転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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ブランチ排除①

 

 さて、あれからしばらく経ち、企業や傭兵達が中央氷原入りを果たし始めた頃。

 俺は、傭兵としての表向きの地位のために細々とした依頼を受けつつ、傍らにオールマインドの行う検証に協力するという日々を送っていた。

 

 

「あー! やられたー!」

 

 逆関節の蹴りが、目の前の白いACを捉える。

 すると、目の前のそれはコーラルを撒き散らして爆散する――ようなモーションを再生させた。

 

 画面には、自機の勝利を示す表示。

 やっていたのは、シミュレーションだ。

 

「これで、本日の検証を終了します。やはり、コーラルを使用した機体であればCパルス変異波形による操縦が可能のようですね」

 

「んー、でもまだいまいち感覚がつかめないんだよねー」

 

「でも、大分慣れて来たんじゃないか?」

 

 セラが使っているのは、オールマインドのデータベースにあった技研パーツの作例群だ。

 色々と手を変え品を変えやっているうちに、操縦技術の方も上がってきているように感じる。

 

「そうかなー?」

 

「まだ改善の余地はありそうですね。それはそうと、そろそろ次の任務ですよ。モンキー・ゴード」

 

「ああ、分かった」

 

 この生活にも、だいぶ慣れてきたものだ。

 そんなことを思いつつ、俺はブリーフィングの開始を待つのだった。

 

 

 

 

 

 

--------------------

ブランチ排除

 

作戦領域:中央氷原-レイク前哨基地

依頼者:オールマインド

作戦目標:敵AC撃破

報酬:-

 

詳細

・独立傭兵集団「ブランチ」の排除

 

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MISSION BRIEFING

 

「さて、早速今回の任務内容を説明していきましょう」

「今回は……『ブランチ』を名乗る独立傭兵集団を排除していただきましょう」

「彼らはアナーキズムを標榜する思想集団であり、不定期に入れ替わり続ける4人組で構成されています」

「我々は以前、ルビコンに企業を呼び込むために彼らを教唆し、封鎖機構への攻撃とコーラル再検出のリークを誘導しました」

「つまり、彼らはごく一端ですが我々の情報を握っている存在である、ということです」

「正体は念入りに秘匿したため、彼らから我々に辿り着かれる可能性は低いと考えていますが……念には念です。この際、口を封じてしまいましょう」

 

「それで、『ブランチ』と接触する手段ですが……どうやら彼らは現在、彼らのリーダー格である『レイヴン』のライセンスを拾得した『強化人間 C4-621』に関心を示しているようです」

「よって、『C4-621』の所在に関する偽情報を流布し、彼らの行動を誘導しましょう」

 

「情報工作は我々の得意分野です。お任せください!」

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、今回の任務はシンプルなAC撃破のようだ。

 これなら、機体は引き続き逆関節の奴で――

 

「KRSVは?」

 

「えっ」

 

「KRSVを使わないのですか? あれから一度も使用していませんよね?」

 

「それは……」

 

「この前ははあんなに絶賛してくださいましたよね? 凄い武器だと、確かにそう言いましたよね? なのにどうして使わないのですか?」

 

「…………」

 

「ねえ。KRSV、使ってくださいますよね?」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、ミッション開始ですよ!」

 

 高空を飛行する迷彩仕様の輸送機。

 眼下に広がるのは、中央氷原におけるベイラムの前哨基地だ。

 

 どうやら、ここの警備依頼を「独立傭兵レイヴン」――「C4-621」の方――が受けるという偽の情報をオールマインドが流したところ、うまく「ブランチ」の襲撃を誘うことができたようだ。

 

「ふふふ、存分に暴れてくださいね? 期待していますよ!」

 

「…………」

 

「オマちゃん、なんかさっきよりテンション高いね?」

 

「ああ、それは多分……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ……この機体が右手に携えている物の効果だろう。

 

「……ほんとに好きだね? その武器」

 

「いえいえ、性能に見合った信頼をしているだけですよ! 何せ我々の最高傑作ですから!」

 

「……なあ、それはいいが……下では既に戦闘が始まってるみたいだぞ?」

 

 そう言って、輸送機のカメラが拾っている映像を見やる。

 輸送機は結構な高度で飛んでいるが、それでも一目で分かるくらいに下では砲火が飛び交っている。

 どうやら「ブランチ」が派手に暴れているようだ。

 

「それに関しては問題ありません。我々の計画上、ベイラムが消耗する分には構いませんから。しばらく傍観して、適度に損耗したタイミングで仕掛けて下さい」

 

 オールマインドがそう言うと、見ていた映像がズームされ、戦場の詳細な状況が明らかになる。

 

 ベイラムの前哨基地を襲撃しているのは、「ブランチ」に所属する3機のAC。

 「アンバーオックス」、「アスタークラウン」、「ナイトフォール」だ。

 

 対する防衛側の戦力は、多数のMT、汎用兵器、砲台群と、それを指揮する4脚AC――G3(ガンズスリー) 五花海の「鯉龍」のみだった。

 

「くっ……これはなかなか、厳しいですねぇ……」

 

「……例の騙りが居ると聞いたけれど、当てが外れたわね」

 

「フン、これでは話にならんな……」

 

「珍しくあんたと同意見ね、キング」

 

「……企業の走狗に、『ブランチ』を止めることなどできない。道理でしょう」

 

 ……状況は、見るからにベイラム不利だ。

 まあ、3対1の上に実力差も激しい。MTやらがいくらいたところでこの戦力差をひっくり返すことは難しいだろう。

 

「……潮時でしょうね。皆さん、先に撤退なさい」

 

「……五花海さんは?」

 

「なに、すぐに追いつきますよ……さあ!」

 

「……ご武運を!」

 

 五花海が素早く秘匿回線で指示を飛ばすと、部下のMT部隊は撤退を始める。

 だが、当然「ブランチ」達がそれを見逃すはずがない……のだが、彼らが追撃態勢に入る前に、五花海がオープン回線で声を張り上げた。

 

「ああ、これはこれは『ブランチ』の皆さん! この五花海……お見それ致しましたよ!」

 

「……生憎、企業の狗に皮肉を言われたところで何も響かないのだけれど」

 

「そんなそんな! 皮肉なんてとんでもない……本当に私は心底感服したのですよ! 貴方がたの……()()()()()()な姿に!!」

 

「……何ですって?」

 

 食いついたのは、「ブランチ」のオペレータだ。

 それに対して五花海は、あらん限りの悪意を込めた声で嘲り続ける。

 

「言葉の通りですよ……貴方がた程、従順で忠実で敬虔な信徒……いや、()()は存在しないと。そう言ったのです」

 

「企業の狗風情が、何を――」

 

 

「……貴方がたは! 自らの名前に従い! 『ブランチ』という枠組みに従い! 『意思の表象』という定義された在り方に従い……何よりも、そう! 『自由』に従っている!!」

 

「コイツ、言わせておけば……!」

 

 言葉の傍ら、3機のACに袋叩きにされる「鯉龍」。

 せめてもの抵抗とアサルトアーマーを展開するが、焼け石に水だ。

 

 だが、五花海の言葉は止まらなかった。

 

「自分たちは自由でなければならない! 自分たちは自由の象徴でなければならない! 自分たちは目に付く全てに自由を齎さなければならない! ……ああまったく、()()そうですねぇ……()()()()な私には、到底耐えられないでしょうねぇ!」

 

「……黙らせなさい!」

 

 追い詰められ、ACS負荷限界(スタッガー)に陥った「鯉龍」のコアを、「ナイトフォール」のパイルバンカーが貫く。

 だが、撃破されるその瞬間まで、五花海の嘲笑が止むことは無かった。

 

「ああ、愚かな愚かな『ブランチ』……せいぜい見届けさせて頂きますよ。貴方がたがどこまで()()()()()行くのかを……ね」

 

 そんな勝ち逃げじみた台詞と共に、五花海を乗せた「鯉龍」は爆散する。

 その頃には、彼の部下であるMT部隊らの撤退は完了していた。

 

 

「……防衛戦力の排除を確認したわ。結局例の傭兵は現れなかったけれど、ともかく施設の破壊を……」

 

 

「……さて、そろそろ仕事の時間ですよ。モンキー・ゴード」

 

「ああ」

 

 チャージしたマルチエネルギーライフルを片手に、輸送機から飛び降りる。

 

 落下しつつ、相手の感知範囲外から狙うのは――最もデカい的(アンバーオックス)

 

「……!?」

 

「シャルトルーズ!」

 

 真上からの奇襲に反応できず、超威力を誇るその攻撃をモロに食らった「アンバーオックス」。

 そこに、さらに光波ブレードの斬撃を飛ばして追撃する。

 

「くっ……敵襲!?」

 

「……腐ってもタンクか」

 

 タンク型としては比較的脆い部類の「アンバーオックス」だが、さすがにこれだけで落とせるものでもなかった。

 起動したリペアキットが、その黄土色の装甲を修復する。

 

 同時に、「アスタークラウン」、「ナイトフォール」の2機もまた、こちらを認識した。

 

「3対1だよ? 結構キツくない?」

 

「んー……」

 

「大丈夫ですよ! なんせKRSVが――」

 

「待って! なんか来て……あれ?」

 

 セラが何かに気付く。遅れてレーダーに投影されたのは、新たな機体反応だった。

 

「接近するAC? ……っ」

 

 刺すような頭痛と、酷い耳鳴りを覚える。

 

 

「……あれ? ちょっと待ってください、何でここに――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「仕事の時間だ、621」

 

「レ……ン……ミッ……開……です」

 

「お前について嗅ぎまわっている傭兵集団……『ブランチ』を排除し、同時にお前の所在に関する偽情報を流した存在を突き止める」

 

「……うん」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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