転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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試作兵器検証

 

 オールマインドの首輪付き、その朝は早い。

 

「オールマインドが起床時刻をお伝えします。オールマインドが起床時刻をお伝えします。オールマインドが――」

 

 起きて最初にするのは、反復的なアラームを発する三角形の目覚まし時計を止めることであった。

 

「……朝か」

 

 体を起こし、三角形のエンブレムがデカデカとプリントされたブランケットをのけてベッドから出る。

 続いて洗面所で顔を洗い、三角形のエンブレムがデカデカとプリントされたコップで口をゆすいだ。

 

「…………」

 

 次に手に取るのは、三角形のヘッドをした歯ブラシである。

 どういう訳か、それぞれの毛が(くだん)のエンブレムと同じ図形を描くように並んでいる。この形状が如何なる形で口内の衛生に貢献するのかは不明だ。

 

「識別名モンキー・ゴード。本日の朝食を配給します」

 

 歯を磨いてしばらくすると、スピーカーから響く声とともに、部屋にある機械からこれまた三角形のエンブレムがプリントされた固形食糧のパッケージが出てきた。

 

「今回のフレーバーは、ラーメンとチョコレートケーキをブレンドしたものとなっております。両者ともに星外では人気の食品という事なので、合わせればさらに美味であると予想できますね!」

 

「…………」

 

 名状し難い味わいのレーションを食べ終え、三角形以下略の服を着替える。

 その後も同様のエンブレムに囲まれたモーニングルーティンを送った俺は、与えられた居住室を出てブリーフィングに向かうのだった。

 

 

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試作兵器検証

 

作戦領域:-

依頼者:オールマインド

作戦目標:データ検証

報酬:-

 

詳細

・シミュレーション上における新作パーツ構想データの検証

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MISSION BRIEFING

 

「さて、仕事の時間です。識別名モンキー・ゴード」

「今回は、我々のパーツ開発に協力していただきましょう」

「具体的には、シミュレーション上において試作パーツの仮データを検証します」

「貴方の役目は、テスターとして各兵器を試験運用し、データや所感を提供することになるでしょう」

 

「我々の素晴らしい新兵器の数々を真っ先に体験できるのです。楽しみにしていてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 シミュレータの席に着き、それを起動する。

 すると画面上にACと同様のインターフェースが表示され、続いてカメラからの映像――を模したCGが映し出され始めた。

 周囲に広がったのは、ACテストや仮想教習などでおなじみの殺風景な空間だ。

 使用するACは、この前組んだ「アセンブラージュ」のようだ。ただし、一時的に武装は全て外されている。

 それを確認すると同時に、スピーカーからオールマインドの声が響いた。

 

「さてさて、では早速初めていきましょうか!」

 

「…………」

 

「おや、どうかしましたか?」

 

「……別に」

 

「……? まあいいでしょう。早速テストを始めていきましょう、最初はこれです!」

 

 オールマインドがそう言うと、テスト用に武装を外した「アセンブラージュ」の手に、1つのライフルが握られた。

 それは見たところやや大型だが普通の実弾ライフルに見える――銃身下部に取り付けられたやたら複雑な機構を除けば。

 

「これは……まさか」

 

「ええ……お察しの通り、この前貴方が出したアイデアを元に発案したものです」

 

 本当にそうだろうか? 俺が出した案とは随分違う気がするのだが。

 

「開発コードは『44-144 BYNT』、大口径ライフルの下部にレーザーバヨネットを装着した複合兵装となっております。早速使用してみてください」

 

 オールマインドがそう言うと、何もなかった仮想空間内に数機のMTが現れた。

 

「……りょーかい」

 

 俺は生返事を返しつつ、手にしたライフルをそれらに向ける。

 

「まずは、ライフルによる射撃を行ってください」

 

 言われた通りに、数度トリガーを引く。

 すると、やや長めの間隔で数発の銃弾が放たれ、MTを撃ち抜いた。

 そのまま、感覚を確かめるように他のMTを射撃していく。

 

「…………」

 

 セミオート。発射サイクルは遅め。総合的な火力としてはMA-J-200 RANSETSU-RF(バーストライフル)よりやや下程度。ただし反動に若干難あり。

 まあ、ここまでは実弾ライフルとして素直な性能だと言えるだろう。

 

「使い心地はいかがですか?」

 

「まあいいんじゃないか……ここまでは」

 

「では、続いてレーザーバヨネットを使用してみましょう、さあ早く早く」

 

「…………」

 

 心なしかテンションの上がり始めたオールマインドをよそに、次の機能を試す。

 どうやら短めのチャージによってレーザーバヨネットが展開し、近接攻撃を放つことが出来るようだ。

 

 これも同様に、数度MTを相手に具合を確かめる。

 リーチはそこそこあるが、本格的な近接武器ほど踏み込んで放てるわけではない。威力もそこそこだ。

 決して、単体の近接武器を凌駕するような性能では無いだろう。

 

「どうですかどうですか?」

 

「普通によくできてると思うが」

 

「でしょう?」

 

 使ってみた感じ、ライフルもバヨネットもそれぞれ単体で見れば既製品の下位互換と言わざるを得ない性能である。

 だが、この2つを単体の武器枠で併用できるなら、使い方によっては価値がある。そんな印象だ。

 

 ……ここまでは。

 

「それでは最後の機能、2段目のチャージを使ってみましょうか!!」

 

 ……うん。知ってた。

 ここまでだけなら、やたら高い重量とEN負荷にも、銃身下部のやたら複雑な機構にも説明がつかないと思っていたところだ。

 

「さあ最大までチャージしてみてください! 早く、早く!」

 

「…………」

 

 あからさまにテンションの高いオールマインドの声に従い、1段階目を超えてライフルをチャージする。

 

 すると、銃身下部に装着された複雑な機構が蠢き……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……これは?」

 

「よくぞ聞いてくれました! なんと最大チャージでは、ライフルグレネードの要領でレーザーバヨネットそのものを装填し、高速で射出するのです!! 当然、これを使用した後は補給を受けるまでレーザーバヨネットを一切使用できなくなりますが、まあ些細な問題ですね!」

 

「…………」

 

「我ながら素晴らしい発想でしょう? では射出してください!!」

 

「…………」

 

 威力を見せつけてやりましょう、とでも言わんばかりに、MTではなくトレーナーACが標的として出現する。

 それに狙いを定めてトリガーを放すと、轟音とともに青い刀身を発するレーザーバヨネットが射出された。

 

「さあ見てください! この凄まじい威力……を……」

 

 だがそれはトレーナーACに命中することはない。それは狙いを外れてあらぬ方向に飛び、突き刺さり、何故か爆発した。

 

「…………」

 

「ど、どうやら命中精度に関しては改善の余地があるようですね?」

 

「………………」

 

「ま、まあこれはこのくらいにして、次に行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はこちら! 『45-091 EGIS ALPHA』です!」

 

「……うん」

 

「こちらはパルスシールドとパルスキャノンを複合させた武装で、短く入力することでパルスシールドとして、長押しすることでパルスキャノンとして使うことが出来ます!」

 

「つまり、パルスシールドはIG(イニシャルガード)しか使えないし、パルスキャノンは射撃開始までにかなりのラグがあるという事か?」

 

「……そうなりますね!」

 

「あと、型番被ってない?」

 

「……あっ」

 

 

 

 

「これはどうですか? 『44-145 AZUR』というのですが」

 

「なんか、技研のコーラル照射装置に似てるな」

 

「いい目の付け所ですね! その通り、これは技研製のコーラル兵器をEN転用する実験の一環として開発しているものです」

 

「へぇ。で、性能は」

 

「これも多段チャージが可能でして、チャージなしでは通常のレーザー射撃、1段階目ではエネルギー爆発を伴う射撃を行います」

 

「ふむふむ」

 

「そしてなんと2段階目では! 原型となったコーラル照射装置同様に、超巨大なレーザーを継続照射します! 素晴らしい威力ですよ!!」

 

「おお。……ところで、これの総弾数は」

 

「90発ですね」

 

「チャージ1段階目の消費量は」

 

「10発ですね」

 

「チャージ2段階目の消費量は」

 

「……30発ですね」

 

 

 

 

 

 

「なら、今度はこれです! 『44-146 KRSW ALPHA』!! 我々の最高傑作である『44-142 KRSV』のさらなる強化案です!」

 

「……続けて」

 

「従来のマルチエネルギーライフルに、さらにパルス発振装置を追加することで3段階のチャージを可能にしたのがこちらです!」

 

「…………」

 

「3段階目のチャージでは、威力、衝撃に加えてエネルギー防壁への干渉力をも備えた究極のパワーを発揮しますよ!! 素晴らしいでしょう!!」

 

「で、欠点は?」

 

「些細なものですよ? 負荷が大きすぎて現状AC規格ではどうあがいても使えない程度です! ……ダメじゃないですか!!」

 

「お、おう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これにて検証を終了します。お疲れ様でした」

 

 ……疲れた。

 

 数々のトンチキ試作兵器を検証し終えた俺は、シミュレータルームから出て廊下を歩く。

 今回検証した兵器の数々だが、あくまでシミュレーション上に構築された仮データであり、実物の生産にはまだまだ程遠いらしい。当然、机上の仕様通りに実物が完成する保証もないだろう。

 

 ……まあ、そんなことはお構いなしにオールマインドは終始楽しそうだったが。

 

 なんてことを考えながらオールマインドの施設をブラついていると、背後から声がかかった。

 

「ほう……お前も、()()の駒になった口か?」

 

 振り返ってみれば、そこには白髪の男が立っていた。

 かなりの老年で、そこかしこに痛々しい手術痕の見える男だ。

 

「ああ、そうだが。あんたもか?」

 

「……そうとも」

 

「とすると……あんたもあんな感じの部屋で生活してらっしゃる?」

 

「いいや、私は別で拠点を持っている。()()の膝元で眠るなど、ぞっとしないのでな」

 

「……ああそう。で、用件は」

 

 

「……忠告だ」

 

「ほう?」

 

()()に深入りするのは……やめておけ……」

 

「…………」

 

()()と人は、根本的に違う……深入りすれば、碌なことにならない」

 

「俺と同様、()()()の駒になった奴の言葉とは思えんが」

 

「私は、私の個人的な目的のために()()を利用し、また利用されているに過ぎん。そして、せいぜいお前もそうすることだ」

 

 それだけ言い終わると、白髪の男は何処かへ歩き去る。

 

「待っていろ、ハンドラー・ウォルタァ……」

 

 何かしらの執着を滲ませる呟きを発しながら。

 

 

 そして、二度とその男の顔を見ることはなかったのである。

 




すっごい前で申し訳ないのですが、今回の話は一話完結ミッションのネタ募集に投稿いただいた、影響を受ける人様のアイデアを参考にさせていただいております。

武装テスト的な話自体はやりたかったのですが、本編に入れる余地があまりなかったのでこちらで回収することにしました。ありがとうございます。
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