「あの機体は……」
「……ラミー、チャティ……カーラ」
深度3、高炉の残骸を中心に広がる足場にて俺達を待ち受けていたのは、アーキバス主導で壊滅させられたRaD……その改造MT達と2機のAC、そして「バルテウス」。
「敵……あいつらをやれば、薬……コーラルがもらえる……」
「脳ミソ……パチパチ……」
こちらの姿を認めた改造MT達は、うわ言を発しながら一斉に武器を構える。
「アーキバスの……いや……あいつらの遺志を……」
「メッセージ送信を試行……エラー。最上位命令『敵対勢力の排除』を優先……」
「スネイル閣下……見ててくださいよぉ……」
「フルコース」と「マッドスタンプ」の面影を残したACと、「バルテウス」も同様だ。
それらから放たれたのは、暴力的な数の弾丸、砲撃、ミサイル。
奇しくも、最初にここへ来た時と同じ状況だ。
故に、対処法もこの前と同じ。
下に逃げ、張り出した足場からの射角を切る。
垂直軌道のプラズマミサイルが掠めるが、無事に下部の足場に退避できた。
下を見る。
かつてあったレーザー障壁は消えたままだ。その気になれば、このまま技研都市まで進むこともできるが。
「ユーリ、ここで迎え撃つぞ」
「うん」
だが、挟撃のリスクと補給シェルパが絶たれるリスクを考えれば、後顧の憂いを断っておくべきだ。
「コーラルが……恵みが――」
「待て……待――」
迎撃態勢を取ると、敵もこちらを追って降りてくる。
だが、改造MT達がこちらに辿り着くことは無かった。
それらはまともに落下制御もできずにボトボトと足場から落ち、岩に叩きつけられて自滅していく。
……まあ、元々胡乱なドーザー達を無理やり「部品」にすれば、こうもなるか。
「障害を……排除しなければ……」
「エラー……エラー……エラー……」
「俺に……勝てるもんかよ……」
まともに追ってきたのは「フルコース」と「バルテウス」、そして辛うじて「マッドスタンプ」くらいだ。
「俺は……最強で無敵の……ラミー様だぁ……」
「ラミー……」
迂闊に突出してきた「マッドスタンプ」に2機の集中攻撃が突き刺さる。
素で低い実力をアーキバスの処置でさらに鈍らせた彼では、まったく相手にならなかった。
「俺の……マッド、スタンプ……」
一瞬で爆散する「マッドスタンプ」。その背後から、残りの2機が向かってくる。
「ああ……畜生、何が面白いっていうんだい……」
「メッセージ送信に失敗、メッセージ送信に失敗、メッセージ……」
その2機が、一斉にミサイルを発射。
「バルテウス」の超多連装ミサイルに、「フルコース」の多種多様なミサイル。それらは全て。
「ゴード!」
「俺狙いか……!」
それらを、「フルコース」の方に接近しながら回避……しきれず、いくつかのミサイルを食らって
「クソッタレが……笑えないんだよ……!」
それを、"
「コーラルも、企業も、
その身に染み付いた反射で、接近してのアサルトアーマーを見舞う。
……ああ、分かっていた。だからこそ、近づいてからミサイルを受けたのだ。
展開されたパルス爆発が直撃する前に、こちらもアサルトアーマーを起動。
「……カーラ」
姿勢安定性に優れる「フルコース」はそれだけで
すかさず、殴って動きを止めながらチェーンソーをチャージ。アーキバス製に取り換えられたそのコアを、貫く。
「ビ……ジ……あんた、は……」
「……僚機の全滅を確認。敵機の撃破優先度を算定、戦術プロトコル更新。最上位命令を続行……」
「フルコース」を撃破した途端、「バルテウス」の動きが変わった。
前衛となる僚機がいなくなったためか、火炎放射器を振り回しながらこちらに突撃してくる。
「チャティ……」
狭い足場を火の海にしながら、逃げた先にキャノンを撃ち込んでくるその動きは厄介だ。
浮遊できる「バルテウス」には、地の利もある。
だが、こちらにかまけ過ぎだ。
「みんな、ごめんね。でも、わたしは……」
「バルテウス」の背後で、もう1つのアサルトアーマーが炸裂する。
先ほどの応戦で若干削れていたパルスアーマーは、それを受けて消し飛んだ。
「敵機の挙動予測、計算完了。最上位命令、実行不能」
前からは殴られ、抉られ。後ろからは、斬られ、突き刺される。
高い耐久力を誇る「バルテウス」も、その猛攻には耐えきれなかった。
「メッセージを送信……ボスからの……伝言……」
瞬く間にスクラップ寸前になったそれは、ジェネレータを暴走させ始める。
「『ビジター、アンタだけでも、笑っててくれ』……要件は、それだけ……」
「っ……でも、わたしは……」
「爆発するぞ! 離れろ!」
「っ……!」
遅れてユーリが離れた後、「バルテウス」は橙の炎と共に大爆発を起こす。
「じゃあ……な……」
「……うん、さよなら。チャティ」
「あと、ちょっとで……」
「……少し、待ってくれ」
長い洞窟を抜けて、技研都市に辿り着く。道中に大した防衛戦力はなく、すんなり辿り着くことができた。
そして、それは
……まあ、予想通り。障害物が多くて入り組んだ技研都市では、多対少の防衛はやりづらいだろう。
戦力を集中させるなら、
……それも考慮して、対策をして来た。
あらん限りの、手を尽くして。
しばらくすると、俺達を追って多数の機影が到着する。
それは、補給シェルパ。残りのすべてが集結していた。
さて。当然だが、物資を補給するためだけならシェルパは20機も要らない。
どのみち補給できるタイミングは限られているのだ。
スペアを考慮しても、20機は明らかに過剰だ。
なので、その大半には
それらにコマンドを送り、技研都市の各地に配置。信号を送ればいつでも起動できるようにする。
「……それは?」
「ああ、これは――」
補給シェルパの中身と作戦をユーリに伝えて、進む。
「――というわけだ。行くぞ」
「……うん」
目指すは技研都市の中心部。バスキュラープラントだ。
道中は特に何もなく、目的地である湖の前まで到達する。
崖の上に立ち、下を見やる。
そこで待ち受ける機影は、
-----------------------------------------------------
「やはり、来たな。待っていたぞ」
AA22F:DECRYPTOR/V.I Freud
「チッ、使えない部品どもめ……」
AAP07A:ARQUEBUS BALTEUS/V.Ⅱ Snail
「来たか、G13、G14……!」
AAP07B:BALAM BALTEUS/G1 Michigan
「独立傭兵、なぜ貴様が……」
AA22B:BALAM HEAVY CAVALRY/G7 Hakra
「戦友……そして、モンキー・ゴード……!!」
STEEL HAZE ORUTUS [I]/Rusty
「待ってたぜ、野良犬……!」
IOTA/
「―――――――!」
81-001 ANGL/Sera
「
「――――――――――」
IB-07:SOL 644/Ayre
-----------------------------------------------------
……よくもまあ、揃いも揃って。
所属も目的もバラバラなこいつらも、「コーラルを焼かせない」という共通の目的では手を取り合えるわけだ。
圧倒的な戦力。まさしく、絶望的な状況。
構わない。
ようやく自覚した己の意味を、もう1度反復する。
……俺は、空虚な人間だったんだと、思う。
共感も感動も、憎しみも罪悪感も、ほとんど無い。
感情を持たないわけではないが、本当の意味で心が動いたことはなかった。
それは、
……なかったんだ。
だが、あの海上で、初めて俺は。
強い想いを以て、誰かのために何かを為そうとするユーリに、惹かれたのだ。
そうだ。考えてみれば、簡単なことだった。
ユーリに
ユーリを理解しようともせず勝手な意味を押し付ける「ブランチ」の連中が癇に障ったのも。
今の今まで気づかないなんて、我ながら馬鹿だ。
だから、だから。
アーキバスだろうが、ベイラムだろうが、解放戦線だろうが。
オールマインドだろうが、コーラルだろうが。
この惑星のすべてだろうが、人類種のすべてだろうが。
全員、ブチ殺してやる。
フルコース(アーキバス鹵獲仕様)
UNIT
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
FRAME
HEAD:HS-5000 APPETIZER
CORE:VE-40A
ARMS:VP-46
LEGS:2S-5000 DESSERT
INNER
BOOSTER:FLUEGEL/21Z
FCS:FCS-G2/P10SLT
GENERATOR:VP-20C
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
【挿絵表示】
マッドスタンプ(アーキバス鹵獲仕様)
UNIT
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
FRAME
HEAD:DF-HD-08 TIAN-QIANG
CORE:DF-BD-08 TIAN-QIANG
ARMS:VP-46D
LEGS:VP-422
INNER
BOOSTER:BC-0600 12345
FCS:FCS-G1/P01
GENERATOR:VP-20C
EXPANSION:NOT EQUIPPED
【挿絵表示】
解説
アーキバスに鹵獲され、損傷部位をアーキバス系のパーツで補った2機。
フルコースはミサイルが4種になり、着弾タイミングを合わせれば非常に回避しづらくなった。あと若干軽くなり、ブースタも変わったので機動性が上がっている。
ちなみに現在シュナイダーはほぼ解体されており、パルスミサイルやブースタはアーキバスが接収したもの。
マッドスタンプは右がレザショになったことで射程が伸び、プラミサも追加して火力を上げている。なお中身。
換装部位から2人のやられ方が何となく想像できるかも。
チャティはAIということで、管理者権限で命令されて未改修のバルテウスに乗せられた。
最上位命令を何よりも優先するようにインプットされたが、最期にそれが詰んだと認識したことで自由を得た模様。