「呼んだか? スネイル」
レーザーで吹き飛んだビルの陰から出てきたのは、
「……いつから聞いていたのですか? フロイト」
「ああ、最初からすべて聞いていたぞ。だが、そんなことは重要じゃない」
「一体、何を……」
「そこの独立傭兵、そいつを譲ってくれ、スネイル」
「……何を言っているのです、さっさと離脱して持ち場に戻りなさい」
「離脱……? いいやダメだ、やらせてくれ」
「………………」
何を言っても無駄と判断したのか、「アーキバス・バルテウス」は踵を返す。おそらくフロイトの持ち場へ代わりに向かうのだろう。さっきの大回転でストレスを発散して、頭も冷えたらしい。
一瞬武器をフロイトの方に向けた気がしたが、おそらく気のせいだろう。
「……逃がすか! この野郎!」
「逃げるな、この卑怯者が!」
「普通のスネイルかと思ったら、メタルスネイルでした!」
先の非道を行った主犯が立ち去ろうとするのを見て、追撃を試みるMT部隊。
「皆さん、退がりなさい!」
それを、五花海が制した。
「ここからは、本当に我々は足手纏いにしかならない。 ……よろしいですね? G14」
「ああ、そっちの方が助かる」
返答を聞き、五花海はMT部隊を連れて移動する。
そのまま、今度は後方支援すらできない距離まで退がった。
「用は済んだか?」
それを、何をするでもなく眺めていたフロイトが言った。
「
「ああ、
「さあ、刺激的にやろうか」
言葉と共に、「ディクリプター」は跳び上がり、右肩の武器をこちらに向ける。
その巨大なノズル――それは、火炎放射器。「バルテウス」の象徴的な武器だ。
瞬間、それが火を噴いた。チャージして撃ち下ろされるそれは、着弾と共に爆炎を上げ、地面を焼き払う。
「いいだろ、これ。誰でも一度は使ってみたくなるよな?」
上昇して爆炎を避けたこちらに対し、右腕のライフルが向けられる。
本来、LCやその高機動型に装備されている、長銃身のもの。だが、本来グレネードランチャーを懸架している銃身下部には、奇妙な長方形のユニットが取り付けられていた。
「さて、次はどれを使おうか……」
ライフルで軽く牽制した後、新しい玩具で遊ぶ子供のような声で武器を切り替えるフロイト。
次に構えたのは、左手。
その手に持ったパルスバッシュシールドから光の杭を発生させると、こちらを串刺しにするべく突っ込んで来た。
「チッ……!」
アサルトアーマーは、先程「アーキバス・カタフラクト」に使ってから、まだ回復していない。
迎撃はできない。タイミングを合わせて回避。
「やはり、避けるよな!」
だが、攻撃はそれで終わりではない。
「ディクリプター」は、冷却に入ったパルスバッシュシールドの代わりに、右のライフルを振りかぶった。
その銃身下部に取り付けられた、長方形のユニットが展開する。
赤熱するそれは、ヒートカッター。セントリーMTが装備しているものだ。
「……少し前、スネイルに内緒でオールマインドにログを送ったんだ」
ライフルの長銃身を活かしたリーチの長い切り払いを放ちながら、フロイトは続ける。
「そしたら、いくつかのパーツと一緒に、バズーカが届いたんだよ。銃剣付きの」
銃剣を避ければ、今度は左だ。出の早いシールドバッシュを、飛び退いて躱す。
「だが、銃剣には特に意味は無かった。 ……俺は、ガッカリした」
シールドバッシュを避ければ、次は火炎放射器。
噴射し続ける炎を剣に見立てて、回転斬りを放ってくる。
「つまり何が言いたいかと言えば、今のマイブームはマルチウェポン――」
回避した先で、何かがキラリと光った。
「
とっさにチェーンソーに持ち替え、振るう。
空を切るかと思われたそれは、何かを切断した。
2つのドローンを繋ぐように張られていたそのワイヤーは、数拍おいて爆発する。
切断したことで直撃は避けたが、爆発の余波で衝撃が蓄積してしまった。
「少し前、
「誰だよ、それ」
「さて、まだやってみたいことは山ほどある、最後まで付き合ってくれよ?」
心底愉しげに語るフロイト。
「…………」
さて、ここまでは防戦一方だ。
間髪入れない初見の攻撃に、躱すことしかできなかった。
だが、その間にアサルトアーマーは回復した。
もちろん、それは相手も気付いているだろう。
ここからは、カウンターを考慮した動きで来るはずだ。
だから、カウンターに対応できない程懐に入らせる。そういう風に、誘い込んでやる。
こちらが削り切られる前に、1発でもアサルトアーマーを直撃させる。それが勝利条件――
「き、緊急事態です! 直ちに戦闘を停止してください!」
突然、ベイラムのオペレータの声がした。
「ベイラム、アーキバスの両社上層部により、一時休戦と共同戦線が合意されました! 直ちに戦闘を停止してください!」
……共同戦線だと?
「そうか、スネイル。了解――」
目の前のフロイトも、同じ通達を受け取ったらしい。
「――――――――――――」
「……ほう?」
通達を無視して戦闘を続行しようとしたフロイトだが、何かを聞いてそれを止めた。
……こちらも聞いてみるか。
「一体何があったんだ? 共同戦線とは、何に対してだ?」
「共同戦線の対象は、
AA22F:DECRYPTOR
解説
フロイトの新しい玩具。
封鎖機構のアレを使ってみたい、遊んでみたいを詰め込んだ機体。
一応HCをベースにしているが、武装は全とっかえ。
右手:長銃身ライフル+ヒートカッター
LCとその高機動型が持っているライフルに、セントリーMTのヒートカッターを着☆剣したもの。ライフルは衝撃値が高く、長銃身で銃剣のリーチも伸びる。
左手:パルスバッシュシールド
「企業勢力迎撃」で出てくるHCが持っていたヤツ。シールドとしても近接武器としても使えるが、フロイトはもっぱら近接武器としてしか使っていない。
右肩:火炎放射器
バルテウスが装備しているアレ。ナパームのように着弾地点で爆発し焼き払うモードと、近接武器のように振り回せるモードがある。ヒートカッターとシナジーでACS異常も狙える。
左肩:トリップワイヤードローン
どっかで見た爆導索が面白かったのでレーザードローンを改造した。
いろんな使い道がある。
全体的に武装が大型化している分、実は装甲を若干省略している。
シールドをあまり使わないこともあって、通常のHCより若干柔らかい。
名前の「ディクリプター」は、暗号解読者、解読器という意味。
物理的な鍵を開ける「ロックスミス」に対して、暗号鍵を開ける「ディクリプター」的な。