転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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バスキュラープラント襲撃⑮

 

「チッ……外したか」

 

「しかし、外してなおこの威力……素晴らしいでしょう、我々の力は」

 

 「81-009 SRPH」の左腕、その巨大兵装から放たれた超多重複合エネルギー光線。

 それは僅かに掠めただけで、「ボイジャー1」の右腕を、肩の光波キャノン諸共吹き飛ばした。

 

「ですが……まだまだ、これからですよ!」

 

 そんな規格外の破壊を撃ち放った「81-009 SRPH」は、さらに間髪入れず動く。

 

「やってください、セラ!」

 

「――――――!!」

 

 左腕の巨大エネルギー兵装をオーバーヒートさせたそれは、代わりに右腕を構える。

 そこに装備されているのは、複数のユニットが複合した大型コーラルオシレータ。

 そして、左腕に装備されているものと同じく、それは変形した。

 

「――――!!!!」

 

 変形した銃口から放たれたのは、緋。

 斬撃とも光線ともつかない、緋色の奔流。

 

 ACを1機丸ごと呑み込んで余りあるほどに巨大なそれが、意志を持つように蠢きながら到来する。

 

「っ危ない!」

 

「…………!」

 

 右腕を吹き飛ばされてACS負荷限界(スタッガー)に陥っている「ボイジャー1」を殴り飛ばし、自身も反作用で後退。

 その直後、2機がいた場所を膨大な熱量が埋め尽くした。

 

「ふふふ……こちらはアイビスシリーズの兵装を解析、統合した超大型連装複合可変オーバードコーラルオシレータです……名称は『88-285 HALO』としておきましょう」

 

「―――――――――!!」

 

 継続的に照射され続けるその光は、外れてなお軌道を変化させる。長く伸びた光の線が標的を呑み込まんと迫る姿は、さながら蛇のようにも見えた。

 

 その標的は、「ボイジャー1」。

 敵は本格的に狙いを俺からユーリにシフトしたらしい。

 

「凌げるか!?」

 

「うん……!」

 

 コーラルの奔流が「ボイジャー1」を追い回している間に、俺は全力で上昇。

 反動制御のために静止している「81-009 SRPH」に肉薄を試みる。

 

「……イグアス!」

 

「ああ、させるかよ!」

 

 そこで「81-009 SRPH」の左腕が復活した。

 それは右腕とは独立して動き、パルスとプラズマを広範囲に散布する。

 

 ……それは、もう見た。性質も、弱点も。

 先ほどは退がるしかなかったが、今は違う。

 

「…………」

 

 弾幕の薄い部分を見極め、チェーンソーを盾にしながらダメージ覚悟で強行突破する。

 その長大な銃身の内側に入り込みさえすれば――

 

「セラ!」

 

「――――」

 

 「81-009 SRPH」の右腕からなおも照射され続けていたコーラルの奔流。

 それが、突然止んだ。

 

 代わりにその銃身が展開し、緋色の稲妻を発し始める。

 

 その、波形は――

 

「――――――――!!」

 

 ――()()を見たら、一目散に退がる。

 自身も()()を使用可能でない限り。

 

 その後退は、反射だった。

 ()()()()()()の末、本能レベルで肉体に染みついた危機回避。

 かつて条件反射だけで動く者(「レイヴン」)を嘲った俺だったが、今回俺の命を救ったのはその条件反射だった。

 

「……これも、躱しますか」

 

 「81-009 SRPH」の右腕武装。その展開した銃身から生じたのは、アサルトアーマー。

 コーラルの緋に染まったそれが、球形の範囲を焼き尽くしていた。

 

 自身のアサルトアーマーが冷却中だった俺は、その前兆を見るなり後退。掠った程度で事なきを得た。

 だが、その緋色に染まったパルスが晴れた頃には、「81-009 SRPH」の姿は消えている。

 

「知ってるぜ……テメェは、ここからが鬱陶しい……だから全力で潰す」

 

 その狙いは、尚も「ボイジャー1」だ。

 片腕を失い、コーラルの奔流に追い回されて疲弊したその機体の上を取り、爪のように展開したブレードを振るう「81-009 SRPH」。

 

「食らえ、野良犬……!」

 

「……それは、もうしってる!」

 

 振り下ろされる爪を、懐に潜り込むようにして躱す「ボイジャー1」。続けざまに振るわれる連撃も、追撃の光波すらも空を切っていく。

 その動きは、先程俺が「81-009 SRPH」の連撃を回避した際のそれによく似ていた。

 

「……ならば……イグアス!」

 

「――――」

 

「チッ……!」

 

 「81-009 SRPH」の両腕、その兵装が形を変える。変形したそれらを同時に構えた「81-009 SRPH」は、パルス、プラズマ、炸裂コーラル弾を広範囲に撒き散らす。

 

「それも、しってる」

 

 当たらない。

 「ボイジャー1」は寸分の狂いなく弾幕の隙間を潜り抜け、距離を詰めていく。

 

「……対処を!」

 

 「81-009 SRPH」のフライトユニットが光を発し、その姿を掻き消す。

 瞬時に「ボイジャー1」の背後に回ったそれは、凄まじい勢いでレーザーを連射した。

 

「それも」

 

 その攻撃も、「ボイジャー1」が僅かに軸をずらしただけで空を切った。

 

「クソ、なら……」

 

「……()()()()()?」

 

 ……先程の回避も然り、ユーリは前々から俺や敵のやり方を吸収し、成長していた。

 ()()()()()を取り込むのも、自然な帰結であるのかもしれない。

 

「…………」

 

「そのていどじゃ、もうきかない」

 

「……上等だ、野良犬」

 

 売り言葉に、買い言葉。

 「81-009 SRPH」は再び最大の攻撃を放つべく、フライトユニットを閃かせて上空に陣取る。

 

「……やるぞ、テメェら!」

 

「……ええ、やってしまいましょう!」

 

「――――!」

 

 「81-009 SRPH」の左腕に装備された4つの銃身が合体し、凄まじいエネルギーが宿り始める。

 だが、今回はそれだけではなかった。

 

「エネルギー、統合開始……!」

 

「――――!!」

 

 「81-009 SRPH」の左腕にて統合され、凝縮され、増幅されたエネルギー。さらにそこへ、右腕からコーラルが流れ込む。

 

 先ほどよりも遥かに巨大で、暴力的な光。

 

 俺達はそれを尻目に、1箇所に集まっていた。

 

「ゴード……!」

 

「ああ!」

 

 ここまで、作戦の共有はしていない。

 敵は通信の盗聴や割り込みを自在に行うことができるからだ。

 

 けれど、敵の動きや性質を見ていれば、自ずと同じ答えに行きつくと。そう信じていた。

 

 「81-009 SRPH」の最大の特徴は、その背後に備わったフライトユニットだろう。

 瞬間移動に等しいレベルの高速機動をほぼインターバルなしで実現するそれがある限り、こちらから奴に決定打を与えることは難しい。

 

 だが、この瞬間だけは、例外だった。

 

 全エネルギーを収束させて放つ、最大の攻撃。そのチャージ中だけは、奴らは微動だにせず、攻撃に対しては迎撃という選択肢を取った。

 

 それに、もしあの攻撃とフライトユニットを同時に使用できるなら、射撃の直前に敵の死角に回ってから撃つ、くらいはするだろう。それで相手は即死するのだ。ブラフを張る意味も無い。

 

 故に、この瞬間こそが最大の好機。あとは、高度差を埋めるだけ。

 

「……アサルトアーマーだ!」

 

「わかった……!」

 

 「ボイジャー1」の上に陣取り、リペアキットを使用して損傷を回復。そのまま、A()C()S()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 システムによる強制的な姿勢制御やブレーキ、それらの軛から完全に解放された機体で、足元から生じたパルス爆発をもろに浴びる。

 

 直後、「ジュピター」は、真上へと弾き飛ばされた。

 

「なっ……!」

 

 システムを再起動しつつ、ブースタを全開にして上昇速度をさらに速める。

 リペアキットの再使用が可能になる頃には、「81-009 SRPH」の姿がすぐそばにまで近づいていた。

 

「……オールマインド!」

 

「っ、プロセス、中断――」

 

 再使用可能になったリペアキットを即座に使い、ACSなしの至近距離で浴びたアサルトアーマーによる損傷を回復させる。

 

 その動作と並行して、「ジュピター」は右腕を振りかぶっていた。

 狙うのは、エネルギーが収束した「81-009 SRPH」の左腕。ダメ押しに、ニードルガンの杭も握っている。

 

「中断、間に――」

 

 4種類……コーラルも含めれば5種類のエネルギー。

 合体した銃身内で均衡を保っていたそれが、外部からの衝撃によって崩れた。

 

 瞬間、視界が白に染まる。

 まだ最大出力ではなかったとはいえ、あれだけのエネルギーが暴発したのだ。

 無事では済まないだろう。互いに。

 

「……ハメやがったな、野良犬……!」

 

 ACS負荷限界(スタッガー)に陥った2機が、光と爆炎の中から弾き飛ばされる。

 互いに装甲はボロボロになり、それそれ右腕、左腕が肩から吹き飛んでいる。

 互いに再使用可能になったアサルトアーマーによる軽減が間に合ったため、この程度で済んだのだ。

 

 だが、その程度で済むことを良しとしない者が、こちらにはいる。

 

「これで……!」

 

 弾き飛ばされ、身じろぎする「81-009 SRPH」。

 それが再び動き出すより先に、その背を翡翠の極光が斬り裂いた。

 

 フライトユニットの接合部を見事に狙って斬り飛ばしたその斬撃は、今まで見た中で最大級のものだった。

 

「ユーリ……」

 

 下を見れば、「ボイジャー1」は左腕の光波ブレードを投げ捨てていた。

 宙を舞ったそれは、地面に触れる前に自壊、爆発する。

 どうやら強制的に出力を引き上げ、自壊覚悟で斬撃を放ったらしい。

 

 だが、それは安い交換と言えるだろう。

 斬り飛ばされた2つのフライトユニットは、鮮やかな2種の光と共に爆散した。

 

「推力、維持できません……落下します、イグアス……!」

 

「――――――」

 

「クソ……!」

 

 翼をもがれ、落下を始める「81-009 SRPH」。

 同時に、こちらもEN切れにより落下。2機はそろって地面へと向かっていった。

 

 その最中、落ちながらもダメ押しに左腕でニードルガンを構える。

 

「まだ、終われるか……!」

 

 その銃身が、弾き飛ばされた。

 

「再計算開始……余剰エネルギー及びコーラルの配分を最適化、残存部分の出力を引き上げます……!」

 

「――――――――――!!」

 

「これが最後なんだ……! テメェに勝つまで終われるかよ、野良犬……!」

 

 ボロボロになった「81-009 SRPH」。その各部ブースタ、そして残された右腕に、光が集まっていく。

 その巨大な武装からは、翠と緋の光が歪に入り混じった爪が形成された。

 

「……そうだね、イグアス。これが、最後」

 

 対するこちらは、2機とも片腕が吹き飛び、残された武器はそれぞれ1つ。

 

 互いに満身創痍。

 今や戦いは瀬戸際、今際の際。

 

 終幕は、近い。

 

今構想のあるもの改

  • AMちゃんルートIF
  • 465、仕事の時間だ
  • ループ621
  • レッドガンIF
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  • 葦名一心VS岩本虎眼
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