超昂大戦SS 究極の初体験! エクスタシーに溺れる超昂戦士たち 作:環 藍河
どろっ。とくとくとく…とぷん。
(えっ…? …ああっ…!!)
エスカ・ルビーの目の前で注がれる、白濁液。
どくどくとしたたり落ちる一筋の滝は…スポットライトを浴びててらてらと艶めかしく輝き、とろとろに、粘性を保ちながら…ほんのりと湯気と香気を放ち、妖艶なるポタージュは器になみなみと注がれていく。
どろり…ぽたっ。ぽたっ。…ぽたっ。
最後の一滴を絞り出すように、口を限界まで下に向け…底にたっぷりと残された、ねっとりと濃厚なエキスを、惜しみなく注ぎきる。
器がウェッジウッドのティーカップだったなら。
放たれたのが、シャンパンのように芳醇な紅茶の香りだったなら。
ルビーは優雅な貴婦人のように、心穏やかに昼下がりを過ごしただろう。
それは、到底叶わぬ妄想。
ルビーは衆人環視の中央で、逃れられない魔の手に囚われていた。
なめずるような、幾千もの視線が四方八方からルビーに注がれる中、ルビーは眼前の白く濃いそのミルクを凝視する。
無骨な薬缶から注がれた白濁液が放つ、紙コップから漂う香りは、獣の野性そのもの。
骨を擦り潰してそのまま溶かし込んだかのような、象牙色に鈍く妖しく煌めくその液体は…湯気と、癖の強い匂いを放つ。
ルビーの鼻腔を捉えるその臭みは…獣の生命力を大鍋で煮詰めたような、生存本能のエキス。
(…ああ…っ…、これが…!)
思わず目を背けたくなるような…強烈で乱暴な異臭。
それなのに…エスカ・ルビーは魅入られたかのように、コップを愛おしそうに両手に包み込む。
「凄い…むわっと…香るよお…。
ああっ…、もう…私…!」
熱病の中でうわごとを放つように、ルビーは震える両手でコップを唇に寄せ…
どろっ…とくん、とくん、こくんっ…!
(んくうっ! …んっ、んふっ、はあっ…!)
ごくっ。ごくっ。ごくっ。…ぷはっ。
「…うえっ…。」
自らの意思でルビーは、白濁液を獣のアロマごと飲み込んだ。
舌に、喉に、胃袋に、ねっとりとエキスを流し込む。
「…お…!」
臭みは器から嗅ぎ取るだけではなく、エキスを注ぎ込んだ喉の奥からも焚き火のように立ち上る。
外からも中からも、ルビーはスープの匂いに挟み撃ちされ、なぶり者にされてしまった。
つんざく尖った臭みが、ふた口、三口と喉を鳴らすごとに、押し寄せる波濤のようにルビーの胸を高鳴らせ…!
「…ぷはあっ。」
コップを遂に唇から放すルビー。
白濁液の粘りととろみがべったり、たっぷりと残る唇を、つやつやと輝かせ…
「…美味しい…よお…!」
わああああーーーーっ!!!
遂にルビーは異臭の虜となり、隷属を誓う。
敗北宣言が闘技場に響いた瞬間、何千もの立会人が怒濤の歓声を上げる。
拳を突き上げ、隣の闘士と肩を抱き合い…誰もが歓喜に打ち震え、快楽に堕ちたエスカ・ルビーの恥態を瞳に焼き付けた。
(はあ…っ…。はあ…っ…! …くふっ…。)
全部飲み込んだのに、もう口には一滴も残っていないのに…。
荒く弾む呼吸を一つ抑えるごとに、野獣の荒ぶる吐息がルビーの口を絶え間なく蹂躙する。
残り香なのに、こんなにも口と鼻を支配するなんて…!
ごとっ。
「さあ、エスカ・ルビー。もっと味わうのです。」
「!!」
下げられたコップと引き替えに、ルビーに差し出された悪魔のメインディッシュ。
器の直径はコップなどとは桁違い、両手で両端を掴まないと持ち上がらないほど。
巨大な器をはち切れるほど満たすのは…
金色に輝く、波打つ小麦の大海原。
その海面に浮かぶ、幾重にも重ね合わせた獣肉の大船団。
そして、たったコップ一杯でルビーを堕としたあの白濁液が…どくどく、だくだく、洪水のように、器からこぼれんばかりに注がれていた。
まるでこの器全部が、タイタニックも沈まんばかりの魔獣の棲み処。
静かな海原の波間には、哀れな沈没船が吐き出したエメラルドの欠片が散りばめられ、白く濁る水面に緑の彩りを添える。
「ああっ…こ…こんなにいっ…!」
エメラルドの放つ鮮烈な香気が、白濁液の野趣溢れる臭みとマリアージュを奏でる。
既に心奪われたエスカ・ルビーに…抗う強き心は残されていなかった。
「とどめです、エスカ・ルビー。」
「…ああっ…、あーーーっ!!!」
どろっ。ぐちゅっ。べちゃっ。
ぼたっ、ぼたっ…!
取り出された2つの小さな壺。
1つ目から掬い上げたのは、鮮血のごとき真紅の蠱毒。
もう1つからは、おぼろ月からこぼれた宝石のような黄色いエキス。
その輝きとは裏腹に、紅と黄の蜜壺が放つ壮絶なアロマ。
「そんな…こんなの、もう…!」
ルビーの精神は…人類をも救った、その強く逞しきアイアンハートは…最後の支柱を失い、瓦解した。
(我慢…できないよおっ…!!)
グローブを脱ぐことも忘れ、ルビーは右手に箸を握り、左手でその巨大な器をたぐり寄せる。
理性も良心も、過去の栄光もかなぐり捨て…ルビーは小麦をもどかしそうに唇へ運ぶ。
小麦の大波はどろりと津波を起こし、獣臭をまとった濁り液をサルベージしてルビーの喉を襲う。
べちゃっ。ぴっ。ぴちゃっ。
ねっとりとしたエキス。
ルビーの唇から溢れた白濁液は、ハイネックのインナースーツまでどろどろとしたたり落ちる。
口元で暴れて飛び跳ねた粘液は、ルビーの胸を、深紅のボディスーツを、両肩のカラーを…超昂戦士の誇りの戦闘服を、濁った染みで穢していく。
じゅるっ。ずずずずーーっ! むぐっ、ごくっ…!
「むふっ、うくっ、ぐうっ…!」
束の間、コップ一杯の白濁液の嵐が過ぎ去り、さざ波が静かに響いていたルビーの小さな口。
だが今は一転、天地をもひっくり返すほどの大嵐に翻弄され、ルビーは悶え苦しむ。
白濁液の獣臭を追いかける、紅き野獣の鋭き爪、そして緑と乳白色…二色の魔石が放つ、官能的な香味。
「むぐうううーーーーっ!!」
(獣臭いっ、辛いっ、ツンツン匂うっ、粘っこいっ…!)
嫌がる理性と裏腹に、ルビーの五感は今や、魔性の白濁液に囚われていた。
嗅覚と味覚の全てがルビーの口の中で…いや、喉の奥で、体全部で暴虐の限りを尽くす。
ぷるるん。とろっ。
ずるるっ、くちゃっ…
ごくん、じゅるっ…とぷん。
その歯触りも、舌触りも、喉越しも愛おしい。
獣のポタージュのとろみがしたたる、踊る金色の耽美なウェーブは、ルビーの瞳を捉えて離さない。
奏でる咀嚼音さえも快楽のウイルスとなり、ルビーの五臓六腑がもはやパンデミック。
ルビーは五感すべてを虐め抜かれ…身悶え、翻弄され続けるより他になかった。
(ダメっ、こんなの…初めてっ…!!
ああっ…ダメ…なのにいっ…!)
それは…歴戦の勇者エスカ・ルビーでさえも耐えられない、陵虐。
防ぐことも抗うこともできない、一方的な蹂躙だった。
(私の…私の、お口が…!
止まらない…止まらないよおおおっ!!!)
ずずーーーっ、ずるっ、ずじゅじゅっ、ごくっ、ごくっ…!
「はふっ、はふっ、ううっ…」
水を飲むことも忘れ、息継ぎさえもどかしい。
ルビーは無我夢中で、白濁液と小麦を交互にむさぼりすする。
暴れる小麦の波濤を、前歯で噛み奥歯で潰すたび、弾力がルビーを昂らせる。
喉を鳴らし、寂しく虚ろになった口腔を慰めるように、器の縁に尖らせた唇を寄せ、せがむように白濁液を吸い上げると、おぞましいほどの獣臭に全身を支配される。
それでもルビーは嬉々として獣の支配を受け入れ、被虐の快楽に耽る。その奥に眠る恍惚に全身が火花を散らし、ルビーはさらにぐいぐいと昇り詰め、また小麦に箸を伸ばす。
(ああっ…いいっ…すごく…)
ちゅるっ、じゅるっ、むぐっ、ごくっ…!
抗えない暴虐の果てに、遂にルビーの五体全てが獣の臭みに冒される。
グローブ、ブーツ、スカートやショーツの中さえも、ツーサイドアップの赤髪からも匂ってきそうな、まるで全身が白濁液と同化したかのように…
(私…今夜、Dチャージなのに…!)
ルビーは悪魔のスープと渾然一体となり…エクスタシーに頭からつま先まで貫かれ続けた。
(長官…ごめんなさい…ごめんなさい…。
でも、私…私っ、もう…!!)
……
…
そして…
エスカ・ルビーは…長い、長い貪食に、やっと終止符を打つ。
ごとっ。「ふう…。」
再び、何百もの視線がルビー1人に向けられる。
「さ…」
聴衆すべてが固唾を呑む。
「最高…ですっ…! はあっ…はあっ…はあっ…」
ざわっ…!
「皆さん、ありがとうございました! とっても美味しかったです!!
ごちそうさまでしたっ!」
わあああああーーーーーーっっ!!!
エスカ・ルビーを…闘技場を包む、何千人ものお嬢様たちが快哉を叫ぶ。
「ファーーーッキン! ファッキン・グレイトですわああっ!
ルビー様が、ルビー様もこのラーメンを…お認めになられましたわああああっ!!」
「天下一お嬢様を目指す誰もが日々求めてやまない、究極の一杯ですもの。
当然とは分かっていても…やはり嬉しいものね、カノちゃん。」
「病みつき必至・天下無双のどろっどろスープ! 単品で召し上がってもルビー様を至福の絶頂にいざなう、鶏がらと野菜のコンチェルト!
それを最高の茹で加減の麺で絡め取る愉悦!
旨味爆弾のチャーシュー・刻み青ネギ・門外不出の唐辛子ダレ・背徳のおろしニンニクの波状攻撃!
これで堕ちないお嬢様など、いやがるはずがございませんわああああーーーーーっ!!!」
「か…神音ちゃん、聡里ちゃん…?
ラーメンごちそうになったのは嬉しいんだけど…この皆さんは…?」
「ふっ…愚問ですわっ! 今年度の天下一お嬢様たる私・天道神音が従えし、全国のお嬢様たちですことよっ!
私が認めたエスカ・ルビー様が、私が認める究極の一杯に籠絡される有様を、どちゃくそ余す処なく見守る! そのために全国からこうして、お嬢様たちが馳せ参じただけのことですわっ!」
……?
(そ…そのためだけに、このアリーナを貸し切りに…?)
「血の涙をほとばしらせて、この場に立ち会えない悲運を呪うお嬢様はさらに何倍もいるわ。
安心して。お嬢様専用回線にてプレミアム配信・32Kアルティメットハイビジョン・100カメラで同接しているわ。
ルビー様の官能的な息づかい、麺とスープを飲み込むたびに鳴る、ルビー様の喉の音まで29.1chサラウンドで送信しているわよ。」
「…え?」
《うわ〜っ…ルビーって、ラーメン食べるのもこんなにえっちなんだ〜…すごかったわよ〜。》
「…その声…エリーちゃんっ!?」
《はーい、大正解っ! ロンドンから見届けましたー!
ああ…ルビーもとろっとろにイカせちゃう、魅惑のこってり濃厚スープ…ヨーロッパに今すぐ取り寄せたくなっちゃう〜!》
…
……!!
「い…イヤあああーーーーーっっ!!!」
天下一のラーメンに胃袋を鷲掴みにされ、心まで蕩かされたエスカ・ルビー。
食欲に溺れ、魅惑の一杯を本能のままにむさぼり喰らい尽くす様を…自らの痴態を全世界のお嬢様に晒してしまった恥辱は、以後ルビーがこの逸品を啜るたび、背徳のスパイスとなったのである。
【第1話 完】
ご覧いただきありがとうございます。筆者の環藍河です。
普段はマジメかギャグかで超昂大戦SSを執筆しております。
今回の新作は、どちらの芸風でもない、全く違うアプローチとなりました。
シリーズでお届けしますが…既存の常連読者さまを手放してしまうかも(涙)。
…え? R18? またまたあ。
単にエスカ・ルビーがラーメンをすするだけのお話ですので。
…タイトル詐欺? 「ルビー様 "拷問"の時間です」の方が良かったでしょうか?(火に油)
今回はpixiv様にも投稿しております。
いろいろ怖いところはありますが…お付き合いを賜れば幸いです。