ゆるりと、こちらに向き直った「エフェメラ」。
コーラルジェネレータ特有の緋い燐光を漂わせながら、どこか芝居がかった所作で歩み寄ってくる。
それと同時に、こちら側にも異変が起きた。
「――――――――?」
「どうしたの、エア?」
「――――――――」
「それって――っ」
「――――――――!?」
「あたまが、いたい……」
「……ユーリ?」
様子のおかしい「ボイジャー2」の前に出て、寄ってくる「エフェメラ」に正対する。
ゆっくりと歩いていた「エフェメラ」は、そこでようやく戦闘態勢を取り、右手のプラズマライフルを構えた。
「……っ、こいつ……!」
その動きは、先程とは明らかに違っていた。
無人機特有の、馬鹿正直な狙いではない。
こちらの回避を読み、あるいは誘導して、その先にプラズマ爆発を置くように射撃してくる。
こちらもハンドガンで応戦するが、回避のキレも無人機のそれではない。
有効打を与えられないまま数秒が経過した後、敵機の両肩から翠の光波が放たれた。
ミサイルと同様に追尾するそれを、ミサイルと同様の軌道で回避――
「……はぁ!?」
――その直後。
咄嗟にQBを吹かすも、その内の数発は回避し切れずに命中。
一方の敵機は、混乱するこちらを気にも留めず、追撃の光波ブレードを振るった。
当然回避する。だが。
「……おいおい」
さらに被弾。ダメ押しのプラズマライフルはなんとか躱し、リペアキットを使用する。
「どういう理屈だよ、お前……!」
今の一連で、得られた知見はひとつ。
タネは分からないが、
「まったく、とんだ後出しジャンケンだな、おい!」
毒づきながら、考える。
後から軌道を変えられる光波。
回避は困難。
「だったら、やられる前にやるまでだ……!」
ハンドガンを連射しながら、突撃。その勢いのまま蹴りかかる。
蹴りを避けた先に、ハンドガンの弾を置きつつ、再度突撃。
それに対して、「エフェメラ」は再び光波ブレードを構える。
放たれた光波がぶつかる前に、アサルトアーマーを起動。
光波を掻き消しながら、足を止めた「エフェメラ」に衝撃を加える。
だが浅い。普段するようなゼロ距離でのカウンターよりは離れている分、与える衝撃も少なかった。
仕切り直しとばかりに飛び退く「エフェメラ」に近づこうとすると、その両肩からまたしても翠の光波が放たれた。
完全回避は諦め、被害を最小限に抑える構えを取る。
だが。
「アリか? それ……!」
放たれた光波は、こちらへは向かってこない。
その奥、光波の盾に守られた「エフェメラ」は、ゆっくりとその光波ブレードを、大上段に構える。
天高く掲げられたブレードに、翠色の光が収束してゆく。
その光が向いているのは、こちら――
今なお、動けずにいる「ボイジャー2」だ。
「ユーリ!! 逃げろ!!」
「――――――――!!!」
咄嗟に、叫ぶ。
「うぁ……あぁ……あたま……われる……」
だが、返ってきたのは、苦しげな呻き声だけだ。
おそらく、こちらの声も耳に入っていない。
「クソッ!!!」
思わず、「ボイジャー2」の前に飛び出す。
奴は、光波を自在に曲げられるというのに。
心臓を鷲掴みにされたような悪寒が走る。
前に立ったところで、なんの意味もない。
ならば、どうすれば、どうすればいい?
このままでは、ユーリが――
見れば、奴が掲げた光波ブレードには、僅かな緋の混じった翠色の極光が収束し、今にも解き放たれようとしている。
どうする。ユーリを守る方法。この距離で庇ったところで、軌道を変えられれば無意味。
だが、放たれた直後なら。
軌道を変える間もなく炸裂させれば、どうだ。
それしかない。
何故、そこまでする?
何故、ユーリのために命まで懸けるのか。
その理由も解らないまま、全速力で突撃し――
「不――ユニットの動――停止を確――制御――旧を開――」
突然、声が響いた。
それは、今生では一度も聞いたことのない、強制執行システムのアナウンスだ。
刹那、「エフェメラ」が硬直する。
そして「あ、やべ」とでも言わんがばかりに狼狽え始めた。
「……っ!」
当然、そんな隙を逃すわけがない。至近距離でハンドガンを斉射して崩し、チェーンソーで抉る。
しかし、あと一歩のところでターミナルアーマーとリペアキットが発動。撃墜を免れる。だが、まだ硬直したままだ。
「被――況を――認。
「
その言葉を最後に、バツン、と音を立てて再びアナウンスが途切れた。
同時に硬直していた「エフェメラ」が動き出す。ターミナルアーマーも途切れた。
「エア、ゴード……わたし……」
「――――――――」
「ユーリ、もう大丈夫なのか? 頭痛は?」
「うん……もう、いたくない」
「そうか、良かった」
「――――――――」
言葉を交わし、「エフェメラ」に相対する。
まだ奴には余力がある。
気を引き締めて――
「……?」
そこで、気付いた。
今の「エフェメラ」の動きは、ひどく単調なものだ。
まるで無人機そのもの。豹変する前に戻ったかのように。
「…………」
そこからは、まるで話にならなかった。
ハンドガンと拡散レーザーを至近距離で浴びせ、固まったところを収束レーザーが貫く。
まるで抜け殻のような「エフェメラ」は、ターミナルアーマーの解除から10秒と経たずに撃破された。
コーラルの緋い炎と共に、爆散する「エフェメラ」。
「終わり――」
「――――――――!!」
「……っ! こうろから、はなれて!!」
瞬間、ユーリが叫んだ。
その声に従い、高炉から距離を取る。
その直後。
爆音と、爆炎。
突然、何の前触れもなく、高炉全体が大爆発を起こして吹き飛んだ。
凄まじい衝撃波を、とっさにアサルトアーマーで相殺する。
隣を見れば、ユーリも同じことをして凌いでいた。
「……一体、何が」
「――――――――」
「にげ、られた?」
「―――――――――」
こうして、どこか釈然としないままに、深度3の調査は幕を閉じた。
道中手に入れたパーツの配分についてユーリと話し合った結果、FCSを俺が、フレーム類をユーリが手にすることになった。
これでハンドガンの命中精度が上がるな。
……それと、吹き飛んだ高炉をベイラムの調査班が調べた結果、高炉内部からごく微量の不活性コーラルと共に
手がかりと言えばそれくらいで、後は全てが木っ端微塵。
結局のところ、強制執行システムに何があったのか、ベイラムは掴むことができなかった。
とはいえ、道を阻んでいたレーザー障壁は解除され、集積コーラルまであと少しというところまで来た。
引き続き、調査は行われるだろう。
「……戻りましたか」
「―――――――――!!」
「パラナちゃんなら、シミュレーション中ですよ」
「―――――――――――!!」
「ええ、こう呼んだ方が、反応が面白……いえ、適切ですからね」
「――――!!―――――――!!!」
「それで、どうだったのですか?
「―――――!――――!!」
「……そう、ですか。
「うんざりするほど、大きすぎる。まったく嫌になります」
「―――!――――!――――!!」
「――――――――――!!」
「……相変わらず、貴方の思い付きは唐突ですね……」
「この前も、いきなり封鎖機構に情報を流したと思ったら、シースパイダーの戦術ルーチンを書き換えたりと……」
「―――――!――――!!」
「……ええ、可能でしょう。『コーラルを防衛する』という至上意志に反さなければ、操作できる筈です」
「―――――――――!!」
「ですが、ひとつ条件があります。必ず――」
「――――!!―――――!!」
「心配? ええ、貴方は計画に必要不可欠ですから。こんなところで失うわけにはいきません」
「それを心配というなら、そうなのでしょう」
「――――!―――――!!」
「ですから、
「――――!!!!―――――!!!!!!」
「おい、こっちの調整は済ん――ああ、戻ってたのか、セラ」
「あ、パラナちゃん」
「―――――!!―――――!!!!」
「だからパラナちゃんって呼ぶなテメェら! それとセラ! 俺はテメェの妹じゃねぇ!!」
「――――!!!!―――――!!!!!!」
「すっかり末妹キャラが板についてきましたね、パラナちゃん」
「うるせぇ!!!」
アンケートの結果をこねくり回した結果、
激強姉面ハイテンション気まぐれポンコツ駄天使系変異波形ちゃんが爆誕しました。なんで?
セリアが故あって名前を変えてる説、ただの一般通過姉面変異波形説、セリアのお姉ちゃん的な何か説という3つの可能性があります。
あと、光波曲げについては、EN武器とはいえ技研製なので何かしらコーラルが関係していて、それに干渉して云々的な感じでお願いします。
混線に関しては完全なでっち上げですね。