競馬本史には詳しくありませんが、本編にはあまり関わらないとおもうのでそれでも良いなら読んで下さると嬉しです。
ここは中央トレセン学園
日本全国から才能溢れるウマ娘が集まり、競い、高めあう場所。
その学園の職員室にて長身な男性が作業の手を止め、側で作業していた小柄な女性に声をかけた。
「お〜い新人、この資料運ぶの手伝ってくれ」
「はーい」
女性は機嫌が良いのか微笑みながら了承し、資料の入った箱を持つ、しかし女性は途端にツンと唇を尖らせ、落ち込み出す。
「それより先輩、そろそろ新人はやめて下さいよ、私もう5年ですよ?流石にそれで新人は、その…役立たずなのかなって…」
「イヤイヤイヤ!そんな事無いって!めっちゃ役に立ってる!なんなら普段の事務作業とか俺より出来てて役に立ってるから!」
男性は慌て言い訳するが女性はまだ拗ねた様子でいる為、男性はより焦ってしまう。
それを見かねたのか長身の女性が間に割って入ってきた。
「そうね、その馬鹿より貴女の方が普段は仕事が出来て私としても助かってるわ」
「あ、おハナさん、本当ですか?役に立ってますか?」
「えぇ、本当よ。だから落ち込まないの」
「はい!」
おハナと呼ばれた長身の女性の慰めにより再び元気になった小柄な女性。
それをみておハナは微笑み、小柄な女性の頭を撫で始め、なごやかな空気が広がる。
「えと、あのぉ、俺空気なんだけど…」
「いつまでも新人なんてよぶからよ、自業自得ね沖野」
ただ1人、当事者なのに蚊帳の外に追いやられた男性を除いて。
「それで、さっきまで上機嫌だったけど、何か良い事でもあったのか?蜜利(みつり)」
「あ、私も知りたいわ」
露骨に話題を変えて来たが変に引きずりたくないのか蜜利と呼ばれた小柄な女性は話す事にした。
「実は私子供がいるんです」
『え?』
蜜利の言葉で沖野やおハナだけでなく、職員室にいた全員が驚き、作業の手を止め蜜利に注目する。
「えと、それは、その、おめでたってことか?」
「あ、いえ既に産まれてます」
沖野はセクハラ等々に気を使い、慎重に言葉を選んで聞くと蜜利はあっさりと答える。
「へ、へぇ〜そうだったの、そ、それで何才なのかしら?1、2才くらいかしら?」
おハナも動揺しているのか吃りながら聞く。
なお口元はピクピクと震えている。
「いえ、12歳です。それで嬉しかったのもウチの子がここの中等部に合格して、今年から入学してくるんです」
場が凍った。
誰も何も言えない中おハナが勇気を出して聞く。
「そ…れって、いいつくらいの子なの?かしかしら?」
誰の目から見ても動揺が隠しきれないおハナ。
「うんと、あんまり明確に言いたくないんですけど、あえて言うならニシノフラワーちゃんと同じくらいの時です」
場はヒエッヒエである。
職員室にいる全員が顔を真っ青にしている。
そんな中1人だけ違う反応をした者がいた。
ドガジャンッ!! バタッ!
「ヤバイ!ニシトレが泡吹いて倒れたぞ!担架!誰か担架持って来い!!」
「急げ!痙攣し始めたぞ!」
「救急車だ救急車を呼べ!」
「いや、先に保険医だ!」
「衛生兵!!」
蜜利と同い年且つ同期のニシノフラワーのトレーナーが倒れたのである。
割と危険域である。
「西園(にしぞの)くん!?大丈夫!?」
蜜利も介抱するため、倒れたニシノフラワーのトレーナーである西園へと駆け寄ろうとするが、沖野とおハナに止められた。
「待ちなさい、危ないから、ここで、待ってなさい、いいわね!」
「え、でも…」
「だっ大丈夫だ、ほら、既に沢山の人が協力して助けに行ってるんだから大丈夫だ、それにこれ以上増えたら逆に邪魔になるかも知れないからな、だから待っててくれ、頼む」
「わ、わかりました」
蜜利は目を白黒させながらも待つ事にした。
『よかった』それが全員の思いだった。これ以上西園を危険に晒せない。純粋に心配しているのは分かるが、しかし、元凶を近づけてはいけない。
もしも、近づいていたら西園は痙攣すらしなくなり安らかに眠っていた事だろう。