ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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7 朝の強襲

 

 

 

「──んあ」

 

 

 昨日は確か、ぽっぽ焼きの鉄板をルルに返却したくらいで終わり、ふつーになんもなくって一日が終わって……。

 ……で、今日は休日か。勇者の定めた週休2日の法則に従って。

 

 

「んんー……」

 

 

 うつ伏せのまま毛布を尻尾で退け畳み、起き上がって歩くのを拒否しふよふよ浮いて机に置いてあるコップを手にする。

 そんで魔法で水を作ってばしゃん。ごくごく。

 

 魔法って便利だしこの調子で室温も下げらんないかなぁ。最近蒸し暑いんだよ。

 意識があればどんな熱さでも耐えられちゃう私の弱点として、寝ている間だけはどうしたって無防備な点がある。

 

 超最強の生物で超すごい耐性と肉体を持ち合わせる竜の血が入っているこの身とはいえ、その半分は超脆弱なる人間。竜人の弱点たる所はそこ。

 人間サイズの身体だから今の生活があるのは確かだけど、折角ならもっと都合よくなりたいなぁ。

 竜って寝ていても強力な防護魔法で守られてるわけじゃん? 同じ角翼尻尾持ちならもうちょっとボーナスあってもいいんじゃないかな。

 

 

「てか日常生活だと、この角邪魔なだけだし」

 

 

 竜人の身体には角と翼と尻尾がある。

 翼と尻尾はそれぞれ飛ぶ時や第三の手として使える場面が多いけれど、この角は誇示以外の利点がない。

 まっっったく付属効果がない。

 

 それどころか、下手に動くと周囲を傷付けるから怖いんだよね。

 

 くるんと丸まったヤギ角と言われる種類ならこう、こめかみから生えて側頭部に沿って丸まるべきじゃん? それがどうして後頭部から生えて外側を大きく回って、ほっぺの隣で鋭い先端を見せつける形になる訳さ。

 一回気にし出すと視界の隅でちらちら見えてる角が邪魔に思えてくる。

 誇りだのなんだのいいつつ、それはそれとしてマイナスが多くて不便は不便なのだ。

 

 

「やっぱりカバー作ってもらえば良かったかな」

 

 

 でも手入れが面倒っぽいんだよなぁ角カバー。無骨でださいし。

 着替えて身だしなみを整え、さて今日はどうしようというところで扉がノックされる。

 こんな朝から誰だろう。はいはーい。

 

 

「どちらさまー?」

「うっす」

「……誰もいないか」

「初っ端から喧嘩売ってんの? おお?」

 

 

 頭二つ分くらいしたから抗議の声がする。

 たぶん気のせいだし──

 

 

「待て待て待て、閉めるなっつの」

「冗談よ。それで朝からなに?」

 

 

 目の前で腕を組んで立っているこいつは同級生のフロレンス。

 ルルが華奢な点を小柄と表現できるのに対し、見た目が完全に子供なレベルに小柄な女生徒である。

 本人的にコンプレックスはないのかその点を強調し美少女をよく口にしているけれど、粗暴な口調からフローラルヤクザと呼ばれている。

 ちなみにそこまでフローラルな香りはしない上に“ヤクザ”という銘も語呂だけで意味が合っているのかは誰にも分からない。

 

 

「あんたの連れにルルってのいたろ?」

「いないわ。さようなら」

「待てやドラゴン娘。どんだけ朝から機嫌悪いんだ」

 

 

 だってルル絡みでしょ?

 だったら深入りせず逃げるが得策でしょうが……ッ!

 

 

「お前らどういう間柄なの……?」

 

 

 敵。

 

 

「なるほど、ラヴってとこか」

 

 

 しばくぞ。

 

 

「……な、殴ってから言うのひどくない……?」

 

 

 どうやら直接手を下す前にフロレンスを殴ってくれた奴がいるらしい。

 でも私以外この場にいないしな。怪奇現象だろう。たぶん。

 

 

「ったく暴力ヒロイン反対! つかこんなんやってないでさっさと玄関行け。やっこさん待ってるんだから」

「私にも拒否権はあるはずよ」

「ないんぢゃね?」

 

 

 ため息。

 ルルといいフロレンスといい、私と関わるやつはどうしてこうも心臓が強いのか。

 いやまぁ、こんな全身凶器の竜人と仲良くしようって奴がおかしくない訳がないんだけど。

 

 

「別に部屋に籠ってたっていいんだぜ? オレは駄目だったってルルに教えるだけだし」

「じゃあそれでいこう」

「“あいつ部屋から出ないわー。お前代わりに行ってみる? 案内すっぞー”」

「おーけー。今行く」

 

 

 ルルに部屋の位置が知らされればどうなるかなんて目に見えて分かる。

 絶対これ以降何かあるたびに私の部屋へ押しかけてくるぞ。

 

 

「フロレンス。あんたもきなさい。必要な犠牲よ」

「いやオレはこれから地下迷宮の探索いかなきゃだし」

「そんなのいいでしょ別に」

「よかないね」

 

 

 というか地下迷宮って、学園の怪談に出てくる嘘っぱちのやつでしょ?

 アホ追いかけてる暇があるならルルの相手しなさいってば。

 

 

「あのダンジョンにはドラスレが眠っている、とオレは確信している! それを探すのが使命! てなわけで」

「あ、ちょっ」

「んじゃーなー!」

 

 

 止める前にフロレンスは走り去っていった。ドラスレってなによ。

 そしてなんて素早さ。ただのダッシュでそこまでとは。

 再びのため息。

 

 

「まぁ、フロレンスがいたらそれはそれでまた疲れるしいっか……」

 

 

 ルルと潰し合って対消滅してくれたらそれ以上はないんだけど、あのノリだとルルと一緒になって私を振り回そうとしてくるだろうしな。

 うん。良かったと考えよう。

 

 

「行くか……」

 

 

 きっと、空を飛ぶ練習をしたいはずだ。

 またこの前の夜みたいな離着陸の担当するのか、この竜人たる私が……。

 

 

「暴力で解決できればいっそ楽なのに……」

 

 

 ぶん殴っちゃダメだからこう大変な思いをしているのだ。

 え、さっきフロレンス殴ったって?

 あれはほら、怪奇現象がやった事だから。

 私が殴ったならあんなちんちくりん粉微塵になってるだろうし。

 

 

「来た! 飛ぶ、飛ぶ式考えたから!」

「はいはい」

 

 

 休日にも関わらず制服のルルが玄関でぴょんぴょんと跳ねている。

 

 

「どこで飛ぶ気? こないだの森?」

「うん。ヴェオいたから。見てもらうの」

「途中でパンでも買っていくから先行ってなさい」

「まぁー!」

 

 

 なんだその返事。

 

 

 

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