メンヘラボクっ娘はコークハイの夢を見るか 作:ポメラニアンドロイド初号機くん
「よし、ジャックダニエルのコークハイ缶にスナック菓子、あとはカロリーメイトだったな……と」
俺はいつも通りの買い物をしてあいつのいるアパートに向かう。
あいつは俺のイトコで、歳が近いので昔からよく一緒にいた。
昔はどこまでも底抜けに活発で、少し行動が読めないところがあったが今では一転して日がな一日、布団の中で鬱ってる。
今思えば、高校を中退する前から既に限界だったのだろう。
あいつは生来の活発さをだんだんと失い、人と関わるのを避けるようになった。
子供の頃はいつも活発なあいつの後ろに隠れていた俺はいつしか、あいつを庇護する側となっていた。
できる事なら、あいつをここまで追い詰めた奴らを一人残らず殴りたい。血反吐吐くまで叩きのめしてあいつに謝罪させたい。
だが、そんな復讐が許されるのはフィクションの世界だけだ。
どう足掻いても俺は社会の歯車の一つに過ぎない。あいつの為に全てを犠牲にする覚悟もなく、その罪滅ぼしのように仕事の合間を縫ってあいつの世話をする。
正直、俺はあいつの事が好きだった。それは今でも変わらない。
けど、あいつが今では何を考えているのかまるでわからない。
口を開けば諦めと自虐の理論武装、マトモな人間関係を築く事すら諦め、頭から布団を被り他者を拒絶する。
付き合いの長い俺でさえギリギリ拒絶されてないだけ。
社会不適合者を自称するが、実際大抵の人間はあいつにそういう評価を下すだろう。
これでもあいつは、一度社会復帰しようとした。その結果は、盛大な挫折だった。
まず面接で落とされる。高校中退というだけで社会から向けられる視線はかなり厳しく、なかなか仕事が見つからず職歴のブランクはどんどん広がっていく。
ただでさえメンタルが弱っていたあいつが自信を失うのは当然の流れだった。
そうこうと、あいつについて考えているうちにアパートに到着。
呼び鈴を鳴らすがいつも通り居留守。合い鍵を受け取っていたのでそのまま入る。というか、今更だが独身女性の部屋に男が勝手に上がりこむのは色々とヤバいのではなかろうか?
信頼されているのか都合のいい世話人と見られているのか………
「俺だよ。メシにしよう」
布団がゆっくりとめくり上がり、小柄で華奢な、かなり痩せた女が姿を現す。
「……………ァァァ………ァ、ゴホッ………声、出ない………喋るのメンドイ………」
「なんか飲むか?」
「ジャックダニエル…………」
「酒で喉を潤そうとするなド阿呆……水道水でも飲んでろ」
とりあえず俺は水道水をコップに入れて渡した。
「ァァァ………カルキの味………」
なんか水素水メーカーのCMみたいな事言ってる。水分を接種して少しずつ口が回ってきたようだ。
「調子は……聞くまでもなさそうだな」
「ボクの調子?どうもこうも、いつも通り毎日を無為に過ごしてるよ」
ものすごく笑顔で自虐しているけど目が笑ってない。つまり平常運転だ。
「小説の方は?少しは読者いるんだろ?」
「どうだろうね?いるにはいるけど、大して反響もないし、誰もボクの事なんて求めてないんじゃないかな♪」
虚ろな笑顔で自虐を繰り返す
「俺がいるだろ………」
いつの間にか、思った事がそのまま言葉になっていたらしい。あいつの表情が消えた。
「ヤダなぁ………からかわないでよ………ボクに寄り添う覚悟もない癖に………」
一切の感情を削ぎ落とした機械のような台詞。
俺はいたたまれなくなって、買い出しした品を置いてアパートを後にした。
人間には適材適所があるというが、あいつの適材適所はどこなのだろうか?ふと、そんな事を考えた。
布団の中?あまりにも救いがなさすぎる。
メンヘラボクっ娘ちゃん
主人公。元々は活発な性格だったが、だんだんと人嫌いになり高校を中退。社会復帰の為に就職活動に望むも、さらに病んだ。酒は嗜む程度。(ジャックダニエルのコークハイ缶1本しか飲まない)障害年金を貰って在宅で少しだけ内職っぽい仕事をして自堕落に生きている。自己完結したメンヘラ。
イトコくん
一応、マトモな社会人してる標準的な成人男性。甲斐甲斐しくメンヘラボクっ娘ちゃんの世話を焼く。独身ゆえにある程度の経済力がある。何げに優良物件。
なお、本作においてはキャラに名前を付けると感情が入り過ぎてしまうと考え、あえて名無しにしています。(既にリアルの自分を部分的に毒抜きしてモデルにしているのでこれ以上感情移入したらキモいかな~と。既にキモい?知ってる。自己満足さ、ハハッ♪)
主人公はかなり毒抜きしてこれなのでリアルの作者は相当闇の深い性格だと思われ…………