ツンデレドラゴン娘と空を飛ぶ話。   作:親友気取り。

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9 謎の地下迷宮

 

 

 墜落の勢いで地面に埋まっちゃった。

 一応周囲の安全を考慮して場所は選んだけど、これからどうしたものかな……。

 

 

「……状況確認……計器に不調……」

「起きた? めんどくさいからまだ寝てていいわよ」

「…………お母さん……」

 

 

 こんな時はヴェオへのお祈りじゃなくてお母さんか。信仰心より勝るなんて、安っぽい言い方だけどよほど愛情を求めていると思える。

 自身より式を探求した母を追って計算に強くなっていったのだとすれば救いようのない話だ。結局その母が自分を認めてくれる前に別の世界へ来てしまったのだから。

 

 

「とと、まずはここから出ないとな」

 

 

 今はルルの事情なんかどうでもいい。

 なるべくルルへ衝撃がいかないよう念入りに翼の上から魔力でも包んでたから平気だとは思うけど、早いところ脱出して状況を確認したい。

 怪我をしてたらそれはそれでしょうがないとして、手当てできるなら早急にしておいた方がいいに決まってる。

 

 

「最後の一瞬、空洞に出た気がするのよね」

 

 

 思いっきり真上へぶち抜いての脱出ができないわけじゃない。そんなことをすれば吹き飛んだあれこれがどう被害を出すか分からないし、なるべくやりたくないだけ。

 とすれば例の空洞がうまいこと出口の存在する道であることを信じたいのだが、下手に動くと土砂がルルを押し潰しちゃうから……。

 

 

「気を付けないと」

 

 

 姿勢を変えて、ルルを両手で持ちつつ翼と尻尾で空間を確保して動く。

 三本腕が増えたようなもんで便利だ。こんな時でも角は役立たないけど。

 

 

「──。────?」

「話し声?」

 

 

 ある程度掘り進んで例の空洞を探していると、どこからか声が聞こえた。

 複数……って訳じゃないしひとりごと?

 なんにせよ、人が訪れるような場所なら出口もあるはずだし助かるね。

 

 

「こっちかな」

「計器に不具合……座標マイナス25m……」

「邪魔だから寝てなさい。──と言いたいところだけど、そんなに埋まったのね」

「埋まった? 墜落で無事、どういうこと?」

 

 

 どうやらルルは状況を分かっていないらしい。

 腕の中でもぞもぞ動くのでくすぐったい。

 

 

「守ってやったのよ。死んだら後が面倒だし」

「……んふふ」

「なによ」

「怪我、してない?」

 

 

 するわけないでしょ。こんなくらいで。

 

 

「……それはそれでおかしい」

「あんたら人間みたいなやわと比べてもらっちゃ困るわね」

「わえ、柔らかい?」

「ちょっと黙りなさい」

 

 

 謎の声へ近付いてきた。

 後もうちょっと進めば……お。

 

 

「──うわっ、なんでこんなとこにいんの!?」

 

 

 空洞に出たと同時、聞き覚えのある声で驚かれた。

 向こうが持っている明かりが逆光となって少々分かりにくいけど、こいつは……。

 

 

「奇遇ねフロレンス。地下迷宮探索は順調かしら」

「ずいぶん調子良さそうじゃんか」

「こいつのせいでね」

 

 

 どうやら偶然にも、存在するか怪しい地下迷宮へ辿り着いたらしく、更に運のいいことにそこを訪れていたフロレンスと合流することとなった。

 こんな偶然あっていいものか訝しむけれど、そうなってるんだから驚くしかない。

 

 ぺいっとルルを放り投げるとフロレンスはドン引きしながら座り込む。

 そして手元に水筒を持つと一杯始めた。土まみれ二人を肴にとはこいつもいい趣味してるな。

 

 

「おい無事か? オレちゃん怪我なら治せるぞ」

「なぜかなんでかどうしてか」

「そうかそうか。ドラゴン娘のせいだろうなぁかわいそうに」

「私は被害者よ」

 

 

 飛行練習に付き合わされ、撃墜されそうになったのを助け、墜落でこんな洞窟まで落ちて散々。

 まったくなんでこんな目に合わにゃならないんだ。

 

 

「撃墜? なんぞ悪いことしたんか」

「知らないわよ。こいつが飛んでたら黒い手みたいな弾に襲われたの」

「ひとつ当たって計器に異常。わえ、こういうの苦手だから落ちちゃった」

 

 

 ……一発当たってたの? 守りきれてなかったか……。

 

 

「で、ドラゴン娘は庇ってこうなったと」

「私服をひとつダメにされちゃったわ。ルルのせいで」

「いやひとつ言っていい?」

 

 

 なに?

 

 

「なんで墜落して無傷なんだよ!」

 

 

 いやそらまぁ、竜人ですし。

 

 

「こんな地下までめり込むってどんな衝撃かわかってんのか!? ミンチよりひでぇってもんじゃ済まねぇぞ!」

 

 

 いやそらまぁ、頑丈な竜人ですし。

 

 

「おかしいってぜってー。カチカチのカチ勢かよ。なぁルルちゃん」

「おかげで助かったから好き」

「わかる。あの尻尾の鱗滑らかでえっちだよな」

「わかんない」

「急に梯子外すのやめて……」

 

 

 アホやってないで案内なさいフロレンス。

 あんた出口とか知ってるでしょ?

 

 

「知ってるけど、えー。だいぶ探索順調だからショートカット開通までやりたいんだよな」

「構造わかるの?」

「パターンがあるからな。こういうシンプルなのは大体、この辺まで来ると出入り口へ通じる隠し通路がある」

 

 

 そういって見せてくれた方眼紙は細かく色分けされており、現在地へは磁石を挟むことで迷わないようなっていた。

 がさつな印象を受けるのに、意外とマメだな。

 

 

「攻略ってのはやっぱ手書きっしょ。メモ帳と鉛筆が世界を救うのさ」

「あっそ」

「冷たすぎる。なぁルルちゃんなぁ」

「メモ帳と鉛筆は世界を滅ぼす」

「つ、冷たすぎる……」

 

 

 流石のルルもフロレンスのネタ振りは面倒に思ったのか、極めて冷酷に返して口を閉ざした。

 

 

「そっかぁ。最近の子はレトロゲーなんかやらないもんな、便利な方が遊びやすいもんな。うん、でも楽しみ方はそれぞれだし」

「コップ借りるわよ」

「容赦ねぇこのドラゴンガール。魔王かよ」

 

 

 借りたコップに魔法で作った水を入れて一息。

 便利は便利だけど、直接飲もうとすれば顔ごと突っ込まないといけないからね。

 

 

「ルルは?」

「んーん。必要ない」

「そう。ほらフロレンス、ぐちゃぐちゃに喚いてないで案内なさい。ぐちゃぐちゃにするわよ」

 

 

 腕力で。

 

 

「オレも多少は耐久力に自信あるけど、流石にやばそうだな……」

「試してみる?」

「やらねぇっての。ま、そろそろ目も慣れた頃だろうしいくか」

 

 

 ようやく歩き出したフロレンスに続き、地下空洞もとい地下迷宮を進む。

 確かに暗さに目が慣れてよく見える。どうやら煉瓦に囲まれた細長い廊下のような所らしい。

 

 

「はっきり壁がある上にきっかり90度道が曲がってるからマッピングしやすくて助かるだろ? お陰さまで今日中に完全攻略できそうだ」

「まさか全部調べあげる気? そこまで付き合えないわよ」

「……やだな、ショートカットまでさ」

 

 

 なんか今、妙な間があったぞ。

 何も言わなきゃたぶん付き合わせてたぞ。

 

 

「地下やだ。早く帰って靴も直したい……」

 

 

 ルルがげんなりしてる。

 

 

「あ、ちと危ないぞ」

 

 

 言うと同時にフロレンスは氷の盾を魔法で作り出し、何かの攻撃を防いだ。

 防いだその瞬間に盾は弾け、氷柱となった欠片が廊下の向こうの暗闇へ飛んで消えていく。がらがらと崩れる音が遠くから聞こえた。

 

 

「……あんたでよく見えなかったけど、敵?」

 

 

 先程までなかった気配が廊下に増えていく。

 前と後ろにどんどん増えて、私たちを取り囲んでいく。

 

 

「いやー、戦力増えてくれたの助かるわ。オレひとりだったら流石にめんどうだった」

 

 

 ……あんた、まさかと思うけどこういう状況になると知って案内したわね……?

 

 

「そりゃ最深部でイベントが起こるのは常識でしょうが」

「どこの常識よ! こいつら倒したらフロレンス、次はあんたをやる」

「だってよルルちゃん。がんばれそ?」

「やだ」

 

 

 ルルは耳を塞いで何も聞かない状態だ。

 切っ掛けはわからないけど、大した戦力になりそうじゃないこいつがちぢこまってくれるのは助かるわね。

 尻尾でべちべち叩いて廊下の隅へ追いやってから、フロレンスと共にそれぞれの持ち場へつく。

 

 

「で、こいつらは?」

「魔物ってやつ。詳しくは終わってからだ」

 

 

 実家に飾ってあったような鎧が中身もないのに歩いていた。

 肉を失くした骨が重力を無視して立ち上がっている。

 

 それ以外にもどう形容したらいいのか困る異形のモノ共が、不気味にそれぞれの武器を構えて今にも攻撃を仕掛けてきそうにしていた。

 その中からひとつ、火の玉が飛んで向かってくる。攻撃魔法を使ってくるやつもいるのか。

 

 

「容赦はいらん、やっちまえ!」

 

 

 フロレンスの方は、既に先程出していた氷の盾や自身の蹴りで戦闘を開始しているようだ。

 荒っぽい豪快な戦い方。けど、こんなところをひとりで探索するだけあって心配はいらなさそう。

 

 

「それじゃ──」

 

 

 ルルを気にしながら戦うのは不自由だけど、何かを守りながら戦う練習だと思えばいい。

 

 

「──遠慮なく!」

 

 

 魔力を口元に集め収束。

 あんな有象無象、まずは一発ド派手なのお見舞いしてやる!

 

 

 

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