ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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40 とりぶれ

 

 

 

「ところでドラゴン娘」

「ん?」

「部位が千切れた時の止血さ、あれどうなってんの?」

 

 

 ああ、力込めたらできたやつね。

 直感的にできたというか、竜の血が云々かなぁ。

 あえて血を巡らす事で細胞が活性化するとかなんとかじゃない?

 

 

「竜の血か。ほんっと便利だよなぁ」

「でしょ」

 

 

 森を歩いて紫苑の群生地まで戻ると、メイド服の言った通りルルがそこにいた。

 こっちは尻尾やら翼やらが千切れ飛んで死にかけてたっちゅうのに、花冠作って遊ぶ余裕があるなんてふてぇやつだ。

 

 

「帰ってきた。倒した? どんなだった?」

「私に倒せない敵はない。ボコボコにしてやったわ」

「それはすごいかも知れない」

「ずたぼろにされといてよく言う」

 

 

 フロレンス、なんか言った?

 

 

「首掴みながら言うなよぉ」

 

 

 怪我は治ってるけど本調子じゃないので戯れもそこまで。

 で、そういえば忘れてることがあるんだけど。

 

 

「忘れてること?」

「それならわえ、さっきもらったよ」

「ん? ルルちどったの」

 

 

 いやなんで地下迷宮(ダンジョン)に詳しい専門家のフロレンスが忘れてるのよ。

 ほらあるでしょ。ボス倒した報酬的なやつ。

 ルル、貰ってるなら出しなさいそれを。私が倒したんだぞっ。

 

 

「これー」

 

 

 と言ってルルが差し出したのは、頭に乗っけていた花冠であった。

 舐めてんのかてめー。

 

 

「ううん。この子、アイーダが話し相手にってくれた」

「アイーダ? あのメイド服のこと? こんなのをそんな理由で渡すなんて、なに考えてるのかしら」

「──ああアイーダ……さ、ささすぁん、はぃ、いいつも……」

 

 

 !?

 なんか、花冠が、喋ってる!?

 フロレンスもこれには予想外だったようで、何も言わずそっと後ろに手を回した。

 表にはしてないものの、雰囲気からしていつでもルルから引き剥がせるよう備えてくれているらしい。

 

 

「いつ、も。ち、ちょっ……っと、へん」

「あんた程じゃないわ。何者?」

「この子、トリブレってお名前。すごいんだよ」

 

 

 そりゃ明らかに人じゃないのに喋ってるんだからすごいっちゃすごい。

 だけどルルの例がある。

 別世界産の何かなら人間じゃなくったって不思議じゃないのか。

 

 

 

「トリブレはね、恥ずかしがり屋」

「あ、あああ、()、は、恥ず、かしぃか……ら、こ、こうしして、る」

「人間なの?」

「んふふ……」

 

 

 うっわ、この笑い方ルルそっくり。

 こいつも巨城レーヌカーニバルの主の道化師と関連あるのかさては。

 

 

「……おかしいな」

「どうしたのフロレンス」

「いや、この地下迷宮(ダンジョン)にあるアイテムは剣だったはずなんだが……」

「こいつはボス撃破の報酬とは違うと」

 

 

 花冠のトリブレは道化師の知り合いであるメイド服(アイーダ)が寄越したモノ。

 なのでてっきり報酬と思っていたけど違うのか。

 剣なんか見かけてないよ。 

 

 

「あ」

 

 

 ルルが声を出した──ように見せかけて、トリブレ。

 同じところから声が聞こえるから紛らわしいなこいつら。

 

 

「ももし、かす、しぃて……」

 

 

 何か知ってるの?

 

 

「あー。さっき言ってたやつ」

 

 

 このままトリブレに説明させると長くなりそうなので、ルル翻訳を挟ませる。

 それによると、どうやらアイーダ(さっきのメイド)が手土産としてそれらしい剣を持ち帰ってしまったらしい。

 理由は不明。ただ以前から付き合いのあるらしいトリブレ曰く、特段理由もなく何となくの思い付きひとつでそんな事しても不思議じゃないお人なんだとか。

 あんな腕前しておいて戦闘以外が適当なのかよぅ。

 

 

「まじか、ムーンライトソードが持ってかれちまった」

「どういう武器?」

 

 

 ドラゴンスレイヤーが文字通り竜殺しの剣なら、ムーンライトソードは月明りを斬るとか?

 いやそれじゃ意味が分からないな。斬った所でだし。

 

 

「竜に纏わる伝説に登場する聖剣。振ると光が飛んでって遠距離を斬れる」

「へー」

 

 

 なんか竜殺しよりパッとしないね。

 

 

「あくまで軽くて強い魔法剣ってだけだからな。殆どフレーバーメインよ」

「絶対に回収する必要はどう? ありそうな代物?」

「んにゃそこまで。それに本命な探しモンとも違うし」

 

 

 ……探しモン?

 

 

「ヤベ」

「ねえ。帰らないの?」

「そろろそそ、す。ろ、崩れ……る。かから」

「フロレンス」

「はい……」

 

 

 口を滑らせたわね。帰ったら問い詰めるわよ。

 ルルはトリブレから道化師について……聞いたら死にそうだから後でいいや。

 とりあえずまずは帰る。はいテレポーター出して。

 そしてお風呂、いや先にご飯だな。焼き肉。どこのお店が良いかな。

 

 

「帰りは以前と同じく寮のロビーになります」

 

 

 出現させたテレポーターへ足を踏み入れると寮へ到着する。

 休日なのでロビーに他の人もいるけど、どうやらうまいこと死角から出現できるらしい。

 

 岩でも隠れ家でもなく、帰りは前と一緒なんだね。

 もっと便利に扱えれば各地のお店に行けてもっと気軽な旅行とかできそうなのに。

 

 

「帰還は拠点へ戻るって挙動一択でな、ちょっとその辺の設定がめんどいんだ」

「わえなら直せるかも。そしたら一緒にお出かけいく?」

「誰があんたと行くのよ」

 

 

 ひとりで行くに決まってる。

 

 

「んゆ? なら往復考える必要ない。ひとりなら飛んだ方が早いのに」

 

 

 あ。いやそれは、ほら。

 ルルが一緒なら倍食べられるし。

 

 

「一緒にお出かけ?」

「うるさい」

「いちゃついてるとこ悪いが移動するぞー」

 

 

 誰がいちゃついてるって?

 

 

「首握りながら言わんといて……」

 

 

 立ちっぱなしもなんだ。

 移動し私の部屋へ。

 

 私の部屋へ。

 

 

「私の、部屋に!?」

 

 

 なんで!?

 自然な流れで、私の部屋!?

 

 

「いや集まれるところここにしかないし……」

「あんたかルルの部屋でいいじゃん!」

「部屋に連れ込んだところ見られたら恥ずかしいし……」

「わえの部屋、機密でいっぱい」

 

 

 どうでもいいわ!

 ルルに私の部屋の位置ばらしたらこれから襲撃されるじゃんか!

 

 

「いいんぢゃね?」

「よくねっつの」

「仲良し」

「ルルち、ゃん。楽しぃ、し……す、そぅ」

 

 

 もういいや。後の祭り。

 てか叫んだらくらくらしてきたし。

 

 

「じゃ、今日の反省点まとめるぞー」

 

 

 こんな纏まらない頭で反省会なんて無理じゃん?

 それは後日にしてさ、トリブレとかあんたとか問い詰めたいんだけど。

 さっき言ってた探しものについても聞きたいし、トリブレにはレーヌカーニバルやアイーダについて聞きたいし。

 けど道化師関連はルルのいない所で聞こう。

 

 

「というわけでフロレンス・バタイユさんからどうぞ」

「しゃあなしか。オレがあちこち巡って探してるのはな、ひとつの武器だ」

「武器?」

 

「あ、こ、これっ。食べ、る?」

「わえ食べられない」

 

 

 ルルの頭に乗っかったままのトリブレが、花冠の輪っかの中からぽぽんと小包に入ったクッキーを出してくれた。

 どういう原理かちょっと気になって持ち上げたらカップも出てきた。なんと紅茶だ。

 どういう原理かは分からないけど気が利く。どういう原理か分からないけどメイドよりメイドらしいね。

 

 

「名は未知なる魔杖。オレはそいつを探し続けてる」

 

 

 聞いた事のない武器だ。まぁ別の世界関連だろうし知らないのは当たり前なんだけど。

 この真面目な顔は演技っぽさないし、どれほどの価値があるかは分からないが本当にそれを探しているに違いない。

 

 

「まぁ昔使ってた武器だよ。それさえ手に入れりゃ、他は何くれたっていい」

「……」

「ルル?」

 

 

 クッキーも紅茶もいらないルルが、真っ直ぐフロレンスを見ていた。

 普段ならこういう自分に関係ない話題、聞き流してる風な動きするのに。

 

 

「強い武器なの? 式?」

 

 

 そこが気になるのか。

 

 

「きっともう時代遅れの型遅れさ。でも、必要なんだよ」

「そうなんだ。わえも本は大事」

「だからお前ら、見つけたら頼むぜ」

 

 

 それくらいならいい。

 でも、きっかけとかは話してくれないみたいだ。

 渡した時にでも教えてくれるのかな。

 

 

「すぐに話してもいいがそれだと楽しくないだろ?」

 

 

 左手の赤い腕輪を光らせながら寂し気に呟く。

 これ以上を無理に問い出すのは、辞めておいた方がいいだろう。

 

 

 

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