ご注意ください。
「『レイヴン』、『キング』、『シャルトルーズ』。『ブランチ』の力を、思い知らせてやりましょう」
「言われるまでもない。我々を嘗めたこと、後悔させてくれる」
「偉そうにすんな、バカ!」
「…………」
「ジュピター」と対峙する3機のAC、「ナイトフォール」、「アンバーオックス」、「アスタークラウン」。
こちらが戦闘態勢を取ると同時に、3機も動き出した。
「安い奴から片付けよう」
そう宣言し、狙うのは。
奴らの先頭に立つ「ナイトフォール」である。
当たり前だ。一番前に出てきて、一番脆い。
おまけにリーダー格。こいつを真っ先に潰せば他2人を動揺させられるかもしれないとなると、狙わない道理は無かった。
「さて、まずは……」
ABでこちらに突っ込んでくる「ナイトフォール」に対して、チェーンソーを
「…………」
刹那、相手のコアが展開した。
想定通りだ。攻撃をキャンセルし、飛び退く。
思い描いていた通りに展開されたパルス爆発の範囲から悠々と脱し、ハンドガンに持ち替える。
「『レイヴン』、『キング』、『シャルトルーズ』、追撃を!」
後ろの2機から放たれる横槍を避けつつ、軽く撃ち合う。
しばらくして、再びチャージなしのチェーンソーを構えた。
「…………」
やはり、相手は刹那に反応する。
先ほどアサルトアーマーを切った「ナイトフォール」は、今度はパイルバンカーで迎撃すべく左腕を構えた。
「なにが鴉だ、パブロフの狗め」
そう吐き捨て、機体を急停止。
目の前で炸裂する鉄杭を眺めながら、アサルトアーマーを起動する。
「『レイヴン』!!」
「こちらの攻撃に条件反射でカウンターを合わせるだけの、馬鹿の一つ覚え。同じカウンター使いとして恥ずかしくなる」
狙うのは中心、コクピットだ。
脱出の余地など与えるものか。確実に中身を挽肉に変えてやる。
「『レイヴン』反撃を……」
「反撃?安い負け惜しみだ。底が知れる」
……今日は、やけに口が回るな。
不思議なものだ。奴らを前にするだけで、罵倒と侮辱の言葉が堰を切ったように溢れてくる。
……まあ、いい。せっかくだから煽り倒してやろう。
それで相手が少しでも揺らげば御の字というものだ。
「それとも、反撃の余地があったと本気で思っているのか?だとしたら重篤な
「鴉は賢いと聞くが、お前の脳ミソはいいとこダチョウらしい」
「アーキバスにでも頼んで再教育してもらうんだな」
大穴の開いた「ナイトフォール」を投げ捨て、
先ほどまでフワフワ浮いていた奴だが、ENが切れたのか地面にドスンと落ちたようだ。
「ああ、お前もダチョウらしいな、シャルトルーズ」
ABで接近しながら、言う。
「飛べない上に、頭が悪すぎる。ピッタリじゃないか」
「コイツ……! 言わせておけば……!」
どうやら癇に障ったらしい。
「アンバーオックス」から、2種のチャージレーザー、2種のバズーカが次々に放たれる。
「遠すぎる。莫迦が」
そんな距離から撃って、当たるわけがない。あっさりと回避して接近。ハンドガンに持ち替えて、のろのろと地を這うマヌケに銃弾を浴びせる。
「訂正してやるよ」
「アンバーオックス」のホバー型タンク脚部は、タンクの割には姿勢安定性が無い。そのくせ被弾面積は普通のタンク並みだ。挙句、他のフレームも重量級というには物足りない。
「ダチョウは頑丈で、足も速い。のろまで脆いお前には過ぎた名だ」
あっさりと姿勢を崩した木偶の坊を、先ほどと同じようにチェーンソーでぶち抜く。
もちろん横槍を防ぐために、相手を盾にするよう位置取りながら。
「シャルトルーズ!!」
「『木っ端傭兵集団ブランチのメンバーは、全員頭がダチョウで、首から下はナマケモノでした。』伝記の書き出しはこれで決まりだ」
もはや、気分が良いのか悪いのかすら自分では分からない。
ただ、奇妙な高揚感だけがあった。
「さて、次はお前だ、キング」
「アスタークラウン」に向き直る。
「くっ……!」
「10%も作戦に失敗しておいて、『完成された傭兵』とは笑えるな。大した裸の王様だ」
「誰よりも分不相応な名前にしがみ付いているお前が、『名前で戦えるなら苦労はない』?自虐のつもりか、それとも本気で自覚していないのか?」
近づいて、チェーンソーをチャージなしで振りかぶる。
……さすがに、先の下りで学習したな。迂闊にアサルトアーマーを吐かない。
なら。
「先のステーション31襲撃では、陽動を担当したらしいが、一体どうやったんだ?裸踊りでも披露したのか?」
チャージされた3連レーザーキャノンを躱すと、リペアキットで
そのままチェーンソーをチャージし始めた。
さて、先ほどからチェーンソーをチャージなしで振っていたが、その理由は1つ。
チェーンソーのチャージは、絶大な攻撃力を得ることと引き換えに、攻撃を途中で止めることを不可能にする。
故に、外せば大きな隙を晒すし、カウンターの的にもなりやすい。
先の攻防で、敵にもそのことを理解
3連レーザーキャノンはオーバーヒート中。
リニアライフルは肉薄されれば当たらない。
となれば、残された手はひとつだろう。
「『キング』、カウンターを!」
「アスタークラウン」のコアがパルス爆発を発し、チェーンソーを構えて突っ込む「ジュピター」を呑みこむ。
俺は至近距離でアサルトアーマーを浴びながら――
「ああ、やはり名前負けしてるよ、お前」
――アサルトアーマーを発動させた。
コア拡張機能は、あらゆる動作に割り込んで発動できる。
そして、アサルトアーマーの撃ち合いは、後出し有利だ。
「キングって名前は自分で付けたのか、貰ったのかは知らんが、誰も名前負けだって指摘してくれなかったのか?可哀想に」
チェーンソーを冷却しながら、右手で「アスタークラウン」を殴る。
「強――」
「じゃあな。裸の王様」
ちょうど2発目のあたりで、オーバーヒートから回復。
3発目を撃ち込みながらチャージし、コアに突き立てる。
先の2人と同じように、「キング」もまた挽肉へと変わった。
「馬鹿な……この『ブランチ』が……『レイヴン』が……自由の象徴が……」
通信で、何やら女が喚いている。
「こんな……名も知れない傭兵なんかに……」
「名前に縛られておいて、何が自由の象徴だ。
やはり、こいつが一番ムカつくな。
こいつも、後で捜し出して始末してやろう。
ああ、清々しい気分だ。
戦闘中はよくわからんテンションだったが、こうしてゴミを片付け終わった今は達成感で満ちている。
ああ、まったく最高の気分――
「ねぇ」
「『レイヴン』ってなまえ、きらい?」
「え゛っ」
一気に背筋が凍った。
「いや、それは」
「……きらい、なの?」
「えっと……」
おかしいぞ。さっきまでの饒舌な俺はどこに消えてしまったんだ?
「いや、それは、違くて…」
「あくまで俺が気に入らないのはあいつらだけで、それとこれとは話が別っていうか……」
「どういう、こと?」
というか、なんで俺はここまで焦っているんだ?
ユーリに嫌われるのを……恐れているのか?
「つ、つまりだな、俺はあいつらが嫌いだけど、お前が『レイヴン』と呼ばれることを否定するつもりはなくて」
「お前を『レイヴン』と呼びたくないのも、あれだ」
「俺が個人的にお前を『レイヴン』じゃなく『ユーリ』と呼びたいだけだ」
「……いいか?」
「いいよ?」
「――――――――」
「うん、よかったね」
……セ、セーフか?
「ね、ゴード」
「は、はい」
「――ありがと」
「……な、何が?」
「ううん、なんでも」
なんだかよく分からない雰囲気のまま、俺たちは坑道を後にした。
モンキー君がキレた理由
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分かりやすかった
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分かりにくかった