ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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6 睡眠の大切さと笹団子

 

 

 

 眠い。

 とっても、とっっっっても眠い。

 結局あの後ルルの飛行訓練と言うか飛行研究というか、あれは明け方となるまで続いたのだ。

 向こうは元気いっぱいにいつまでもごにょごにょ呟きながら靴の調整をして、私は離陸と着陸要員として便利に使われて……。

 

 最終的に朝霧が出てきてルルがお祈りを始めたので、その隙に逃げた。

 流石の竜人と言えど半分は人間。かつまだ成長期の身。

 夜は眠らないと堪えるのだ。めんどいルルの相手もしてたし。

 

 

「──やっと、午後……!」

「なんだか眠たそう。どうしたの?」

 

 

 なんで、こいつ元気なの?

 一睡しないでの授業は居眠りしないだけ精一杯なのに、なんで人間たるルルはこうも平常なのか。そしてこうなってる原因はお前だっていうのに何をそんなのんきなことをいってるのか。

 

 現在はお食事戦争を退け昼食を受け取り席へ着いたところ。

 ──に、普段から眠たげで変わらない瞳をしたルルがやってきてなぜか笹を弄り始めているところ。

 いつの間にか先に食事を済ませて作業をしているのか、どんどん机が散らかっていく。こんな所で無駄なやる気を見せないで欲しい。

 

 

「あんた、本当に人間……?」

「んふふふ。凄いでしょ、お母さんがんばった」

 

 

 母の血を立てるのは良いんだけど、理由にはならない。

 昨日の夜は環境が変わってストレス云々と察してみたがどうやら杞憂らしい。

 マイペース過ぎて怖いくらいだ。

 

 

「お母さん元気にしてるかなー」

「ホームシックってやつ? 情けないわね」

「んー、わかんない。こっちに来る前も、しばらくお母さんと会ってなかったから」

「ふーん?」

 

 

 ルルは自身の事を話さない。過去や経歴はもとい、実は年齢も語らず不詳だ。

 オル・ガ・ルヴァというフルネームだって持ち物に刻まれた名前を本人と確認してようやく確定したらしい。

 お父様は仮として私と同年齢にしたらしいけれど、実際の所は分からない。

 

 

「お母さん、わえが歩く前にいなくなっちゃった。“(シキ)が近い”って言ってた」

「そう……なの? 家に、帰ってこなかったの?」

「うん。たぶんわえより式が好き。だからしばらく会ってない」

 

 

 なんか……。

 軽い気持ちで聞いたらとんでもない闇出てきちゃったんだけどっ!

 

 

「ち、ちなみにだけど。父親の方は……?」

「わえはいなかったよ?」

「へ……へぇー……。そうなんだぁ……」

 

 

 父親はおらず、母親は失踪。

 しかも歩く前に、なんて言ってるし……。

 ネグレクトは重罪だ。400年前の勇者が仲間のそういった生い立ちを知った後、泣きながら真っ先に法を決めたのは有名な話である。

 

 

「そん──」

「んゆ?」

 

 

 「そんな性格でよく生き延びられたわね」という台詞を何とか飲み込めた。

 いくらルル相手だからって、流石に言っちゃいけない。

 危ない危ない。思った時点でダメだけど、自制できてよかった。

 

 ルルが過去を語らない一因を垣間見た。

 これ以上はどこに危険があるのか分からないので、話題を変えよう。

 私はいつも通りに振舞う。そうすればなんとかなる。

 

 

「──そんな事より、ルルはさっきから何してるわけ?」

「おおー」

 

 

 おおー、じゃない。聞いてるの。

 その手元で弄り倒されてる笹はなんなのって。

 

 

「笹団子をお試し中。ぽっぽ焼き、焼板どっかいっちゃったから」

 

 

 また見知らぬモノを売ろうとしているのか。

 そしてぽっぽ焼きの鉄板については本当にどうしたか忘れてしまっているらしい。

 ぽんと諦める辺りがルルだ。しかしその鉄板には特秘すべき例の文字が刻まれているのを忘れているのは大丈夫なんだろうか。

 私が回収してるからまだいいんだけど、異邦人の技術や知識を狙ってる学者関係にしれっと盗まれても私は知らないぞ。

 

 

「んゆぅ。わえ、もしかしたら料理の才ないかも」

「ぽっぽ焼きを生焼けで出すくらいだものね」

「団子にならない」

 

 

 笹の葉を束ねて折って、重ねて丸めて。

 ……どうみても食べ物を作っているようには思えない。

 というか、そもそも料理しようとしていたのか……。

 

 

「“料理は科学”──と勇者は発言を残したらしいわ。もうちょっと頭を捻りなさい」

「科学、とすれば式? 式は得意。構築も、解を得るのも」

 

 

 竹串で笹に例の文字を刻み始めた。

 

 

「式が近い、近づいてる。たぶん」

 

 

 言葉を間違えてる気もするが、ルルに言ったところで無駄なのは知っての通り。

 喋りながらも私は昼食を食べ終えたので、席を外し食器を片付ける。

 なるべくゆっくりしたつもりだけど、戻ってきた頃にもまだ作業は終わっていなかった。

 

 

「けど、やっぱり気になるのよねぇ」

 

 

 ルルの使用する文字。空を飛ぶための式というのもチラ見したが未だにその規則性が掴めない。

 ただ枝分かれした線もあれば複雑に折れ曲がった線、角の無い曲線、はたまた塗りつぶし。

 聞いても嫌がるし、でも疑問は残るし……。

 

 嫌がらないラインを見極めて地道に聞き出すとするのも、嫌がっている以上とても心象が悪い。

 あるいは、仲良くなって……仲良くなる!?

 むりむりむり。付きまとわれる今ですらげんなりするのに。これ以上の進展を望めと?

 そうする位なら嫌われる前提で聞いた方がマシだっつの。マシなだけでやりたくないし。

 

 

「ルル。だいぶ時間かかってるけどそれ完成しそうなの?」

「食べられる式なんか知らないからわかんない」

「絶対無理でしょそんなの」

 

 

 幾らその文字が不思議な効力を発揮するとはいえ、食用でもない葉っぱを食べられるようにするのは世界の理に反してるでしょうが。

 もしそれができるのなら学者達は大喜びだし、というかそもそもそれを売り物にするならその文字をバラまく行為になるじゃん。

 

 

「あ」

 

 

 どうやらルルも売り物として考えた場合に思い至ったようだ。

 唐突に新しく文字を殴り書きしたかと思えば、魔力を流して笹を燃やして消し去った。

 

 

「……あ! ぽっぽ焼きの!」

 

 

 そして、ついに思い出してしまった。

 ぽっぽ焼きの鉄板にも文字が刻まれている事に。

 

 

「ねえ、ねえ! どこ行ったの、わえ困る。えと、商売だから!」

「うーん。そうねぇ」

 

 

 必死に私の肩を揺さぶりながら聞いてくる。

 ここで正直に回収してるって教えてもいいんだけど、はてどうしたものか。

 本当に130Es(エッサ)の質とするか、それとも面倒を嫌ってたかが130Esだしと返すか。

 

 

「そこまで必死になることもないんじゃないかしら。ルルが持っていてもちゃんと作れないのだし」

「違うの! 加熱用の式が書いてあるから、あれをそのまま写されるだけでも使えちゃうの!」

「へえ」

「あ、あの、それも違くて! えっと、燃えたら危ないから!」

 

 

 確かにふとした拍子に火事になられても困るな。扱いが分からないんだし、猶更。

 ……それにしても“写されるだけで使える加熱用の式”、か。

 法則や規則性等々も、もしかしたらその言葉の通り数学の計算式みたいな感じで……?

 っとと、いけないいけない。幾ら気になるとはいえ本人を差し置くのは。

 

 

「私の部屋に置いてあるわ。明日にでも──」

「行く。今行く。すぐ行く。式のために!」

「時間的に無理よ」

「じゃあ!」

「だから明日にでも持ってくるわよ。どうせ私の部屋にあるのだから安全でしょ?」

「……んー……」

 

 

 長考するのはなんかむかつくな。私はなんにもしないよ。

 

 

「文字というか式については触れない。なるべく見ない。メモもしない。人が嫌がってるならそれくらいは考慮するわよ」

「でも半分」

 

 

 角、翼、尻尾と目線が動いた。

 こんな所で屁理屈みたいに竜の面を見るなっての。

 

 

「確かに興味はある。けど流石に嘘をついてまでそういうのを実行する気はないわ」

「けど昨日」

「それは! ……あ、謝ったじゃない!」

「うん」

 

 

 喧嘩売るつもりなら今からでも忘れ物としてしかるべきところへ届けてもいいのよ……!

 

 

「わ、わ、わー。うん、明日受け取る」

「よろしい」

「ダメだよ。見ないでね、わえ、抗えないから」

「はいはい」

 

 

 

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