転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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エピローグ

 

 コーラルを巡る争いに、勝者は無く。

 炎と嵐の後には、何も残ることはなかった。

 

 ()()を観測した生き残りがいたかどうかは定かではない。

 ただ、惑星ルビコン3が星図から消え去ったことだけが、事実として残っている。

 

 そして、星系を焼き払った主犯。

 

 果たして、それは――――

 

 

 

 

 

 

「「…………!!」」

 

 白と黒、2つの拳が音を立てて衝突する。

 

 奇しくも、同じ腕部フレームに同じブースタ。

 同時に放たれたそれらは、同時に互いを弾き飛ばした。

 

「ゴード……!」

 

 弾き返された「ボイジャー1」は、体勢を立て直すなり拳を振るう。

 

「ユーリ……!」

 

 対するこちらは、蹴りで迎撃。出掛かりを潰す。

 

「なんで……なんでっ、じゃまするの! わたしが火をつければ、全部終わるのに……!」

 

「俺が火を点けたって、いいだろう!」

 

「違う……だめなの! これは、わたしがやらないと!」

 

 ……状況はあまり良くない。

 互いに満身創痍であることは変わりないが、こちらは頭部が吹き飛んでいる。

 ACSの基幹制御を担う部分を丸ごと失ったのだ。

 サブシステムが稼働したことでなんとか動けてはいるが、姿勢安定性はガタ落ちだ。

 

 その上、視界をコクピットハッチを開いての目視に頼っている状況だ。

 ハッチが開いている正面しか見えないので視野は狭いし、危険もある。

 

 ……だが、それを理由に諦めようとも思わなかった。

 

「わたしは……わたしは、『強化人間 C4-621』! わたしの意味は、コーラルに火をつけること、ただそれだけなの!!」

 

「……俺にとっては『ユーリ』だ!」

 

「…………っ」

 

「名前が増えても困らないと、そう言ったのはお前だろ!」

 

「……でも……でも!」

 

 拳を、脚を交える。

 

 こちらの勝利条件は、「ボイジャー1」を……ユーリを脱出させることだ。

 先ほど、シャトルの位置情報と共にその起動コードも送られてきていた。

 「ボイジャー1」を動けなくして補給シェルパに押し込めば、後は自動でシャトルに積み込んで脱出させることができるはずだ。

 

 故に狙うのは、五体。コアを残したまま、動けなくする。

 

「……なんで……どうしてっ、そこまでするの! あなたが残って火をつけて、それが何になるっていうの!」

 

「俺だって、よくわからん……! なんせ初めての事だからな」

 

 殴り合い、蹴り合う。

 機体の状況はこちらが不利だが、拳を武器として用いてきた年季で言えばこちらに分があった。

 

 QBで隙を潰し、フェイントを織り交ぜ、ここぞという時に蹴りを放つ。

 どちらも後は無い。互いに一度でも相手をACS負荷限界(スタッガー)にすることができれば、そのまま目的を遂げられる状況だ。

 

「よくわかんないなら……なんで……!」

 

「……わからないが……お前に死んでほしくないと思ってるのは、確かだ」

 

 蹴りを放つ「ボイジャー1」に、こちらも脚部で応える。

 両者、拳の性能はほぼ同じだが、蹴りは違う。

 重量では僅かにこちらが上回っているし、脚部フレームの強度、馬力でも上だ。

 「ボイジャー1」の、瞬発力重視で細い脚部フレームに罅が入る。

 

 ――その衝撃で、「ボイジャー1」の姿勢が僅かに揺らぐ。

 

 崩した。さらにその脚部を砕くべく、拳を振り上げ――

 

 

(……意、味)

 

 それを振り下ろす前に、「ジュピター」は殴り飛ばされていた。

 もんどりうって倒れ、地面に転がる。

 

 ……今ので、ACSに致命的なエラーが発生したらしい。

 コンソールには、復旧まで数分を要すると表示された。

 

「……ゴード」

 

 「ボイジャー1」が、歩み寄ってくる。どうにか歩行に支障はないようだ。

 

「なんで、攻撃をとめたの」

 

 ……それは。

 

「……迷った」

 

「…………?」

 

「コーラルを自分の手で焼き払うことが、お前の意味だというのなら。それを踏みにじってまでお前を生かすべきなのか……迷ったんだよ」

 

 ……ああ、まったく馬鹿な話だ。ユーリの想いをを叶えるべくここまでやっておいて。最後の最後でそれを否定して。そのくせ迷って、結果敗れた。

 

「結局のところ、俺はお前の……意味を遂げようとするそのひたむきさに、焦がれたんだから」

 

「……そっか」

 

「お前の勝ちだ。コーラルは、お前の手で焼いてくれ」

 

「……うん」

 

「ただ……よければ、あれを使ってくれないか」

 

 コーラルジェネレータを改造した爆弾の、起動コードを送る。

 

「…………」

 

「……それから、点火には俺も立ち会いたい」

 

「…………」

 

「……それで……あれだ。火を点けてから、惑星全体に火が広がるまでに……一か八か、一緒にシャトルまで急ぐってのは、どうだ」

 

 ここからシャトルまでは、意外と遠くない。だが、コーラルに火を点けた後具体的にどれくらいの速度で星系が焼き払われるのか分からない以上、何一つ確証のない賭けだろう。

 

 だが、それでも……

 

「……だめ、だよ」

 

「……なぜ」

 

ここ(脳深部)にも、コーラルがある……それに、わたしのいみは、ここでおわり、だから」

 

「……そうか」

 

 ……選択。

 それは、始めのうちは他者から与えられた意味であったかもしれない。だが、その意味を貫き通すと決めたのは、他でもないユーリ自身の選択なのだと思う。

 

 それを、「間違いだ」なんて否定することはできないし、やりたくなかった。

 

 ……だから、俺にできるのは。

 

「お前の意味が、ここで終わり、なら……」

 

「…………」

 

 

「……俺が、お前に意味を、与える」

 

「……っ」

 

「俺は、お前が必要だ。俺と来てくれないか。ユーリ」

 

 暫しの、沈黙。

 

「……ゴード、――――――」

 

 

 

 ――――星系を焼き払った主犯が誰であるか、それは定かではない。

 

 だが、その災厄は、時にこう呼ばれる。

 

 「レイヴンの火」。

 

 あるいは、「モンキーの火」と。

 

 その名を持つ者たちがその後どうなったのかは、ほとんど知られていない。

 

 

 





ご愛読ありがとうございました。
これにて本編完結となります。

右も左もわからない素人が見切り発車で始めた作品をここまで見ていただいたことは感謝に堪えません。

なお、アンケートでも書いた通り、書きたいものはまだまだ山ほどあるので、これからも本作のIFルートを始めとしていろいろ書いていこうと思っております。
今後ともよろしくお願いします。

あと、諸々のリクエスト箱&書きたいもののまとめを置いておきました。特に内容を問わず募集していますが、書くかは不確定です。
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