見てくださいこの華麗な銃剣を
何の意味もありません
「ああ、親愛なるご友人、モンキー・ゴード……暫し音沙汰が無かったもので、もう逢えないのではと心配していたのですが……まさか封鎖機構に身を寄せていたとは! 素晴らしい巡り合わせです!」
「封鎖機構の方々には、ここ最近良くしていただいているのです。心で繋がった新しいご友人として、沢山のものを分かち合いました……! 素晴らしいことです……!」
「……この機体ですか? ええ、これは何を隠そう、以前貴方に参加して頂いたパーティの際にカーラから譲っていただいた予備パーツをメインに組んでいるのです! これは実質、私とカーラ、そして貴方の3人で拵えた共作と言えるでしょう!」
「名前……ええ、そうでした、機体名! 生まれ変わったミルクトゥースには、新たな名前を付けてあげなければ、不憫というものです!」
「そうですね……『
「そうと決まれば、『ウィズダムトゥース』の新たなる門出を盛大に祝わなくては! ああ心が躍ります、無論貴方たちにも参加して頂きたい!!」
……現れるや否や、以上の台詞を一方的に捲し立てたのは、ジャンカー・コヨーテスの頭目である
一応補足しておくと、俺は現在オールマインドの手によって身体と声を改造されてしまっている。
さらに言えば、封鎖機構へ潜入する際に俺はオールマインドから変装キットと小型変声機を支給されてもいる。これは現在の傭兵としての身分である「メリル・マークソン」との同定を避けるためだ。
だが、そんなことはお構いなしとばかりに目の前の狂人は俺のことを「モンキー・ゴード」と認識しているわけだった。
「上尉殿、一体どういうことです……?」
「……狂人の戯言だ、耳を貸――――」
怪しむ相方に対し、どうにかはぐらかそうとしたその時。
パチンと、指を鳴らす音が通信越しに響いた。
「さあ、楽しみましょうご友人!」
声と共に、センサーが大量の熱源を捉える。
急速に接近してくるそれらは、ACの速度ではない。
「――浮遊機雷か!」
その正体は、自爆機能を搭載した小型の自律兵器だった。
本来それは封鎖機構が所有する兵器である筈だ。だがまあ恐らくはブルートゥが
「折角の宴だ、大勢で踊る方が盛り上がるでしょう」
そして、それらの狙いは――――俺だ。
四方八方から現れる無数の機雷は、全て俺の機体をターゲットにしているように見える。
「……チッ!」
あの機雷の威力は馬鹿にならない。現在の消耗した機体で食らうのはかなりマズい代物だ。
故に、回避に専念せざるを得なかった。
「ああ、貴方は初対面ですね……ですがご友人のご友人ですから、私にとってもご友人同然です!」
そしてその隙に、ブルートゥの機体――「ウィズダムトゥース」は相方の高機動LCを標的に定める。
機雷はあくまで俺をしばし釘付けにするためのものであり、頭数を減らす隙を捻出するための時間稼ぎ、という訳だ。
全く、狂人の割にやたら的確な戦術である。
「クイック、スロー、スロー、クイック、クイック、スロー」
高機動LCを追跡する「ウィズダムトゥース」。
機動力では高機動LCより遥かに劣るそれだが、右肩に搭載されたRaD謹製の散布型ミサイルを間断なく放つことで着実に衝撃を相手に与えていた。
「くっ、貴様! 一度こちらに付いておきながら、何故裏切った!?」
「ああ、そんな寂しいことを言わないでください! 封鎖機構の皆様はずっとかけがえのないご友人ですよ!」
「何故解放戦線に鞍替えしたのかと聞いている!」
「そのことですか! ええ、私は沢山のご友人に囲まれて幸せ者です!」
「……狂人め!」
ブルートゥの言動に困惑しながらも、交戦を続けようとする相方。
俺もどうにか浮遊機雷の雨を掻い潜ってそちらに参戦しようと試みる――が、そこでセンサーが上からの落下物を検知する。
「……トイボックスか!」
それは円状のコンテナのような形状をした、大型の物体。
見覚えがある。それはRaD製の特殊重MTである「トイボックス」だろう。
一度丸い形態から変形してしまえば、動き回りながら大火力を撒き散らす厄介な相手だ。
この状況で敵の数を増やすべきではない。
展開直後の無防備なところを狙って仕留め――――
「――――違う! 離れて!」
「……!」
突然の交信に、思わず「トイボックス」らしき物体から距離を取る。
その直後――――それは光と轟音を放って大爆発を起こした。
外装の破片が散弾のように飛び散る。
あのまま接近していれば、大ダメージは免れなかったろう。
「ほんのサプライズです、気に入っていただけましたか? 折角の客人ですから、退屈させてしまっては事だ」
「……そういう事か」
「トイボックス」……に見せかけた、ただのコンテナ爆弾。
「トイボックス」の性質や火力を知っている者ほど騙される手だ。
ブルートゥはかつて俺にグリッド086襲撃の依頼を出した張本人。当然俺が「トイボックス」の撃破経験があることを知っている。
部下に俺達を足止めさせておいて、自分はこれの準備をしていたという訳だ。
「さあ、ここからはちょっとした余興、2択クイズの時間です!」
そして、同じものが上空から無数に降ってくる。
問題なのは、おそらくその中に爆弾と「トイボックス」が両方含まれていることだ。
展開直後の「トイボックス」を瞬殺するには、近接が望ましい。
だがうっかり爆弾に近寄れば、大ダメージは必至。
近寄らないという手もあるが、その場合は自由に動き回れる「トイボックス」が次々増えていくことになるわけだ。この機雷の雨の中で。
(――――セラ!)
声に出さないように、交信する。
「分かってる、どれが爆弾か――だよね」
(ああ)
レーダー上で、爆弾か否かを示すマーカーが順番に付けられていく。
それを頼りにして、「トイボックス」だけを選別して順次破壊。
厄介なのは、なおも浮遊機雷が一定のスパンで飛来し続けているという事だった。
だがどうにか慣れてきた。そんな時――――通信から、思いもよらない会話が聞こえる。
「オーネスト・ブルートゥ! 貴様は一体、何がしたいんだ!」
「決まっているでしょう、最も親愛なるご友人、カーラのために戦っているのですよ」
「何を言っている? 貴様は――」
「
「何を――!?」
「なぜなら、あまりにも不憫ではないですか! 今もなお技研の罪に苦しんでいる彼女に、更なる大罪を背負わせるなど……!」
「何を、一体何を言っているんだ貴様!」
動揺。
コーラルの脅威を封じ込めることを目的とする惑星封鎖機構の構成員としては聞き逃せない発言に、LC高機動型の動きが乱れた。
その隙を衝き、「ウィズダムトゥース」は相手の懐へと飛び込んで火炎放射を放つ。
「カーラは表向き遊んでいるようで、根は意外と真面目ですからね……そういうところが好ましいと思っているのですよ」
「くそっ、なんなんだこいつ……!」
至近距離で大量の炎を浴びた高機動LCは、慌ててミサイルの掃射による反撃を試みる。
だが「ウィズダムトゥース」は左手の武器を素早くチェーンソーに持ち替え、チャージした刃を盾にすることでその攻撃を凌いだ。
「おっと、少しプライベートな話題を出してしまいましたね、これではカーラが恥ずかしがってしまう。反省しなければ……」
高機動LCのACSは、ここまでの射撃戦によってかなり負荷が溜まっていた。
その上、先程の火炎放射、その高熱によって異常をきたしてもいる。
そこに「ウィズダムトゥース」が右手に構えたバーストライフルのチャージショットが突き刺されば、とうとうそれは負荷限界に達してしまった。
「これはほんの口止め料ですので、特にカーラには口外しないでいただけると助かります」
そして、「ウィズダムトゥース」のもう片方の手――――チェーンソーはすでにチャージが完了している。
――――それは、俺にとって既視感のある光景だった。
赤熱しながら高速回転する刃によって機体が解体される光景。
目の前で見るか、傍から見るかの違いはあれど、よく見慣れてはいる。
即死だ。
「さて、お待たせしましたご友人……次は貴方と踊りましょう!」
高機動LCだったそれに突き刺さったチェーンソーを、「ウィズダムトゥース」が引き抜く。
同時に、俺の動きを縛っていた浮遊機雷の雨が嘘のように止んだ。
「……ちなみにさっきの台詞は――虚言癖って奴の賜物か?」
「いえいえ、嘘偽りのない本心ですとも! 自慢ではありませんが、私は生まれてから一度も嘘をついたことがないのです!」
言葉と共に、こちらに向き直る「ウィズダムトゥース」。
かつて自分が頼りとしていた武器が、今度は自分に牙を剥くのだった。
ウィズダムトゥース
UNIT
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
FRAME
HEAD:HC-3000 WRECKER
CORE:CS-5000 MAIN DISH
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:2C-3000 WRECKER
INNER
BOOSTER:BST-G2/P06SPD
FCS:FCS-G2/P05
GENERATOR:AG-T-005 HOKUSHI
EXPANSION:???
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解説
ミルクトゥースの強化機体。
今となっては懐かしい最初期のミッション「グリッド086襲撃」で略奪したRaD製パーツや、解放戦線と通じて手に入れたパーツ等で強化した模様。
「ジュピター」とはまた違ったチェーンソーの使い方を見せていきたい。
機体名は英語で「親知らず」。
どのレッカーが一番強いと思う?
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メリ