励みになります。
「ウチのシマで随分暴れてくれたじゃあないか、コヨーテスの雇われ」
こちらを見下ろす重量2脚ACが、通信で語り掛ける。
赤とピンクで塗装された、マッシブなフレーム。
両肩から翼のように延びる大量のミサイル。
左胸に描かれているのは、蜘蛛のエンブレム。
現れたのは、ドーザー集団「RaD」の頭目、"
(マズいマズいマズい!!なんでアンタがここで出てくるんだよ!?)
内心で毒づくこちらをよそに、相手は話を続ける。
「あんたの動き、見せてもらったよ。随分ウチに詳しいじゃないか?」
「グリッドの構造に、MTの配置…挙句の果てには、
「ひょっとして、その隔壁の先に何があるのかも知ってるんじゃないかい?」
「……何を勘ぐっているのかは知らないが、事前に
「ほぉ?あのクズのブルートゥが、随分と親切になったようだねぇ?次は慈善活動でも始めるんじゃないかい?」
(クソ、苦しい言い訳か…)
「……情報の出処を吐きな。そしたら脱出レバーを引く猶予くらいはやるよ」
(それをしたらコッチは破産なんだよ!)
――絶対絶命と言っていい状況だった。
"
大量のミサイルをバラ撒いて敵を圧倒し、怯んだ相手には重量の乗った蹴りやアサルトアーマーを見舞うというコンセプトである。
ミサイルそのものは問題ではない。AC規格のミサイルは、正確な回避軌道を取ることで全弾回避可能な程度の追尾性しか持たない。
だが、その回避軌道こそが問題なのだ。
この手のミサイルを回避するには、向かってくるミサイルと
つまり、
逃げずに戦うことはさらに論外だ。
ジャンクACの全武装は、ごく至近距離でしか効果を発揮しない。
そして、「フルコース」に近づくということは、アサルトアーマーの射程に捉えられることを意味する。
道中のMT戦で負ったわずかな損傷、「ビタープロミス」の
なにより、防御したとはいえモロに受けた
この状態でアサルトアーマーを受ければ、掠っただけで致命傷となることは明白だった。
(何とか隙を作って逃げるしかない……!)
(リスタートもチェックポイントも無いんだ、チャンスは1度きり。ミスったら即死だ)
(だというのに……!)
「……それで、どうするんだい?答えるのか、答えないのか、さっさと選びな」
「…………」
「ああ、分かった…答えるから命だけは助けてくれ」
「俺が情報を聞いたのは……」
「
「……は?」
素っ頓狂な声が響く。
(今だ!!)
刹那、
そのまま
「……ッ!待ちな!」
一瞬遅れてABを吹かし、追跡する「フルコース」。
だが、いくら総合的な性能では勝っているとはいえ、ただでさえ重量のあるフレームに、ミサイルを大量積載した機体では、軽いジャンクACに追いつくことはできない。
「……チッ!」
とっさに右肩以外の全武装をパージし、速度を上げる「フルコース」。
だが、一手遅い。
ジャンクACはすでに、目標地点に到達している。
――この世界にはリスタートも、チェックポイントも存在しない。
そして、
グリッドの足場が途切れたことを確認すると、ブースタを
姿勢制御のための最低限の推力すら失ったジャンクACは、高度約4000メートルからの自由落下を開始した。
「まだだ、もっと速く!」
真っ逆さま、頭から落ちる体勢になったことを確認し、背部ブースタを再起動。
真下を向いたABのような姿勢のまま、ジャンクACは地面に吸い込まれていった。
「……なかなかどうして、笑えるヤツじゃないか」
小さくなっていくジャンクACの姿を眺めつつ、「RaD」の頭目は呟いた。
「おええええええええ!!!」
地面が近づいてきたことを確認し、機体を直立姿勢に戻す。
そのままABを起動し、垂直落下から水平移動に切り替える。
凄まじいGによってコクピット内に吐瀉物をぶちまけながらも、ジャンクACはなんとか地面への激突を免れた。
「まずいことになったぞ…」
依頼は達成した。臨時報酬もたっぷりせしめたし、戦利品だってある。
下位ランカー2名を撃破し、上位ランカーと会敵して生還した。傭兵としての名声も上がるだろう。
だが。
「ルビコンで"最強"の勢力に目をつけられたかもしれない…」
鉄に覆われた空を仰ぎながら、俺は帰路につくのだった。
謎の赤い線も、鬱陶しい高度制限も消えた…
透明だ、気分がいい…!
でも実際消えたら