「アーキバス部隊の接近を確認。総員、迎撃を開始してください」
オペレータの声とともに、アーキバスの軍勢が姿を現す。
その先陣を切るのは、ベイラム側と同じく、BAWS製MTと封鎖機構兵器の混成部隊だ。
早速それらに近づき、迎撃を開始する。
押し寄せるMTを次々と撃ちぬいていったところで、奇妙な点に気づいた。
なんというか、動きが普通じゃない。
まるで正気を失ったような、胡乱な動きだ。
しばらく戦っていれば、オープン回線から多様な声が響き始めた。
「コード5……コード5……コード5……」
「アーキバスこそが……飢えた子供たちを救ってくれる……」
「排除……秩序を乱すものを……排除する……」
「コーラルよ……アーキバスと共に……」
「封鎖による秩序を……アーキバスによる秩序……」
「ああ、アーキ坊やが見える……ずっと、そこにいてくれたのか……」
「アーキュバス最高……」
なるほど、アーキバスが鹵獲したのは兵器だけではない。
数的不利を埋めるため、あらゆるリソースを最大限活用した結果がこれと言うわけだ。
「まったく、アーキバスも趣味が悪いですねぇ……」
隣で五花海が毒づくのを聞きながら、「無人機」達を片付ける。
見たところ、解放戦線由来の「部品」はBAWS製のMTに、封鎖機構由来の「部品」は封鎖機構の兵器に積まれているようだ。
これなら、機種転換のための調整も必要ない。まったく効率的なことだ。
「排除……排除……排除……」
セントリーMTが目茶苦茶に振り回してきたヒートカッターを躱し、ハンドガンを数発撃ち込んで撃破。
彼らの不規則な動きは予測が難しく、多少厄介だが、あくまで多少程度だ。そこまでの脅威ではない。
「解放戦線だろうが、封鎖機構だろうが、どのみち我々の敵です! 気にする必要はありません!」
五花海も、異常な敵に動揺する隊員達を鼓舞しながら敵を排除していく。
だが、その鼓舞は数秒後、最悪の形で裏目に出ることになる。
「総長……見ていてください……必ずや戦果を……」
「こいつらを堕とせば……アーキバス碧色勲章ものだ……」
「総長の……アーキバスのために……」
「これは……! クソッ、そういう訳ですか、アーキバスどもめ……!」
……なるほど、わざわざオープン回線でうわ言を垂れ流していたのは、こういう訳か。
「その声は……まさかオデール、ガンジス、お前らなのか!?」
友軍MT部隊の一人が、驚愕したような声を発する。
それに、虚ろな声が答えた。
「オールバニー、貴様……
「オデール、何を言っているんだ……?」
「許さないぞ……スネイル総長から受けた恩を……仇で返すとは……」
「ガンジス、お前まで……!」
「俺たちの命は……アーキバスに預けると……誓ったのを忘れたか……」
「やめろぉ!! 止めてくれ!!」
あっという間に恐慌状態に陥るレッドガンのMT部隊。
実際、元レッドガンの「部品」は対して多くはなさそうだが、個性のないMTが大半を占める以上、誰がどれに乗っているかわからない。
こうなってしまった以上、この「部品」たちは実際の戦闘能力以上の「性能」を発揮するだろう。
「っ! 皆さん、これはサンプリングした音声をAIで喋らせているだけのフェイクに過ぎません! 不快ならオープン回線を閉じていなさい!!」
五花海がとっさに叫ぶ。
「今名前が挙がった部隊員は全員、死亡が確認されています! 以前、番号持ちにのみ通達がありました!」
「……そ、そうか、なら……!」
「そうだ、そうに決まっている!!」
五花海の
だが、その動きはどこか投げやりで、前のめりだ。
戦場は混戦状態に陥り、無秩序な戦闘が繰り広げられる。
混沌とした戦場。そこに通信が入った。
「か、各員に伝達! 新たな機体反応が高速で接近しています!」
その声が聞こえた直後、上空からプラズマの光球が降り注いだ。
「……っ!?」
「増援、ですか……!」
プラズマが降ってきた先、上を見上げれば、そこには奇妙な機体があった。
その異形は、背部のフライトユニットの形状から、辛うじて高機動型LCの改修機であると察することができた。
だが、それ以外のすべてのディティールは、異常としか言いようのない様相を呈している。
まず目についたのは両腕だ。
本来であれば何かを掴むためにあるはずの腕は、第二のフライトユニット、あるいは翼とでもいうべき形に改造されており、腕としての機能を果たしているようには見えない。
続いて頭部。
本来あるべきものが取り外され、代わりにごく簡素なカメラユニットのみが取り付けられたそれは、首無し死体を連想させる。
全身の装甲は取り外されており、代わりに取り付けられた整流板や増加ブースタの隙間からは、フレーム、配管、挙句コクピットブロックまでもが見て取れた。
複雑なフロート状の脚部は、地面に降り立つことを想定しているようには見えない。最低限の措置として、小さなランディングギアが取り付けられている。
そしてその前面から伸びたロボットアーム、二本のツメだけの簡素なそれが、プラズマライフルを吊るしていた。
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AA18Asc:SCHWALBE/Device Sc134
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「空力……空力……空力……空力……」
他のアーキバス部隊と同様にうわ言を垂れ流しながら、それは吊り下げられたプラズマライフルをこちらに向けた。