はてさて、世間では中央氷原への注目がにわかに高まっている今日この頃。
愉快な仲間が1人増えたオールマインド御一行である俺たちは――割とやることが無かった。
そのため、あれやこれやと雑多なタスクをこなしているのだが――――
「
「おつかれー」
「……なあ、オールマインド」
「何でしょう?」
「今倒した奴らのアセン……なんか変じゃないか?」
「はて? どこが変なんでしょうか……?」
「…………」
「あ、KRSVを装備してないとかですか?」
「これは、俺の勝手な推測なんだが……」
「はい?」
「ひょっとして、このアセンを考えた奴は……アホなんじゃないか?」
「……ほえ?」
「あ、泣かした……」
「…………」
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C兵器確保
作戦領域:べリウス地方-惑星封鎖機構第3即応拠点
依頼者:オールマインド
作戦目標:拠点襲撃/目標破壊
報酬:-
詳細
・惑星封鎖機構の所有するC兵器「シースパイダー」の破壊および回収
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MISSION BRIEFING
「えー……ブリーフィングを開始します……」
「かねてより我々は、技研製兵器の応用研究に注力しており、今回はその一環として封鎖機構の保有する……」
「……なんだか面倒になってきました。『シースパイダー』というC兵器がたくさん保管されているところに行って、撃破してください。残骸の回収はこちらで行いますので。以上です」
「……何ですか? 別に怒っても拗ねてもいませんが?」
「えーと、ボクが代わりに言うね? ミッション開始だよ」
はい。
オールマインドが拗ねてしまいました。俺のせいです。
「ってゆーかその機体、腕大丈夫? ポッキリ折れちゃわない?」
「さすがにそれはないだろう……多分」
セラの心配げな声。
それはご尤もだろう。なんせ、今回の機体は……これだ。
最も腕部積載量の少ない旧式腕部フレームに、最も重い手持ち武器であるマルチエネルギーライフルが2つ。
武器以外のEN負荷はかなり切り詰めて、無理矢理EN武器特化型ジェネレータを積んでいる。
照準追従性能の値は脅威の「5」を叩き出し、EN出力はカツカツだ。
一見……というかどう見ても滅茶苦茶な機体だが、今回はこれが最適なのだ。
そう、マルチエネルギーライフルを2丁持ちすることでオールマインドの機嫌を取る……ではなく「シースパイダー」を効率的に破壊するために、これこそが最適と判断したのである。
ちなみに機体名は「アセンブラージュ」のままだ。基本パーツ使い放題のオールマインド陣営である以上機体構成は今後もコロコロ変わると思うが、その度に名前を考え直すのも面倒なので、今後も据え置きで良いと考えている。
「さて、そろそろ敵が見えてきたけど……」
「オールマインド……さん? 敵拠点の情報とかは……」
「……ふんっ」
……はい。どうやら手探りで行く必要があるようだ。
「コード5! 敵襲!」
こちらの存在を認め、定型的な台詞を吐くのは封鎖機構の防衛戦力だ。
それを視界に収めた俺は、肩のウェポンハンガーに機体の手を伸ばす。
取り出したのは、パイルバンカーとレーザーショットガンだ。
それらに持ち替えた途端、点灯していた腕部積載超過の警告表示が消える。
「一体、何の狙いだ?」
「とにかく排除し――」
ヒートカッターを振り上げたセントリーMTの1機を拡散レーザーが撃ち抜き、射撃体勢を取った1機を脚部が蹴り飛ばす。
続けざまに、宙を舞うドローンやミサイル砲台の類も拡散レーザーで破壊していった。
「コード15、増援を――」
飛び回るLC。
レーザーショットガンで応戦しつつ、着地の隙に懐に飛び込む。
そのままチャージしたパイルバンカーを叩きこんで、沈めた。
「一先ず、この辺は片付いたか」
強力なジェネレータによりレーザーショットガンの威力は高く、強力な腕部によりパイルバンカーの威力も高い。
この2つの装備でも、露払いを問題なくこなせるだけの力は備わっていた。
「さて、早速標的の場所に向かいたいわけだが……オールマインドさーん?」
「……何ですか、結局KRSV使ってないじゃないですか。ふん」
「それは、今から――」
「……上! 何か来てる!」
「……ッ!」
突然の警告。
促されるままに上へと注意を向ければ、そこから降ってくるもの
その巨体と多脚、漏れる緋の光。
どうやら、標的が向こうからやってきてくれたらしい。
「アセンブラージュ」の手が再びウェポンハンガーに伸びる。
その直後、轟音と共に3つの大質量が降り注いだ。
そう、それは技研の手になる、珍妙で愉快な兵器の一角。
IA-13――「シースパイダー」だった。
「へー、これは……」
それらは、その多脚で以て着地の衝撃を殺し、戦闘機動に移る。
――――3機のうち2機は、だが。
「アセンブラージュ」の両手、そのマルチエネルギーライフルには、すでに大量のエネルギーが凝縮されていた。
EN武器適性に特化したジェネレータの為せる業である。
後は、着地で隙だらけの巨体にその熱量を叩きつけるだけで良かった。
腕部積載超過? 照準追従性? そんなものは関係ない。
前回同様、的が大きすぎて狙いをつける必要すら無いのだから。
轟音。
放たれたのは2つの紫電。
2種のエネルギーを複合し凝縮したそれは、着弾と共に炸裂し――――随一の耐久性と姿勢安定性を誇る巨大なC兵器を、たったの2発で
「…………」
傷口からコーラルを噴出し、よろめく「シースパイダー」。
すかさずその懐に潜り込み、その巨体を残る2機の攻撃に対する盾とする。
同時にウェポンハンガーに手を伸ばして武装を切り替え、叫んだ。
「いやーすごいなぁこのKRSVって武器は! こんな巨大兵器の姿勢をたった2発で崩すなんて!!」
「…………!」
「…………」
褒めちぎりながら、「シースパイダー」の装甲にパイルバンカーをブチ込む。
「それにダメージだってかなりのものだ! あの堅牢な装甲をゴリゴリと削っていた!!」
「…………!!」
続けて右手のレーザーショットガンをチャージ。パイルバンカーが空けた装甲の穴を、さらに収束レーザーで抉る。
「こんな凄い武器の製作者は、きっと完璧で究極で超天才の美少女なんだろうなぁ! かー、憧れちゃうなー!!」
さて、効果のほどは如何に……?
「ふふ、いやいやそれ程でも……ありますけどね! 我々は完璧な傭兵支援システムですから!」
……上々である。
「ふふふ、まあ我々の天才性は余人とっては理解しがたい部分もありますし? 今朝は件は水に流して差し上げてもよろしいですよ?」
「わーい! ありがとうオールマインドちゃん! 今朝はごめんね!」
「ふふふふ、いえいえ構いませんよ! 完璧な我々は寛容さも持ち合わせていますからね!」
そんなやり取りの傍らで、マルチエネルギーライフルの冷却が終わり次第フルチャージをブチ込み、パイルバンカーと収束レーザーで追撃……という流れを繰り返す。
すっかりオールマインドが上機嫌になった頃には、すでに2機目に差し掛かっていた。
「何と言うか……面白いね? キミたち」
「ああ、うん……」
「勿論です! 完璧な我々は、完璧なユーモアセンスも備えておりますので! ウィットに富んだジョークも言えますよ!!」
「……ふふっ」
さて、和気あいあいとした会話が繰り広げられている最中だが、「シースパイダー」はそれに構うことなく脚部のコーラルオシレータを振り上げた。
だが、俺はそれを紙一重の距離で躱し――またも、フルチャージしたマルチエネルギーライフルを向ける。
閃光と轟音。やはり、たった2発で
実際、この威力と衝撃力は目を見張るものであり、この武器は間違いなく秀でた一芸を持っているのだ。
動きを止めた「シースパイダー」を、実体とレーザー、2種類の刺突攻撃で穿孔する。
どうやらその攻撃が心臓部に達したらしく、2機目の「シースパイダー」は機能を停止した。
「ふふふ、さあ残り1機ですよ! KRSVの威力を見せつけてやってください!!」
残された最後の「シースパイダー」は、その脚部を大きく展開させ――宙に浮き上がる。
そのまま、機体下部の松ぼっくりを思わせるユニットが光り輝き始めた。
どうやら、最大火力の主砲――コーラルキャノンによる爆撃を放つつもりのようだ。
だが、こちらの主砲の方が早い。
「シースパイダー」が酷く悠長に浮上からコーラルキャノンの発射準備までの工程を済ませている間に、こちらのマルチエネルギーライフルは冷却からフルチャージまで終わっていた。
「さあ、撃ち落としちゃってください!!」
「了解」
放たれるのは、レーザーとプラズマが複合されたエネルギーの奔流。
それは「シースパイダー」の下部へと直撃し、炸裂する。
そしてそんなものを食らった発射寸前のコーラルキャノンは誘爆し、飛行ユニットを巻き添えにして大爆発を巻き起こした。
空より現れて、再び空を飛ぼうとするも束の間――地面に叩きつけられた「シースパイダー」。
それでもなおその脚で立ち、敵を排除しようとする耐久力に関しては賞賛に値するのだろう。
「しぶといですね……ならば、倒れるまで撃ちこんでしまいましょう!」
「……いや、無理だ」
「え?」
「弾が切れた」
「……あっ」
武器を切り替えていないのに、腕部積載超過の警告が消える。
弾切れによって、両手に持ったマルチエネルギーライフルが自動破棄されたからだ。
「ま、そうなるよね……」
「こ、これは……そう、強すぎる力の代償というやつですよ! このくらい想定の範囲内です! 対処してください!」
「…………」
……まあ実際、これも想定内だ。
弾切れで両手が空いたならば、随一の近接性能を持つ拳を使うことができる。
ブースタを吹かす。負荷の低い旧型――――近接攻撃推力に特化したそのブースタを。
マルチエネルギーライフルの破棄により、機体重量は大幅に減少している。故にその動きは軽やかだ。
そう。先程まで高出力の砲撃を旨としていたその機体は、瞬く間に近接特化機体へと生まれ変わっているのだ。
「シースパイダー」の懐に潜り込み、拳を叩きこむ。
それは先程までのマルチエネルギーライフル程ではないにしろ衝撃力があり、何より連打が利く。ACS負荷はみるみる溜まっていった。
それに耐えかねたのか、「シースパイダー」は飛び跳ねる。
コーラル弾を撒き散らしながら距離を取った後、脚部のコーラルオシレータを展開。
こちらを叩き潰すべく、勢いをつけてそれを振り上げた。
――――ところで、今回まだ1度も使用していないものがある。
ご存知、アサルトアーマーだ。
「ミッション完了です! ふふふ、素晴らしかったでしょう我々の最高傑作は……」
すっかりご満悦のオールマインドが任務完了を告げる。
周囲に転がるのは、破壊された3つの「シースパイダー」。
損傷の程度はまちまちで、残骸を回収すれば再利用も可能そうな塩梅だ。
「いやはや、綺麗な花火だったねぇ」
「…………?」
のほほんとした調子で言うセラ。俺はそれに少し引っかかるものを覚え、問う。
「凄い今更だが……こう、C兵器に思うところがあったりしないのか?」
「あー、そうね……あんまり無い、かな?」
「……Cパルス変異波形のお前にとっては、コーラルは同胞なんだろ?」
「逆に聞くけどさ、キミは……人間が死ぬのは、誰であっても嫌?」
「……そんなことはないな」
「そういう感じ。思うところがないでもないけど……ボクにとっては同胞といるよりキミらといる方が楽しいから、別にいいの」
「そう……か」
「ふふ、酷いでしょ?」
「……別に」
「何話してるんですか2人とも、帰りますよー?」
「ん、ああ」
「ほいほーい」
「さてさて、本日の夕食は奮発しなければいけませんね! 最新の分析結果を基に合成した完璧なフレーバーを提供しましょう!」
「…………」
その日の晩出された、例のエンブレムを象った三角形の固形食糧は……予想に反して割と美味かった。
UNIT
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
FRAME
HEAD:20-081 MIND ALPHA
CORE:IA-C01C:EPHEMERA
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:AL-J-123 BASHO
INNER
BOOSTER:AB-J-137 KIKAKU
FCS:FCS-G1/P01
GENERATOR:VE-20B
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
【挿絵表示】
解説
シースパイダーぶっ殺し機体。
フルチャKRSV2発で即スタッガーさせてパイルとレザショで追撃、を繰り返すだけでシースパイダーは死ぬ。
ジャガーノートとかルビコプターにもそこそこ有効。
照準追従性が終わっているため、精度関係なく当てられる大型以外の相手はかなり不得手。ただしKRSVを捨てて殴り掛かるという最終手段がある。