空に飛び出した「LOADER 4」のコクピットの中、通信が入る。
響くのは壮年の男の声だ。
「聞こえているか、621!」
「聞こえているなら止めろ! そのままでは奴もろとも海の藻屑だ!」
「すぐにヘリを出して回収する、お前は高度の維持に集中――」
「だいじょうぶ」
「『しごと』は、ぜったい、おわらせる」
「それが、わたしの『いみ』」
「だから、まっててね。ウォルター」
「……621ッ!」
現在の高度、2130メートル。
陸への距離は、残り3割といったところか。
「LOADER 4」の猛攻は、いまだ止むことはない。
「ぜったい、おとす」
放たれるミサイル。
すれ違うように回避、なんてしていたら陸に辿り着けない。
僅かに横へズレることでいくつかの弾を躱す。残りはチェーンソーで受けた。
さて、今まで散々盾として使ってきたチェーンソーだが、本来は盾でも何でもない。
パルスシールドほどのダメージカットなど期待できるはずもなかった。
ただ、直撃よりはマシというだけの話だ。
故に、「LOADER 4」の大した装弾数ではないミサイルでも、こちらの
最後のリペアキットを使う。
……このペースなら、何とか地上までは持つか。
幸い、さしもの奴もこの空中ではライフルとミサイルしか使っていない。
そりゃそうだ、こんな状況でENをゴリゴリ喰う近接武器なんて……
「……マジかよ?」
光刃を発した左腕を振りかぶる「LOADER 4」。
……クソ、さすがにこれは喰らえない。
一時的にブースタを切り、下へ逃げる。死が一歩近づいた。
「……まだ」
向こうも自由落下……どころか加速して追ってきやがる。
追いつかれた瞬間、奴のコアが光を発した。
「……チッ!」
とっさに飛び退く。QBを
これでまた、死に一歩近づく。
「……しぶとい」
冷却が終わったパルスブレードで、右側から袈裟斬りが来る。
チェーンソーで受けさせないつもりか。
だが、これ以上回避するのはマズい。
右手のハンドガンをトンファーのように握り、受けとめる。
翠の光刃は銃身を斬り飛ばし、ギリギリ腕部の装甲で止まった。
2撃目が来る前に蹴り飛ばし、距離を離す。
……おかしい。この空中で、どこからそんなENが沸いてくる?
奴のジェネレータは還流型。出力は高い。
だが、先の追いかけっこを見る限り、容量はこっちより下のはずだ。
そう考え、改めて奴の機体を見る。
妙だ。背部から漏れる煙の量が尋常じゃない。
……まさか、こいつ!
ジェネレータを
「……ッ! なんだってそこまでする!?」
「……それが、ウォルターがわたしにくれた『いみ』だから」
「意味だと……?」
意味。意味か。
他人から貰った意味で。誰かのために戦う。
「……クソッ」
俺には。
ストーリーを何周しても、何の感慨も抱けなかった俺には、理解できない話なのか?
……いや、いい。今は戦闘に集中するべきだ。
そうこうしている間に、陸地が真下に見えてきた。
だが、陸地に辿り着いたところで、こいつを何とかしなければどうにもならない。
どうにか解決策を捻り出さなければと、思考を巡らせたその時。
「LOADER 4」のブースタから漏れる光が、突然消えた。
そのまま、真っ逆さまに地面へ向かっていく。
……ジェネレータを
あのまま放っておけば、地面に激突して、奴は死ぬだろう。
だが、それがどうした?
奴が何者であれ、今は敵だ。
それに、今しがた奴をどうやって無力化するか頭を悩ませていたところだろう。
願ったり叶ったりじゃないか。
だいたい、ムシのいい話だ。今まで散々MTやらACやらを、どこかゲーム感覚のままに墜としておいて、こいつだけ助けるなんて。
そうだ。殺す理由は山ほどあるが、助ける理由なんかない。だから…
『……それが、ウォルターがわたしにくれた『いみ』だから』
「……クソッ!!」
加速。
貴重なENを、落下速度を速めるために使う。
落ちていく「LOADER 4」に追いつき、掴む。
チェーンソーを起動。
ジェネレータがイカレたなら、誘爆は無いはず。
少しでも軽くする。
コアブロックだけを切り出し、抱える。
そのまま直立姿勢に戻り、ブースタを全開。
地面が迫る。
「しっかり掴まってろよ!!」
オープン回線に向かって叫びながら、着地する。
凄まじい衝撃に、破壊音。
脚部が膝からへし折れた「ジュピター」と、コアブロックだけになった「LOADER 4」は、何とか地上への帰還を果たした。
「あのさ、放してくれない?」
「だめ」
「あなたを『ほばく』するのが、『しごと』だから」
「……そう」
「なあ、一つ聞いてもいいか?」
「なに」
「どうしてお前は、他人から貰った意味で、戦うんだ?」
「…………」
「わたしには、なにもなかった」
「でも、ウォルターがわたしに『いみ』をくれた」
「だから、それがわたしのすべて」
「……そう、か」
……回収ヘリを待とう。
その後俺は621と共に、ウォルターの出したヘリで回収された。
カーラとウォルターの繋がりを知っていた件については、
「ウォルターの猟犬たちがRaD製のフレームをよく使っていることから繋がりを推測し、とっさにハッタリとして使った」
と言い訳して、口止め料と引き換えに口外しないということで手打ちにしてもらった。
……あと、礼を言われた。
妙な話だ。
「戻ったか、621」
「……ウォルター」
「もうあんな無茶はするな」
「……ごめんなさい」
「わたしの「いみ」がなくなっちゃうとおもって、こわかったの」
「でも、それでウォルターのいうこと、むしして」
「もらった機体も、こわしちゃった」
「ごめん、なさい……」
「いいんだ」
「お前は生きて帰ってきてくれた」
「……もう、今日は休め。621」
「……うん」
アセンスクショ
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いる
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いらない
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著作権的にダメだよ