘の役するから守ってみよ」
「護衛機になるのだー」
ああ、そういうこと。
ならいっか。ルルは守らないけどね。
「がーん。わえ壊れたら大変」
「自分の身は自分で最低限守る事ね」
「考えとく」
いやそこは努力するっていいなさいよ。
で、フロレンス。目的地まではどうやって行くの?
「マイホームを使うぜ。ついてこーい」
「はいなー」
歩き出した自称一般町娘の背中を追う。
こいつって寮生じゃなかったっけ。マイホーム?
んー。もしかして隠れ家とか? 以前のルルと同じくでこいつも秘密多いからなぁ。
そういう雰囲気になったら色々教えてくれるだろうか。
てくてくのんびりと歩いて20分程。
田園風景が切れた辺り、ひっそりと古びた一軒家が建っていた。
ここが目的地らしい。扉の前でフロレンスが壊れた虫かごを漁る。
「鍵かぎ。どこ行ったかな」
「このお家なに?」
「秘密基地。──あったあった。驚くなよぉ」
「なんで虫かごに鍵入れてんのよ」
「驚くのはまだ早い」
いや驚いてるんじゃなくって。
……まぁいいか。
「え」
「んゆ?」
扉を潜り抜けた先は、想像とは全く異なる光景だった。
「……時代が違う。んん? 様式、近代的でも知らない部屋」
「外観よりも広いわね。どう考えてもおかしいけど……」
まだ玄関から見ただけだけど、古びた家の外観からと全く異なる間取りになっているのは確かだと言える。
ここまで奥行きもなかったハズだし、そもそも階段を設置できるほどのスペースは無かった。
おかしい事その2として、ルルがぶつぶつ呟いている通り知らない様式の内装なのも気になる。
貴族の絢爛豪華なお城みたいな屋敷ほど派手ではなく、かといって私の実家みたいな木製わびさびハウスとも違う。
お貴族様を参考にしつつ庶民向けにコストダウンをして、利便性を求めた清潔な家。
と、まとめられるかな。
「ねえねえ。どうなってるの? わえの技術とは違う?」
「詳しい原理は省くが
そういうことだろうと思った。
「ここからテレポーターが目的地に繋がっているわけですンでェ」
靴を脱ぐであろうスペースを無視して皆でどかどか上がり込み、廊下の真ん中でフロレンスが消える。
あるであろうテレポーターが見えないけど、このままついて行けばいいのかな。
「お部屋気になるけど、だめだよね」
「一応は人の家だからね。家主が許可してないことはしない方が身の為よ」
私だってこの家が気になる。
なんというか、こう、新築とか間取りとかって魅力があるから。
でも今日の目的は私のレベルアップだからね。
ルルの腕を掴んで進み、透明なテレポーターへ乗り込む。
「わ──」
視界が暗くなり、管の中を通るような景色を通り抜け。
「遅かったじゃないか……」
到着したのは砂漠。周囲一面砂漠のど真ん中だった。
私の知ってる限り砂漠は西の方にある海岸付近だけど、来たのは初めてだね。
「ルルちは?」
「ん? 手を繋いでるけ──」
ひょいっと引っ張りフロレンスの眼前へ差し向けたら。
そこには。
腕しかなかった。
「は、え、ちょ」
「おいおいおいドラゴン娘ぇ」
ちが、違うんだって!
テレポーター乗る前まではちゃんと握ってて、あえっと、握ってたから千切れちゃったの!?
ほらフロレンスさっさと迎えにいって繋げてきて! はい!
「──とーちゃく」
「あ! ルル! あんた腕取れたから、フロレンスが治してくれるってさ!」
「なんだか大変。どうしたの?」
だから! あんたの腕が!
「あー」
無くなった自分の腕を見て、ルルが間抜けな声を出した。
ずいぶんのんきしてるけどさ、大丈夫なのそれ……?
「んゆ。んふふふふ」
「あ、ちょっ」
ぬるりと私の手から抜け出したルルの腕がひとりでに動き、わしゃわしゃと服の中へ入って──
「んひ、っちょ、やめなさいルル! くすぐった、ひひっ」
「ドラゴン娘ってくすぐりに弱いのか」
「意外な弱点」
捕まえた腕を、ぽい!
砂丘に投げ出された小さな腕がひとつ、うぞうぞ蠢き続けている。
「な、な、な、なにこれ! ネクロマンス!?」
「ぶるーとぅーすの遠隔操作ー」
「絶妙なレベルの技術使ってんなルルち」
にへらと笑ったルルは腕を拾うと、欠損した部位へ繋げた。
回復魔法も無しにかちゃりと金具みたいな音を出し、ぴったりくっついたままになる。
そっかこいつ、あれか。人形の身体だから自由に手足を外したりできるってことか。
うわビビったわ。ふざけんなよマジで。粉々にするぞ。
「ルルちってメカバレしてからだいぶ見せてくれるようになったよな、こういう要素」
「……怖がったり、気味悪がったりするかなって思ってた」
「ああ、ルルちなりに考えてたのね」
なに呑気に会話してんだテメェら……!
「それで。
「話進まないしそろそろ行こか」
「はーい」
ルルの悪ふざけはさておき、目的よ目的。
寄り道し過ぎだ。
「今日の入り口はあれ、あの岩にありまする」
「岩?」
ちょっと遠くに見えるなんの変哲もない岩石を指してフロレンスが振り返った。
遠目じゃ分からないのかな。ルルとフロレンスを引っ掴んで軽く飛び、近づいて観察する。
うーん、やっぱり分からない。
「お前らっていつも力技で突入してたろ。本来はこういう地味な感じなの」
最初の時はルルと一緒に墜落、二度目は見えた方へ思いっきり体当たり。
確かにまともな侵入の仕方してないとは思ってた。
で、ここからどうやって?
「そこはちょちょいっと」
フロレンスが岩の表面を指でなぞると、遠距離会話と同系統と思われる半透明板が出現した。
ぴょん、ぴょんと微妙な音が数度鳴って、今度はちゃんとテレポーターの輪っかが出てくる。
「この
「それはありがたいわね」
「がたやー」
仕込みとしてショートカットを作っておいてくれたのは素直にありがたい。
「えー。それと伝える事項として、タイプはドラゴンスレイヤーの時と同じくアイテム回収型にございます」
「どういうモノが置いてあるのかしら」
「それはお楽しみ」
左腕についている赤い腕輪を光らせながらムカつくドヤ顔をした。
それくらい教えてくれていいじゃんか。けち。
「がんばるぞー」
ルルが先んじてテレポーターで消えていく。
自身と同じ技術で作られた物があるとでも思ったかな。
紫のふわふわがやる気出すのはそういう技術封印の時だからね。
「さって、行きますか」
「守ってくれよ、守護竜さま」
「あそうだった」
今日のフロレンスは一般町娘役。
こいつを守りながら戦い、攻略を目指すんだった。