ブルートゥから渡されたコードで隔壁を解錠し、格納庫から出る。
道中寄り道をして大型4脚MTなどを始末しつつ、グリッド上層につながる扉へとたどり着いた。
扉に近づき、アクセスする…フリをして振り向けば、丸いコンテナのようなものが2つ降ってきた。
降ってきたコンテナ……
(そういえば広域放送が無いな。ビジターではなく、コヨーテスの雇われとして来ているからか?…まあいいか)
今度こそ扉にアクセスし、先に進む。MTを蹴散らし、コンテナを拾って、巨大な溶鉱炉のある部屋にたどり着いた。
向かい合わせに並ぶ配管の、融けた金属が流れていない方に迷いなく飛び込み、奥へ進む。
すると、奥にコンテナの置かれた、小さな部屋に出た。
「グッ!?勘のいい取り立て屋め!」
奇襲しようとして逆に蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた赤い2脚ACに、両手のハンドガンを向ける。
照準の必要がないほどに接近して放たれたそれは、劣悪な精度にもかかわらず全弾命中。
「随分な挨拶じゃないか、取り立て屋……!」
一連の流れで、赤い2脚AC「ビタープロミス」の
「恨みはないが、俺にも借金がある。返済の足しにさせてもらおう」
「ハッ……!理解できないな!借りた金を返す必要がどこにあるというんだ!?」
(リペアキットは無かった筈。APは半分。次の
(相手は取るに足らないジャンク、先の奇襲はまぐれだ。近づかれさえしなければ削り殺せる……!)
ジャンクACが前に、赤いACが後ろに
借金王「ノーザーク」の駆る赤いAC「ビタープロミス」は、彼が踏み倒した借金で購入した、最新鋭の機体だ。右手の
敵の射撃には左肩の
対して、モンキー・ゴードの駆る名無しのジャンクACは、コア理論から派生した近接近兵主義の流れを汲む、近距離偏重の軽量2脚である。
至近距離以外では何もできないが、至近距離においては最新ACを凌駕する爆発力を発揮する。
得意とするレンジの違う両者。その有利不利を決めるのは……
(引き撃ち機のクセに、閉所で待ち伏せしたのは失敗だったな……!)
地の利である。ここは壁で囲まれた狭い室内。
相手と距離を取るために後退し続けることはできず。必ず相手に接近する余地を与えてしまう。
「クソッ……!」
後退しようとして壁に背をぶつけ、たまらず左肩の
悪手だ。
ACの装備するシールドの類は、制御系統が
その上、ACの大部分をすっぽりと覆うシールドは、本来命中しないはずの弾であっても受け止めてしまうのだ。
「何故だ!私の信用は、まだまだ拡大してゆくはずなのに……!」
慌ててシールドを解除し、拡散バズーカの構えを取る赤いAC。
だが、榴弾が放たれる前に蹴り飛ばされ、不発に終わる。
ジャンクACが、リロードを終えたハンドガンを構える。
「終わりだ……!」
カチリと、異音が響いた。
「あ?」
見てみれば、その発生源は左腕だ。
確かに両手のトリガーを引いたジャンクAC。しかし、正常に火を噴いたのは右手のハンドガンだけだった。
「……ックソが!このオンボロ、ジャムりやがった!!」
方や金に飽かせた最新鋭の高級機、方や徹底的にケチった型落ちの旧式ジャンク品。
運命を分けたのは、積み上げた社会的信用の差であった。
ギリギリで
蹴り飛ばして妨害する暇も、回避する暇もなく、ジャンクACは爆炎の中に呑まれていった。
「……フッ。さらばだ、取り立て屋」
「ここもじきに騒ぎになる…場所を変えるか」
しばし呆けていた借金王だったが、すぐに我に返ると、この場を去ろうと踵を返す。
――その背に、鉄塊が叩きつけられた。
「馬鹿な!なぜ生きて…!」
先ほど受けたACS負荷が回復しきっていなかったために、とうとう
体勢を崩した敵機に向けて、ジャンクACは再び左手に携えた鉄塊を振りかぶった。
その鉄塊の正体は、もの言わぬ
貧弱な装甲しか持たないジャンクACが、至近距離の拡散バズーカを受けてなお動いている理由もまた、この鉄塊にあった。
一部の近接武器には、一定のタイミングでシールドと同じ効果を発揮するものがある。本来、敵機の装甲を穿ち、切り裂き、打ち砕くために存在するそれが、敵弾を相殺し、切り払い、弾き返すのである。
例えば、突進攻撃中の
チャージ中の、
発射される拡散バズーカに対し、妨害も回避も不可能と悟ったモンキー・ゴードは、即座に防御を選択。起動不能のチェーンソーを即席の盾とし、爆発から身を守ったのだ。
「しゃあっ!!」
そしてその鉄塊が、再び「ビタープロミス」に叩きつけられる。
だが、その一撃で限界を迎えたのか、左腕がオーバーヒートし、動きを止める。
「これでっ!!」
動きを止めた左腕の代わりに、無手となった右腕を振りかざす。
3発殴りつけ、蹴り飛ばす。
「終わりだぁーッ!!!」
右肩のハンガーから正常に動く方のハンドガンを引き抜き、距離を詰めて乱射する。
「ある金は……活かすべきだ……なぜ……理解しない……!」
度重なる打撃で装甲がひしゃげ、剥がれたところに弾丸を浴び、とうとう限界を迎えた「ビタープロミス」は、機能停止し、爆散するのだった。
ジェネレータが青い光をあげて爆発し、それに誘爆したのか携えていた武器も内部からはじけ飛ぶ。
数秒が経つ頃、企業の新製品で固められた贅沢な機体は、原型が分からないほどの無惨な残骸へと姿を変えていた。
「……疲れたな……」
「ビタープロミス」が完全に破壊されたことを確認したジャンクACは、部屋に置かれていたコンテナを回収すると、足早にもと来た道を引き返していった。
元の部屋まで戻ったのち、いくつか寄り道をして目当ての物を回収し終わった俺は、「RaD」のエンブレムがデカデカと描かれた巨大な隔壁の前にたどり着いていた。
周囲には、さまざまなMTの残骸と、燃料タンクの破片が転がっている。
「さて……どうするか」
すると、通信が入る。
「ご友人!こちらは宴もたけなわですが、お土産もたくさんいただいたことですし、そろそろお開きにしたいと考えております。貴方はどうなさいますか?」
……おそらく、「略奪も粗方終えたので撤退する」という意味だろう。
「潮時だな」
どのみち、この隔壁の先に行くつもりはさらさらなかった。
依頼も終わりだし、目当てのものも回収できた。もうここに用はない。
そう考え、踵を返そうとしたところで、
「おいおい、つれないじゃないか。もっと遊んでいきなよ」
大量のミサイルを携えた、重量級ACが目の前に降り立った。
近接武器のガード判定って使い道ある?